映画『人間蒸発』のネタバレあらすじ結末

人間蒸発の概要:突然失踪してしまった婚約者の行方を追う女性に今村昌平監督と撮影スタッフが密着する。蒸発者の謎に迫るドキュメンタリー映画のようであるが、事態は思わぬ方向へ展開していき、真実はどんどん見えなくなる。今村昌平監督の個性が光る1967年公開の日本映画。

人間蒸発の作品概要

人間蒸発

公開日:1967年
上映時間:130分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:今村昌平
キャスト:露口茂、早川佳江 etc

人間蒸発の登場人物(キャスト)

早川佳江
通称ネズミ。1年半前に婚約者の大島裁が突然失踪し、それからずっと彼の行方を捜している。幼い頃から気性が荒く、潔癖なところがある。両親とは死別しており、兄弟もそれぞれに独立。現在は姉のサヨのアパートに居候している。
露口茂
この映画のナビゲーターでありインタビュアーの役割を果たす。佳江とともに大島の消息を追っていく。
早川サヨ
佳江の姉。置屋の女将の養女となり、芸者をしていた。とある社長の愛人。

人間蒸発のネタバレあらすじ

映画『人間蒸発』のあらすじを結末まで解説しています。この先、ネタバレ含んでいるためご注意ください。

人間蒸発のあらすじ【起】

プラスチック食器卸をしている岡産業株式会社の営業マンだった大島裁(32)は昭和40年の4月12日に福島方面へ出張し、4月18日には東京へ帰ってくる予定だったが帰らず、そのまま行方不明となってしまう。婚約者の早川佳江は警視庁へ家出人捜索願の届出を出すが、その後1年半経っても大島の消息はつかめなかった。

近年増え続ける失踪者の消息を追うドキュメンタリー映画を企画していた映画監督の今村昌平は大島のことを知り、佳江に映画の出演を依頼する。佳江は自分の気持ちにケジメをつけるために出演を承諾し、勤務していた会社を退職する。ナビゲーターとして俳優の露口茂が常に佳江とともに行動し、大島を知る人々に話を聞いていく。

大島は新潟県直江津市出身で、貧しい農家の末っ子として生まれた。中学を卒業後上京し、岡産業の社長宅でお世話になりながら同会社で営業を担当する。15年も大島の世話をしてきた岡社長夫妻は彼のことをずっと「ただしちゃん」と呼んで可愛がっており、気の小さいおとなしい男だったと話す。しかし大島には4年前に会社の金を40万ほど使い込んだ過去があった。本人の給与や兄弟の援助で返済はしていたが、この過去が大島の失踪に関係しているのではないかと思われた。

人間蒸発のあらすじ【承】

撮影班は大島の実家を訪ねる。母親は信用している霊媒師に騒がない方がいいと言われており、内心はこの撮影を迷惑がっていた。大島の失踪についてもひた隠しにしており、撮影班は体裁を重んじる田舎の村社会の現実を垣間見る。

同僚や友人の話から、大島は酒好きで女関係も決して地味ではなかったことがわかる。大島が女性を泣かせることもあったが、佳江と付き合う前の彼女である戸川キミ子には振られていた。キミ子は大島と交際中に大学出のエリートサラリーマンと知り合って二股をかけており、最終的に大島を捨てた。佳江はキミ子と会って、彼女の裏切りを責める。妊娠の疑いまでかけられてキミ子も反撃し、大島が佳江の行為を迷惑がっているのではないかと云い捨てる。

次に撮影班は大島の最後の足取りをたどるため福島市へ向かう。大島が営業と集金に訪れた会社を訪ね、当時の大島の様子を聞く。しかし大きな収穫は得られなかった。

監督やスタッフは、大島の失踪に計画性はなく、足取りを追うよりも彼の心の動きに迫るべきだと考え始める。

人間蒸発のあらすじ【転】

大島が失踪した4月に彼と酒を飲んだ友人は、佳江と婚約中の大島から“当分結婚する気はない”と聞いていた。大島は佳江の姉のサヨが、とある社長の愛人であることをとにかく嫌がっていたらしい。

ここから流れは早川姉妹の生い立ちと確執を追う展開となっていく。幼い頃から佳江はだらしない母親似のサヨを嫌っており、姉に対して暴力を振るっていた。さらにサヨが置屋の養女となって芸者をしていたことや愛人であることを不潔だと言い切る。それなのに佳江はサヨのアパートに転がり込んでおり、大島を度々サヨのアパートに招いている。その時の姉の大島に対する接し方が馴れ馴れしく、それを佳江は不快に思っていた。サヨはあくまで妹の婚約者なので気を使っていただけだと弁明する。

この映画撮影は話題となり、佳江はテレビ番組にも出演する。その頃から佳江の様子がおかしくなる。監督の要請で露口は佳江の本心を確かめる。佳江は“大島はすでに過去の人で、今は露口を好きな気持ちでいっぱいだ”と打ち明ける。佳江の芝居染みた告白に露口も困惑する。

人間蒸発のあらすじ【結】

それでも佳江は姉の疑惑にはこだわる。サヨの自宅近辺で聞き込みを進めていくと、佳江がいない時間帯にこの近所で大島を見たと魚屋が証言する。さらに魚屋は大島とサヨが2人で歩いているのも目撃していた。岡産業の電話交換士の女性も、大島宛に早川という女性から何度か電話があり、それは確かにサヨの声だったと証言する。

佳江と露口はサヨにこの事実をぶつけてみる。しかしサヨは一貫して全く身に覚えがないと言い張る。ついには目撃者である魚屋まで呼ばれて、“確かに見た”“そんな事実は一切ない”という平行線の言い合いが続く。佳江は魚屋には嘘をつく理由がないと主張するが、サヨは譲らない。先へ進まない議論に今村監督も登場し、佳江は“真実って何でしょうか”と監督に問いかける。“それは誰にもわからない”と監督が答えると、突然にサヨの部屋だと思われた室内がスタッフによって解体され始める。ここは撮影所に組まれたセットの中だった。

後日、今村監督はマイクに向かって“これはこの狭い国内でなぜ多くの蒸発者が生まれるのかを追求するドラマでありフィクションであるということをお考えいただきたい”と話す。

しかし佳江は“本当のことを知りたい”と関係者を現場に集めていた。集まった人々は目撃者とサヨのどちらが正しいのか言い争いを始め、大島の蒸発に対しては興味を失っていた。そして佳江も姉の疑惑には執着を見せるが、大島のことはどうでもいいようだった。何が嘘で何が真実かは結局誰にもわからないまま撮影は終了し、現実は取り残される。

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