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映画『男はつらいよ 柴又慕情』のネタバレあらすじ結末と感想

映画『男はつらいよ 柴又慕情』の概要:『男はつらいよ』シリーズの第9作目となる作品。北陸の金沢でどこか影のある美人の歌子と知り合った寅さんは、彼女と柴又で再会を果たし、恋の病を患う。マドンナは当時27歳だった吉永小百合。初代おいちゃん役の森川信が亡くなったため、おいちゃんには松村達雄がキャスティングされている。

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映画『男はつらいよ 柴又慕情』の作品情報

男はつらいよ 柴又慕情

製作年:1972年
上映時間:108分
ジャンル:コメディ、ヒューマンドラマ
監督:山田洋次
キャスト:渥美清、倍賞千恵子、吉永小百合、松村達雄 etc

映画『男はつらいよ 柴又慕情』の登場人物(キャスト)

車寅次郎(渥美清)
テキ屋稼業を生業とするヤクザ者で、身内には迷惑ばかりかけているが、純粋な心を持つ愛すべき人物。今回は薄幸な美人の歌子に恋をして、彼女との結婚を夢見る。恋をすると、他のことが何も手につかなくなる。
歌子(吉永小百合)
結婚適齢期を迎えた女性。同僚の女性と3人で北陸を旅行し、金沢で寅さんと知り合う。5年も付き合っている陶芸家の恋人がいるが、父親に反対され、結婚に踏み切れない。両親が早くに離婚したため、ずっと父親の世話をしている。
高見修吉(宮口精二)
歌子の父親。小説家で、非常に気難しい。家のことは何もできず、歌子に任せきり。1人になることを嫌い、娘の結婚に反対している。
さくら(倍賞千恵子)
寅さんの腹違いの妹。満男というまだ幼い息子がいる。今は狭いアパート暮らしだが、近々マイホームを持つ予定。そのために、涙ぐましい努力をしている。歌子の結婚の相談に乗ってやる。
竜造(松村達雄)
寅さんの叔父。2階を貸して、さくら夫婦を援助してやろうと考える優しいおいちゃん。しかし、寅さんとはすぐに喧嘩する。
つね(三崎千恵子)
竜造の妻。欲のない働き者で、わがままな寅さんにも尽くしてくれる。
博(前田吟)
さくらの夫、印刷工場で働く真面目な労働者で、みんなから信頼されている。焼きナスが大好物。
登(津坂匡章)
寅さんの舎弟。寅さんにとっては可愛い弟分で、たまに再会すると、2人で子供のようにはしゃぎ回る。

映画『男はつらいよ 柴又慕情』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)

映画『男はつらいよ 柴又慕情』のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまでわかりやすく簡単に解説しています。この先、ネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『男はつらいよ 柴又慕情』のあらすじ【起】

春が過ぎた頃。東京は葛飾柴又にある帝釈天の山門前で、さくらと御前様が立ち話をしている。御前様は、今年もツバメが帰ってこなかったので、そろそろ山門の巣を片付けようかと悩んでいるらしい。さくらは兄の寅さんとツバメを重ね、帰った時に巣がないとかわいそうだと考える。

その後、帝釈天参道にあるだんご屋の「とらや」を訪れたさくらは、入り口に「貸し間あり」の札がぶら下がっているのを見て、どうしたのかとおいちゃんに尋ねる。おいちゃんとおばちゃんは、マイホームを持つ予定のさくら夫婦に少しでも援助してやりたくて、2階の部屋を貸すことにしていた。さくらは、おいちゃんたちの気持ちに感動する。ただ、その部屋は今まで寅さんが使っていたので、もし寅さんが帰ったら、まずいことになりそうだった。

そんな時に限って、寅さんは必ず帰ってくる。みんなの予想通り、寅さんは「貸し間あり」の札を見て怒り出し、自分で部屋を探すと言って、不動産屋へ行ってしまう。

寅さんは不動産屋へ行けばどうにかなると思っていたが、現実は厳しかった。年中旅暮らしの不安定な商売人で、貯金も財産もない寅さんに、多くの不動産屋は冷たい。それでも、何軒目かに訪れた不動産屋の親父は、いい部屋があると言って、車でその家へ連れて行ってくれる。しかし、親父が紹介してくれたのは、とらやの2階の貸し間だった。これには、寅さんもとらやの一同も唖然とする。

