映画『イル・ディーヴォ 魔王と呼ばれた男』のネタバレあらすじ結末 | MIHOシネマ

「イル・ディーヴォ 魔王と呼ばれた男」のネタバレあらすじ結末

イル・ディーヴォ 魔王と呼ばれた男の概要:7期に渡ってイタリア首相を務めた大物政治家でありながら、マフィアとの癒着や暗殺事件の黒幕説など、常に黒い噂が絶えなかったジュリオ・アンドレオッティの実像に迫った伝記映画。パオロ・ソレンティーノ監督の出世作。不気味な印象のアンドレオッティになりきったトニ・セルヴィッロの名演も光る。

イル・ディーヴォ 魔王と呼ばれた男の作品概要

イル・ディーヴォ 魔王と呼ばれた男

製作年:2008年
上映時間:110分
ジャンル:伝記、ヒューマンドラマ、フィルムノワール
監督:パオロ・ソレンティーノ
キャスト:トニ・セルヴィッロ、カルロ・ブチロッソ、フラヴィオ・ブッチ、アルド・ラッリ etc

イル・ディーヴォ 魔王と呼ばれた男の登場人物(キャスト)

ジュリオ・アンドレオッティ(トニ・セルヴィッロ)
イタリアのキリスト教民主党の議員で、大臣を25期、首相を7期も務めた大物政治家。極端な猫背で、常に無表情なため、不気味な印象を与える。マフィア関連の汚職事件や暗殺事件の黒幕と噂されながらも、ついに尻尾を掴ませなかった謎多き人物。
リヴィア・ダネーゼ(アンナ・ボナイウート)
アンドレオッティの妻。世間はアンドレオッティを器用で教養と知性がある人と見ているが、リヴィアは夫を大した人物ではないと思っている。
フランコ・エヴァンゲ(フラヴィオ・ブッチ)
通称、レモン。アンドレオッティの右腕。長年アンドレオッティに仕えてきたが、あまり関心を持たれていない。
パオロ・ポミーチノ(カルロ・ブチロッソ)
通称、大臣。アンドレオッティ派の財務大臣。医者の資格を持っている。軽薄で口がうまい。
サルヴォ・リマ(ジョルジョ・コランジェリ)
通称、閣下。アンドレオッティ派の議員。昔からマフィアと深い関わりがあり、アンドレオッティとマフィアの連絡係をしていたと言われている。
ヴィットリオ・スバルデッラ(マッシモ・ポポリツィオ)
通称、シャーク。アンドレオッティ派の議員。野心家で、自分が出世するためにアンドレオッティの派閥を出る。
アルド・モロ(パオロ・グラツィオージ)
アンドレオッティと対立関係にあったとされるイタリアの元首相。極左テロ組織「赤い旅団」に誘拐され、政府が組織の要求に応じなかったため、監禁後に殺害された。監禁場所から手紙を送付し、当時の首相だったアンドレオッティのことを厳しく非難する。
エネア女史(ピエラ・デッリ・エスポスティ)
アンドレオッティの秘書。長年、孤独なアンドレオッティを支えてきた。
ミーノ・ペコレッリ(ロレンツォ・ジョイエッリ)
モロ誘拐殺害事件にアンドレオッティが関与していたという回顧録を執筆した記者。反共秘密結社「ロッジP2」の会員。回顧録が世に出る前に、何者かによって暗殺される。

イル・ディーヴォ 魔王と呼ばれた男のネタバレあらすじ

映画『イル・ディーヴォ 魔王と呼ばれた男』のあらすじを結末まで解説しています。この先、ネタバレ含んでいるためご注意ください。

イル・ディーヴォ 魔王と呼ばれた男のあらすじ【起】

1978年5月、イタリアのアルド・モロ元首相は、極左テロ組織「赤い旅団」に誘拐され、55 日後に殺害される。赤い旅団は政府に対し、逮捕者の釈放を要求していたが、当時の首相だったジュリオ・アンドレオッティは、交渉に応じなかった。モロは監禁中、政府の対応を求めて何百通もの手紙を送付し、自分を見捨てたキリスト教民主党の党仲間を酷評した。その中でも、モロと対立関係にあったアンドレオッティには、特に辛辣だった。

赤い旅団は単独犯行を主張していたが、この事件には、多くの政治家・記者・実業家が会員として名を連ねている反共秘密結社「ロッジP2」の関与が疑われていた。ロッジP2の会員だった記者のミーノ・ペコレッリは、事件の黒幕がアンドレオッティではないかと疑い、彼の関与を暴こうとしていた。しかし、ペコレッリも79年3月に暗殺され、その後もアンドレオッティの周辺では、恐ろしい暗殺事件が続く。

