映画『桐島、部活やめるってよ』あらすじとネタバレ感想

桐島、部活やめるってよの概要:日本アカデミー賞をはじめとして2012年の映画賞を次々と受賞した傑作映画。観客の口コミで人気を広げ、半年以上にも及ぶ異例のロングランヒットとなった。本作が映画初出演となる俳優が多かったのも特徴である。

桐島、部活やめるってよ あらすじ

桐島、部活やめるってよ
映画『桐島、部活やめるってよ』のあらすじを紹介します。

バスケットボール部のキャプテンであった桐島が突然誰に相談することもなく部活を辞めた。友人だけでなく彼女でさえも桐島がなぜ部活を辞めたのか、何を考えているのか見当がつかない。桐島の友人である菊池(東出昌大)も同様、桐島の不在に狼狽するが、これをきっかけに彼は自分の根底に流れるある悩みに向き合うこととなる。

一方、映画部の前田(神木隆之介)や吹奏楽部の沢島(大後寿々花)は桐島騒動に巻き込まれることもなく日々の学校生活を送っていた。しかし、徐々にその日常生活にも密かな変化が訪れようとしていた。

ある日、渦中の桐島が学校の屋上にいるという噂がながれ、桐島の行方を追うバレーボール部の生徒や友人などが屋上に集結するが、そこに桐島の姿はすでになく、居たのは自主映画を撮影していた映画部の生徒たちだけであった。これまで交流のなかった二者が邂逅し、運動部の行くあてのない不安感や焦燥感と文化部のフラストレーションが爆発する。

これを見ていた菊池は、映画部の前田との何気ない会話を通して、自分の人生の根幹を揺るがすようなある答えを図らずも見つけることとなる。

桐島、部活やめるってよ 評価

  • 点数:100点/100点
  • オススメ度:★★★★★
  • ストーリー:★★★★★
  • キャスト起用:★★★★★
  • 映像技術:★★★★★
  • 演出:★★★★★
  • 設定:★★★★★

作品概要

  • 公開日:2012年
  • 上映時間:103分
  • ジャンル:ヒューマンドラマ、青春
  • 監督:吉田大八
  • キャスト:神木隆之介、橋本愛、東出昌大、大後寿々花 etc

桐島、部活やめるってよ ネタバレ批評

映画『桐島、部活やめるってよ』について、感想批評です。※ネタバレあり

「桐島」の不在は何を意味するのか

本作において特徴的なのは、騒動の中心である桐島という人物が終始一貫はっきりと姿を見せないということである。これまでにもさまざまな作品において取られてきた演出手法であるが、これには一体どのような効果があるのだろうか。中心を描かないということは、必然的にその周りで振り回される人間にフォーカスが当たるという効果がある。しかし、本作が秀逸なのはそもそもそのグループには端から属していない人物を描いているという点である。これにより本作の対立構造は「他者に振り回される人間」と「自分の価値観をもった人間」へと収斂していくのだ。

菊池の葛藤とその答えとは

東出昌大演じる菊池という男は常に意味を見出そうとしている。なぜ帰宅部なのにそそくさと帰らずいつまでもバスケをしているのか、甲子園に出られるわけでもないのになぜ高校野球をする意味があるのか。実際、彼はその意味を見出せず部活も幽霊部員状態である。すべてにおいて意味を見出そうとしていた菊池はその意味を全く見出せず、劇中では常にどこか寄る辺ない表情をしている。

屋上で映画部の前田に彼はこう問いかける。「将来は映画監督?」「女優と結婚?」と。彼は「君が映画を撮る意味は何?」と暗に問うているのだ。しかし、前田は「映画監督にはなれない」と断言する。そう、前田は単に映画を撮るという行為に魅了されていたに過ぎなかったのだ。すなわち、前田にとって意味などというものは考えたこともなかった訳である。菊池が泣きながら校舎を出る時、ふと目に入ったのは野球部の練習風景であった。意味など考えず、ただ野球が好きだというたったそれだけの理由をしっかり持っていれば、菊池は今でもあのグラウンドの上に立っていたのかもしれない。

これだけとってみれば一見切ない話であるが、本作は決してそんな悲観的なメッセージを伝えたいのではない。自分の気持ちに素直になる、そのことに気付いた時から新たな人生は始まるのだ。ラスト、エンドタイトルが画面に映し出される時、画面が真っ白になり、そこに黒字でタイトルが浮かび上がってくる。私にはあの白い画面は希望の光に見えてならない。

桐島、部活やめるってよ 感想まとめ

本作を見て「意味がわからない」と感じる人もいるようだ。本作は意図的にセリフでの説明を徹底して省いている。観客が頭を働かせて映画のメッセージを汲み取らなくてはならないのだ。眺めるように映画を鑑賞するのもひとつの楽しみだが、すこし考えてみると新たなものの見方に気付く事ができるかもしれない。それは決して映画に限ったことではない。人生についても同様である。悩むことも多いのが人生だが、唯一確固たるものがあるとすればそれは自分自身である。他者に決して惑わされることがないような強靭な自己を確立したその時から、世界の見え方は変わってくるのではないだろうか。最後に前田は劇中で撮影しているゾンビ映画の脚本にこんなセリフを加えている。「戦おう、ここが俺たちの世界だ。俺たちはこの世界で生きていかなければならないのだから」

青春映画の枠組みを超えた、人生を生きるすべての人に薦められる傑作である。

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