映画『ザ・マジックアワー』のネタバレあらすじ結末 | MIHOシネマ

映画『ザ・マジックアワー』のネタバレあらすじ結末

ザ・マジックアワーの概要:“もし、映画の撮影だと信じ込んで殺し屋を演じていた役者が、本物のギャングの抗争に巻き込まれたらどうなるか”という設定のシチュエーション・コメディ。三谷幸喜監督作品ならではの豪華なキャストやセットに加え、有名なマフィア映画をパロディ化した演出も笑える。

ザ・マジックアワーの作品概要

ザ・マジックアワー

公開日:2008年
上映時間:136分
ジャンル:コメディ
監督:三谷幸喜
キャスト:佐藤浩市、妻夫木聡、深津絵里、綾瀬はるか etc

ザ・マジックアワーの登場人物(キャスト)

村田大樹(佐藤浩市)
「暗黒街の用心棒」で主人公を演じた高瀬允に憧れ、役者を志す。しかし芝居が臭すぎるため、何年続けても全く売れない。反面、撮影スタッフには人気がある。何かあると「暗黒街の用心棒」を観る。備後に騙され、殺し屋のデラ冨樫を演じることになる。
備後登(妻夫木聡)
守加護という港町で、クラブの支配人をしている。この街を牛耳るボスの情婦であるマリに手を出してしまい、デラ冨樫を連れてこないと殺されるという窮地に立たされる。以前、映画の撮影現場でバイトをしたことがあり、村田をうまく騙してデラ冨樫を演じさせる。
高千穂マリ(深津絵里)
歌手であり踊り子。備後とは売れない時代からの長い付き合い。ボスの情婦となって贅沢をさせてもらうが、籠の鳥のような生活が嫌になり、備後を誘惑する。冷めた性格で、他人に興味がない。
天塩幸之助(西田敏行)
守加護を牛耳るギャングのボス。街の有力者ともパイプがあり、ずっと怖いものなしだったが、最近天塩商会から独立した江洞商会の勢力に押され気味。商売柄、表に出せない金がある。海外のゲリラ組織とも武器の取引などをしている。
黒川裕美(寺島進)
ボスの側近。人を信用しない冷酷なギャングだが、村田が演じるデラ冨樫にはすっかり騙される。最後まで村田のことを凄腕の殺し屋だと信じている。

ザ・マジックアワーのネタバレあらすじ

映画『ザ・マジックアワー』のあらすじを結末まで解説しています。この先、ネタバレ含んでいるためご注意ください。

ザ・マジックアワーのあらすじ【起】

守加護という港町でクラブの支配人をしている備後登は、この町を牛耳るギャングのボスの天塩幸之助の情婦である高千穂マリと寝てしまい、天塩商会のギャングに拉致監禁される。

備後はひたすら謝るが、マリが反発してボスの怒りを買い、2人は殺されそうになる。備後はとっさに、ギャングたちが血眼になって捜しているデラ冨樫という謎の人物の名前を出し、彼を知っていると嘘をつく。ボスは5日以内にデラ冨樫を連れてくるという条件で、備後を解放してくれる。備後は何も知らなかったが、デラ冨樫とは、誰も姿を見たことがない伝説の殺し屋だった。

唯一の手がかりはボケボケの写真で、デラ冨樫がこの町にいるらしいことがわかる。しかしデラ冨樫は見つからず、備後は苦肉の策を思いつく。それは誰も顔を知らないような売れない役者を映画の撮影だと偽ってこの街に連れてきて、デラ冨樫という殺し屋の役を演じさせるというものだった。

備後がデラ冨樫の替え玉に選んだのは、村田大樹という中年の役者だった。村田は「暗黒街の用心棒」で主演を務めた高瀬允を崇拝するベテラン役者だったが、今まで名前のある役をほとんどもらったことがない。それでも、熱血漢の村田は現場のスタッフに愛されており、細々と役者稼業を続けていた。

備後は撮影所を訪れ、“自主制作映画の主演をお願いしたい”と村田を口説く。しかし脚本もなく、監督は未経験の備後が務めると聞き、村田とマネージャーの長谷川は、さっさと席を立つ。

任侠映画で有名なゆべし主演の映画に呼ばれた村田は、端役ながら全力投球で芝居をする。しかしなぜかゆべしは村田の芝居を好まず、ただのスタッフを代役に押す。さすがの村田もこれには落ち込み、黙って撮影所を去る。外では備後が待っていた。

ザ・マジックアワーのあらすじ【承】

村田は備後の映画に賭けてみることにして、守加護へ向かう。守加護は、街全体が映画のセットのようになっており、村田はすっかりその気になる。

しかし長谷川は未だにこの話を信じておらず、“カメラを見せてくれ”と備後に要求する。備後のクラブでバーテンダーをしている鹿間は、ちょうど街でCM撮影をしていた一行を“ガス漏れが発生したのですぐ避難しろ”と追い払い、彼らが残していったカメラを奪うことに成功。鹿間の娘の夏子も協力し、急遽偽の撮影を始めることになる。主演女優は、マダム蘭子のホテルに宿泊中のマリに頼む。マリは渋々、村田の相手役を務める。撮影はかなり適当だったが、何とか備後の嘘はバレずに済む。

