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映画『シャニダールの花』のネタバレあらすじ結末と感想

映画『シャニダールの花』の概要:人の体から芽吹き花を咲かせる不思議な植物、シャニダール。その花の魅力にとり憑かれた研究員達はやがて恋に落ち、花の魔力に取り込まれて行く。淡々と進むストーリーの中で、怪しく咲き誇る花の映像は美しく鮮烈。

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映画『シャニダールの花』の作品情報

シャニダールの花

製作年:2012年
上映時間:105分
ジャンル:ラブストーリー、ファンタジー
監督:石井岳龍
キャスト:綾野剛、黒木華、刈谷友衣子、山下リオ etc

映画『シャニダールの花』の登場人物(キャスト)

大瀧賢治(綾野剛)
シャニダールという花の研究所へ2年前に本社から派遣された男性。研究熱心。不器用で優しい性格。まっすぐで自分の信じるものしか受け入れられないという難点がある。
美月響子(黒木華)
シャニダール研究所へ本社から派遣された女性。心理カウンセラー。花を宿す女性と接していくうちに、自らも花を宿すようになる。どこか神秘的で柔軟な考えの持ち主。
立花ハルカ(刈谷友衣子)
花を宿す若い女性で響子の初担当。絵画の才能があり極度の人見知り。
菊島未来(山下リオ)
花を宿す女性の一人で、プライドが高く孤立している。ハルカと少しずつ打ち解けて親友になる。
吉崎和彦(古舘寛治)
シャニダール研究所、所長。シャニダールの花についての第一人者。花についての重大な秘密を秘匿している。
田村ユリエ(伊藤歩)
花を宿す女性の一人。大瀧に好意を寄せており、バリ料理が得意で彼によくご馳走している。花の採取手術で死亡する。

映画『シャニダールの花』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)

映画『シャニダールの花』のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまでわかりやすく簡単に解説しています。この先、ネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『シャニダールの花』のあらすじ【起】

シャニダール。それはごく限られた女性の体にだけ咲く花。主に胸の辺りに根を張って花を咲かせるが、花の状態は芽の段階からその女性の精神状態が左右する為、研究所では快適で安静平穏な暮らしを提供している。花を宿すと一般的に妄想や幻覚といった感覚異常が発生すると言われていた。

大瀧賢治はシャニダールの研究所へ2年前に本社から派遣されてきた。以来、女性の胸に咲く花の経過を見守り研究している。
そんなある日、本社から心理カウンセラーとして美月響子が派遣されてくる。彼女は花を宿す女性達の不安を取り除き、胸に咲く花を無事に育てる事を役目としていた。

花を宿すとして新たに発見された、極度の人見知りである立花ハルカ、プライドが高く馴染もうとしない菊島未来、バリ料理が得意な田村ユリエ。響子は彼女らの担当となりカウンセリングを始める。

田村ユリエは大瀧へ好意を寄せていた。得意の料理を彼へと振る舞い、それを断れば花の状態が悪くなり、経過が良くなれば今度は会いに来ないと状態を悪くする。
菊島未来はプライドのせいで周囲との間に壁を作り、そもそも花の状態もあまり良くなく、研究所から退去を言い渡されていた。
唯一、ハルカだけが順調に経過しもうじき花が咲こうとしている。

彼女らの話を聞いて行くうちに響子は、シャニダールとは一体何なのかと思い始める。花の事をもっと知らなければならない。必死になればなるほど焦りは募る。そんな姿を間近で見つめて来た大瀧は、彼女へ好意を持ちやがて二人は恋人関係へと発展して行く。

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映画『シャニダールの花』のあらすじ【承】

田村ユリエの花が満開を迎えた。花を採取する為に切除手術を受けなければならなかった。だが彼女は切りたくないと話す。花を咲かせ続ければ有害物質が体内に回り死へ至ると言われていた。
花を千切ろうとするユリエを説得したのは響子だった。手術当日、ユリエは笑顔でオペ室へ向かった。

