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映画『恐怖の報酬(1953)』のネタバレあらすじ結末と感想

映画『恐怖の報酬(1953)』の概要:破格の報酬目当てに、大量のニトログリセリンを油田火災の現場まで運ぶという危険な任務を引き受けた4人の男たちは、恐怖の行程を進んでいく。手に汗握る展開が続く珠玉のサスペンス。男たちの人間模様の描き方も秀逸。

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映画『恐怖の報酬』の作品情報

恐怖の報酬

製作年:1953年
上映時間:149分
ジャンル:サスペンス、アクション、ヒューマンドラマ
監督:アンリ=ジョルジュ・クルーゾー
キャスト:イヴ・モンタン、シャルル・ヴァネル、ペーター・ヴァン・アイク、フォルコ・ルリ etc

映画『恐怖の報酬』の登場人物(キャスト)

マリオ(イヴ・モンタン)
仕事を求め、フランスからベネズエラへやって来た移民。しかしここでも仕事にあぶれ、貧乏暮らしをしている。一攫千金を狙って危険な仕事を引き受ける。
ジョー(シャルル・ヴァネル)
ベネズエラへ逃げて来た男。昔はパリの顔役だったらしいが、今では落ちぶれている。同郷のマリオを気に入り、弟分にする。羽振り良く見せているが、実は一文無し。
ルイジ(フォルコ・ルリ)
マリオの同居人。陽気で人のいい男。建設現場のセメントで肺を悪くし、医者から余命宣告を受ける。死ぬ前に故郷へ帰りたいと願っている。
ビンバ(ペーター・ファン・アイク)
ユダヤ系移民で、ナチスの強制収容所にいた経験がある。命知らずの勇気ある男。
リンダ(ヴェラ・クルーゾー)
ラス・ピエドラスの酒場で働くマリオの恋人。マリオの無事を祈っている。
ビル・オブライエン(ウィリアム・タッブス)
アメリカの石油会社の責任者。ジョーと顔なじみの元悪党。油田火災の現場まで大量のニトログリセリンを運ぶ危険な仕事をマリオたちに任せる。

映画『恐怖の報酬』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)

映画『恐怖の報酬(1953)』のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまでわかりやすく簡単に解説しています。この先、ネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『恐怖の報酬』のあらすじ【起】

ベネズエラのラス・ピエドラスという寂れた町の酒場には、仕事にあぶれた労働者たちが集まっていた。彼らはあちこちの国から来た不法移民で、ビザを持っていない。その中には、フランスから来たマリオという青年もいた。

マリオは酒場で働くリンダと恋人同士だった。酒場の主人は、金もないのに店にたむろするマリオたちを疎ましがっていたが、何度追い払っても彼らは集まってくる。移民局も、彼らのことは放置していた。

飛行場に飛行機が到着し、白いスーツで身を固めた羽振りのよさそうな男が降りてくる。彼はジョーという名のフランス人で、検閲官に賄賂を渡して入国を許可してもらう。タクシーで町までやって来たジョーは、マリオが同じフランス人だと知り、タクシー代がないことを打ち明ける。マリオは酒場までジョーを案内し、酒場の主人を騙してタクシー代を払わせる。ジョーは、何かまずいことをして成り行きでここまで逃げて来たらしかった。

ジョーはマリオを弟分にして、酒場で大きな顔をし始める。酒場の親父は、ジョーを金持ちだと信じ込み、ツケで酒を飲ませていた。マリオは、“ここは入るのは簡単で出るのは難しい監獄のようなところだ”とジョーに説明する。ここにやって来た不法移民は、飛行機代もビザもないまま、飢えや伝染病で死んでいくのだった。

近くにあるアメリカ人地区の石油会社の責任者が、顔見知りのオブライエンだと知ったジョーは、彼に会いに行く。2人は、昔一緒に密輸をしていた悪党仲間で、ジョーはそれをネタに金をゆするつもりだった。しかしオブライエンはジョーを相手にせず、すぐに追い返してしまう。

酒場に集まる労働者たちは、高圧的なジョーを嫌っており、それはリンダやマリオの同居人であるルイジも同じだった。しかしマリオは、ジョーを大物だと信じており、ルイジやリンダよりジョーを優先する。そのせいでルイジとも喧嘩をしてしまう。

