映画『春の雪』あらすじネタバレ結末と感想

春の雪の概要:三島由紀夫の同名小説を世界観そのままに映画化。未熟故に意地を張り素直になれなかった青年が、決定的に彼女が自分の手から届かなくなった後でようやく愛を認め、許されぬ恋に身をやつしていく。

春の雪 あらすじネタバレ

春の雪
映画『春の雪』のあらすじを紹介します。※ネタバレ含む

春の雪 あらすじ【起・承】

松枝家の清顕は幼い頃綾倉家へ預けられていた。成金の松枝家と違い、綾倉家は今は没落しているものの由緒正しい公家の家であった。

その傍らで、綾倉伯爵は侍女の蓼科に「将来松枝に聡子の縁組を世話されるだろうが、決して生娘のまま松枝の決めた縁組へ嫁がせてはならぬ。それこそが成金の松枝への復讐となる。」と言うのだった。

19になった清顕は退屈で鬱屈とした日々を送っていた。一方二つ年上の聡子は松枝家の提案する縁談をことごとく断り松枝夫人を辟易とさせていたが、美しい女性に育っていた。

そんな聡子に清顕はそっけない態度を取る。聡子は清顕に「もしも私が突然いなくなったらどうなさる?」と問いかけるのだった。

ある日、父の主催した舞踏会で清顕はタイからの留学生を紹介される。清顕と同じ年頃の彼らには祖国に恋人がいるという。写真を見せられた清顕だが、彼らに「君の恋人の写真も見たい」と言われ答えに窮してした挙句、人前で父親からも子供扱いを受けたことでプライドを酷く傷つけられたのだった。

その日、清顕は蓼科に連絡を取ると、聡子ともども劇へ招待したのだった。

春の雪 あらすじ【転・結】

後日、招待した劇場で聡子をタイの王子たちに紹介すると、彼らは聡子を絶賛した。と、同時に清顕は彼女を愛してるんだろう、と指摘する。

早朝、聡子は清顕を馬車での雪見に誘う。一度は断ろうとした清顕だが、既に家の前まで来ていることを聞き仕方なく出かけたのだった。その馬車の中で二人は初めて口づけを交わした。

だが、その後清顕は友人の本田から意に沿わない事実を告げられ、二人の近づいた距離は清顕の立腹によりまた開いてしまう。

聡子が必死に清顕へ連絡を取ろうとするも、全て突っ張られてしまう。その間に着々と聡子の縁談の話が進み、ついに宮家親王との縁談の勅許が下りてしまうのだった。

以降聡子からの連絡は途絶えたが、今度は清顕が蓼科を呼び出し聡子から送られてきた手紙を盾にして彼女と会わせるよう迫る。

蓼科の計らいで逢瀬を果たした二人は罪を犯していると意識を持ちながら、その後何度も秘密の逢瀬を続けた。

やがて、聡子が身ごもったことを蓼科が知ると、清顕は一切聡子に会うことが叶わなくなる。蓼科は子を下すことを聡子に提案するも、聡子は首を振らず業を煮やした蓼科が自殺騒動を起こしたことによって、松枝、綾倉両家が事態を知ることとなった。

春の雪 評価

  • 点数:100点/100点
  • オススメ度:★★★★★
  • ストーリー:★★★★★
  • キャスト起用:★★★★★
  • 映像技術:★★★★★
  • 演出:★★★★★
  • 設定:★★★★★

作品概要

  • 公開日:2005年
  • 上映時間:150分
  • ジャンル:ラブストーリー、時代劇
  • 監督:行定勲
  • キャスト:妻夫木聡、竹内結子、高岡蒼佑、スウィニット・パンジャマワット etc

春の雪 批評・レビュー

映画『春の雪』について、感想と批評・レビューです。※ネタバレ含む

原作の世界観、それ以上の秀作

さすが行定監督である。原作の文学的な美しさをそのまま映像にしてくれたかのような素晴らしさだった。音楽にしてもセットにしても洋風と和風、洋装と和装が絶妙に混在した当時独特の世界観が忠実に再現されていて目を見張った。
音楽でいえば、クラシックと日本的なものが織り交ぜられ二人の物語に美しく静かに華を添える。
その一方で貴族や上流階級の家庭の鬱屈さを抽象的に表すかのように、室内は陰気で音楽さえも流さない辺りの対比は同じ陰でも質の違いを見せてくれるのだ。

聡子の衣装

特に目を引いたのは、ヒロイン聡子の衣装である。前半から中盤まで人目を引く華やかな色、細部にまでデザインが拵えられた衣装は、清顕との逢瀬が進むにつれシンプルになり、後半では大人しいものに変わっていく。恋が成就せぬうちこそ清顕に見てほしいと言っているようで可愛らしく、成就したら今度は人目につかない地味なものを選ぶようになり、聡子の細やかな心配りを見て取れる。

悲恋物語として再構築された脚本

原作の主題は「輪廻転生」であるが、原作と違い春の雪で完結とするこの映画ではその主題をうまくすり替えていたように思う。
もちろんそのモチーフを全く無視しているわけではない。序盤の蝶の死骸や清顕が夢に見る棺桶。タイからの王族留学生の輪廻転生の話など、原作を読んだ人ならばすんなりと意味を捉えられる。
だが、この映画の素晴らしいところは、原作を読んでいなくても難しいことを考えずに観ることが出来るところである。
一つの映画として、意地を張った挙句、子供のような独占欲で聡子を愛す清顕と何度傷つけられても穏やかで変わらぬ愛を貫こうとする聡子、この二人の時代と立場が阻む悲恋物語がごく自然な流れで脚本に組み立てられているのだ。

春の雪 感想まとめ

大抵の映画の場合、どこか一つ欠けていたり残念な部分が見つかるものである。

しかし、この映画に関していえば、「素晴らしく傑作」以外に言葉が思いつかない。始終原作へのリスペクトが感じられるにも関わらず、そこへ傾倒しすぎることはなく、一貫して監督自身の美学と融合し昇華されていくのだ。

どこが見所か、またはどの部分に注目して観ればいいのか、そう問われれば私は間違いなく「映画の流れにそのまま身を投じてほしい」と答えるだろう。

前述の通りカメラワークも役者の芝居も、衣装もセットも音楽もどれ一つとっても素晴らしくそれら一つ一つに注目していてはキリがない。いや、単体でも素晴らしいそれらが融合しているのだから、私たちはその完成体をそのまま受け取るべきなのである。

ただ一つだけ言うとすれば、出来れば静かな空間で、落ち着いて時間を取れる時に観ることをお勧めしたい。

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