『蝿の王(1963)』あらすじ&ネタバレ考察・ストーリー解説

ノーベル賞作家ウィリアム・ゴールディングの原作を演劇界の巨匠ピーター・ブルックの手によって映像化された作品。無人島に漂流した24人の少年たちが、徐々に暴走していく様を描く。

あらすじ

蝿の王(1963)』のあらすじを紹介します。

少年達を乗せた飛行機が墜落し、無人島に24人の少年が流れついた。少年ラルフ(ジェームズ・オーブリー)は落ちていたホラ貝を鳴らして皆を一所に集めると会議を始めた。そこでラルフがリーダーとなること、島の一番高い所で火を起こして助けを求めることなどが取り決められた。小太りの少年ピギー(ヒュー・エドワーズ)の眼鏡を使って何とか火を起こすことはできたが、徐々に少年たちの統率はとれなくなっていく。中でも悪童のジャック(トム・チェイピン)はその野性的なカリスマを発揮していく。狩猟隊を組んで子豚を狩った彼は仲間たちの支持を得て、ラルフたちのグループと対立するようになる。

ある夜、ジャックたちのグループが豚を焼いて宴を開いていると、暗闇の中で動くものがあった。高揚した彼らはその何かに木の槍を突き立てる。しかしそこにいたのは仲間のサイモンであった。暴走していくジャックたち一派に危機感を感じたラルフはピギーを引き連れて話し合いに赴く。しかしそこでジャックの仲間はピギーめがけて岩を落とし、彼を死に至らしめる。最後の仲間を失ったラルフは島中を逃げ回る。ついにその体力も限界に近づいた時、彼の目の前に軍人の姿が現れるのだった。

評価

  • 点数:70点/100点
  • オススメ度:★★★☆☆
  • ストーリー:★★★☆☆
  • キャスト起用:★★☆☆☆
  • 映像技術:★★★☆☆
  • 演出:★★★★☆
  • 設定:★★★★★

作品概要

  • 公開日:1963年
  • 上映時間:90分
  • ジャンル:ヒューマンドラマ
  • 監督:ピーター・ブルック
  • キャスト:ジェームズ・オーブリー、ヒュー・エドワーズ、トム・チェイピン、ロジャー・エルウィン、トム・ゲイマン etc…

ネタバレ考察・ストーリー解説

『蝿の王(1963)』について、2つ考察・解説します。※ネタバレあり

子供が持つ異化効果

この映画にはほとんど子供しか登場しないが、彼らは作品に異化効果をもたらしている。異化効果とは、物語や登場人物への理解や感情移入を妨げることで、客観的に観ることができるようになるという効果だ。例えばイソップ童話なども動物を主人公にすることで、その教訓性が強調されている。

もしもこの映画の登場人物が全員大人だったらどうであろうか。恐らく彼らの行為はごく自然に観客に届き、彼らの個人的な物語になり兼ねない。子供であるからこそ彼らの行為は観客から遠くに感じられ、彼ら個人の物語でなくもっと普遍的な人間の姿を描いた作品として観る側に届くのだ。

戦争という背景

物語の背景には戦争の影がある。直接物語に関わってはこないが、イギリスが核攻撃を受けて疎開先に向かっていた途中であるという設定だ。そのことを念頭においてみると興味深い。主人公のラルフは多数決という民主主義によってリーダーに選ばれるが、1人のカリスマの前にその求心力を奪われてしまう。まるで戦争に突き進む国家のミニチュアのようだ。或いはピギーが持つ眼鏡も暗喩的だ。自然に満ちた島の中で眼鏡は唯一文明を感じさせる小道具だ。しかしそれに火を起こすという本来とは違う効果があったばかりに、結果争いの火種になってしまう。核戦争という設定と何らかの関連があるのではと疑ってしまう。

まとめ

ノーベル賞作家ゴールディングの代表作を、イギリスの舞台演出家ピーター・ブルックが映画化。1990年にもハリー・フックによって再度映画化されているが、そちらはややファミリー向けとなっている。何よりもハリー・フック版と比べ今作は白黒ということもあり、かなり不気味な仕上がりになっている。ジャック一味のフェイスペイントは不吉な予感を駆り立て、不意にインサートされる豚の頭のクロースアップなどは観ていてギョッとしてしまう。ともかく原始的な狂気を感じさせる作品だ。

ちなみに本作のDVDは楳図かずお氏によるイラストがパッケージを飾ったものが出回っている。これは彼が同様のコンセプトで『漂流教室』を描いていたからだと思われるが、作品の世界観を上手く表現したものになっている。

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