映画『ノー・マンズ・ランド』あらすじネタバレ結末と感想

ノー・マンズ・ランドの概要:ボスニア紛争の最中、両軍の中間地帯の塹壕に敵対する3人の兵士が取り残される。彼らの苦悩とそれを取り巻く国連軍やマスコミの無責任さを鋭い視点で描いた反戦映画。アカデミー外国語映画賞など多数の賞を受賞した。

ノー・マンズ・ランド あらすじネタバレ

ノー・マンズ・ランド
映画『ノー・マンズ・ランド』のあらすじを紹介します。※ネタバレ含む

ノー・マンズ・ランド あらすじ【起・承】

ボスニア紛争時のボスニア・ヘルツェゴビナ。セルビア軍とボスニア軍が睨みあう戦場で、ボスニア軍の交代要員8人が闇に紛れて前線へ移動していた。しかしその日は霧が深く、兵士たちは道に迷ってしまう。

夜が明け視界が開けると、彼らはセルビア陣地に入り込んでいた。セルビア軍の容赦ない攻撃により6人は即死状態だったが、チキ(ブランコ・ジュリッチ)とツェラ(フィリップ・ショヴァゴヴィッチ)は中間にある無人の塹壕付近まで逃げる。しかし砲撃によりチキは塹壕の中へ、ツェラは塹壕の外に吹き飛ばされる。

セルビア陣営のベテラン兵と新人兵のニノ(レネ・ビトラヤツ)は偵察を命じられ、塹壕へ向かう。塹壕内ではチキが生き残っており、2人の様子を伺っていた。ベテラン兵は塹壕内にジャンプ式の地雷を埋め、その上に意識のないツェラを寝かせる。地雷はツェラを動かすと爆発する仕組みになっていた。

チキは隙を狙って2人を銃撃する。ベテラン兵は即死したが、ニノは生き残る。チキはニノを裸にして塹壕の外で白いシャツを振らせる。セルビア軍はニノがどちらの兵士かわからないまま砲弾を打つ。その音でツェラが意識を取り戻す。しかしツェラを救うには背中の下の地雷を処理してもらうしか方法がない。

チキとニノは互いを牽制し合いながらも、協力してこの状況を打開することにする。今度は2人で裸になって外で白いシャツを振る。両陣営は対応に苦慮し、国連防護軍に連絡する。

連絡を受けた国連防護軍フランス兵のマルシャン軍曹はサラエボ本部のデュボア大尉から上官と相談するので待機するよう命じられるが、命令を無視してすぐに動き始める。まずは両陣営の検問所へ銃撃しないよう要請に行く。

助けを待つ塹壕内のチキとニノは身の上話をしたりして、少し和む。

ノー・マンズ・ランド あらすじ【転・結】

デゥボラ大尉はソフト大佐に相談するが、大佐は防護軍の任務は人道援助であり国連決議が出ないと何もできないと苛立つ。つまり面倒なことには関わるなということだった。

現場のマルシャン軍曹はすでに塹壕まで行き、チキたちと接触していた。しかし本部は地雷処理班の出動を拒否し、すぐに帰れと命令する。軍曹はせめてチキとニノを連れて帰ろうとするが、チキはツェラを見捨てないと言い張り、防護軍と行こうとしたニノの足を撃つ。ニノがいなくなるとセルビア軍から攻撃される可能性があるためだ。防護軍は結局3人を塹壕に残して帰ってしまう。

帰ってきたマルシャン軍曹をテレビカメラとリビングストン特派員が待ち構えていた。テレビ局は無線のやり取りを傍受しており、国連は彼らを救助しないのかと詰め寄る。彼らを助けたいと思っている軍曹はこの状況を逆手に取り、上官に再度3人の救出を願い出る。

テレビではボスニアの中間地点で数名が立ち往生しているというニュースが流され、動かざるをえなくなったソフト大佐はヘリで現場へ向かう。さらにデュボア大尉も現場へ赴き、ドイツ兵の地雷処理班が呼ばれる。防護軍と多くのマスコミが中間地点に移動する。

塹壕内のニノは足を撃たれたことに腹を立て、ナイフでチキを刺し殺そうとする。ニノは防護軍に取り押さえられるが、2人の憎しみの感情はマックスに達していた。

ツェラの下にある地雷を確認したドイツ兵は、このタイプの地雷は一度仕掛けると処理ができないと言う。マルシャン軍曹たちが途方に暮れている中、ソフト大佐がヘリでやってくる。話を聞いた大佐はマスコミに向けて作業をするフリだけすればいいと指示する。

チキとニノの見張りを命じられていた若い兵士は、騒ぎに気をとられ2人から目を離す。その隙を狙ってチキは銃を拾いニノを撃とうとする。チキは殺到してきたマスコミに向かって“お前らはみんな同類だ、俺らの悲劇がそんなに儲かるのか”と怒りをぶつける。ニノは兵士の銃を奪いチキを撃とうとして、チキに撃ち殺され、チキは兵士に射殺されてしまう。

