映画『ディストラクション・ベイビーズ』あらすじネタバレ結末と感想

ディストラクション・ベイビーズの概要:日本の新人監督として、現在特に注目を集める真利子哲也監督。前作『NINIFUNI』は、ロカルノ(スイス)やロッテルダム(オランダ)の国際映画祭で特別上映されるなど、弱冠34歳、キャリアは三作目ながら、国内外から熱い支持を受けています。そんな彼がオリジナル脚本を書きおろし、満を持して商業映画に殴り込みをかけたのが今作。暴力に生きる怪物・泰良と、それを取り巻く少年たちを描く、破壊的な群像劇です。

ディストラクション・ベイビーズ あらすじネタバレ

ディストラクション・ベイビーズ
映画『ディストラクション・ベイビーズ』のあらすじを紹介します。※ネタバレ含む

ディストラクション・ベイビーズ あらすじ【起・承】

瀬戸内のとある港町。学生服姿の少年は、帰宅途中、兄・泰良の姿を目にとめます。
声をかけると、いつもの調子で返す泰良を、複数人で殴りかかる人影が見えました。
「なんぞお前ら!」
そう叫び泰良を追い、助けるも、泰良はまたふらふらと、自分を殴った男たちを探しに町へと消えていきます。

兄弟は、親を亡くし二人で生きてきました。しかし泰良はいつからか、喧嘩に明け暮れるようになります。口数も少なく凶暴な彼を、誰しもが遠ざけるようになっていました。
そんなある日、泰良はふらりと姿を消しました。弟は必死に兄の姿を探しますが、町の誰も、泰良の行方不明に気に留めません。

泰良は繁華街で、喧嘩の日々を続けていました。高校生やチンピラ、強そうなやつらに片端から喧嘩を売り、殴り飛ばす日々。買っても負けても、彼は、まるで子供がゲームに夢中になるように喧嘩を続けます。
そんな彼の獣のような姿を目にとめ、魅せられてしまった高校生・裕也。繁華街の大人を複数人相手にしてもたじろがず、むしろ恍惚ともいえる笑顔を浮かべて応戦する泰良の姿に見惚れ、声をかけます。
「オレとおもろいことしょうや」

ディストラクション・ベイビーズ あらすじ【転・結】

泰良の喧嘩の様子を写真に収め、ツイッターに投稿しだした裕也は、その反応に味をしめます。そして、自らも暴力に手を染め始めます。
「前から思いっきり女、殴ってみたかったんよね」
泰良のそれは喧嘩でしたが、裕也のそれは、ほとんど無差別な暴力でした。しかし、泰良はそれもニヤニヤと見つめるばかり。
四国巡業と息巻いて盗んだ車に、偶然同乗していたキャバ嬢・那奈を人質に、無軌道な少年たちの「ノックアウト・ゲーム」は、さらに規模を拡大していきます。

しかし道中、事件は急拡大を見せ、少年たちは指名手配を受けます。そのニュースから、町場に下りられなくなった彼らは、疲労していきます。疲労とネット上でのバッシングから苛立つ裕也は、余裕ある表情の泰良にさらに苛立ちが募ります。農道を走る途中、泰良が殴りとばした相手を、那奈が不注意でひき殺してしまい、さらに彼らの心中は混沌とし始めます。
ついには、人質として裕也に散々いたぶられ続け、ギリギリの心理状態だった那奈が車で事故を起こし、事故後の混乱の中で裕也を殴り殺します。
狂気的な彼女の犯行現場を見て、泰良は満面の笑みを浮かべるのでした。

その後、那奈は被害者として警察から病室で事情聴取を受けますが、泰良は姿を消していました。怖かった、死んでしまった彼はかわいそう、と涙ながらに訴える彼女の声を、世間は「悲劇のヒロイン」として大々的に報道します。