90年代初頭のローマ。第7次アンドレオッティ内閣が発足する日の早朝、アンドレオッティは4時半に起床し、多くの警護に守られながら、町の教会へ向かう。路地裏の壁には「虐殺の黒幕はクラクシ(イタリア社会党に所属する元首相)とアンドレオッティ」という落書きがあった。アンドレオッティはその落書きを黙って見つめ、教会で司祭に告解する。

その日、アンドレオッティのいる首相官邸に、財務大臣のポミーチノ、右腕のフランコ、国会議員のスパルデッラ、実業家のチアッラピーコ、枢機卿のアンジェリーニ、そして国会議員のリマがやってくる。彼らは、キリスト教民主党アンドレオッティ派のメンバーで、世間では「悪党の集まり」と言われていた。

イタリア共和党大統領のフランチェスコ・コシガから首相に任命されたアンドレオッティは、第7次アンドレオッティ内閣を発足する。数多くの黒い噂がありながら、大臣を25期、首相を7期も務めてきたアンドレオッティには、「黒い法王」や「暗黒の男」などの不名誉なあだ名がいくつもあった。それでも、告発されたことは1度もなく、アンドレオッディはその理由を、自分にユーモアのセンスがあるからだと自負していた。しかし、本当の理由は、相手を黙らせる脅しのネタを膨大に集めているからだった。

イル・ディーヴォ 魔王と呼ばれた男のあらすじ【承】

アンドレオッティは感情を表に出さないため、彼の秘書を務めているエネア女史は、指の動きで彼の感情を読み取っていた。長年、アンドレオッティを見てきたエネア女史は、妻のリヴィアでも気づいていないアンドレオッティの深い孤独を理解している。数々の悪事に手を染めてきたアンドレオッティも、モロの一件については今でも苦しんでいた。

アンドレオッティが競馬観戦していた日、リマが殺し屋に暗殺される。リマは、マフィアと深い関わりを持つ人物で、アンドレオッティとマフィアの連絡係をしているのではないかという噂があった。しかし、アンドレオッティは、大統領候補の自分に敵対する議員の仕業ではないかと国務大臣に告げる。国務大臣は、アンドレオッティの腹が読めず、戸惑いの表情を浮かべていた。

リマが殺されたので、第7次アンドレオッティ内閣は解散になる。しかし、ちょうどコシガが大統領を辞任したため、アンドレオッティは大統領の座を狙うつもりでいた。アンドレオッティの立候補を心待ちにしていた派閥のメンバーも、彼の大統領出馬を喜ぶ。ただ、野心家のスバルデッラは、この政変を自分が飛躍するチャンスだと見て、派閥を出る。スバルデッラは、コシガが終身議員になることで宙に浮く33万票の獲得を狙っていた。

大統領が選出される議会が始まる。アンドレオッティと派閥のメンバーは自信満々だったが、同じキリスト教民主党からも他の立候補者が出るなどして、大統領の選出は難航する。ポミーチノやフランコは、アンドレオッティを支持するよう必死で他の議員を説得するが、思うように票が集まらない。そんな中、反マフィアとして知られるファルコーネ判事が、高速道路を走行中に爆弾で暗殺されるという大事件が起こり、マフィアとの癒着が噂されていたアンドレオッティは、ますます劣勢に立たされる。結局、全議員による投票の結果、キリスト教民主党議員の中でもクリーンなイメージのオスカル・スカルファロが大統領に選出され、アンドレオッティは惨敗する。

イル・ディーヴォ 魔王と呼ばれた男のあらすじ【転】

ファルコール判事が暗殺されたことで、国内ではマフィア関連の汚職事件に対する追求が厳しくなり、追い詰められたが政治家や実業家の自殺が相次ぐ。アンドレオッティは、一連の汚職事件の最大の黒幕ではないかと疑われていた。

同僚の政治家たちが汚職や強要で次々と失脚する中、アンドレオッティは政界に居座り続ける。彼を厳しく追求してきたベテラン新聞記者に対しても、アンドレオッティは強気の姿勢を崩さない。

そんな中、通称「野獣」と呼ばれるマフィアの大ボスのトト・リイナが逮捕される。リイナは20年以上前に指名手配されていたが、逃亡生活を続けながら巧みに勢力を広げ、マフィアの頂点に立つ男として恐れられていた。アンドレオッティには、逃亡中のリイナと接触しているという噂があった。

