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映画『イリュージョニスト(2010)』のネタバレあらすじ結末と感想

映画『イリュージョニスト(2010)』の概要:喜劇俳優のジャック・タチが娘に書き遺していた脚本を基にして、フランスのシルヴァン・ショメ監督が製作した大人向けの長編アニメーション映画。ほとんどセリフはないが、美しいアニメーションで人物の喜怒哀楽が繊細に表現されており、自然と切ない気持ちにさせられる。映画としての完成度も非常に高い秀作。

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映画『イリュージョニスト』の作品情報

イリュージョニスト

製作年:2010年
上映時間:80分
ジャンル:アニメ、ヒューマンドラマ
監督:シルヴァン・ショメ
キャスト:ジャン=クロード・ドンダ、エイリー・ランキン、レイモンド・マーンズ、ダンカン・マクニール etc

映画『イリュージョニスト』の登場人物(キャスト)

タチシェフ(ジャン=クロード・ドンダ)
フランス人の手品師。王道の手品を得意とするベテランの手品師だが、時代に取り残され、落ちぶれつつある。ずっと旅暮らしをして、ヨーロッパ各地を巡業している。手品で使うウサギが相棒の孤独で物静かな男。アリスに魔法使いだと勘違いされ、無理をして彼女の願いを叶えてやる。
アリス(エルダ・ランキン)
スコットランドの小さな離島で暮らす10代後半くらいの貧しい少女。下働きをしていた酒場でタチシェフと出会い、彼を何でも出してくれる魔法使いだと思い込む。勝手にタチシェフの旅についてきて、あれこれ欲しいものをねだる。

映画『イリュージョニスト』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)

映画『イリュージョニスト(2010)』のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまでわかりやすく簡単に解説しています。この先、ネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『イリュージョニスト』のあらすじ【起】

1959年のパリ。老手品師のタチシェフは、劇場の舞台で、時代遅れの手品を披露していた。彼の十八番は帽子から生きたウサギを出すという手品だったが、観客からの反応は鈍い。しかもウサギが逃げ出して次の舞台をめちゃくちゃにしてしまい、怒った支配人は彼をクビにする。

タチシェフは商売道具をまとめ、巡業の旅に出る。ロンドンへ渡ったタチシェフは、地方の劇場で仕事をもらう。タチシェフの出番前、舞台上では最近流行りのロックバンドが暴れまわっていた。客席は、彼らの熱狂的な女性ファンで埋め尽くされている。ロックバンドは調子に乗り、なかなか演奏をやめようとしない。タチシェフは舞台袖に待機して、イライラしながら自分の出番を待っていた。ようやく彼らの演奏が終わったと思ったら、観客も彼らと一緒に帰ってしまう。タチシェフは、たった2人の観客を前に、虚しい気分で手品を披露する。

ロンドンの劇場もすぐにお払い箱となり、タチシェフはスコットランド方面へ向かう。とある野外パーティの余興に出演した時、ひどく酔っ払った男が、タチシェフに声をかけてくる。その男は、タチシェフに仕事を依頼してくれた。

男の依頼で、タチシェフはスコットランドの小さな離島へ向かう。汽車と船を乗り継ぎ、ようやくたどり着いたその島は、とんでもないド田舎だった。タチシェフはそこの小さな酒場で、仕事をすることになる。

酒場の主人は気持ちよくタチシェフを迎え、2階に部屋を与えてくれる。夜、酒場には多くの島民が集まり、賑やかな宴が始まる。この島にはまだテレビもなく、島民は流行とは無縁の生活をしていた。素朴な島民たちは、タチシェフの手品をとても喜び、盛大な拍手を送ってくれる。タチシェフは、久しぶりに満たされた気持ちになる。

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映画『イリュージョニスト』のあらすじ【承】

この酒場で下働きをしているアリスという貧しい少女は、タチシェフの手品に心底驚く。アリスは彼に興味津々で、甲斐甲斐しく世話をする。タチシェフも彼女の心遣いに感謝し、ボロボロの靴を履いていた彼女に、店で買った赤い靴をプレゼントする。手品で赤い靴を出したタチシェフを見て、アリスは彼が魔法使いなのだと思い込む。