寅さんは意地を張っていたが、さくらたちに宥められ、家に入ろうとする。ところが、親父はこれを契約完了と見なし、6000円の仲介料を払えと言い出す。自分の家へ帰るのになぜ金がいるのかと寅さんは反発するが、親父も譲らない。結局、博が6000円を支払って、親父に帰ってもらう。

その夜、腹の虫が収まらない寅さんは、夕食後も愚痴を言い続ける。あまりのしつこさにおいちゃんも怒り出し、「お前が帰ってくるのは迷惑だ」と言ってしまう。頭にきた寅さんは、貧乏人のくせに自分の家を建てるなんて生意気だと、さくら夫婦を罵倒し始める。夫婦は本気で傷つき、さくらは涙ながらに「どうしてお兄ちゃんは、さくら頑張れよと言ってくれないの」と訴える。これには寅さんも参ってしまい、おばちゃんにお金を渡して、旅へ出てしまう。

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映画『男はつらいよ 柴又慕情』のあらすじ【承】

商売をしながら、寅さんは金沢にたどり着く。兼六園の近くで商売をした夜、宿へ戻った寅さんは、舎弟の登とばったり会う。久しぶりの再会に2人は盛り上がり、仲居さんまで呼んで、どんちゃん騒ぎを始める。隣の部屋に宿泊していた3人組の女性から苦情が出たので、ようやく宴会は終了するが、寅さんと登は布団の中でも酒盛りを続けていた。

翌朝、寅さんが目を覚ますと、登はすでに旅立っていた。寅さんは、何となく物悲しい気持ちになって宿を出る。

隣の部屋に宿泊していた3人組の女性は、観光を済ませ、一軒の寂れた食堂へ入る。ちょうど奥の座敷では、寅さんが1人で酒を飲んでいた。寅さんは、芝居染みた口調で3人組に声をかけ、故郷の柴又には30年も帰っていないのだと法螺を吹く。3人は寅さんの話を真に受け、そんな人もいるのかと感心する。

寅さんに奢ってもらった3人は、店の外で改めてお礼を言って、一緒に記念写真を撮ってもらう。シャッターを切る瞬間、寅さんは「チーズ」と間違えて「バター」と言ってしまい、3人を爆笑させる。寅さんに親近感を抱いた3人は、その後一緒に観光をして、笑いの絶えない楽しい時間を過ごす。

夕方、寅さんは東京へ帰る3人を見送る。3人の中で1番美人の歌子は、感謝の気持ちを込めて、寅さんにお土産の鈴を手渡す。寅さんは、そんな歌子の気持ちが嬉しかった。

夜遅く、東京へ到着した歌子は、疲れた足取りで父親の待つ家へ帰る。父親の修吉は小説家で、小説を書く以外は何もできない男だった。両親は離婚しており、歌子がそんな修吉の世話をしている。今夜も、歌子は気難しい修吉に気を遣いながら、すぐに家の片付けを始める。

映画『男はつらいよ 柴又慕情』のあらすじ【転】

それからしばらくして、寅さんが柴又へ帰ってくる。とらやへ帰る前、江戸川沿いをぶらついていた寅さんは、金沢で会った歌子以外の2人と再会する。2人は、寅さんが30年ぶりに故郷へ戻ったのだと思い込み、一緒にとらやを探そうと言い出す。寅さんは、あれは全部作り話だとも言えず、一緒にとらやを探す振りをする。

参道でとらやを見つけた2人は、おいちゃんとおばちゃんに「車寅次郎さんをご存知ないですか?」と真顔で尋ねる。仕方がないので、寅さんも30年ぶりに身内と会った芝居をしてみるが、あまりのバカバカしさにやめてしまう。結局、これは笑い話となり、みんなで大笑いする。2人から、歌子の話を聞いた寅さんは、どこか薄幸な歌子に会いたくなる。

翌日、寅さんが帰っていると知って、歌子がとらやを訪ねてくる。最初は緊張気味だった寅さんも、そのうち調子が出てきて、いつものように茶の間で盛り上がる。しかし、歌子に「寅さんはどうして結婚なさらないの?」と質問され、寅さんはしどろもどろになってしまう。一同は、そんな寅さんを見て爆笑する。

