映画『摩天楼を夢みて』あらすじネタバレ結末と感想

摩天楼を夢みての概要:過酷な生存競争を強いられる不動産会社のセールスマンたちの悲哀と戦いを描いた群像劇。戯曲を原作とした舞台劇のような脚本にアル・パチーノ、ジャック・レモンなど実力派の名優たちが挑む。1992年公開のアメリカ映画。

摩天楼を夢みて あらすじネタバレ

摩天楼を夢みて
映画『摩天楼を夢みて』のあらすじを紹介します。※ネタバレ含む

摩天楼を夢みて あらすじ【起・承】

ニューヨークの不動産会社ミッチ&マレー社の支店には5人の社員がいた。言葉巧みに契約を取る成績優秀なリッキー・ローマ(アル・パチーノ)。かつてはやり手だった老齢のシェリー・レーヴィン(ジャック・レモン)。愚痴ばかり言っているデイヴ・モス(エド・ハリス)。弱気な性格でセールスに向かないジョージ・アーロナウ(アラン・アーキン)。そして彼らセールスマンをまとめる支店長のジョン・ウィリアムソン(ケヴィン・スペイシー)だ。

激しい雨の夜。ローマ以外の3人は本社から来たブレイク(アレック・ボールドウィン)に成績不振を怒られ、今晩契約を取ってこいと命令される。ブレイクは1位にはキャデラック、2位にはナイフセット、そして3位はクビという賞品を与えると冷酷に告げる。

しかし3人には不利な条件があった。それは成績不振のセールスマンには希望の薄い(クズの)顧客情報しか与えてもらえないということだ。3人はウィルアムソンに抗議するが彼は“本社の命令”の一点張りで話を聞こうとはしない。

病気の娘を抱えるレーヴィンは、金を払うから優良顧客の情報をくれとウィリアムソンにしつこく食い下がる。しかし、娘の入院費にも事欠くレーヴィンにはウィリアムソンの要求する金額は払えない。彼は仕方なくクズの顧客宅を訪ねるが話も聞いてもらえなかった。

モスは自分たちの成績不振は全てクズ情報しか渡さない会社のせいだと言い、いっそ優良顧客情報を盗み出して他社に売り、儲けを山分けしようとアーロナウに持ちかける。

ローマはバーで会ったばかりのリンク(ジョナサン・プライス)と飲みながら、彼に土地を買わそうとあの手この手で彼を言いくるめていた。

摩天楼を夢みて あらすじ【転・結】

翌朝、昨晩事務所で窃盗事件があったと聞いたローマは、対応に追われるウィリアムソンに“自分の契約書はどうなった!”と詰め寄る。

ローマはあれからリンクに土地を売り、契約書と小切手をウィリアムソンの机の上に置いていたのだ。ウィリアムソンはリンクの契約書は昨夜のうちに本社へ送ったから大丈夫だと言ってローマをなだめる。

そこへレーヴィンが8万2000ドルの契約を取ったと興奮して出社してくる。警察の事情聴取を終え別室から出てきたモスは、レーヴィンに嫉妬してケチをつけ、それを咎めたローマにまで怒り狂って帰ってしまう。

レーヴィンはウィリアムソンにしこたま嫌味を言い、たまっていた憂さを晴らす。そこへ突然リンクがやってくる。

リンクが契約破棄をしに来たと読んだローマは、レーヴィンを相手に芝居を始める。レーヴィンは長年の勘ですぐに全てを察し、一緒に芝居をしてくれる。しかし、ウィリアムソンの不用意な発言で、ローマの苦労は水の泡となりリンクは帰ってしまう。

怒ったローマはウィリアムソンを散々罵倒し、事情聴取のため別室に入る。レーヴィンもウィリアムソンを罵倒し“作り事を言うからだ”と彼に言う。

それを聞いたウィリアムソンは“作り事だとなぜ知っているんだ”とレーヴィンを追及する。実はウィリアムソンは昨夜自宅にいてリンクの契約書は一晩机の上にあった。レーヴィンは昨夜会社でそれを見たからウィリアムソンがローマに嘘をついた事がわかったのだ。

