『カラスの飼育』あらすじ&ネタバレ考察・ストーリー解説

『ミツバチのささやき』で一躍有名子役となったアナ・トレントを主役に撮られたスペイン映画。両親を失った子供が大人に向ける、無邪気な残酷性を描く。カルロス・サウラ監督作品。

あらすじ

カラスの飼育』のあらすじを紹介します。

マドリードの中心に位置する古風な屋敷には三人の姉妹が住んでいた。11歳のイレネ、9歳のアナ(アナ・トレント)、5歳のマイテの三人だ。ピアニストの母親(ジェラルディン・チャップリン)を亡くした三人は、職業軍人の父親に車いすの祖母、家政婦のロサと共に暮らしている。昔から幸せな家庭とは言えず、アナは母が死んだのは父親のせいだと思い込んでいた。そんなある日父親が屋敷で知人女性と密会している最中に死亡してしまい、保護者を失った三人は叔母の家にひきとられることになる。

叔母の家での生活は決して楽しいものとは言えなかった。何とか母親の代わりを務めようとする叔母だが、から回りして権力を振りかざす結果となってしまったのだ。そんな生活にうんざりしたアナの楽しみは、空想の中で母親と会うことだけだった。そしてアナには母親から教わったある秘密があった。毒性の白い粉を密かに隠し持っていたのだ。実はそれは毒でも何でもないただの粉なのだが、父親が死亡した夜にアナはその粉をこっそり父親のグラスに入れていおり、自分が父親を殺したと思い込んでいた。そして哀れな老いた祖母と、憎い叔母をまた同じように毒殺しようと思い至るのだった。

評価

  • 点数:80点/100点
  • オススメ度:★★★★☆
  • ストーリー:★★★★☆
  • キャスト起用:★★★★★
  • 映像技術:★★★☆☆
  • 演出:★★★★★
  • 設定:★★★☆☆

作品概要

  • 公開日:1987年10月10日
  • 上映時間:107分
  • ジャンル:ヒューマンドラマ
  • 監督:カルロス・サウラ
  • キャスト:アナ・トレント、ジェラルディン・チャップリン、コンチタ・ペレス、Maite Sanchez Almendross etc…

ネタバレ考察・ストーリー解説

『カラスの飼育』について、2つ考察・解説します。※ネタバレあり

子供の死への空想力

誰しも子供の頃、急に死が身近なものに思えるようになったことがあるだろう。本作のアナは母親の死をきっかけにその状況に陥っている。物語はアナの視線で語られ、それ故に作中には死のイメージが散見される。白い粉、ペットの死、冷蔵庫の中の鳥の骨。これらは全て子供ならではの死への空想力を実体化させたものだ。ここに「気に入らない人間は死ねばいい」という、平気で虫を踏み殺すような子供の無邪気な残酷性が合わさって、物語はよりダークな一面を見せる。中でも白い粉はアナに一種の万能感をも抱かせる。偶然父親が死んだことでこれは強化されるが、物語の最後叔母の毒殺に当然失敗してしまう。これによりアナは自分の空想が通用しない現実にぶち当たり、また1つ大人へと近づいていく。幼少期に見られる僅かな期間の、子供ならではの感情をすくいとった作品と言える。

タイトルの意味

『カラスの飼育』というタイトルはスペインの諺に基づいたもので、「カラスを育てれば目玉をえぐられる」というものだ。カラスはアナを指し、せっかく引き取ってやったのに毒殺を企てられる叔母の立場からのタイトルということだ。大人と子供の間には、人間とカラスと同じくらいの隔たりがあるという意味もあるのだろう。作中に大人になったアナ(ジェラルディン・チャップリンの1人2役)が過去を振り返るシーンがあるが、まるで他人事のように語っていく姿からも同じことが言えそうだ。

まとめ

『ミツバチのささやき』で衝撃的なデビューを果たしたアナ・トレントにサウロス・カウラが熱烈なラブコールを送って実現した作品。相変わらず全てを見抜くような力のある瞳は健在で、理不尽な大人に対抗する存在としてはうってつけの素材だ。他の2人の姉妹もなかなかの可愛さで、3人で大人ごっこをするシーンなどは思わず頬が緩んでしまう。しかし構成の複雑さからとっつきにくい作品であることは確かだ。現実と空想、過去と現在に未来が入り交じっており、初めて母親の空想が出てくるシーンなどではかなり混乱してしまうだろう。イメージが散乱していることも物語を難解にしている。だが一方でそれが物語に寓話性を与え、アナの存在感と相まって独特の浮遊感や透明感を作り出しているのもまた事実だ。

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