全身麻酔をかけられたユリエの胸からレーザーで花を切り取る。大事に保管ボックスへ収納した次の瞬間、ユリエの心拍が止まる。必死の蘇生処置も意味を成さない。
花とその宿主は一心同体。切り離されれば命に関わるのだ。

同じ時、未来は欝々として室内を歩いていた。仲良くなったハルカの花を見せてもらう。彼女の花は美しく咲き誇っていた。対して自分の花はもう咲かない。このまま枯れてしまうのだ。どこか嫉妬めいた気持ちになり、未来は光合成を行う為に並んで横たわっている宿主達の元へ向かった。

未来はおもむろに一人の女性へと近づき、胸に咲く花を千切り取った。続けて2人、3人と千切り捨てる。辺りは悲鳴で騒然とし、走り寄って来たハルカに行為を止められる。
そんなに欲しいなら私のをあげるから。ハルカはそう叫び、自らの花を千切って未来へと渡そうとした。しかし驚愕して目を見開く未来の前で、ハルカは突然意識を失い昏倒する。
室内は大騒ぎとなり、その場に居合わせた響子はパニック症状を引き起こして意識を失う。

映画『シャニダールの花』のあらすじ【転】

意識を取り戻した響子。傍には大瀧がいる。騒ぎの後の事を聞くと、彼女は大瀧の手を握り自分の秘密を見せる。響子の胸にはシャニダールの芽が出来ていた。

蘇生処置により息を吹き返したハルカが退去する日、響子は彼女を訪ねシャニダールの由来を資料と共に語る。
ネアンデルタール人が死者へと手向けた花をシャニダールと呼び、人間の心の発生の瞬間であった事を話す。そして人が生んだ初めての花である事から、その花をシャニダールと名付けたのだと伝えた。

大瀧は花を切除する際、肉体に多大な負荷がかかるのではないかと所長に問い掛けるが、所長は肯定せず、研究にリスクは付き物だと言い逃れする。ユリエの死は花の手術と関係するのではないかと続けるが、所長は尚もそのような事実はないと断言した。

ユリエの葬儀の後、大瀧はもうシャニダールは終わりだと言い、響子と二人でやり直さないかと話すが、彼女は胸の花を咲かせたいと言う。そして大瀧に花を咲かせる手伝いをして欲しいと乞う。
この花は何かの始まり。だから一緒に育てて欲しいと。だが大瀧は納得せず、響子の言動を感覚異常なのだと怒鳴る。しかし彼女は花を咲かせ続ければ本当の事が分かるはずだと言う。
二人の意見は対立し、結局答えが出せないまま休む事になった。

拳を握り締めテーブルへ掛ける大瀧に、響子が静かに歩み寄る。握り締めた拳をそっと開くと、そこにはまだ小さな花の芽があった。なんで。抑揚のない声音で問う響子に大瀧は、芽を摘んだからもう大丈夫だ。心配ないと抱き締める。だが彼女は、自分の信じられるものしか信じられないのね。そう言い残して大瀧の元を去った。

美月響子はシャニダールを退社。そのまま姿を消した。
その後すぐにシャニダールの閉鎖が決まり、大瀧も別の職を探す事になる。

映画『シャニダールの花』の結末・ラスト(ネタバレ)

ある日、大学の植物研究の職へ就いた大瀧に差出名のない種が送られて来た。同僚へ聞くと以前から品種改良した種を送りつけてくる人がいるから、きっとその人だろうという話になり種は窓から捨てられる。
だが数日後、大瀧はシャニダールの芽が地面に出ているのを発見。彼はその芽を持ってハルカの自宅を訪ねた。事情を知っているらしいハルカと移動しつつ事情を聞く。

響子の花は摘まれたあと再生し、凄く強い特別な花が咲いたという。それを受粉させて種が出来たら大瀧に送って欲しい。それに気づいたら大瀧はきっと来てくれる。そう響子へ言われたと言う。