頼まれた仕事を終え、タチシェフは島を去る。タチシェフを魔法使いだと思い込んでいたアリスは、勝手にあとを追ってくる。タチシェフは仕方なく、彼女の旅費も払い、次の目的地のエジンバラまで同行させる。

タチシェフはエジンバラの中心部にある劇場で仕事をもらい、近くの安ホテルに台所付きの部屋を借りる。そのホテルには、顔なじみの道化師や腹話術師や曲芸師も滞在していた。タチシェフはベッドを彼女に譲り、自分はソファーで眠る。アリスは生まれて初めて見る都会に、胸を躍らせていた。

都会の劇場では、タチシェフの古臭い手品はウケなかったが、仲介人の口利きで、しばらくここの劇場に出演できることになる。タチシェフが仕事の間、アリスはひとりで街を歩き、ショーウィンドウに並んだ商品を見て回る。アリスは自分のみすぼらしい格好が恥ずかしくなり、タチシェフに高価な白のコートをおねだりする。アリスは、コートの値段など全く気にしていなかった。

タチシェフもギリギリの生活をしていたが、アリスの喜ぶ顔が見たくて、無理をして高価なコートを購入する。古いコートの中から魔法のように白のコートが出てきて、アリスは大喜びする。新しいコートを着てタチシェフと一緒に街へ出たアリスは、今度は白のハイヒールを欲しがる。さすがにタチシェフも困ってしまい、「自分は魔法使いじゃない、手品師だ」と説明するが、ゲーテ語しか話せないアリスにはうまく伝わらない。

タチシェフは金を工面するため、ガソリンスタンドの面接を受ける。何も知らないアリスは、タチシェフの楽屋で白のハイヒールを見つけ、喜んでそれに履き替える。楽屋へ戻ったタチシェフは、脱ぎ捨てられた赤い靴を見て、複雑な心境になる。

タチシェフはアリスが寝たのを確認し、ガソリンスタンドの宿直のバイトへ行く。ひとりの時に高級車の洗車を頼まれるが、機械の使い方がさっぱりわからず、雨で車の汚れを洗い流す。翌朝、出勤してきた雇い主に怒られ、タチシェフはバイト代をもらい損ねる。

映画『イリュージョニスト』のあらすじ【転】

帰り道、タチシェフはポケットの小銭をかき集め、アリスのために朝ごはんを買って帰る。ホテルの部屋では、アリスが腹話術師に頼まれたシチューを作っていた。それがウサギのシチューだと知り、タチシェフは自分のウサギが殺されたのではないかと胆を冷やすが、彼のウサギは無事だった。腹話術師は、アリスの作ってくれたシチューに舌鼓を打つ。落ちぶれて生きる希望を失い、首を吊ろうとしていた道化師も、アリスのシチューに救われる。そして腹話術師や道化師は、ホテルを去っていく。

今度は新しいドレスを買ってもらい、アリスはどんどん都会の少女らしくなっていく。一方、劇場での公演期間が終わったタチシェフは、次の仕事を探さなければならなかった。劇場からのギャラは、知らないところで仲介人に搾取されており、タチシェフはわずかなギャラしかもらえない。がっかりして街を歩いていたタチシェフは、質屋のショーウィンドウに腹話術師の人形があるのを見て、彼が芸人をやめたことを知る。タチシェフの古い芸人仲間は、みんな時代に取り残され、悲惨な運命を辿っていた。

手品師の仕事は見つからず、タチシェフは広告用看板のペンキ塗りの仕事を得る。そこでは、曲芸師の3兄弟も働いていた。彼らはそれぞれの特技を活かし、巨大な看板にペンキを塗っていく。デパートのショーウィンドウの装飾に頭を悩ませていた広告屋の社長は、偶然タチシェフの手品を目撃し、何かを思いつく。同じ頃、ホテルで退屈していたアリスは、向かいのアパートに住む若者に胸をときめかせていた。

