映画『逆噴射家族』あらすじネタバレ結末と感想

逆噴射家族の概要:愛する家族のため念願のマイホームを手にした主人公が家族を想うあまり破滅していくシュールなホームドラマ。漫画家の小林よしのりが原案と脚本を手がけ石井岳龍が監督を務めた。1984年公開の日本映画。

逆噴射家族 あらすじネタバレ

逆噴射家族
映画『逆噴射家族』のあらすじを紹介します。※ネタバレ含む

逆噴射家族 あらすじ【起・承】

サラリーマンの小林勝国(小林克也)は念願のマイホームを購入した。勝国と専業主婦の妻・冴子(倍賞美津子)、浪人生の長男・正樹(有薗芳記)、女優を目指す長女・エリカ(工藤夕貴)の4人は喜んで新居に引っ越してくる。

一見平凡な家庭に見える小林家だが、勝国は妻も子供2人も心を病んでいると思い込んでおり、彼が無理をして新居を購入したのは3人の病気を治したいという想いからだった。

勝国は家族のために長距離通勤を物ともせず必死でがんばる。しかし、家族はそんな勝国の苦労も知らず、好き勝手ばかりしていた。

ある日、九州から勝国の父・寿国(植木等)が上京してくる。数日滞在して帰るのかと思っていたら、寿国は勝国の兄家族から追い出されここに居座るつもりでいた。勝国が困惑しているうちに、寿国の引っ越し荷物まで送られてくる。

寿国の同居に家族から不満が噴出し始め、追いつめられた勝国はリビングの下に穴を掘って地下室を作り、そこを寿国の部屋にすると言い出す。一風変わった寿国はその考えを面白がり、2人は床をはがし本気で穴を掘り始める。

冴子も正樹もエリカも個性的ではあるが心を病んでいるわけではなかった。しかし、生真面目な勝国にはそれがわからず、3人の病気が悪化していると思い込んだ勝国はドリルまで買ってきて会社にも行かず穴掘りに没頭する。

穴を掘り進めていくうちにシロアリの巣を発見した勝国は恐怖におののき、穴の中にガソリンをまいて火をつけ一家は大騒ぎになる。

逆噴射家族 あらすじ【転・結】

家族のため会社に出社したもののシロアリが気になって仕方ない勝国は、シロアリ駆除の薬剤を買ってすぐに帰宅し、また取り憑かれたようにドリルで穴を掘る。そしてついには水道管を破壊してしまい、家中が水浸しになる。冴子は離婚すると騒ぎ出し、エリカは自殺未遂、正樹は怒りのあまり卒倒し倒れてしまう。

その晩、完全に追いつめられた勝国は、一家心中をしようと決意する。家中の出入り口を塞ぎ、家族を毒殺しようとするがその目論見は失敗に終わる。勝国は家族に“お前たちは病気だ、みんな死ぬしかない”と力説する。しかし反対に寿国から“病気なのはお前だ!”と責められる。それを機に家族は互いを罵倒し合い、家の中は戦争状態に陥る。

それぞれが武装して自分の陣地に立てこもり、それを勝国が襲っていくが、最後には全員での大乱闘となる。争い合う家族の姿を見た勝国はカーテンに火をつけ、家ごと燃やそうとする。そこにガス漏れが発生し爆発が起こり、一家は爆風で吹き飛ばされる。

それでも全員命は無事で、朝を迎える。冴子はぐちゃぐちゃになったリビングに朝ごはんを用意し、家族は食卓を囲む。勝国は、いつものように食事をする家族を見て突然家を破壊し始める。必死で止める家族に勝国は落ち着いた様子で“私たちは本当の新しい生活をするために、この家はすべて壊し真っ白なゼロから出発するんだ”と言う。勝国の言葉に賛同したエリカ以外の3人は一緒に家を壊し始め、念願のマイホームはついに崩れ落ちる。