翌日、いよいよ備後はデラ冨樫を演じる村田を連れ、ボスのもとへ行く。村田は自分なりにプランをあれこれ考えており、ボスの事務所で大胆な芝居を披露する。本物のデラ冨樫は、天塩商会と敵対する江洞商会に雇われ、ボスの命を狙っていた。全ては撮影だと思っている村田は、おもちゃの銃を出し、ボスを脅したうえ、窓から脱出。下にはしっかりトランポリンが仕込んであった。備後は死ぬほどドキドキするが、ボスは村田の度胸に感心する。

ボスは村田を気に入り、“うちに来ないか”と誘う。しかし村田はそれを断る。村田は本物の銃を突きつけられるが、撮影だと思っているので全く怯まない。焦った備後は“カット!”と叫んで事務所に飛び込み、村田を叱る。村田が備後の言うことは何でも聞くのを見て、ギャングたちは感心する。備後の命令で、村田は天塩商会に雇われる。

ボスは江洞に電話して、“デラ冨樫は私のところで引き取った”と伝える。江洞と食事中だった本物のデラ冨樫は、自分の偽物がいると知って激怒する。

ボスの側近の黒川は、簡単に人を信用しない主義で、村田のことも疑っていた。黒川はゲリラ組織との取引に村田を連れ出し、彼の忠誠を試す。これも撮影だと思い込んでいる村田は、本物の銃弾の中で暴れ回り、黒川の信頼を勝ち取る。報告を受けたボスは、村田を食事に誘う。

食事会は備後のクラブで行われ、ボスの希望でマリがステージで歌う。ボスはマリの楽屋を訪ね、帰ってくるように言う。しかしマリはそれをはねのけ、ボスの怒りを買う。

ザ・マジックアワーのあらすじ【転】

その夜、会計士を務める菅原の告発により、天塩商会に国税局の査察が入るという情報を黒川がキャッチする。ボスは村田に銃を渡し、“今夜中に菅原を消してくれ”と依頼する。このままでは村田が本物の殺し屋になってしまうと、備後たちは焦る。

何も知らない村田は、街のバーで銃を見せびらかしていた。備後は本当のことを打ち明けようとするが、なかなか言い出せない。そこへ黒川と江洞までやってくる。本物のデラ冨樫を知っている江洞を前に、村田は備後の命令でバレバレの芝居をして、江洞に“君の勇気は筋金入りだ”と褒められる。

ボスを怒らせてしまったマリは、備後を道連れにして街を出ようとする。備後も一旦はマリの誘いに乗るが、村田のことが気になって引き返す。村田はカメラを持った鹿間と夏子とともに、菅原の隠れ場所の病院を訪れていた。村田が菅原に銃口を向けた瞬間、備後が飛び込んできて“カット!”の声をかける。

備後は菅原を警察に預け、ボスに“デラ冨樫がしくじった”と嘘をつく。しかし街の警察署長とボスは通じており、菅原の身柄はすでに天塩商会へ戻されていた。備後は裏切り者とされ、菅原とともに地下へ監禁される。

夏子は備後を救うため、村田にボスの殺害を依頼する。村田は話の流れが唐突すぎると反論するが、鹿間にうまくごまかされ、その気になってボスの事務所へ乗り込む。ボスはなぜ村田が怒っているのかよくわからなかったが、とりあえず村田も地下へ監禁する。

足をセメント漬けにされ、ボスの部下に殴られ、村田はようやくこれが映画の撮影ではないことに気づく。マリは夏子に説得され、3人を助けに行く。縄を解かれた村田は、備後を思い切り殴る。逃げようとした備後たちは黒川に見つかってしまうが、デラ冨樫を演じた村田に助けられたことがあった黒川は、彼らを見逃してくれる。黒川は、まだ村田をデラ冨樫だと思い込んでいた。

ザ・マジックアワーのあらすじ【結】

マリはボスのもとへ帰り、村田は帰り支度をする。備後はマリを救い出すためのシナリオを考え、村田に協力を依頼する。しかし村田はそれを断り、タクシーに乗り込む。

タクシーの中で、大事な宝物(撮影所にあった古い毛布の切れ端)を街の映画館に落としてきたことに気づいた村田は、映画館へ向かう。ちょうど映画館では、CMスタッフがこの街で撮影したフイルムのラッシュを確認していた。スクリーンに映し出されたのは、デラ冨樫を演じている村田の姿だった。スタッフたちは“誰だ!?”と混乱するが、村田は感動の涙を流す。それは村田の長い役者人生の中で、最高の瞬間だった。

村田は備後たちのいるホテルへ戻り、備後の芝居に参加すると告げる。村田はこれを最後に役者をやめる決心を固めていた。村田の声かけで、本物の撮影スタッフたちが守加護に続々と集まってくる。