大佐は地雷処理が終了したと大尉に芝居をさせ、防護軍を引き揚げさせる。さらにマスコミに対して改めて記者会見をすると約束して、彼らを退去させる。マルシャン軍曹も最後には諦め、塹壕内のツェラだけが取り残される。

ノー・マンズ・ランド 評価

  • 点数:90点/100点
  • オススメ度:★★★★★
  • ストーリー:★★★★★
  • キャスト起用:★★★★★
  • 映像技術:★★★★☆
  • 演出:★★★★★
  • 設定:★★★★★

作品概要

  • 公開日:2001年
  • 上映時間:98分
  • ジャンル:戦争、ヒューマンドラマ
  • 監督:ダニス・タノヴィッチ
  • キャスト:ブランコ・ジュリッチ、レネ・ビトラヤツ、フイリプ・ショヴァゴヴイツチ、カトリン・カートリッジ etc

ノー・マンズ・ランド 批評・レビュー

映画『ノー・マンズ・ランド』について、感想と批評・レビューです。※ネタバレ含む

戦争の縮図

この作品は1992年から1995年にかけての約3年半、東ヨーロッパのボスニア・ヘルツェゴビナで起こったボスニア紛争を描いている。この紛争にはユーゴスラビア紛争から続く複雑な事情があるが、本作ではボスニア軍のチキとセルビア軍のニノという2人の兵士を通して紛争の背景にある民族間の対立をわかりやすく見せてくれる。

この戦争を仕掛けたのはどちらなのか(つまり悪いのはどちらか)を言い争うシーンでは、2人が激しく対立する。結局はチキが銃を持つと悪いのはセルビア、ニノが銃を持つと悪いのはボスニアということになる。これは強い武器を持った方が相手を言いなりにできる、威圧できるという戦争の仕組みそのものだ。

チキとニノが協力しあって救助を呼びかけた後、塹壕内に一瞬平和な空気が流れる。自分の昔の彼女とニノが同窓生だったことがわかり、チキはとても嬉しそうだ。もしここが戦場でなければ、チキとニノ、そしてツェラも交えてお酒でも飲みつつ女の話で盛り上がり、3人は友達になっていたのかもしれない。そんなことを想像してしまう。彼らはつい最近まで兵士なんかじゃない、普通の男だったのだとこのシーンは教えてくれる。

それでもチキとニノは友達にはなれないし、最終的には憎しみ合う。それは2人の人間性や相性の問題ではない。ここが戦場であることが全ての原因だ。観客はチキもニノも憎めない。ただ戦争というものの残酷さを憎むしかない。

地雷の上に寝かされたツェラ

この作品の秀悦さはチキとニノに加えて、地雷の上に寝かされたツェラという存在を塹壕内に置いたことにある。ツェラの存在が戦争の外側にいる傍観者たちの無責任さを浮き彫りにしていく。さらにチキとニノが簡単にここから動けない理由を作ることで、戦争解決の難しさまで描き出す。

国連援護軍の上層部は常に自分たちの立場を守ることしか考えていない。マスコミは独占映像をものにすることに必死だ。戦地の実情を見てきたマルシャン軍曹だけは“殺戮には中立などありえない”という信念を持ち、自ら行動する。彼だけは本気で中間地点に取り残された3人を助けたいと考えている。しかし地雷の処理は不可能で、チキとニノも救助を目前にして死なせてしまう。彼も最終的には無責任な傍観者となり、ここを去るしかない。そんな彼を一体誰が責められるだろう?自分なら、もっと何かできると言える人がこの世に何人いるだろう?

日が暮れていく中、一人ぼっちで取り残されたツェラの運命に私たちは言葉を失う。地雷の上で動けないツェラを見て“これが戦争なのだ”と思い知る。

ノー・マンズ・ランド 感想まとめ

この映画の上映時間は98分と短い。戦争を題材にした映画としてはとてもあっさりとした印象を受ける。しかし内容はとてつもなく濃い。

脚本も演出もキャスト陣の演技も秀悦。すごい。ただ、これが映画としていいとか悪いとかいう感想を述べる気になれない。これが現実なんだなあ…そうなんだなあ…という虚しさというか、無力感というか、怒りさえも感じる気力を失うというか。なぜか諦めに近い感情が湧いてくる。戦場というのはそういう場所なのかもしれない。

この映画を見ると自分の無力さを思い知らされる。いくら考えてもツェラを助ける方法がわからないし、誰が悪いのかもわからない。だから考えるのを止めたくなる。チキに“お前らはみんな同類だ”と言われても仕方がない。そう思わせる説得力がこの映画にはある。多くの人が見るべき映画だと思う。

Amazon 映画『ノー・マンズ・ランド』の商品を見てみる