映画『アクト・オブ・キリング』あらすじとネタバレ感想

アクト・オブ・キリングの概要:1965年9月30日にインドネシアで起きた大虐殺事件を、事件の首謀者の立場から追ったドキュメンタリー映画。全世界で50以上の映画賞を受賞するなど高く評価されている。

アクト・オブ・キリング あらすじ

アクト・オブ・キリング
映画『アクト・オブ・キリング』のあらすじを紹介します。

1965年9月30日、スカルノ政権下のインドネシア。政権転覆を目論んだクーデターが発生した。これにより、中将や少将ら数名が殺害された。陸軍の首脳陣を失ったため、結果的に予備司令官だったスハルトが一時的に最高位にたち、国内要所を制圧するよう指示を出した。その後、事件を首謀したとして共産党関係者と思しき人物を片っ端から虐殺するという数百万人規模とも言われる虐殺事件が起きた。

本作では虐殺に関与したとされる民間人を中心に取材を行っている。虐殺に中心的に関与したのは「共産主義者狩り」の名の下、扇動された民間人であるとされており、その中のパンチャシラ青年団と呼ばれる極右自警組織の人間を中心に取材を行っている。これは被害者側の遺族などの取材を進めていくうちに圧力がかかり、安全に取材を続行することができなくなったためである。

加害者に取材を始めると、彼らは自分たちの行動を正当化するのみならず、あたかも武勇伝のように語り始める。そこで監督は彼ら自身に対して、もう一度かつての虐殺を再現して、それを映画にするよう勧める。気を良くした加害者たちは、乗り気で再現映画の撮影を始めるが……。

アクト・オブ・キリング 評価

  • 点数:95点/100点
  • オススメ度:★★★★★
  • ストーリー:★★★★★
  • キャスト起用:★★★★★
  • 映像技術:★★★★★
  • 演出:★★★★★
  • 設定:★★★★★

作品概要

  • 公開日:2014年4月
  • 上映時間:121分
  • ジャンル:ドキュメンタリー
  • 監督:ジョシュア・オッペンハイマー
  • キャスト:アンワル・コンゴ、ヘルマン・コト、アディ・ズルカドリ、イブラヒム・シニク etc

アクト・オブ・キリング ネタバレ批評

映画『アクト・オブ・キリング』について、感想批評です。※ネタバレあり

9月30日事件を題材にしたドキュメンタリー

本作は、インドネシアにおいて1965年9月30日に発生したスカルノ政権下でのクーデターのさなか、右派勢力が「共産党員狩り」の名のもとに大虐殺を行ったという歴史的事実に基づいたドキュメンタリーである。ちなみに、この大虐殺についてはインドネシア政府がその事実を認めているため、実際に起こった事件かどうかなどという議論の余地はもはやない。

衝撃的なのは、その虐殺を主導した人物に直接インタビューを行っているということであるが、それ以上に衝撃的なのは、その張本人たちは自分たちの行為を公開するどころか武勇伝としてカメラの前で語っているという事実である。映画の中で監督は彼らに対して、その虐殺を行った様子を再現してほしいと依頼し、気を良くした彼らは、ずいぶんと乗り気で虐殺の様子を再現していく。中盤、立場を逆転させ、虐殺される側を演じていた役者に虐殺をする側を演じさせ、虐殺主導者たちに虐殺される側の人々を演じさせるというシーンがあるが、ここにきてようやく、虐殺を主導したひとりであるアンワル氏は自分の行った行為に対してほんのわずかの客観視点を獲得する。ラスト、エンドロールに突入する前のアンワル氏の金切り声と嘔吐が混ざったような叫び声には身の毛もよだつ用な感覚を覚えるほかない。

虐殺者に反省を促す映画ではない

本作が目指しているところは、虐殺者に反省をうながすというようなヒロイックな行動それ自体ではない。むしろ、客観的に虐殺という行為が持つ残虐性を加害者である彼らの前でむき出しにすることで、そこから溢れる生身の人間としての生理的な反応をビビッドに切り取ることのみを目標としているようにも見える。この映画は、答えを用意していない。すべては観た観客が自分の中で考えてこそ得られるのだ。

この映画で描かれている世界を目の当たりにすると、インドネシアという国が抱える負の側面に目が言ってしまいがちであるが、これは特定の国や地域においてのみ起こるハイコンテクストな代物では全くない。人間社会に通底する暗部である。念のためお断りしておくが、この映画を通じてインドネシアという国へ不信感を抱いたのであれば、それは飽くまで一面的なものにすぎない。自分の眼や耳で感じるためのきっかけとして受け止めるべきであると私は考える。

アクト・オブ・キリング 感想まとめ

本作のラストでエンドロールが流れるが、その中のかなり多くのスタッフ名の表記がAnonymous(匿名)になっているということからも、この映画が持つ只者ではない衝撃をうかがい知ることができるだろう。
本作は始め、被害者側からの視点を描くドキュメンタリー映画を目指していたそうだ。しかし、圧力を受け、安全に映画を制作することができなくなったために、発想を転換して加害者側からの意見を中心に採用することになったのだそうだ。結果的にはこれは吉と出ていて、この新たな構成のために映画がどこに着地するかわからなくなっており、そのおかげで映画としての興味がきちんと持続するつくりになっている。こう言うと不謹慎に聞こえるかもしれないが、ドキュメンタリーであろうとそれが映画である以上、きちんと観ている人間を飽きさせない作りになっていなくてはならないのだ。

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