社長の依頼で、タチシェフはデパートのショーウィンドウの中に入り、手品を使って新商品を紹介する。街ゆく人々はこれを面白がり、ショーウィンドウの前には人だかりができる。アリスもそれを目撃し、タチシェフに声をかけるが、彼は不機嫌そうにアリスを追い払う。タチシェフは、見世物のような扱いを受け、屈辱的な気分を味わっていた。

映画『イリュージョニスト』の結末・ラスト(ネタバレ)

デパートであの若者に声をかけられたアリスは、彼と商品を見て回る。アリスは高価なネックレスが欲しくなり、持っていた小銭を出して、店員に笑われる。若者におねだりしてみたが、彼も笑って首を振っていた。

その夜、タチシェフは場末の酒場でスコットランドの酔っ払いと再会し、珍しく泥酔してホテルに帰る。彼はアリスが眠っているのを確認し、安心したようにソファーに倒れこむ。

翌朝アリスは、タチシェフが眠っている間に部屋を出て、若者とデートに出かけていく。タチシェフは広告屋の社長に電話をして、あの仕事を辞めると告げる。

街をぶらついていたタチシェフは、楽しそうに若者と歩いているアリスを目撃し、急いで映画館に逃げ込む。映画館では、ジャック・タチ主演の『ぼくの叔父さん』が上映されていた。ホテルへの帰り道、薄暗い路地裏には、物乞いとなった腹話術師がいた。タチシェフは、自分の出番が終わったことを悟る。

タチシェフは相棒のウサギを野に放ち、商売道具も売り払って、ひとりで旅に出る。同じ頃、雨宿りをしていたアリスと若者は、初めてのキスを交わす。

タチシェフはアリスに、野の花の花束とお金と、「魔法使いはいない」という手紙を残して消えていた。アリスはそれを見て、じっと窓の外を見つめる。ホテルの下では、あの若者が待っていた。アリスはトランクを持ち、若者と肩を並べて人混みの中へ消えていく。

汽車の中。前の席に座る女の子の短い鉛筆を拾ったタチシェフは、自分の長い鉛筆と女の子の鉛筆を交換してあげようか少し悩む。彼は女の子に声をかけ、手品で短い方の鉛筆を出す。タチシェフは胸ポケットから写真を取り出し、ほんのちょっと眺めてまた胸にしまう。その写真には、幼い女の子が写っていた。それはタチシェフが長いこと会っていない娘の写真だった。タチシェフはアリスに娘の面影を重ね、親娘のように暮らしてみたかったのだろう。エジンバラの街のネオンが消えていく。そして、タチシェフとアリスの魔法の時間も終わりを告げる。

映画『イリュージョニスト』の感想・評価・レビュー

背景などが優しい色で塗られているため、どこか懐かしさを感じる作品だった。アリスとタチシェフのすれ違った関係が、何とも言えないもどかしさと悲しさを感じた。タチシェフが娘の面影をアリスに見ていなければ、きっと早々に事実を伝え別れを告げていたのだろうと思う。アリスは若者と幸せになれたのか、タチシェフは商売道具を振り払った後どうやって生きるつもりなのか、気になった。見終わった後に切なさと寂しさが心に残る作品。(女性 30代)


ものすごく切なくて「哀愁」という言葉がぴったりの作品でした。昔ながらの手品を今でも続ける「時代遅れ」のマジシャン、タチシェフとマジシャンを「魔法使い」と信じる少女。2人のほっこりするお話かと思いきや、見ているうちにどんどん辛くなっていく展開にびっくりしました。
セリフがほとんどないので、アニメーションと音楽で見て感じる作品ですが、アニメーションのひとつひとつがとても繊細で美しかったです。その美しさが、ストーリーの切なさをより際立たせていたような気がします。(女性 30代)

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