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映画『恐怖の報酬』のあらすじ【承】

そんなある日。500キロ先の油田で火事が発生し、犠牲になった労働者の家族たちが抗議活動を始める。オブライエンは事故の対応に追われ、油田火災をどうやって消すかの緊急会議を開く。

火事を消すには原油を燃やし尽くしてしまうしか方法がなく、そのためには大量のニトログリセリンを現場まで運ぶ必要がある。しかしニトロはここにあるが、それを輸送するための専用トラックがない。オブライエンは、普通のトラックで900リットルものニトロを運ぶと言い出す。他の幹部は“殺人行為だ”と反対するが、オブライエンは報酬さえ弾めば、死んでも誰も文句を言わないような労働者が集まってくるはずだと考えていた。

オブラエインの読み通り、2000ドルという破格の報酬につられ、ドライバー希望者が殺到する。その中には、マリオとジョー、そしてルイジもいた。ルイジは、セメントで肺をやられて医者から“長くて半年”の余命宣告を受けており、どうしても故郷へ帰る金が欲しかった。

少しの衝撃や熱で大爆発するニトロを、安全装置のないトラックで大量に運ぶという危険な仕事の内容を知り、帰ってしまった労働者も多かったが、最終的にマリオ、ビンバ、ルイジ、スメルロフという4名のドライバーが選ばれる。すでに初老のジョーは、辞退者が出た場合の予備に回される。

集合時間の午前3時。スメルロフだけが来ない。彼の代わりに来たのはジョーだった。どうやらジョーは、仕事欲しさにスメルロフを始末したようだ。しかしオブライエンは深く追求せず、マリオとジョーを組ませる。

2台のトラックにニトロが積み込まれ、ジョーとマリオが先に出発する。ジョーはかなりの徐行運転で慎重に走り始める。リンダは最後まで“行かないで”とマリオに泣きついていたが、マリオの決心は変わらなかった。

まだ17キロしか進んでいない時点でジョーは気分が悪くなり、ルイジとビンバのトラックに追いつかれてしまう。ルイジたちのトラックはマリオのトラックを追い越し、先に進む。酒場では威勢のいいことばかり言っていたジョーの不甲斐なさに、マリオは苛立ちを感じ始める。

映画『恐怖の報酬』のあらすじ【転】

その先は悪路が30キロ続く難所で、スピードを落とさずに走りきるのが大事だった。ルイジは加速して悪路を走り抜けようとするが、トラックに軽油が入っていたため、スピードはどんどん落ちていく。

一方、マリオたちもようやく出発し、悪路に入ろうとしていた。しかしジョーは恐ろしくてどうしても加速できず、業を煮やしたマリオが運転を代わる。マリオはトラックをバックさせて加速できる距離まで下がり、猛スピードで悪路を走り抜けていく。

ルイジのトラックは徐行運転するしかなくなり、2台の距離はどんどん縮まっていく。前方にルイジのトラックが見え、今更減速できないマリオはサイレンを鳴らして警告する。あと数秒で衝突するという時にルイジのトラックが悪路を抜け、加速が可能となる。ジョーはあまりの恐怖に言葉を失っていた。

トラックは道路工事中の山道に入り、1回では回りきれない場所に突き当たる。ルイジとビンバは、崖上に組み立てられた木の足場でトラックを切り返す。一部の木が腐っていて危険な状態になるが、2人は力を合わせてピンチを脱する。ルイジは、後から来るマリオたちのために、注意を喚起する目印を立てておく。

マリオは足場を確かめ、腐っている部分を回避して、トラックの切り返しを始める。誘導していたジョーは恐れをなし、谷底へ落ちたふりをして逃げ出す。マリオは自力でなんとかこの難所を乗り切り、坂の上にいたジョーを無視してトラックを走らせる。追いかけて来たジョーを一応トラックに乗せてやるが、マリオは完全にジョーを見限っていた。

先を急いでいたルイジたちは、道を塞ぐ巨大な石に行く手を阻まれる。ビンバは、穴を開けてそこにニトロを流し込み、石を爆破させることにする。2人が慎重に作業を進めていると、マリオたちのトラックも現場にやってくる。ビンバはトラックを安全な場所までバックさせるよう指示を出し、自ら危険な作業を続ける。

