映画『走れ、絶望に追いつかれない速さで』あらすじネタバレ結末と感想

走れ、絶望に追いつかれない速さでの概要:日本最大の映画祭・東京国際映画祭での2年連続入選。史上初となったこの快挙を勝ち得たのは、史上最年少26歳の中川龍太郎監督でした。そんな彼の最新作は、親友の自殺の理由を探す、主人公・漣のロード・ムービーです。中川監督にしか描けない、23歳のリアルがここにあります。

走れ、絶望に追いつかれない速さで あらすじネタバレ

走れ、絶望に追いつかれない速さで
映画『走れ、絶望に追いつかれない速さで』のあらすじを紹介します。※ネタバレ含む

走れ、絶望に追いつかれない速さで あらすじ【起・承】

薫と漣は、大学からの親友同士。22歳の秋、薫は大阪に就職することを打ち明けます。
いつもの居酒屋、大学の同級生たちで彼を送り出し、笑い合う中には、薫の元恋人である理紗子の姿もありました。
その後、大阪で就職した彼の、突然の訃報が舞い込みます。理由もわからないまま、しかし、就職や一人暮らしなど慌ただしく漣や仲間たちの日常は進み、気付けば一周忌を迎えていました。

一周忌を迎え、薫の実家を訪れた漣に、薫の両親は彼の遺品を託します。その中に入っていたのは一枚のスケッチ。黒髪の美しいその女性は、理紗子ではありません。薫が最後に残した絵の女性。それは、斎木環奈という、薫の中学時代の同級生を描いたものでした。
薫にとって大切な存在であったはずの彼女に薫の死を知らせるため、また過去の薫を知るために、漣は理紗子とともに、薫の故郷、富山へ向かうことを決めます。

富山へと車を飛ばす車中、ふたりは思い出話に花を咲かせます。
大学時代、薫と漣は下町の安アパートに二人暮らしをしていました。自分の感情を表に出すことが苦手で、無口で不愛想な漣と、社交的で明るく美男でよくモテる薫。正反対の二人は不思議とウマが合い、朝まで飲み歩くこともしょっちゅうでした。
22歳という年齢。将来の不安や悩みをぶつけあう、朝方のガード下。
「まあ絶望に追いつかれない速さで、走れってことなんじゃねえの。」
ぽつりとこぼした薫の言葉が、漣にはずっと気にかかっていました。

走れ、絶望に追いつかれない速さで あらすじ【転・結】

宿をとり、朝を迎えたその日、ふたりは薫が飛び降りたという崖へ訪れました。
朝日を浴びるその崖は切り立っており、年間に何人もの自殺者を出すことで有名な場所でした。
「わたしはさ、漣に嫉妬してたんだよ。」
そう笑って、少しして、理紗子は泣き崩れました。そんな二人を、朝日が照らしだします。

恋人からの電話で、急遽東京に戻ることになった理紗子を見送り、漣は、「斎木環奈」を探しに街に出ます。やっと見つけ出した彼女は、夜の町でホステスをしていました。
慣れない店で、彼女を指名する漣に、環奈は愛想よく話しかけます。
薫を知っているかと尋ねると、彼女は急に表情を変えます。
「死んだんです、あいつ。」
「ふうん。」
まるでしらけた様子の彼女でしたが、ぽつりと呟いた言葉は、薫があの夜漣に言った言葉でした。
「知ってるんですか?」
「ああ、これ?わたしが中学の時にハマってたヴィジュアル系バンドの歌詞だよ。」
鼻で笑うような彼女の声と、知ってしまった呆気ない事実。漣は放心し、二万円を置いて店を出ます。

漣の足が向いたのは、薫が死んだ崖でした。しかし、すんでのところで、漣は今朝まで泊まっていた宿の主に声をかけられます。
悲嘆の中にいる漣に、主人は無言で鍋を出します。漣は、それをかきこみながら、細く泣き声を漏らします。
店を出るとき、漣は、店の入り口にかけてある一枚の絵に目を止めます。それは、まぎれもなく薫の描いたものでした。死ぬ前、彼もまたこの宿に泊まり、絵を描いて置いて行ったのでしょうか。あの崖から望む、朝日の鮮やかな絵。

それから、漣は仕事に精を出し始めます。薫の生きられなかった日常を、しっかりと味わうかのように。
新しく始めた趣味は、パラグライダー。飛び出した先には、薫が最後に見たかもしれない朝日が輝いています。

走れ、絶望に追いつかれない速さで 評価

  • 点数:75点/100点
  • オススメ度:★★★★★
  • ストーリー:★★★★☆
  • キャスト起用:★★★★☆
  • 映像技術:★★★☆☆
  • 演出:★★★★★
  • 設定:★★★★☆

作品概要

  • 公開日:2015年
  • 上映時間:83分
  • ジャンル:ヒューマンドラマ、青春
  • 監督:中川龍太郎
  • キャスト:太賀、小林竜樹、黒川芽以、藤原令子 etc

走れ、絶望に追いつかれない速さで 批評・レビュー

映画『走れ、絶望に追いつかれない速さで』について、感想と批評・レビューです。※ネタバレ含む

青臭いモラトリアム

この年齢を乗り越えたひとなら誰しもが、わかる、と思ってしまう、モラトリアム特有の悩みをクローズな視線で描写したセンチメンタルな脚本が何よりもまず魅力的です。
「〇年後どうしてるんだろう」「これからどうなるんだろう」「ちゃんとひとりで生きているだろうか」。学生を終えるその瞬間、誰しもが抱くであろう不安。そして、その不安に食いつぶされてしまう人間というのは、一定数いるものなのかもしれません。
そんな、普遍的な物語を、現代の若者というアプローチで描いているわけですが、さすが監督が同世代なだけあって、本当にリアルな「現代の若者像」が描写されているのです。使っているのはスマートフォン、服装は今風、でもお金はなくて下町のぼろぼろのアパートに共同生活をしていて、女の子とお酒を飲んでも割り勘、など、年代が違えば違和感を持つかもしれない、微妙なラインの若者像なのです。これは、同世代にこそ見てほしいポイントです。

音楽と光

全編にわたり、BGMの少ない静かな作りの映画ですが、ポイントに抒情的なピアノ音楽が織り込まれます。音楽を担当したのは、やはり同世代の酒本信太。ノスタルジックでありながら、打ち込みも織り交ぜたその音は、モダンな側面も垣間見せます。まさに今風。

また、運転中の町の灯、屋上のシーンの朝日、崖での朝日、ラストシーンの朝日など、自然光の描写にもとてもこだわりが見えました。自然光の中でぼやける人間の輪郭と、全編を通して語られる、人間存在の危うさがリンクして、とても繊細な印象を受けます。

走れ、絶望に追いつかれない速さで 感想まとめ

おすすめ度を★5としましたが、これは特に、現在アラサーと呼ばれている世代、20代に向けてのものです。もちろん、ほかの世代から見ても、とても深く響く、普遍的な内容になっているのですが、ぜひ、これからも中川監督と同じ年を重ねていく世代に注目してほしい映画です。わたし自身がその世代なので、鑑賞中、中盤から涙が溢れてどうしようもないほど心を揺り動かされました。
また、この映画は、中川監督の実体験に基づいたもの。まさに、彼のこれからの映画人生のルーツとなる一本です。ご注目ください。