病院のような施設の一室に響子がいた。傍らには未来が座っていた。
だが響子は眠ったきり目を覚まさない。冬眠状態で脳死ではないのだと言う。大瀧は側へ跪き涙を零す。そして眠りにつく前、大瀧へ渡して欲しいと言われた絵を見せられる。
満開のシャニダールの絵だ。空いた空間には彼女からのメッセージが書かれていた。

響子はどうしても花を咲かせたかった。花が成長するにつれ、彼女は自分が花だったのだと思うようになる。身体も心も軽くなって周りに溶けて漂い、消えて行く感覚。花が満開になり、これが本当の私という喜びに満たされていた。気にする事は何もない。響子は花に戻る。とても静かでとても幸せだった。

報道によってついに世間は、シャニダールの花の危険性に気付き始めた。
大瀧は研究所、元所長の元へ乗り込む。花を咲かせ続け昏睡状態になったらどうなるのか、覚醒させる事が出来るかを聞く為だった。

所長は取り付く島もなく自分で考えろと突き放すが、一つ話を聞かせてくれた。
ネアンデルタール人が死者に花を捧げる仮説は嘘で、獰猛な人種だったと話す。なぜネアンデルタール人が滅亡したか。それは花に滅ぼされたからだと言う。彼らは花に寄生されて滅んだのだ。海外の研究者が発見した遺跡では、集落一面が花に寄生されたネアンデルタール人の化石で埋め尽くされていたのだそうだ。

大瀧はその話を聞き、街中のありとあらゆる場所を探しては花を集め始めた。
見れば花は至る所に咲いており、採取を続けては響子の部屋で育て始める。そうして彼は響子が残した言葉を思い出す。大瀧は彼女の覚醒を諦められなかった。

花は巷にも増え続けた。
人間は生命進化の最終形。花に戻れるはずがない。なぜ、なぜだ。大瀧は自身へ問う。花は滅ぼす悪魔か、どこかへ導く天使か。答えを探し続ける大瀧。ふと、眩い太陽を見上げた彼は。

広大な草原地に一本の道。気付けば大瀧は一人、道の真ん中で立ち尽くしていた。思うままに道を進み草原地が切れた場所に、シャニダールの花が二輪咲いていた。
赤い色味の多い雌花と白色の多い雄花だ。何だか怖くなって振り向くと、そこには笑みを称えた響子の姿がある。目が覚めたのかと問うと響子はこう言う。
あなたが今、目覚めたの。
彼女について行き二輪の花の元へ向かう。赤い花が響子で白い花が大瀧だと言った。
見渡せば無数のシャニダールが広がっている。僕は、僕達はみんな花に戻る。

映画『シャニダールの花』の感想・評価・レビュー

イラク北部のクルディスタン地域に実際にある考古遺跡、シャニダール洞窟にて遺体に花を手向けたと解釈できる遺物が発見されたことから、着想を得て制作された恋愛ファンタジー映画。人の胸に咲く花の研究を行う恋人同士の研究者たちが辿る、行く末を描いている。人に根を張る植物を題材にした映画は他にもあるが、今作は淡々としていながらも色彩が美しく、一種引き込まれる独特な雰囲気が印象的。ラストシーンへ至る経緯でぐっと謎感を深め、いわゆる精神世界への突入を示唆しているようでもある。初見では全く意味が分からないが、何度か観るうちに奥に潜む何かを知ることができるだろうと思う。そんな奥深い作品。(女性 40代)


1度見ただけでは、この作品が伝えたかった事が何なのか100%理解することはできないでしょう。そもそも、胸に花が咲くという設定が私は少し苦手で、いくら綺麗な花が咲いていても受け入れられませんでした。しかし、花を宿した女性を見ていると、シャニダールに特別な何かを感じていて、それはまるで「我が子」を想うような表情でした。
最後まで不思議な感覚のままストーリーが進み、はっきり答えが出ないまま終わってしまったのでより深くこの作品のことを知りたくなりました。(女性 30代)

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