ビンバは3人を避難させ、導火線用の縄に火をつけ、石から離れる。しかし、飛び散った石の破片がトラックに当たったら終わりだと気付いたルイジは、火を消そうと石の方へ走っていく。その時、ものすごい爆音とともに石が爆発する。

発破作業は成功し、ルイジも生きていた。このピンチを乗り切り、ビンバとルイジは上機嫌だった。マリオは役立たずのジョーにうんざりしながら、トラックを走らせていた。すると、前方のルイジのトラックが、爆音とともに消え去る。

映画『恐怖の報酬』の結末・ラスト(ネタバレ)

ニトロの爆発を目の当たりにし、ジョーはトラックから降りて逃げてしまう。マリオはジョーを追いかけ、彼を殴り飛ばす。ジョーは惨めさと恐怖で泣いていた。

ジョーは逃げることを諦め、トラックに乗る。爆発の現場には大きな穴が空き、壊れたパイプから原油が流れ出していた。トラックもルイジやビンバの遺体も、跡形もなく消え去っていた。

マリオは先へ進む決意をし、原油の溜まった大穴を越えようとする。このネバネバの中でトラックが止まると発進できなくなるので、入ったからには走りきるしかない。ところが、外で先導していたジョーが大きな木の枝をどかそうとして転んでしまい、起き上がれなくなる。トラックを止められないマリオは、ジョーの足を轢いて先へ進む。ジョーはあまりの痛みで気絶してしまう。

出口の坂を登る時、タイヤがスリップして前へ進めなくなる。マリオは穴の向こうに杭を打ち、タイヤにロープをつないでトラックをなんとか脱出させる。その後、ジョーの足を応急処置してトラックに乗せ、残りの道を走り始める。

ジョーは自分の死期を感じ、弱気になっていた。マリオはジョーを励まし、眠らせまいと話をさせる。ジョーは、パリのことばかり話していた。

マリオは黙々とトラックを走らせ、ゴールを目指す。辺りはすでに真っ暗だった。そしてついに火災の続く油田が見える。マリオはジョーに声をかけるが、ジョーはすでに息絶えていた。マリオは泣きながらジョーの遺体を抱え、“安らかに眠れ”と声をかける。

油田に到着したマリオは、作業員たちに大歓迎される。マリオはタバコを一服し、そのまま外で眠ってしまう。

翌日。たった1人で任務を果たしたマリオは、4000ドルの報酬をもらう。町の酒場には、“ルイジとビンバとジョーは死んだが、マリオだけは帰ってくる”という知らせが入る。ずっとマリオの無事を祈り続けていたリンダは歓喜する。

ニトロという恐怖の積荷がなくなり、マリオは上機嫌でトラックを走らせていた。しかし浮かれていたマリオは山道を蛇行運転し、運転ミスをして崖下に転落してしまう。トラックは大破し、マリオはそこで命を落とす。鳴り止まないサイレンが、マリオの痛ましい死を知らせていた。

映画『恐怖の報酬』の感想・評価・レビュー

「ニトロ」を載せたトラックを油田火災の現場まで運ぶ道中をかなりスリリングに描いた今作。二手に分かれてニトロを運びますが、メインに描かれるのはマリオとジョーのチーム。このジョーが本当にクズな男でそもそも仕事を貰うために仲間を殺して参加してくる時点でやばいのですが、トラックに乗り込んでからもずっと怖がっていて、すぐに逃げ出そうとしたり、簡単な作業なのにミスをしたりと終始イライラしました。
マリオだけがたどり着き、ハッピーエンドかと思いましたがラストの展開は思わず声が出てしまうほど驚きました。(女性 30代)


後半の爆薬運搬は勿論、前半の群像劇もしっかり楽しんでおいた方が良いでしょう。前半は油田での大規模火災についてや、人物の描写を非情に丁寧に描いており、これらが後半に生かされています。ダンプでニトロを運ぶ際の緊迫感が、凄まじいです。極限状況の中、メンバーの力関係に変化が生じてくるあたりも、息が詰まりそうな緊張を覚えました。ニトログリセリンといえば狭心症の薬というイメージがありましたが、ダイナマイトの原料なんですね。現代は労働基準法等があり、ありがたいと思います。(女性 30代)

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