映画『ノーカントリー』あらすじとネタバレ感想

ノーカントリーの概要:「ファーゴ」や「ビッグ・リボウスキ」のコーエン兄弟による暴力色の強いサスペンス。原作はコーマック・マッカーシーの「血と暴力の国」。出演は、トミー・リー・ジョーンズ、ハビエル・バルデム。2007年米国映画。

ノーカントリー あらすじ

ノーカントリー
映画『ノーカントリー』のあらすじを紹介します。

1980年代、米国・テキサス。物語の冒頭は、老保安官ベル(トミー・リー・ジョーンズ)の独白から始まります。”25才で保安官になった。父も保安官だった”。2人めの主人公、元ベトナム帰還兵のルフェリン・モス(ジョシュ・ブローリン)は、狩りの最中、乾いた大地に流れる血を発見。血をたどってゆくと、いくつものメキシコ人の遺体と、犬も殺されていた。車内には死にかけたメキシコ人がいて、「アグア(水)・・」とつぶやく。
モスは、車の後部から大量の麻薬が詰まれているのを見た。麻薬の取引で殺されたのだろう。周囲を探すと、木の影に横たわる男の遺体のそばに大金の入った黒いトランクがあった。ルフェリンは77年代のフォード車に乗ってその場を離れます。家に帰ると妻カーラ(ケリー・マクドナルド)がいて、”そのトランクは?”と聞く。”大金だよ”と答えたが心は穏やかではいられない。
その夜、モスは水を持って再び現場に戻ります。車が1台止まり、人影が。モスは翌朝まで、姿の見えない奴らから追われ、命からがら妻の待つ家へ戻った。その後、モスは顔を見た事のない犯人から逃れるために逃亡します。

モスを追う、理由なき殺人鬼アントン・シガー(ハビエル・バルデム)。行き先々で、人を空気銃や鉛のボルト弾などで殺していく。時には、コインを投げて運命に身を委ねることも。”当てろ!”と半ば、強制するのだ。そして、モスの居場所”リーガル・モーテル”を特定し襲う。実は大金の1部に発信器が取り付けられており、その電波を受信しながら動いていたらしい。モスは発信器に気付いたが、逃げ切れるのか?
メキシコの国境近くへ逃れた、モスをシガーは追う。負傷はするものの、不死身のように甦ります。モスはメキシコの国境付近で、大金の入ったトランクを投げるとすぐにメキシコへ入国。モスを保護しようと、老保安官ベルや賞金稼ぎのカーソン・ウェルズが動き出す。しかし、ウェルズはすぐにシガーに見つかって、サイレンサー付の空気銃で殺されてしまう。

エルパソ空港から飛行機で逃亡しようとしたモスは、シガーによって、モーテルであっけなく殺られてしまった。114号室。殺人現場を訪れた老保安官ベルは、まだそこにシガーが潜んでいるような幻覚に囚われます。そして、モスの美しい妻のもとにも死神シガーが。”私を殺す必要はないわ”とカーラは言い、コイン投げも拒否します。カーラを殺した後。再び、殺す対象を物色するシガー。車のミラーに映る少年の姿に魅入られているうちに車にぶつけられて大けがを負う。
通りで出会った少年からシャツをもらい、シャツで三角巾を作り、シガーはどこか遠くへ逃亡した。シガーを掴まえることなく、捜査は終了。老保安官ベルは、退職を決意。”昔は良かった・・。今は老人が住める国はなくなったんだ”と。ある夜、ベルは2つの夢を見ます。1つめは、”死んだ父親に会う”夢。2つ目は、”馬に乗っていて、雪が積もるなかを往くんだ。おやじはずっと遠くにいるよ。”という不思議な夢だった。

ノーカントリー 評価

  • 点数:85点/100点
  • オススメ度:★★★★☆
  • ストーリー:★★★★★
  • キャスト起用:★★★★★
  • 映像技術:★★★★★
  • 演出:★★★★☆
  • 設定:★★★★☆