後日、ホームレスとなった小林家は青空の下でのびのびと暮らしており、勝国も元気に会社へ出社していく。

逆噴射家族 評価

  • 点数:80点/100点
  • オススメ度:★★★★☆
  • ストーリー:★★★★☆
  • キャスト起用:★★★★★
  • 映像技術:★★★☆☆
  • 演出:★★★★★
  • 設定:★★★☆☆

作品概要

  • 公開日:1984年
  • 上映時間:106分
  • ジャンル:コメディ、ヒューマンドラマ
  • 監督:石井聰亙
  • キャスト:小林克也、倍賞美津子、植木等、工藤夕貴 etc

逆噴射家族 批評・レビュー

映画『逆噴射家族』について、感想と批評・レビューです。※ネタバレ含む

居場所のないお父さんの悲劇

主人公の小林勝国は自分のことよりいつも家族の幸せを優先する心優しいマイホームパパだ。家族のことを愛しすぎ、過剰に心配しすぎたために自己を崩壊させていく。

勝国は家族が精神の病気を患っていると思い込んでいるが実際におかしくなっているのは勝国の方で、しかしそのことを自覚できない。なぜなら彼は自分について考える習慣がない。というより、彼には自分と向き合う時間も場所もないのだ。

物語後半、戦争状態になった家族はそれぞれの陣地に逃げ込む。冴子は台所、寿国は和室、
子供たちはそれぞれの子供部屋。しかし勝国には自分の陣地がない。そういえば勝国は最初からいつも家の中をウロウロして家族の様子を伺ってばかりいた。結婚してからずっとそんな風に過ごしてきて、彼は徐々に追いつめられていったのだろう。

妻も子供たちもそれぞれの世界を持ち、自分の世界で生き始める。ただ一人、自分の世界を持てない勝国は“みんなおかしくなっている”と感じてしまう。そんなお父さんが、自己を崩壊させないためにできることは家族に対して無関心になるか、家に帰らないか。

“話を聞いてくれない!”“毎晩遅くまで飲んで帰る!”とお父さんに文句ばっかり言っている妻や子供は胸に手を当ててよく考えてみるといい。この家にお父さんの居場所はあるだろうか?と。

むちゃくちゃな展開だけど面白い

九州から出てきた寿国の部屋を確保するためにリビングの床を引っぺがし、穴を掘り始める話なんて、はっきり言ってあまりにナンセンスなのだがこれが結構面白い。

クライマックスの家庭内大戦争では、ホラー映画のようにドリルで娘のエリカを襲う勝国や、八つ墓村の山崎努を思わせる格好の正樹、と思えば祖父の寿国が軍服姿で日本刀を振り回し、孫を縄で縛り上げているのだからもうハチャメチャなギャグ漫画の世界だ。

それでも本気でドキドキする人もいるだろうし、笑える人にはかなり笑える。とにかく、先の展開がさっぱり読めないので思わず見入ってしまうことは間違いない。ずっと家の中で繰り広げられるこのドタバタ劇は、むちゃくちゃだけど見応えがある

逆噴射家族 感想まとめ

家族を描いた映画は数多いが、ここまで個性的な作品は珍しい。何しろ家族の崩壊どころか家ごと破壊してしまうのだからある意味痛快だ。

5人の登場人物のキャラクターもそれぞれの個性がはっきりしていて、キャスティングも良かった。主人公の勝国を演じた小林克也はこの生真面目な父親役によくはまっており、本職がDJなだけにやっぱり声がいい。弾けた祖父の寿国を演じた植木等は、昭和の喜劇を支えてきた無責任男の貫禄を見せてくれた。個人的に一番好きだったのは長男の正樹を演じた有薗芳記。まだ無名だったと思われる彼がこの役に抜擢された経緯は知らないが、彼のキャラは正樹役にぴったりでかなり印象に残った。

予想不能な展開もシュールなコメディセンスも楽しめた本作。ラストも崩壊から再生への一歩がサラッと描かれており、独特の余韻が残る。この映画は面白い!

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