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映画『後妻業の女』のネタバレあらすじ結末と感想

映画『後妻業の女』の概要:直木賞作家、黒川博行の小説『後妻業』を、鶴橋康夫監督が映画化した作品。大阪を中心とした関西圏を舞台に、後妻業のプロのやり口とそれに翻弄される人々の人間模様を描く。後妻業の女を演じる大竹しのぶを、豊川悦二、永瀬正敏、笑福亭鶴瓶、尾野真千子といった豪華キャスト陣が盛り上げている。

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映画『後妻業の女』の作品情報

後妻業の女

製作年:2016年
上映時間:128分
ジャンル:ヒューマンドラマ、コメディ
監督:鶴橋康夫
キャスト:大竹しのぶ、豊川悦司、尾野真千子、長谷川京子 etc

映画『後妻業の女』の登場人物(キャスト)

武内小夜子(大竹しのぶ)
後妻業の女。婚活パーティーで資産のある高齢男性を見つけると、言葉巧みに近づき、妻の座に収まる。その後、できるだけ早く夫を死なせて遺産を丸ごとせしめてしまう。男を騙すことに関しては天才的な才能がある。罪悪感も一切持たない。
柏木亨(豊川悦二)
結婚相談所の経営者で小夜子を裏で操っている。良さそうな客を小夜子に誘惑させ、男の遺産を山分けする。相当な女好きで、若い愛人を欠かさないが、小夜子にだけは手を出さない。ヤクザの組員であり、必要な時は殺しも厭わない。
中瀬耕造(津川雅彦)
小夜子の8番目の夫。元女子短大教授。先妻に先立たれ、色ボケ気味になっていた。80歳の時に婚活パーティーで小夜子と知り合い、すぐに結婚を決める。
中瀬朋美(尾野真千子)
中瀬の次女。最初から小夜子に不信感を持っており、父親の遺産相続をめぐり、小夜子と壮絶なバトルを繰り広げる。自分の建築事務所を持つキャリアウーマンで、気が強い。
西木尚子(長谷川京子)
中瀬の長女。朋美とは正反対のおっとりした性格で、父親と小夜子の結婚を祝福していた。
三好繭美(水川あさみ)
柏木の愛人。北新地のホステスで、男は自分の財布だと思っている。新人ホステスに柏木を横取りされる。
岸上博司(風間俊介)
小夜子の息子。30歳になるが全く自立できず、刑務所に入っていた。自分を捨てた母親のことを恨んでいる。柏木の舎弟。
本多芳則(永瀬正敏)
興信所の私立探偵。大阪府警の元刑事で、高い調査能力を持っている。懇意にしている弁護士の守屋が朋美の同級生だった縁で、小夜子の調査を依頼される。
舟山喜春(笑福亭鶴瓶)
自称不動産王の資産家で、柏木の結婚相談所で小夜子と知り合う。金持ちの紳士を気取っているが、実は小夜子と同じ穴のムジナの詐欺師。
武内宗治郎(伊武雅人)
小夜子の7番目の夫。近畿テレビの元役員で、かなりの資産家。小夜子と結婚したことは、実の息子夫婦にも話していなかった。

映画『後妻業の女』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)

映画『後妻業の女』のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまでわかりやすく簡単に解説しています。この先、ネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『後妻業の女』のあらすじ【起】

2000年夏。当時48歳だった武内小夜子は、柏木亨が立ち上げた結婚相談所の婚活パーティーに参加し、5番目の夫となる元木を捕まえる。元木は害虫駆除会社社長で、心臓に持病があった。後妻業を生業とする小夜子にとって、できるだけ早く死にそうな高齢の資産家は格好の獲物となる。小夜子を裏で操り、せしめた遺産を山分けしている柏木は、小夜子の悪女ぶりに感心する。小夜子は、ヤクザの柏木でも恐ろしくなるほど、罪悪感を持たない女だった。

2006年秋。大阪を周遊する遊覧船での婚活パーティーで、小夜子は6番目の夫となる一級建築士の津村を捕まえる。小夜子は津村の他に、近畿テレビの元役員だという武内宗治郎にも目をつけていた。小夜子はうまく二股をかけ、津村が腹上死した後、武内を7番目の夫にする。

2013年初夏。婚活パーティーのダンスタイムで、小夜子は華麗なツイストを披露し、元女子短大教授の中瀬耕造を誘惑する。80歳になる中瀬は、色っぽい小夜子に夢中になる。