兄の消えた町で、弟は町中から好奇の目で見られる日々を過ごしていました。同級生からも倦厭され、事情聴取の日々に、彼の苛立ちは募ります。

喧嘩祭りの夜、見回りの警官は不審な男の影に声をかけますが、返答はありません。懐中電灯で照らした先に、うめき声を上げる男と、坊主頭の泰良が立っていました。満面の笑みを浮かべる泰良に、警官は怯えながらも拳銃を向けますが、彼は構わず殴り掛かります。
一度の発砲音が響きますが、祭りの喧騒にかき消されていきました。

ディストラクション・ベイビーズ 評価

  • 点数:90点/100点
  • オススメ度:★★☆☆☆
  • ストーリー:★★★★★
  • キャスト起用:★★★★★
  • 映像技術:★★★☆☆
  • 演出:★★★★★
  • 設定:★★★★★

作品概要

  • 公開日:2016年
  • 上映時間:108分
  • ジャンル:ヒューマンドラマ
  • 監督:真利子哲也
  • キャスト:柳楽優弥、菅田将暉、小松菜奈、村上虹郎 etc

ディストラクション・ベイビーズ 批評・レビュー

映画『ディストラクション・ベイビーズ』について、感想と批評・レビューです。※ネタバレ含む

楽しければ、ええけん

極端に台詞の少ない主人公・泰良が繰り返すこのセリフが、この映画の全てと言って過言ではありません。満面の笑顔で喧嘩に明け暮れる泰良の、その理解不能な壮絶なキャラクターこそ、この映画の最大の魅力なのです。
より強い相手を倒す快感を演じきったのは柳楽優弥さん。『誰も知らない』(04/是枝裕和監督)では史上最年少でカンヌ国際映画祭の主演男優賞を獲得しましたが、その後不遇の時代を過ごしてきました。早すぎた春とも揶揄された彼にとって、今作はまさに、「やっぱり柳楽優弥は本物だった」と言わしめる、まさにターニング・ポイントとなる作品でしょう。

織り込まれるユーモア

この手の映画で、笑えることってなかなかありません。暴力とは常に緊張感を強いるものであり、恐怖は楽しくも面白くもありません。それでも、この作品はそこかしこにユーモアが見られます。
とくに、台詞の少ない泰良のトリッキーな行動に逐一ツッコミを入れる裕也の台詞が楽しい。また、彼は映画の中でスマートフォンを肌身離さず持ち歩いてネットスラングを多用したツイートを重ねており、その妙な現実感がユーモラスなものとして映ります。

音の表現

冒頭、タイトルバックで流れる向井秀徳によるジャズ・セッションの爆音が、観客をぐわっと一気に映画の世界に引きずり込みます。基本的には環境音の身でBGMの少ない映画ですが、キーとなるシーンでの向井氏の、ノイジーな音楽がもう、めちゃくちゃに格好良い。語らない泰良の心象風景を映すものとして、向井氏の得意とするフリーセッションの、その喧嘩そのもののような音楽は、ほかに表現が思い当たらないほどピタリとはまります。
さらに、暴力の音にも強くこだわりが見え、観ているだけで全身殴られたように感じる、不快なまでにリアリティのある音は、終始映画の世界から観客を離しません。

ディストラクション・ベイビーズ 感想まとめ

この映画のラスト・シーンに、喧嘩神輿が登場します。神輿をぶつけ合い、競い合う伝統行事で、泰良の生まれた町の伝統行事です。このお祭りには町の男たちは勇んで繰り出し、神事を建前に、本気でぶつかり合うのだそうです。
儀式化し、飼いならした暴力として、怪物・泰良と対に映されるこの祭り。その祭りをバックに、飼いならせない剥き出しの狂気としての泰良の立ち姿は、「タクシードライバー」のトラヴィスを彷彿とさせる、目が離せないダーク・ヒーローそのものです。

Amazon 映画『ディストラクション・ベイビーズ』の商品を見てみる