映画『アキレスと亀』あらすじ&ネタバレ考察・ストーリー解説

芸術にとり憑かれた男が、才能に見切りを付けられず表現方法が次第にエスカレートしていく様を淡々と描いた映画。北野武ワールドらしい不条理性に満ちた作品。主演はビートたけし、樋口可南子、共演は大森南朋、大杉連、伊武雅刀、中尾彬、他。監督は北野武。 

あらすじ

映画『アキレスと亀』のあらすじを紹介します。

養蚕で成り上がった資産家倉持利助の息子真知寿(まちす)は幼い頃より絵を描くことが好きで、父親の力で小学校でも街中でも周りの迷惑は顧みず自分本位で好きな絵を描き放題生活を送っていた。しかし父親の事業が失敗し、父の利助は首つり自殺、資産は没収されてしまう。母と真知寿は家を出て利助の兄倉持富輔を頼り、富輔は嫌々真知寿を預かる。しかし母は飛び降り自殺をし遺体を富輔が引き取ったが、真知寿は悲しむより母の死に顔を壁に描く始末。そんな真知寿を富輔夫妻は気味悪がって家から追い出してしまう。

東京に出た真知寿は何とか青年に成長し、住込みの新聞配達をしながら相変わらず絵を描いていた。しかし配達をすっぽかして絵に夢中になっている真知寿は新聞販売店を辞め、工場に勤めながら美術専門学校に通い始める。美術学校の仲間たちと焦点の定まらない自己中心的で危険な芸術表現行為を繰り返していた。そんな真知寿の唯一の応援者が妻になる幸子だった。所帯を持つも変わらず訳の分からない芸術表現で日々を過ごす真知寿とそれに付き合う幸子。いつしか時は移り、中年を迎えた二人の間には一人娘のマリがいるが、相も変わらず芸術という名の道楽を繰り返す父親をマリは嫌悪していた。

且て父親と取引のあった画商の息子と縁をもてた真知寿は自分の作品を次々と持ち込むが、いずれも有名画家の物まねに過ぎないと酷評される。才能の無さを直視できない真知寿は次々と表現方法をエスカレートしていく。商店のシャッターに勝手に絵を描き警察に連行される事態にマリは家を出てしまう。しかしそれでも懲りない真知寿は絵を続けている。ある日、そんな真知寿と幸子の下にマリの死亡の知らせが入る。娘の遺体を目にした真知寿が取った行動はさすがの幸子も切れてしまう異常さだった。

評価

  • 点数:40点/100点
  • オススメ度:★☆☆☆☆
  • ストーリー:★☆☆☆☆
  • キャスト起用:★☆☆☆☆
  • 映像技術:★☆☆☆☆
  • 演出:★☆☆☆☆
  • 設定:★☆☆☆☆

作品概要

  • 公開日:2008年9月20日
  • 上映時間:119分
  • ジャンル:コメディ、ヒューマンドラマ
  • 監督:北野武
  • キャスト:ビートたけし、樋口可南子、柳憂怜、麻生久美子、中尾彬 etc…

ネタバレ考察・ストーリー解説

映画『アキレスと亀』について、考察・解説します。※ネタバレあり

芸術表現と狂気のはざま

真知寿は一種の発達障害なのかもしれない。他者との距離感やコミュニケーション能力や感情の欠如した人間がただ本能的に絵を描くことが好きなだけで何とか大人になっていく。しかも結婚して子供も設けてしまうのだから悲劇である。子度は親を選べない。この映画で描かれた娘のマリは不幸としか言いようがない。この映画を見て芸術とは何か?なんて深読みすることは無意味だ。これはやはりコメディ主体の映画だと思う。それもかなりシニカルなギャグで覆われたコメディだ。父親の首つりシーンも不細工な芸者と心中させるとか、少し頭の弱い村の青年が真知寿の言われるがままにバスの前に飛び出し轢かれて死ぬところ、美術学校の仲間が軽トラックに絵具を入れたバケツを載せて壁に激突して死ぬところ、真知寿夫婦が交通事故の現場で救護を呼ばず被害者のスケッチをするところなどに特にブラックでシニカルなギャグを感じた。何より青年時代の真知寿を演じるのが全く花の無い柳憂怜なのだからコメディとしか思えない。北野監督は真知寿のような極端なタイプを描くことで、現実にいる芸術家気取を皮肉っているのかもしれない。

それは表現者だけではなくそれを商売として取引する画商もあえて偽悪的に描いてパロディにしているようだ。それを伊武雅刀が相変わらず上手に演じている。子供の少し上手な絵を天才少年の絵と称して売り込んでいく様など絵に限らず他の骨董の世界でもあるような図だ。極論すれば、絵などの美術品は見る人が良いと思えばそれはその人には価値があるものと言える。ここに有名であるとか権威づけのようなものが加わって付加価値が上がる。その心理に巧みに取り入るのが伊武雅刀演じる画商のような存在だ。

しかし息子の画商はもっとクレバーで絵の知識も幅広く、真知寿の底の浅い画風を次々と見破っていく。この場面も実際の北野武監督の絵が使われていて、POPアート的な目で見れば結構楽しめる。

しかし行きつくところまでいった真知寿を一度は捨てた幸子がまた迎えに行くところは、心情的に理解に苦しむが映画のラスト的には正解だろう。

まとめ

ちょっと酷評したが、タイトルのアキレスと亀の意味がこの映画のラストにかかっているとは思えないのだ。真知寿はアキレスで、最後に亀に追いついたのか?いや、けっして追いついてはいない。亀とは何か?それは目に見えないゲイジュツという深遠なる魔力のようなものだろうか?これらはご覧になった方々がめいめい感じ取っていただければよいと思うが、この作品を夢を追う売れない芸術家の夫婦愛の感動の物語とは自分が全く受け取れない理由が、亀を追い続けてもがきあえぐアキレス(自称芸術家)を滑稽に、しかし残酷に描いているからだ。北野武作品のファンで、シニカルな笑いが分かる方にお勧めする映画だ。

Amazon 映画『アキレスと亀』の商品を見てみる