2015年晩夏。63歳になった小夜子は、8番目の夫となった中瀬がくたばるのを待っていた。小夜子によって持病の薬を胃薬にすり替えられていた中瀬は、脳梗塞で倒れ、意識不明の重体となる。小夜子は中瀬の状態を、常に柏木に報告していた。

病院へ駆けつけた中瀬の娘の尚子と朋美は、いきなり小夜子から葬式費用の話を切り出され、唖然とする。小夜子は、中瀬の葬式には400万円相当のものを考えているので、半分の200万円は姉妹で用意するよう迫る。父親に小夜子を紹介された時から、彼女に対して不信感を持っていた朋美は、自分の目が確かだったことを悟る。

中瀬は重要な通帳や株券を暗証番号付きの金庫にしまっており、小夜子にも暗証番号を教えていなかった。小夜子は柏木に相談して優秀な鍵師を手配してもらい、金庫を開けさせる。金庫の中には、4000万円の貯金通帳と2000万円相当の株券があった。半分を柏木に持っていかれるのは不服だったが、柏木は長年の共犯者なので、小夜子も文句は言えない。現金が手に入ったら、柏木は愛人の繭美に資金援助をしてやるつもりだった。

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映画『後妻業の女』のあらすじ【承】

金庫を開けた翌日。小夜子と柏木は銀行へ行き、中瀬名義の通帳を解約しようとする。本人の意思確認がないと無理だと言われるが、小夜子は涙ながらの名演技を見せ、支店長と職員を中瀬の病室まで連れていく。支店長はすっかり小夜子のペースに嵌り、通帳の解約を許可する。柏木は、小夜子のずる賢さにホトホト感心してしまう。

きっちり半分の現金をいただいた柏木は、偽物専門の中古品販売店で用意しておいたブランド物のバッグを小夜子にプレゼントする。小夜子は有頂天になり、柏木が持ってきたブランド物の時計を80万円で購入する。柏木が小夜子に売りつけた時計は、昨日柏木が4万円で購入した真っ赤な偽物だった。柏木も、小夜子の上手をいく悪党だった。

現金を手にした柏木と小夜子は、中瀬に死んでもらうことにする。柏木はすでに、小夜子の次の獲物を見つけていた。小夜子は点滴に空気を注射し、中瀬の息の根を止める。これは明らかな殺人だったが、小夜子に罪悪感はなかった。

中瀬の葬式で、小夜子はきっちり喪主の席に座り、彼を愛していたようなパフォーマンスをする。葬式後、尚子が金庫の話をすると、小夜子は「遺産は全部私が相続します」と断言し、姉妹に中瀬の遺言公正証書を突きつける。その書類では、中瀬が娘たちに残すと言っていた羽曳野の自宅まで小夜子が相続することになっていた。しかも、小夜子の名字は武内のままで、中瀬の籍に入っていなかったことまで発覚する。気の強い朋美は、すごい剣幕で「しかるべき措置を取ります!」と小夜子に宣戦布告する。小夜子は全く怯まず、それを受けて立つ。

朋美は、高校時代の同級生で現在は弁護士をしている守屋の法律事務所を訪ね、小夜子の一件を相談する。やり手の守屋は、すぐに小夜子がプロの後妻業の女であることを見抜く。そして、守屋が信用する私立探偵の本多を朋美に紹介し、詳しい調査を依頼する。

本多が小夜子の調査を開始した頃、小夜子と柏木は次のターゲットを不動産王の舟山に決め、彼を落とすために動き始めていた。舟山は布袋顔のいかにも金持ちそうな男で、小夜子の胸はときめく。舟山の方も、小夜子を気に入ったようだった。小夜子と舟山は意気投合し、すぐに肉体関係を持つ。舟山は男性としても絶倫で、小夜子を喜ばせる。

映画『後妻業の女』のあらすじ【転】

本多は小夜子の7番目の夫だった武内の自宅を訪ねる。応対してくれた武内の長男の嫁は、小夜子のことに触れられたくないようだった。しかし、小夜子が8番目の夫の遺族と相続のことで揉めていると知ると、本多を家に入れてくれる。

