『愛、アムール』あらすじ&ネタバレ考察・ストーリー解説

『白いリボン』『ファニーゲーム』のミヒャエル・ハネケ監督が描く、愛と老いについての映画。パルムドール受賞作品。ある日突然病に倒れた妻と、それを介護する夫の姿を描く。ジャン=ルイ・トラスティニャン、エマニュエル・リヴァ主演。

あらすじ

愛、アムール』のあらすじを紹介します。

パリに住むジョルジュ(ジャン=ルイ・トランティニャン)とアンヌ(エマニュエル・エヴァ)は共に音楽家であり、満ち足りた生活を送る老夫婦であった。しかしある朝、アンヌは突然全ての動きを止めてジョルジュの呼びかけにも応じなくなる。暫くして元に戻るアンヌだが、それは病による発作であることが分かる。手術に臨むも失敗し、アンヌは半身麻痺に陥る。ジョルジュは入院を薦める娘のエヴァ(イザベル・ユペール)を制止して、「病院に戻りたくない」というアンナの望みを聞き入れる。老いた2人だけの生活は困難なものだったが、尊厳を保とうとするアンヌをジョルジュは支えるのだった。

しかしアンヌの病状は次第に悪化していき、介護無しでの生活が不可能になっていく。身体の不自由に加えて痴呆症も進行していた。それでも献身的な介護を続けるジョルジュ。いつしか2人はヘルパーや娘をも遠ざけ、2人だけの世界に入り込んで行く。苛立ちから互いを傷つけながらも愛し合う2人だが、最着々と後の時は近づいていた。死を望むアンヌに対し、ジョルジュは昔話し終えるとアンヌの顔面に枕を押し付ける。息絶えたアンヌに花を手向けると、ジョルジュもまた旅立つのだった。事件が発覚してしばらくした後、2人が暮らしたアパートには物思いに耽るエヴァの姿があった。

評価

  • 点数:100点/100点
  • オススメ度:★★★★★
  • ストーリー:★★★★★
  • キャスト起用:★★★★★
  • 映像技術:★★★★☆
  • 演出:★★★★★
  • 設定:★★★★☆

作品概要

  • 公開日:2013年3月9日
  • 上映時間:127分
  • ジャンル:ラブストーリー、ヒューマンドラマ
  • 監督:ミヒャエル・ハネケ
  • キャスト:ジャン=ルイ・トランティニャン、エマニュエル・リバ、イザベル・ユペール、アレクサンドル・タロー、ウィリアム・シメル etc…

ネタバレ考察・ストーリー解説

『愛、アムール』について、2つ考察・解説します。※ネタバレあり

共依存から愛へ

老老介護を描いた作品ではあるが、決して社会派の作品ではない。2人は裕福な暮らしを送っているし助けてくれる娘もいる。介護自体は極めてリアルに描写されるが、物語の本質はそこではない。ハネケが描くのは極限状態に追い込まれた2人の愛の形だ。

尊厳を保とうとするアンヌを献身的に介護するジョルジュの姿に、周囲の者は胸を打たれ理想の夫婦だと言う。しかしこの時アンヌとジュルジュは共依存の関係にあると言える。介護する者、される者という関係はジュルジュに、アンヌは自分がいないと生きていけないという錯覚と独占欲を引き起こす。それ故に他者を2人の空間から排除していくのだ。だがこの歪んだ愛は物語のラストで真の愛へと姿を変える。尊厳死を望むアンヌの願いを叶える際、2人の愛は共依存からより崇高なものへと昇華されるのだ。

鳩の意味するもの

作中で鳩が部屋に迷い込む印象的なシーンが2度ある。1度目は物語の前半に、2度目は全てが終わった後だ。1度目の鳩は2人の空間への侵入者を現す。だからジョルジュは娘やヘルパーにするのと同様にすぐさま外へ追い出す。だが2度目の鳩は捕まえると優しく撫でる。まるで死んだばかりのアンナが鳩になって戻ってきたかのように。その慈しむ姿からは彼が真の愛に達したことが伺い知れる。

まとめ

ミヒャエル・ハネケは間違いなく世界で最も優れた映画監督の1人だ。人間の心理を暗部まで見事に曝け出す。今作では事細かに描写されたリアルな介護シーンの上に、老夫婦が真実の愛に至るまでを丁寧に描いている。2人だけの静謐なひとときに生まれる愛は観る者の心を揺さぶる。不安を煽る演出も相変わらず巧みだ。特に今作では水を効果的に使っており、アンヌが初めて発作を起こすシーンでは流しっぱなしの水道がジョルジュの焦りを表現する。後の彼の悪夢でもこの水のイメージが反復され、床に溜まった水が追いつめられたジョルジュの心情を表現している。大ベテランのジャン=ルイ・トランティニャンとエマニュエル・エヴァは長年連れ添った本物の夫婦のようで、テーマをまさに一言で現したタイトルも観賞後に心に刺さる。

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