作品概要

  • 公開日:2007年
  • 上映時間:122分
  • ジャンル:コメディ、サスペンス、ホラー
  • 監督:ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン
  • キャスト:トミー・リー・ジョーンズ、ハビエル・バルデム、ジョシュ・ブローリン、ウディ・ハレルソン etc

ノーカントリー ネタバレ批評

映画『ノーカントリー』について、感想批評です。※ネタバレあり

理由なき殺人鬼アントン・シガーと元ベトナム帰還兵ルフェリン・モスを追う、老保安官ベルの追跡劇

神出鬼没で無情な殺人鬼アントン・シガー。彼の欲しいものは、麻薬でも金でもない。ただ無表情でエア・ガンをぶっ放すのだ。”暴力の連鎖”は永遠に止められない。コーエン兄弟は、本作でもテキサスという”地域性”に深くこだわっています。出演した役者のほとんどが西テキサス出身。また西テキサス訛りで話すことや1980年代の時代背景にも注目して下さい。

アントン・シガーは何も考えていないように見えて、時々コインの表と裏で人の命を量ろうとします。それがまた怖い。対する、元ベトナム帰還兵のルフェリン・モスは最強の市民代表です。軍で鍛えられた戦闘能力を発揮して、最後まで逃げ切れるかと思ったのに意外とあっけなく死んでしまう。2人を追う、無気力な老保安官ベルはだらだらとしていて頼りない。

保安官だった父のように殉職したくないと思っているのだろう。この物語は、”死んだように生きる男たちの姿”を描いていると思う。彼らは現実を生きているのではない、架空の主人公のように誰とも交わらず、どこにも帰属しないのです。

コーエン節に酔いしれる!極上の映像美

追う者と追われる者。元ベトナム帰還兵のルフェリン・モスが、銃撃現場に夜戻った際、朝まで執拗に追われるシーン。彼だけにパンがあてられ、トラッキング・ショットで追いかけてゆきます。臨場感あふれる映像に彩度が高めの自然描写が重ねられ、朝になったのだと感じた時、追跡も終わります。途切れることのない時間経過が表現されていて、好きなシーンです。

また血の表現が上手で、テキサスの砂漠の大地に点々と落ちた血をたどってゆくシーンや、記憶力抜群の賞金稼ぎウェルズの死体は見せないが、カーペットに流れる血で分かるシーンなどなかなか細かいです。ドラマの全体的流れとしては、とてもゆっくりなのに殺人シーンはほんの一瞬だけというテンポの良さにもハマります。殺された人に共通する言葉として、”殺しても無駄よ。”という台詞があり、深い哀しみを感じます。

コーエン映画の魅力に、殺人シーンにおけるコメディ要素を挙げてみたい。酸素ボンベがついた先で額を撃ちぬくシーン。それで死ぬの?とびっくりするが、実は鉛のボルト弾らしい。またエア・ガンがサイレント付というのもなにかおかしい。保安官補を絞殺するシーン以外は死体も見せないという徹底ぶりに観客は一層の笑いと想像力をかきたてられるのです。

ノーカントリー 感想まとめ

「ノーカントリー」は不思議な映画だと思う。暴力と無力感に襲われるのに観終わると、やっと現実に戻れたような安心感に包まれます。老保安官の夢語りで終わるのが、影響しているのかもしれません。突然、夜の帳が下りてきたような幕切れにも驚くが、それは原作小説「血と暴力の国」を読んだ時にコーエン兄弟が感じたものを映画にも取り入れたらしい。映画を観て、疑問部分が多かった人はぜひコーマック・マッカーシーの原作小説を読んで下さい。

映画は原作を忠実に再現しており、人物造形をより膨らませてスリルと笑いを含んだノワール風サスペンスを完成させました。”原作を読んだ時、映画の脚本みたいだった”とコーエン兄弟がメイキングで語っているほどです。なによりも、テキサスの乾いた空気と澄んだ空が美しくて、空っぽな心に沁み渡ります。

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