武内は同窓会で徳島県の大歩危小歩危を訪れた際、車ごと崖から転落するという不慮の事故で死亡していた。訃報を聞いて親族が集まっている所へ、突然小夜子が現れ、自分が妻なので喪主を務めると言い出す。実の息子も含めた親族一同は、武内が小夜子と再婚していたことさえ知らなかったので、小夜子を追い返そうとする。しかし、小夜子は武内の遺言公正証書を突きつけ、自分が正式な妻であることを証明し、武内の遺産を全て相続してしまう。小夜子が現在住んでいる南堀江のマンションも、元は武内名義のものだった。武内の息子夫婦が住んでいる二世帯住宅は、武内名義の土地に息子の名義で建物を建てていた。小夜子はこの土地の所有権を保持するため、今でも武内の籍に入っていたのだ。本多は武内の遺言公正証書を見せてもらい、公正証書の証人になっている柏木と瀬川英子という女に目をつける。

本多は柏木のオフィスを訪ね、自分が後妻業の真相に近づいていることを匂わせておく。本多の調査能力の鋭さに、さすがの柏木も焦りを隠せなかった。

朋美は父親の葬式が120万円程度のものだったことを知り、小夜子への怒りを爆発させる。姉妹は小夜子に請求され、200万円の葬式費用を渡していた。腹の虫が収まらない朋美は、自分も小夜子の調査に加わりたいと守屋に申し出る。守屋は朋美を落ち着かせ、これまで調べたことを説明する。

この15年間で、小夜子は5人も夫を亡くしていた。しかも、5番目の元木と7番目の武内は、同じ徳島で事故死しており、他の3人の死因にも不審な点が多い。守屋と本多は、小夜子が柏木と結託して、5人の夫を殺害したのではないかと考えていた。

本多は英子とも接触し、いよいよ小夜子本人に揺さぶりをかけてみることにする。朋美は小夜子を呼び出し、本多と会わせる。朋美は、遺産相続の件で民事訴訟を起こすつもりで、その時は記者会見を行うと小夜子に宣言する。小夜子は強気に出ていたが、本多が事実を調べ上げていることを知ると、2人に金での取引を持ちかける。朋美側の要求は、来週の土曜日までに正当な相続分と慰謝料を上乗せした5000万円を用意することだった。

小夜子はすぐに柏木へ電話して、今日の一件を報告する。同じ頃、本多は繭美と会い、武内が事故死した2年前の9月に、柏木が徳島へ行ったという話を聞き出していた。繭美は、新人ホステスに寝返った柏木のことを恨んでいた。

2年前の9月8日。小夜子と共に徳島を訪れていた武内は、夜の山道を走行中に柏木が運転する後続車に煽られ、車を停車させる。柏木は、武内の首を締めて気絶させ、車を崖下に落として殺害した。小夜子も、その一部始終を見ていた。

映画『後妻業の女』の結末・ラスト(ネタバレ)

柏木は、記者会見はまずいと考える。柏木は、警察が世論で動くということを心得ていたので、金で解決するべきだと小夜子に伝える。小夜子の方は、どうにかなるだろうと思っていた。

小夜子は朋美を大衆的な焼肉屋に呼び出し、羽曳野の自宅は朋美たちに譲るので、上乗せの2000万円を半額に負けて欲しいと頼む。朋美が反論したので2人は口論となり、最後は取っ組み合いの大喧嘩になってしまう。そのせいで、店内は大騒ぎになる。

一方、柏木の行動を調べ尽くした本多は、その調査メモを朋美たちに渡す前に、柏木と交渉する。本多は柏木を脅し、調査メモを3000万円で買い取ることを約束させる。

柏木は小夜子を呼び出し、朋美たちに5000万円払うよう指示を出す。小夜子には羽曳野の家を処分して3000万円作らせ、柏木は残りの2000万円を用意するつもりだった。本多のことは、小夜子の息子の博司を使い、始末することに決めていた。さらに柏木は、舟山はプロの竿師(性的に女性を喜ばせ、金をむしり取る詐欺師)なので、撤収するよう小夜子に忠告する。

小夜子は舟山に本気で惚れており、柏木の忠告を無視して、交際を続ける。しかし、柏木の言ったことは事実で、舟山は小夜子に3000万円の金を無心してくる。小夜子が金を出さないとわかると、優しかった舟山は態度を豹変させ、小夜子を殴り飛ばす。小夜子は傷つくが、涙は出なかった。

何をやらせても無能な博司は、本多殺しに失敗し、金の入ったカバンだけ奪われる。柏木は仕方なく博司の銃を海に捨て、逃亡資金を渡し、沖縄へ飛ぶよう指示を出す。殺しには失敗したが、銃で本多の足を撃った博司は、見苦しいほど動揺していた。

