映画『あの日のように抱きしめて』あらすじネタバレ結末と感想

あの日のように抱きしめての概要:ニーナ・ホス主演の、ナチスの収容所から生還した妻ネリーと夫ジェニーの裏切りが交錯する愛の物語。「東ベルリンから来た女」のクリスティアン・ペッツオルト監督の2014年ドイツ映画。

あの日のように抱きしめて あらすじネタバレ

あの日のように抱きしめて
映画『あの日のように抱きしめて』のあらすじを紹介します。※ネタバレ含む

あの日のように抱きしめて あらすじ【起・承】

1945年。1台の車がスイス経由でドイツに入国した。アウシュビッツから生還したものの、顔に大けがを負ったネリー・レンツ(ニーナ・ホス)。今は、エスターという名前を名乗っていた。

ネリーと共にレネ(ニーナ・ワンチェンドルフ)が付き添い、ベルリンに戻ったのだった。ネリーは整形手術を受けるが、医師に元の顔に戻して欲しいと頼む。しかし、医師は別の顔にした方が身元がばれないとアドバイスした。

整形後のネリーは果たして、夫が自分の顔を分かるかどうか不安に思う。ネリーは、レネに住居と服を用意してもらい、新しい生活が始まった。レネはシオニズム運動をしており、”パレスチナへは、いつ戻るの?”と訊く。

ネリーはレナと食事をするが、その時にレコードから流れた曲が、「スピーク・ロウ」だった。ネリーの大好きな歌。レネは、”パレスチナで国を作るのよ”と希望を語った。

夜の街角。ネリーは夫ジョニーの姿を探してさまよう。夫の住んでいた家は空襲で焼けたと聞いた。バイオリン弾きの見知らぬ男に夫の行方を尋ねると、アメリカ人の酒場なら会えるかもしれないと言う。

夫の行方を探し続けるネリーにレネは危険だと忠告し、移住先について聞くのだった。”私はユダヤ人じゃない!”と言って反発するネリー。しかし、レネは断言した。

”彼は裏切り者よ!あなたは1944年10月に捕まった。その2日後、彼は釈放されたのよ”それでも夫を探し続け、酒場フェニックスで夫と似た給仕係を見つけた。

あの日のように抱きしめて あらすじ【転・結】

酒場フェニックスを追い出されたネリーの前に、夫ジョニーが現れ、”働きたいんだろ?”と家に誘われます。狭い部屋で、夫は暮らしていました。夫ジョニーから、”僕の妻に君はよく似てる。僕に相続権はないが、妻を演じて欲しい。”と言われます。

夫の愛を確かめたくて、ネリーはその申し出を受けた。それから、2人は仮の夫婦として暮らし始めます。まず、妻の筆跡をまねる練習をしたが、よく似ていると感心したようだ。

次に焼け残った靴や赤のワンピースをネリーに着せるが、よく似合うとほめるだけ。しまいには、女優の髪型をまねるように写真まで用意するのだった。ネリーは怖くなり、”収容所帰りには見えないわ。もし、収容所のことを聞かれたらどう答えればいいの?”と訊く。

夫ジョニーは、妻を着飾りたいだけで、過去には興味がないようだった。レネの家に行き、夫ジョニーについて話す。”彼は私を分からなかった。でも、彼といると自分に戻れるの”と。すると、レネは、ユダヤ人として受けた苦痛を忘れるのかと怒った。

ある日、夫と自転車に乗り、知り合いに会った。すると、一目見てネリーだと気づいてくれた。そして、夫が連行された日のことを話してくれたのだった。その話を聞いても、自分を密告したことを信じようとしないネリー。

ところが、数日ぶりに家に戻るとレネの姿がない。そして、家政婦からレネが拳銃自殺したと聞く。ネリーへ手紙が残されていた。手紙には、レネの悲痛な想いと夫ジョニーがネリーの連行前に離婚していた事実が書かれていた。

同封されていたのは、1944年10月に承認された離婚届だった。ネリーは、ようやく夫ジョニーの裏切りを確信した。夫ジョニーの親戚に会う日。赤いワンピースを着て、駅に降りたった。親戚一同に温かく迎えられるが、気持ちは複雑だった。

夫ジョニーに”スピーク・ロウを弾いて!”と頼む。かつて、2人が共に楽しんだ思い出の歌。夫がピアノを弾き、ネリーはか細く歌い始めた。しかし、その歌声が輝く瞬間。夫は、ようやく気付く。目の前にいる女が自分の妻であることを。

