映画『回路』あらすじとネタバレ感想

回路の概要:2001年、Jホラー末期ともいうべき時代において発表された金字塔的作品。監督は黒沢清。Jホラー理論として知られる小中理論に則りながらも、哲学的な色合いを濃くした味わい深い作品。

回路 あらすじ

回路
映画『回路』のあらすじを紹介します。

観葉植物を販売する会社で、同僚の田口(水橋研二)が自殺してからというもの、ミチ(麻生久美子)の周辺では身近な人たちが次々と姿を消してしまっていた。

同じ頃、大学生の亮介は、パソコンを手に入れる。初めてアクセスしたインターネットで、「幽霊に会いたいですか」と問う奇妙なサイトにアクセスしてしまう。

そんな中、ミチの同僚の順子(有坂来瞳)があかずの間と呼ばれる、霊界と人間界を繋ぐ空間に足を踏み入れてしまう。順子のそばに寄り添うミチで合ったが、順子もまたミチの目の前で黒い影姿をのこしたまま消えてしまう。

次々と黒い影を残し消える人々。世界は徐々に破滅の色合いを濃くしていった。亮介が同じ大学で思いを寄せていた春江(小雪)も次第に不可解な行動をとり始める。

親しいものたちが消えてゆき日常が崩壊していく中で、ミチと亮介は出会い、共に逃避しようとする。しかし、亮介にもある恐怖が降りかかろうとしていたのだった。

回路 評価

  • 点数:95点/100点
  • オススメ度:★★★★★
  • ストーリー:★★★★★
  • キャスト起用:★★★★★
  • 映像技術:★★★★★
  • 演出:★★★★★
  • 設定:★★★★★

作品概要

  • 公開日:2000年
  • 上映時間:118分
  • ジャンル:ホラー、サスペンス
  • 監督:黒沢清
  • キャスト:加藤晴彦、麻生久美子、小雪、有坂来瞳 etc

回路 ネタバレ批評

映画『回路』について、感想批評です。※ネタバレあり

2001年という年

本作が公開されたのは 2001年。Jホラー史上最大のヒットとなった「リング」が公開されたのはその3年前、1998年のことであった。様々な監督によってJホラーの恐怖映像表現の実験が繰り返されてきた中、黒沢清は本作「回路」を持ってその恐怖表現を哲学的あるいは芸術的な域にまで高めることに成功した。

2001年と言えば本格的にインターネットが普及し始めてきた時代であると同時に、アメリカで同時多発テロが起こった年でもある。つまり、世界は新たなメディアを獲得し、今までになかったような人間同士のコミュニケーションを実現させたとともに、これからやってくるであろう得体の知れない時代に対するある種の恐怖感を抱えていたとも言える。しばしばゼロ年代とも言われるような退廃的かつ無気力な雰囲気をたたえたこの時代は、黒沢清が描こうとしている世界と非常に親和性の高いものであったのだ。

コミュニケーションの本質

幽霊という存在はどういう存在なのだろうか。幽霊と言うのはそもそも、元々は人間である。 しかしながら一口に幽霊と言っても、 いつなくなったのかはわからない。ひょっとすると100年前に死んだ人かもしれないし、10年前に死んだ人かもしれない。いずれにしても共通して言えるのは、亡くなってからは成仏することなくその場にずっと止まり続けているということである。それは同時に幽霊の心の動きが止まったままであるということでもあるのだ。したがって生きている人間が幽霊とエンカウントしたとしても、人間側の論理が幽霊に伝わるとは限らないのである。この構造は奇しくも今の時代に置いてよく見られるものになってしまっている。SNSの発達に伴って人は気軽に交流をとることができるようになったが、それに応じてコミュニケーションの難しさを実感する人々も増えているのだ。

回路 感想まとめ

本作が本当に恐ろしいのは幽霊と人間という対比構造を実際の人間同士のコミュニケーションの話にフィードバックさせているという点である。

Jホラー の映像表現として非常によく知られる小中理論と呼ばれる理論が存在するが、本作はその小中理論に則りながら、非常に高度な哲学的主張を盛り込んでいるのが特徴である。

しばしば「心霊」という言葉の定義は議論の的となる。映画監督の三宅隆太氏によれば、「心霊」とは心の動きが止まった状態であるといえる。その定義に乗っ取れば、本作はまさに「心霊」映画である。加えて、そういったテーマ的な部分でよく出来ているというのは言うまでもないが、そういったことを考えずに見てもホラー映画として非常に怖いものに仕上がっているというのは素晴らしい点である。

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