映画『ハッシュ!』あらすじネタバレ結末と感想

ハッシュ!の概要:橋口監督の2001年のオリジナル脚本作品である今作は、とあるゲイのカップルと、孤独を抱えた独身女性の奇妙な心の交流を描く群像劇です。キネ旬ベストにも選ばれるなど、邦画のコアなファンにも高い評価を受けています。

ハッシュ! あらすじネタバレ

ハッシュ!
映画『ハッシュ!』のあらすじを紹介します。※ネタバレ含む

ハッシュ! あらすじ【起・承】

直也と勝裕は、とある雨の日に出会い付き合い始めたばかりのゲイのカップルです。お互いに相性の良さを感じながらも、考え方の違いに悩んでいました。
勝裕は一般企業の会社員で、ゲイであることは家族を含め周りに公表もしておらず、直也との関係をひた隠しにしたいと思っています。一方直也は、実の母親にもカムアウトしており、勤め先のペットショップでもオープンにしています。勝裕との付き合いも、周りに公表してもいいと考えています。

そんな心のずれから、小さな諍いは絶えないものの、概ね二人は仲の良い恋人同士でした。
そんなある日、ふたりは偶然、歯科技工士の朝子に出会います。彼女はふたりをゲイのカップルと知ったうえで、後日再び勝裕の前に現れます。

「わたし、子どもが欲しいの。」
恋人になりたいとか結婚したいとかではなく、ただ純粋に種が欲しい。そう勝裕に迫ったのです。
当然そんな申し出に直也は憤慨しますが、優柔不断で優しい性格の勝裕は、その頼みを無下にできず悩みます。

ハッシュ! あらすじ【転・結】

朝子は、好きでもない男と肉体関係を持っていました。そんな投げやりな生活の中で、二度の中絶を経験し、ついには筋層内筋腫を患い、妊娠が難しい体になってしまいます。その中で初めて、家族に対する強い願望を持つようになったのです。
そんな彼女の切実な願いを、渋々受け入れる気になった二人は、朝子と様々な計画を立てます。三人の奇妙な、しかし微笑ましくもある家族計画は和やかに進んでいたかに見えました。

しかしそんな時、勝裕に想いを寄せる彼の同僚のエミが、興信所を使い直也と勝裕の関係を暴き出し双方の実家に連絡してしまいます。驚いた勝裕の兄夫婦は急いで二人の住むマンションに押しかけ、直也の母も訪ねてきます。運悪く居合わせた朝子の存在はさらに事態をややこしくします。朝子と勝裕の関係を疑ったエミによって、朝子の過去までも暴かれてしまっていたのです。
そこで家族計画について話すと、勝裕の義姉は激怒します。「二回も子供を殺している人に子供なんて育てられるはずがない。」彼女のきつい言葉に怒る朝子でしたが、怒りはいきすぎて気絶してしまいます。

そんな彼女の深い孤独と悲しみに、勝裕と直也はただ寄り添います。さらに訃報が入ります。勝裕の兄が事故で死んでしまうのです。放心する義姉や姪を前に、家族というものがどれだけ儚く大切なものかを思い知った勝裕は、自分たちなりの家族計画に確信を持つようになるのでした。

そして三人は鍋を囲みます。「二人目は直也と作る」そう言って笑う朝子を挟んだ、奇妙な三人の関係は、これからも温かく続いていくのでしょう。

ハッシュ! 評価

  • 点数:80点/100点
  • オススメ度:★★★★☆
  • ストーリー:★★★★☆
  • キャスト起用:★★★☆☆
  • 映像技術:★★☆☆☆
  • 演出:★★★★★
  • 設定:★★★★☆

作品概要

  • 公開日:2001年
  • 上映時間:135分
  • ジャンル:ヒューマンドラマ、ラブストーリー
  • 監督:橋口亮輔
  • キャスト:田辺誠一、高橋和也、片岡礼子、秋野暢子 etc

ハッシュ! 批評・レビュー

映画『ハッシュ!』について、感想と批評・レビューです。※ネタバレ含む

斬新な設定

この映画が公開された当時(2001)にはまだLGBT(セクシャルマイノリティーを総称した言葉。レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダーの頭文字から。)は一般的な題材ではなく、単館上映とはいえ商業映画でこのテーマを据えた今作はそれだけでも衝撃的でしょう。さらにそこに、女性の抱える孤独と投げやりな性という、今の言葉で言えば「メンヘラ」という題材も加えて、重層的な趣のある映画として完成されています。
さらに今作で最も観客に驚きを与えたテーマとは、父と母と子供という従来の「家族」という組織を否定し、たとえばゲイのカップルでも家族という形を作れるのではないか、と提唱したことです。
男と女の両親に子供というそれまで当たり前であった家族から抜け出し、新しい形の家族を作ろうと模索する若者の姿は、危うさも感じさせながら希望に満ちています。また、そんな彼らを必死に否定し続ける義姉の姿にも、そこか前時代を感じさせます。
新しい時代の訪れを予感させるのはいつの日も、マイノリティなのかもしれません。

難役

今作の主人公はゲイのカップルです。勿論、役者にとってこんな難役はなかなかないでしょう。多くの人にとって、生活の中で彼らと出会う機会は多くありません。そんな、ある意味ではファンタジーな存在の彼らの「自然体」を映画の中で表現しなくてはならないのです。
この役がこんなにも自然に見えるのは、ひとえに橋口監督の丁寧で熱心な演出によるものです。彼は映画を撮影する前にワークショップを開き、俳優ひとりひとりと向き合う時間を長くとることで有名な監督であり、今作でも例外ではなかったようです。だからこそ、多くの観客にとって現実味のない題材でありながら、こんなにもすんなりと受け入れられるのでしょうか。

ハッシュ! 感想まとめ

今作は設定の目新しさから目を引いて鑑賞した作品ですが、同時に人間ドラマの卓越した表現者である橋口監督のお名前からも魅力を感じました。「恋人たち」や「ぐるりのこと。」に比べると、表現として稚拙な点があったり、物語の流れが寸断されてしまう印象のカット割りが目立ったりと、粗削りではありましたが、根底に流れる、彼の信じる「性善説」のようなものは強く感じられました。彼の作品はどれを見ても、優しい人間で溢れていて、たとえ悪人であっても何か事情があるのではないかと、理解しようとする目線で撮られているのです。
もし、人生に疲れたり悩んだりすることがあったときは、彼の映画を観返してみようと思います。

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