気難しい父親と暮らしている歌子は、とらやの賑やかなもてなしに心から感動し、何度も「来て良かった」と言っていた。歌子はよほど嬉しかったのか、帰宅後もわざわざ電話してきて、寅さんに「また行く」と約束する。寅さんは、完全に舞い上がっていた。

実は、歌子には5年も付き合っている恋人がいるが、修吉に反対され、なかなか結婚に踏み切れずにいた。歌子は、修吉が機嫌の良さそうな時を見計らい、もう一度恋人に会って欲しいと頼んでみる。しかし、その話をすると修吉は不機嫌になり、「結婚したきゃ勝手にしろ」と言い捨てる。歌子はとても悲しくなり、1人でさめざめと涙を流す。

映画『男はつらいよ 柴又慕情』の結末・ラスト(ネタバレ)

寅さんは、1日中、家で歌子を待ち続け、ため息ばかりついていた。そんなある日、みんなが自分の噂話をしているのを聞いてしまった寅さんは、いじけて旅へ出ようとする。ところが、そこへ歌子が現れたので、すっかり機嫌が直る。みんなは、やっと来てくれた歌子を歓迎する。

食事の後も話が弾み、歌子は自分の失恋について語り始める。歌子は、婚約者に「結婚したら、君はバラの手入れだけしとけばいいんだよ」と言われ、結婚をやめた過去があった。さくらは、何となく歌子の様子がおかしいと感じ、今日は泊まっていくように勧める。

さくらと2人になった歌子は、最初から泊めてもらうつもりで来たのだと打ち明ける。歌子は結婚のことで父親と衝突し、置き手紙を残して家を出ていた。

翌日、寅さんは上機嫌で歌子と楽しい時間を過ごし、また夕食の時間になる。寅さんは一緒に晩御飯を食べるつもりだったが、歌子はさくらの家へ行ってしまう。寅さんは、歌子が自分のことを相談するのだと勘違いし、快く彼女を見送る。

歌子はさくら夫婦に、ずっと1人で悩んできた結婚問題について相談する。歌子の恋人は、愛知県の田舎で焼き物をしている陶芸家で、彼と結婚したら、歌子は東京を離れることになる。どうやら修吉は、頼りにしてきた歌子と離れるのが寂しくて、2人の結婚に反対しているらしい。

話を聞いた博は、お父さんのために結婚を諦めても誰も幸せになれないし、お父さんはちゃんと耐えて生きていくはずだと歌子の背中を押す。さくらも、好きだという気持ちがあれば大丈夫だと歌子を励ましてやる。歌子は、とてもいい話ができたと喜んでいた。

ちょうど寅さんが迎えに来てくれたので、歌子はさくら夫婦にお礼を言って、とらやへ帰る。帰る道々、歌子は寅さんに、恋人と結婚する決心がついたので、明日、彼に会いに行くと打ち明ける。歌子は泣きじゃくりながら、「もし私が幸せになれたら、それは寅さんのおかげよ」と寅さんに感謝する。寅さんは失恋の痛みを隠し、「決心できて良かったな」と歌子を祝ってやる。そして、翌日、寅さんも旅に出る。

夏の盛り。娘が世話になったからと、修吉がとらやを訪ねてくる。修吉は不自由しながらも、何とか1人で暮らしているらしい。愛知へ行った歌子は、毎日汗だくになって、彼の仕事を手伝っていた。寅さんは1度だけ歌子の様子を見に行ったが、ちょうど歌子は留守にしていた。歌子はさくら宛のハガキに「寅さんに会いたい」と書いていた。

その頃、寅さんは、田舎の河原で用を足していた登と再会し、2人で連れ立って旅を続けるのだった。

映画『男はつらいよ 柴又慕情』の感想・評価・レビュー

シリーズ第9作。
寅さんが旅先でマドンナと知り合って、柴又で再会して片思い、やがてマドンナは別の男と…という王道な一本。そんな寅さんを出演者達と一緒に「あーあ、またやってるよ」という呆れるような微笑ましいような気持ちで見て笑い、やがて寅さんが自分の勘違いに気づいてすっと相手に気を遣わせる間もなく身を引いていく姿のなんとも言えないせつなさを味わう。このおかしさの後のせつなさに吹き抜ける風のなんと心地よいことか。
昭和の風景にも癒されます。(男性 40代)

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