映画『復讐するは我にあり』あらすじネタバレ結末と感想

復讐するは我にありの概要:実際に起こった「西口彰連続殺人事件」を題材に佐木隆三が書いた同名の長編小説を今村昌平監督が映画化。1979年に公開。主人公の殺人犯を演じた緒形拳をはじめ、キャスト陣の迫真の演技が骨太な今村作品を盛り立てた見応えある一本。

復讐するは我にあり あらすじネタバレ

復讐するは我にあり
映画『復讐するは我にあり』のあらすじを紹介します。※ネタバレ含む

復讐するは我にあり あらすじ【起・承】

昭和39年1月4日 5人の殺害容疑および詐欺その他で全国に指名手配されていた榎津巌(緒形拳)は、警察の護送車の中にいた。
そして、78日間逃亡を続けた榎津に対する本格的な取り調べが始まった。

昭和38年10月18日 榎津は福岡で以前から顔見知りだった専売公社職員2名を殺害する。
集金した金目当ての犯行だった。

血痕のついた金で携帯ラジオを買ったことから、捜査線上に榎津の存在が浮かび上がり、榎津は指名手配犯となる。

警察は榎津の女関係、そして実家への聞き込みを開始する。

榎津の実家は別府で温泉宿を営んでおり、父の鎮雄(三國連太郎)、病身の母かよ(ミヤコ蝶々)妻の加津子(倍賞美津子)と2人の娘がいた。

鎮雄は敬虔なクリスチャンで、加津子はそんな義父を敬愛していた。
榎津は偽善的な鎮雄に反発し、犯罪行為を繰り返すようになる。
刑務所から帰った榎津は、鎮雄と加津子の仲を疑っており、家を嫌い女のところを渡り歩いた末、今回の殺人事件を起こした。

榎津は各地で詐欺を働きながら逃亡を続け、浜松の売春宿「あさの」に行き着く。
女将はここの経営者の愛人ハル(小川真由美)で、同居する母のひさ乃(清川虹子)は殺人で服役した過去があった。

榎津は大学教授を名乗ってここに滞在し、ハルと深い仲になっていく。
しかし、警察が自分の指名手配用ポスターを持ってきたことに危険を感じ、ここも出る。

復讐するは我にあり あらすじ【転・結】

榎津は再び詐欺を働きながら逃亡を続け、千葉で弁護士を名乗って保釈金横領の詐欺を働く。

その際知り合った東京の弁護士河島を騙して自宅に入り込み、河島を殺害。
遺体を洋服ダンスに隠し、しばらくそこに居座るが精神的に追い詰められていく。

榎津はハルを東京へ呼び出す。
ハルは榎津を大学教授だと疑わず、優しく接してくれる榎津に夢中になっていたが、その日2人で入った映画館のニュースでついに榎津の正体を知る。

それでもハルは、榎津の正体を知ったひさ乃の反対も押し切って、榎津を自宅に匿う。
ハルは榎津と逃亡する覚悟まで決めていた。

ハルは旦那から屈辱的な扱いを受けてきたが、前科のある母と生きるために我慢してきた。
絶望の中で生きてきたハルは、榎津に惚れ込み子どもを欲しがるようになる。
榎津もハルと離れがたくなっていた。

しかし、東京で河島の遺体も発見され、榎津はますます追い詰められていく。
そしてついにハルとひさ乃を絞殺し、家財道具を質屋に売り払う手筈をする。

翌日、以前「あさの」で榎津の相手をした売春婦が、質屋と待ち合わせをする榎津を目撃し警察に通報する。

そして榎津は逮捕された。

死刑が確定した榎津は小倉拘置所に移され、鎮雄の面会を受ける。
榎津と鎮雄は互いに対する憎しみを吐き合い、榎津は自分がどうしても殺したかったのは父の鎮雄だった言う。

死刑執行後、榎津の遺骨を抱えた鎮雄と加津子は、山頂から榎津の骨を悪魔のような形相をして
投げ捨てる。

復讐するは我にあり 評価

  • 点数:95点/100点
  • オススメ度:★★★★★
  • ストーリー:★★★★★
  • キャスト起用:★★★★★
  • 映像技術:★★★★☆
  • 演出:★★★★★
  • 設定:★★★★☆

作品概要

  • 公開日:1979年
  • 上映時間:140分
  • ジャンル:フィルムノワール、ヒューマンドラマ
  • 監督:今村昌平
  • キャスト:緒形拳、三國連太郎、ミヤコ蝶々、倍賞美津子 etc

復讐するは我にあり 批評・レビュー

映画『復讐するは我にあり』について、感想と批評・レビューです。※ネタバレ含む

現実を超えるフィクション

本作の主人公榎津巌のモデルは実際の死刑囚西口彰であり、原作となった佐木隆三氏の同名ノンフィクション・ノベルはベストセラーとなった。

熾烈な競争を経て映画化権を取得した今村監督は、綿密な取材で知られる佐木氏を驚かせるほどの調査と取材を重ね、原作の中のフィクション部分まで見つけ出していたという。
画面には出ない裏側まで徹底的に調べあげた上でイメージを広げ、残忍な凶悪犯でありながら観客をひきつける魅力を持つ榎津巌という主人公の肉付けしていったのだろう。
つまり映画として成立するドラマを創り上げていったのだ。

主人公の榎津だけではなく、本作の登場人物は全員生々しい魅力を放っている。
事件はこのようにして起こり、そこにはこんなドラマがあったのだと私たちは錯覚する。
それは本作が、今村監督の鋭い人間描写に支えられた説得力のあるフィクションだからだ。

榎津巌はなぜハルを殺したのか

榎津巌の犯行は全て金のためであり、騙すことにも殺すことにも戸惑いは見せない。

しかし、ハルを殺した理由に関しては取り調べでも“よくわからない”と述べている。

榎津はハルの首を絞めた時、一度のその手を緩めている。
ハルを殺す榎津の表情は苦しげで、明らかに他の犯行時とは違う動揺が見られた。

榎津はいつも女を求めてきたが、女からは求められていない。
そんな榎津にとってハルは、初めて死ぬほど自分を求めてくる女だった。

だから榎津は、自分が死刑になった後もハルだけが生きていることが寂しく、また残されるハルを不憫だとも感じていたのではないだろうか。
つまり、心中を図るような気持ちでハルを殺し、またハルも殺された。

勝手な推測ではあるが、あのどこか切ない殺害シーンを観ると、ついそんな想像をしたくなる。

復讐するは我にあり 感想まとめ

本作は最初から最後まで、嫌でも画面に釘付けにさせられる圧倒的な迫力がある。

練り込まれた脚本により進んでいく物語は、巧みな構成で観客を全く飽きさせない。

主演の緒形拳は、残忍な殺人鬼でありながら人たらしであった主人公の榎津を完璧に演じ上げ、対立する父を演じる三國連太郎は、この人物の根底にある醜さをこれもまた完璧に演じている。
小川真由美、倍賞美津子ら女優陣も匂い立つような色気で女の業を演じきっている。

とにかく本作は、そこに生きる人々の体温や鼓動まで伝わってくるような、大人を満足させてくれる本物の映画だ。

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