レーヴィンはモスに誘われた事を打ち明け、娘のために何とか助けて欲しいと頼むがウィリアムソンは聞く耳を持たず、刑事のところへ行く。

事情聴取を終えたローマはレーヴィンの芝居のうまさを褒め“大先輩だ、尊敬している”と彼を讃える。レーヴィンはローマへ何か言いたげにしながら、別室へと呼ばれていく。

摩天楼を夢みて 評価

  • 点数:85点/100点
  • オススメ度:★★★★☆
  • ストーリー:★★★☆☆
  • キャスト起用:★★★★★
  • 映像技術:★★★☆☆
  • 演出:★★★★☆
  • 設定:★★★☆☆

作品概要

  • 公開日:1992年
  • 上映時間:100分
  • ジャンル:ヒューマンドラマ、サスペンス
  • 監督:ジェームズ・フォーリー
  • キャスト:アル・パチーノ、ジャック・レモン、アレック・ボールドウィン、エド・ハリス etc

摩天楼を夢みて 批評・レビュー

映画『摩天楼を夢みて』について、感想と批評・レビューです。※ネタバレ含む

真実が見えない騙し合い

原作が戯曲というだけあって、最初は洪水のようなセリフに驚く。とにかくみんな怒涛のようにしゃべる。しかもセールスマンたちの言葉は何が本当なのかさっぱりわからない。首をひねり疑いながら、真実を見極めようとすることで自然とこの物語に引き込まれる。

前半、アレック・ボールドウィン演じるブレイクの説教のしつこさには正直うんざりする。しかしこのシーンで、彼らのいる不動産業界というのがいかに冷酷で厳しい競争の世界なのかがよくわかる。

彼らは詐欺師のように相手の心理を操り、契約書にサインをさせるプロ集団だ。彼らの言葉は本当なのか嘘なのか、それがわからないから先の展開もさっぱり読めない。

そのスリルは最後の最後まで続く。アル・パチーノ演じる敏腕セールスマンのローマがジャック・レモン演じるレーヴィンを最後に褒めちぎるのは、ちょっといい話のように一旦は思う。しかしよくよく考えてみると、あれはレーヴィンが犯人だと分かった上で、ローマが別れの餞に演じた猿芝居だったのかと、そんな気がしてくる。できるセールスマンほど腹の底は見せてくれない。プロの彼らの本音なんて、自分ごときに読めるはずがない。

実力者たちの芝居合戦

それにしても豪華なキャスティングだ。アル・パチーノ、ジャック・レモン、ケヴィン・スペイシー、アレック・ボールドウィン、エド・ハリス、アラン・アーキン、ジョナサン・プライス…。そうそうたる名優がずらりと顔を揃えている。

本作は、ほとんど密室劇のような構成になっているのでこの脚本を生かすも殺すも役者の芝居が全てといっていい。だからこそこのメンバーが集められたのだろうし、その狙いは見事に成功している。

中でもジャック・レモンの熟練の技は際立っていた。特に注意して見て欲しいのが長ゼリフの時の巧さ。一呼吸で彼が喋り切るセリフの量とそのなめらかさには脱帽だ。何もかも失ったと知った時の彼の悲しげな表情はどうだろう。老齢のセールスマンの悲哀がひしひしと伝わってくる。

物語後半、事務所で繰り広げられる実力者たちの芝居合戦は見応えがあるなんてものじゃない。すごいことになっている。

摩天楼を夢みて 感想まとめ

好みが分かれると思うが、硬派な映画ファンにはたまらない作品だ。特に派手な演出よりも、脚本の面白さと役者の芝居に目がいくタイプの人にはド・ストライク間違いなし。

美しい描写も和やかな空気もロマンチックなラブシーンも全くない。それどころか女優さんが一人も登場しない。土砂降りの長い夜がやっと明けたと思ったら、舞台はなんの色気もない雑然とした事務所に移り、そこから一切出ない。そこで男たちの容赦ない言葉の応酬と騙し合いが続く。

ピューリッツァー賞を受賞したデヴィッド・マメットのこの戯曲を、舞台で楽しむことは難しい日本の観客にとって、気軽に見られる映画で臨場感あふれる役者の芝居を堪能させてもらえるなんてありがたい話ではないか。

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