リイナが逮捕されたことで、すでに投獄されていた元マフィアの大物たちが、マフィア関連の汚職事件や暗殺事件について口を開き始める。彼らの話から、バチカン銀行がマフィアの資金のマネー・ロンダリングに利用されていたことや、マフィアの指示で大物銀行家が自殺に見せかけて暗殺されていたこと、そして、モロ誘拐事件の真相も見えてくる。

モロの誘拐には、やはりマフィアが絡んでいた。そして、彼の誘拐を指示したマフィアのボスは、アンドレオッティの関与もほのめかしていた。この秘密を知っていたのは、暗殺された記者のペコレッリと将軍だけで、ボスはペコレッリ暗殺についても自分たちの仕業だと話していた。そのボスにペコレッリ暗殺を依頼してきたのは、アンドレオッティと懇意のマフィアだった。アンドレオッティには、マフィアと血の誓いを交わしたという噂まであった。

アンドレオッティはリマの仲介で、イタリア南部を制圧しているシチリアのマフィアと手を組み、南部全域の票を獲得していた。アンドレオッティはその見返りに、マフィア規制を緩めていた。しかし、87年以降、アンドレオッティはシチリアのマフィアから手を引き、彼らと対立するようになる。アンドレオッティが約束を破ったため、マフィアとの仲介役だったリマが、報復のために殺害されていた。

リイナの運転手を務めていた男は、アンドレオッティとリイナが密会し、頰にキスして挨拶を交わしていたと証言する。この証言には、検察側も驚きを隠せない。

イル・ディーヴォ 魔王と呼ばれた男のあらすじ【結】

元マフィアたちの数々の証言により、アンドレオッティはマフィアへの関与で警察の捜査対象となる。さすがのアンドレオッティも、今回ばかりは起訴が承認されるだろうと考え、リヴィアにもそのことを伝えておく。長年連れ添ったリヴィアには、アンドレオッティが潔白でないことはわかっていた。

アンドレオッティは1人で部屋にこもり、胸の内を独白する。過去に犯した自分の過ちを認めつつ、抑えてきた感情を爆発させる。アンドレオッティは、善のためには悪が必要なのだと頑なに信じており、そのことは神もご存知なのだと語っていた。

その夜、アンドレオッティは一晩中、家の廊下を歩き続ける。アンドレオッティは忙しく廊下を往復しながら、「君には情熱がない、善良さも英知も柔軟性も透明性もない、君は長くは続かない、跡形もなく消される」という、モロの言葉を思い出していた。

議員委員会による予備審問の席で、アンドレオッティはマフィアとの関連を全面的に否定する。さらに、長年この国の外交を担当してきた自分がマフィアと癒着していたとなると、イタリアは国際的信用を失うことになると発言する。

汚職の告発により、派閥の側近たちも次々と逮捕される。フランコは病気を装い、病院に入院する。アンドレオッティは、26もの罪状で予備審問に呼ばれ、何日間も聴取を受ける。しかし、ほとんどの質問に対して「記憶にない」と答え、訴追は却下されていく。アンドレオッティは教会の告解でも、「過ちは犯したがマフィアとは無縁だ」と訴えていた。

刑務所内でマスコミの取材に応じたリイナは、アンドレオッティとの関係について聞かれるが、天気の話をしてとぼける。2人の密会を証言した運転手を前にしても、アンドレオッティは彼にもリイナにも面識がないと言い張る。

ペコレッリが執筆したモロの回顧録について聞かれた入院中のフランコは、暗殺された将軍がアンドレオッティに回顧録を渡すと言っていたと証言する。フランコは、その後ほどなくして死亡する。

マフィア裁判を前にして、アンドレオッティはマスコミの取材に応じ、マフィアの証言を全面的に信じる検察側がおかしいと発言する。アンドレオッティは、どこかに自分を陥れようとする黒幕がいるはずだとも言っていた。

マフィア裁判の法廷で、被告人席に座ったアンドレオッティの様子を、マスコミは「無関心で陰気で冷ややかなまま」と伝える。99年10月、第一審は証拠不十分によりアンドレオッティを無罪とし、03年5月の控訴審でも、80年以前の事件は時効により審理不可、他はすべて無罪という判決が下る。04年10月、最高裁も控訴審の判決を支持する。ペコレッリ事件の裁判についても、検察側に起訴されたアンドレオッティと3名のマフィアは、最終的に無罪となった。

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