ピアノが止み、ネリーの「スピーク・ロウ」が緩やかに歌い上げられた。そして、静かにネリーの人生もまた幕を下ろすのだった。

あの日のように抱きしめて 評価

  • 点数:80点/100点
  • オススメ度:★★★★★
  • ストーリー:★★★★☆
  • キャスト起用:★★★★☆
  • 映像技術:★★★★☆
  • 演出:★★★★★
  • 設定:★★★★☆

作品概要

  • 公開日:2014年
  • 上映時間:98分
  • ジャンル:ラブストーリー、ヒューマンドラマ、戦争
  • 監督:クリスティアン・ペッツォルト
  • キャスト:ニーナ・ホス、ロナルト・ツェアフェルト、ニーナ・クンツェンドルフ、ミヒャエル・マールテンス etc

あの日のように抱きしめて 批評・レビュー

映画『あの日のように抱きしめて』について、感想と批評・レビューです。※ネタバレ含む

名曲「スピーク・ロウ」が奏でる、愛と裏切りの2重奏

ユダヤ人大虐殺のその後を描いた作品です。夫ジョニーを心の支えにアウシュビッツ収容所を生き抜いた妻ネリーと、妻を裏切り、遺産を手に入れようとする夫。1人は愛を信じ、もう1人は幻の夫婦を演じようとするなんて。

なぜ、夫は妻ネリーに気がつかないのだろう?知り合いでさえ、すぐに分かったのに。こうした夫婦のずれが何度も映し出されてゆくのが観ていてとても辛い。特に夫がネリーに妻の筆跡や歩き方、好む髪型を練習させ、妻へ仕立ててゆくシーン。

ヒッチコックの「めまい」との共通点(死んだはずの女性そっくりに洋服や髪型を飾るという。)があるとも言われていますが、恐怖のレベルが違いすぎます。この映画では、死んだはずの妻を表面的に真似ただけです。

また、夫ジョニーの演技がひどい。ネリーの顔を少しも見ていません。それでも夫を信じ続けるネリーの盲目さに胸がはりさけそうです!戦争の悲惨さは、当たり前の日常や関係性を奪ってしまうところにあるのではないか。

最後に夫がピアノを弾き、妻が「スピーク・ロウ」を歌うシーン。ようやく目の前にいるのが、自分の妻だと分かる夫。しかし、感動や喜びはありません。この映画では、そんな2人の温度差を感じて欲しい。

クリスティアン・ペッツォルト監督×主演ニーナ・ホスの魅力

クリスティアン・ペッツォルト監督は、「東ベルリンから来た女」(12)などドイツの戦後の歴史を深く見つめた作品を発表しています。本作「あの日のように抱きしめて」でもニーナ・ホスと組み、情感と歴史的背景を織り込んだ心理描写を得意としています。

2作共に主人公が自転車に乗るシーンがあります。自転車に乗ることで、”自由”を手にし、どこにでも行ける自分を表現しているのではないか。主演のニーナ・ホスには、独特の存在感があり、物語の前半と後半で表情が変わります。

ユダヤ人であることや夫への愛に翻弄されながらも、彼女は過去しか見つめていない。そんな息苦しさがあります。時代性と独特の閉塞感、そして自由への希望に溢れたペッツォルト作品をお楽しみ下さい。

あの日のように抱きしめて 感想まとめ

この映画を彩る、ジャズの名曲「スピーク・ロウ」の哀しいメロディがいつまでも耳から離れません。邦題は「やさしく歌って」。

♪愛を語る時は小さな声で~というように、2人の愛の終わりを暗示させる内容になっています。情感たっぷりに歌い上げる主人公ネリーの歌声は必聴です!

戦後のドイツを舞台に夫の愛を信じ続ける妻ネリーと妻を裏切り、遺産を得ようと仮の夫婦を演じ続ける夫。すれ違いではなく、悲しい恋。

映画の内容も素晴らしいが、名曲「スピーク・ロウ」を聴くだけで心がいっぱいになります。

現代ドイツを代表するクリスティアン・ペッツォルト監督とニーナ・ホス主演の作品では、前作「東ベルリンから来た女」(12)と本作が公開されています。ぜひご覧下さい。

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