備後は、天塩商会の帳簿を正確に暗唱する菅原の動画をボスに送り、菅原とマリの交換を要求する。ボスは、自分の後ろ盾となっていた街の権力者も江洞に奪われ、窮地に追い込まれる。

村田は、街でのCM撮影に参加していた高瀬允と話をする。高瀬は「暗黒街の用心棒」しか代表作のない落ちぶれた老人だったが、今も再起のチャンスを狙って役者を続けていた。憧れの高瀬に“あきらめるのは早い”と言われ、村田の心は揺れる。

いよいよ、備後の書いた大芝居が始まる。備後のシナリオはこうだ。菅原とマリを交換するため、ボスを港へ呼び出す。マリと菅原を交換後、菅原は車の陰に逃げ込み、服に血糊を仕込んだ鹿間の演じる偽の菅原が飛び出す。それを黒川が撃つ。偽の菅原は撃たれたふりをして海に転落。本物の菅原は夏子の車で逃げ、国道に待機中の国税局に引き渡す。ボスの目を誤魔化すため、長谷川たちの演じるゲリラ組織が登場して、マリを渡せと要求。そこで村田が登場し、“マリのことは頼んだぞ”と言って、ゲリラ組織と戦う。備後はマリを連れて逃げるようとするが、村田が撃たれ、マリも蜂の巣にされ、その死体を抱えて車に乗り込んだ備後は、車ごと爆発炎上するという大掛かりなものだった。

しかし、物陰で様子を見ていたボスが、予想外に飛び出してきて“殺すなら私を殺せ”と言い出す。これを芝居だと知らないボスは、身を呈してマリを守ろうとしていた。それを見たマリは感動し、ボスのもとへ走る。2人は手に手を取って、幸せそうに去っていく。

芝居が台無しになってがっかりする一行の前に、本物のデラ冨樫が現れる。村田は咄嗟に“デラ冨樫は俺だ”と叫び、先ほどの芝居で出番がなかった発破や爆薬を派手に使って、超人的な殺し屋を演じる。ベテランスタッフとの呼吸もぴったりで、驚愕したデラ冨樫は大急ぎで逃げていく。大芝居は見事に大成功。村田も役者を続けることにして、ボスに見捨てられた黒川は村田に弟子入りする。

ザ・マジックアワーの解説・レビュー

俳優の魅力を引き出す力

本作は、三谷監督の“佐藤浩市メインの映画を創りたい!”という思いから始まっている。

そこで、佐藤浩市という俳優に何をやらせたら面白いかを考え、最初に浮かんだビジュアルイメージが“トランポリンの上で上下運動する佐藤浩市”だったらしい。
そして、実現したあのシーン。
佐藤演じる村田大樹がボスの事務所の窓から飛び降り、仕掛けておいたトランポリンで跳ねながら得意げにポーズを決めまくるという、あのシーンは確かに面白かった。

三谷幸喜は今までのイメージをぶち壊す役を俳優に与える。そしてそれを俳優も喜ぶ。
その相乗効果はかなりの確率で成功している。

実際、佐藤も“普段はそうでもないが、村田大樹という役には離れがたい愛着を感じる”と言っている。

俳優は自分の新しい魅力を引き出してくれる作品を常に求めている。
だから、俳優は三谷幸喜から声がかかると喜ぶのだ。

日本でのファンタジーコメディの難しさ

本作を、ファンタジーだとは思わない人は多いかもしれない。

しかし、本作の舞台になっている“守加護”という町は、完全にファンタジーの世界だ。
これは三谷監督の狙いなのだが、このリアルとファンタジーの境界線がわからない人は“そんなことありえない”と感じることだらけで、なかなか本作を素直に楽しめないだろう。特に頭の固くなった評論家には通じにくい世界観だ。

三谷監督は守加護の町を作るにあたって、観客がリアルに引き戻されないよう細心の注意を払っている。
ヤクザではなくてギャング、ホテルにいるのは制服を着たホテルマンではなくて厚化粧のマダム。ここでは、徹底的に生活感が排除されている。
なぜなら、ファンタジーの世界に生活臭はご法度だからだ。

ファンタジーコメディというジャンルの映画がほとんど見当たらない(多分創れない)日本の映画界で孤軍奮闘する三谷監督には、これからも是非頑張って欲しい。

ザ・マジックアワーの感想まとめ

本作はとにかく手間暇とお金のかかった映画だ。

村田大樹という役者がいかに売れていないかをわからせるために「黒い101人の女」(市川崑監督の「黒い十人の女」のパロディ)という映画の撮影シーンを撮影し、その現場には中井貴一、天海祐希、山本耕史、さらに市川崑監督まで出演している。

巨大なセットで作られた架空の町に住む人々の衣装一つ見ても全く妥協がない。

これだけのスケールで、SF超大作や歴史スペクタクルではなく、ひたすら悪ふざけに徹したコメディを作ってしまうのだからすごい。いや、だからこそ面白いのだけれど。

緻密な脚本で土台固めされた夢の国でのドタバタ劇は、まさに「ザ・娯楽映画」。
何も考えたくない時に、ぜひ観てほしい一本だ。

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