『灰とダイヤモンド』あらすじ&ネタバレ考察・ストーリー解説

同名小説をポーランド映画の巨匠アンジェイ・ワイダが映画化。終戦後のポーランドを舞台に、ロンドン亡命政府派の青年が時代の波に飲み込まれ、悲惨な最期を迎える様を描く。

あらすじ

灰とダイヤモンド』のあらすじを紹介します。

1945年5月、ドイツ降伏直後のポーランド国内ではソ連派の労働者党とロンドン派の抵抗組織がしのぎを削っていた。そんな中、抵抗組織に所属する青年マチェックは、アンドルゼイと共に党地区委員長のシェツーカの暗殺を命じられた。祝賀会に参加するためホテルに宿泊するシェツーカを追って、隣の部屋をとるマチェクだが、バーで出会った給仕クリスチナに心惹かれてしまう。夜彼女と落ち合ったマチェックは暗殺を一時忘れて時を過ごす。しかし二人の口から語られるのは辛い戦争の記憶であった。一方シェツーカにも戦争は深い爪痕を残していた。彼の息子はワルシャワ蜂起で行方不明になっていたのだ。ようやく生存が確認されたが、かつての親子が今となっては政治上の敵対関係となってしまっていた。
捕らえられた息子に会いに出かけるシェツーカをマチェックの凶弾が襲う。終戦を祝う花火の中で、撃たれたシェツーカはマチェックに寄りかかるようにして息絶える。そして翌朝、マチェックもまた保安隊に見つかって撃たれてしまう。瀕死の状態で街をさまようマチェックだが、ゴミ捨て場に行き着くとついに力尽きるのだった。

評価

  • 点数:95点/100点
  • オススメ度:★★★★★
  • ストーリー:★★★★★
  • キャスト起用:★★★☆☆
  • 映像技術:★★★☆☆
  • 演出:★★★★★
  • 設定:★★★☆☆

作品概要

  • 公開日:1959年7月7日
  • 上映時間:110分
  • ジャンル:ヒューマンドラマ
  • 監督:アンジェイ・ワイダ
  • キャスト:ズビグニエフ・チブルスキー、エヴァ・クジイジェフスカ、Waclaw Zastrzynski、アダム・パウリコフスキー、ボグミール・コビェラ etc…

ネタバレ考察・ストーリー解説

『灰とダイヤモンド』について、2つ考察・解説します。※ネタバレあり

生と死の葛藤

今作の歴史的背景にあるのは、戦後ポーランドにおけるソ連派の共産党と、地下に潜った国内軍の対立である。これは暗殺する者、される者という対立関係をもって物語に還元されている。しかし作中では両者の間に明確なイデオロギー的な違いはみられない。つまりこの物語には正義も悪も存在せず、ただ生と死があるのみだ。
主人公マチェックとクリスチナとのやりとりの中ではこのことが鮮烈に描写される。愛の言葉を交わす一方で戦争の記憶が呼び起こされ、生きたいと強く願った直後に今朝方自分が殺した男の死体を発見する。生と死のイメージが交互に現れる見事なシーンだ。しかしこの生と死の葛藤という個人の感情は結局棚上げにされ、空虚な政治的イデオロギーがマチェックを縛る。即ちシェツーカの暗殺へと彼を駆り立てる。この時彼はポーランド史の悲劇を一身に背負った存在として描かれるのだ。

ポーランド派

監督のアンジェイ・ワイダは戦後ポーランドを代表する映画監督である。彼は戦争に青春を奪われた世代であり、同じ世代のポーランド映画監督たちを指してポーランド派という言葉が使われた。彼らの題材は戦争であり、共産主義がゆがめた歴史を自分たちの視点で語り直すという意味も持っていた。そういう見方で今作を観ると、ワイダの戦争への思いがより明確に見えてくるのではないだろうか。

まとめ

時代背景に対しての説明が作中では殆どされないため、物語を理解するために多少の予習が必要となるかもしれない。そういう意味では万人に薦められる作品ではないが、ワイダの演出は非常に冴えており象徴的なシーンが多い。逆さまの十字架、打ち上げられる花火、調子の狂ったポロネーズ。これらは言葉を超えて私たちの感情に直接訴えかけてくる力を持っている。中でもドラマチックに、けれどボロ雑巾のように死んで行くマチェックの姿は脳裏から離れないだろう。
ちなみに今作は前二作の『世代』『地下水道』と共に「抵抗三部作」として知られている。時代に抗いながらも、無惨に押しつぶされていく若者たちの悲劇を描いており、中でも『地下水道』は今作に匹敵する傑作なので是非併せて観ていただきたい。

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