太ももに2発の銃弾を食らった本多は、闇医者の営む動物病院で傷の手当てをしてもらい、柏木のマンションに乗り込む。柏木の用意した3000万円は、表面の札以外は全て偽物で、現金は60万円しか入っていなかった。本多は柏木を痛めつけてやるつもりだったが、最終的には柏木の悪党としてのセンスを認める。2人とも、小夜子という化け物に振り回され、すっかり疲弊していた。

博司は外国への逃亡資金を得るため、小夜子のマンションに侵入し、金目の物を物色する。小夜子は柏木に連絡し、博司を追い出そうとする。小心者の博司は正気を失い、パニック状態で小夜子を羽交い締めにする。柏木が到着した時には、動かなくなった小夜子の側で、「おかん殺してしもうた!」と博司が騒いでいた。

殺してしまったものは仕方がないので、柏木は博司と共に、小夜子の死体を埋めに行くことにする。苦労して小夜子をトランクに押し込み、車まで運んでいたところ、巡回中の警官に職務質問される。トランクの中を見せるよう言われ、柏木は観念して逃げようとするが、警官に捕まってしまう。その時、トランクが勝手に動き出し、横倒しになる。警官が恐る恐るトランクを開けると、息を吹き返した小夜子がムックリと起き上がる。小夜子は唖然とする警官に向かって、「お巡りさん、私、被害者ですわ」と訴える。柏木は、小夜子のたくましさに脱力する。

その後、羽曳野の家の仏壇の引き出しから、中瀬直筆の正式な遺言状が出てきて、その遺言に従い、朋美たちは羽曳野の家を譲り受ける。中瀬は小夜子のことについて「最後の最後までおもろかった」と記していた。それを読んで、朋美は何となくスッキリする。小夜子と柏木の犯罪は決して許されることではないが、寂しい高齢男性にひと時の夢を与えていることも確かなのだろう。

映画『後妻業の女』の感想・評価・レビュー

まず大竹しのぶの演技がすごくて、しおらしくお淑やかなお見合い風景から、ガラリと変わる大阪のおばちゃんの姿に笑う。大阪出身の豊川悦司もさすがのヤカラっぷりで、二人の掛け合いが夫婦漫才のようだった。

実際にあったらとんでもない事件でシリアスな問題を扱っているのに、うまくコメディーに仕立て上げられているので気楽に観られる。どこか伊丹十三監督のような趣も感じた。ちょっと法律のことも知れて、得した気分にもなる映画だった。(女性 40代)


主演の大竹しのぶの演技力が光る映画である。
その他の出演俳優も素晴らしかった。しかし中でも大竹しのぶの演技力は群を抜いていた。彼女以外ではこの役は考えられないほど、ハマっていたように感じる。
悪人の話の割には明るく書かれた脚本も面白かった。ここまで人間くさい話であるのに、この湿り気のなさには脱帽する。ドタバタな活劇だったが、しっかりまとまっているという点もこの映画の魅力的な部分である。(男性 20代)


直木賞作家である黒川博行の原作の映画化。遺産狙いで金持ちの男に取り入る「後妻業」を生業とする女の物語だ。
とにもかくにも、大竹しのぶの怪演が光る。自己中心的でハチャメチャな性格の小夜子を見事に演じきり、ぶっ飛んだキャラクターで映画全体を引っ張っているのだ。さらに小夜子とグルである結婚相談所オーナー・柏木を豊川悦司が演じ、一癖も二癖もある怪しい男が小夜子に劣らず輝きを放っている。
人間の欲をこれでもかと描いた大作である。(男性 40代)


大竹しのぶさんが普段のおっとりとした雰囲気と全く異なり、なかなかの悪女っぷりに驚いた。演技がとにかく素晴らしい。男性は武内小夜子と楽しいひと時を過ごしたのかもしれないが、その代償がかなり大きくて、残された家族が可哀そうだった。
小夜子は恐ろしい女性だなと感じるのと同時に、言葉の上手さに感心する。自分だったら途中で言葉が詰まり、罪悪感に駆られてしまうと思う。人を騙すことに対して何とも思っていない様子に、逆に清々しさすら感じた。(女性 30代)


私の身近にもいる、お金持ちで女が大好きなおじいちゃん。この作品を見ていると小夜子のやっている事は決して許されることではありませんが、先の短いおじいちゃんたちからしたら「楽しいひととき」を与えてくれたいい女だったのかも知れません。
何歳になっても男と女、そして金の力はすごいものですよね。小夜子自身は、お金や男に執着している部分もあったのかもしれませんが、後妻業という生き方を楽しんでいるような気がして、物凄くスッキリした気持ちになりました。(女性 30代)

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