映画『天使の涙』あらすじとネタバレ感想

天使の涙の概要:『天使の涙』(原題:堕落天使)は、ウォン・カーウァイ監督・脚本の香港映画。もともと『恋する惑星』のエピソードの一つとして作られていたものを、別の作品として作った。5人の男女の「すれ違い」の群像劇。

天使の涙 あらすじ

天使の涙
映画『天使の涙』のあらすじを紹介します。

香港のネオン街。
殺し屋の男とエージェントの女は、仕事上の関係と割り切っており、互いに直接会うことはほとんどない。
しかし、エージェントの女はひそかに殺し屋の男に恋心を抱いていた。彼が寝泊まりする部屋を掃除し、ゴミを持ち帰っては彼がその日何をしていたか探り、行きつけのバーを探し当てるなどしていた。
一方、男は殺し屋から足を洗おうと考え、エージェントとのつながりを絶って姿を消す。

エージェントが暮らす重慶マンションの管理人の息子モウは、幼いころに期限切れのパイン缶を食べすぎて口がきけなくなっていた。夜中に人の店を勝手に開けては、通りすがりの人に無理やり押し売りをし、営業をしていた。ある日失恋した女に出会い初恋をするが、その女は過去の恋を断ち切れず、そしてモウに関心もなかった。

エージェントは、消えた殺し屋を思い泣き暮らしていたが、街中ですれ違った女の香水から殺し屋との関係を瞬時に悟る。その女は、殺し屋に恋をしており、関係も持っていたのである。
漸く殺し屋の居場所を知ったエージェントは、最後の仕事を依頼する。
殺し屋は引き受けるが、初めて失敗する。

エージェントは、街の食堂でモウと出会う。モウは父親を亡くし、働いていた日本料理屋の主人も帰国していたため、元のどうしようもない生活に戻っていた。
エージェントは、モウに送ってもらう道中、バイクの後ろで人のぬくもりを感じていた。

天使の涙 評価

  • 点数:90点/100点
  • オススメ度:★★★★☆
  • ストーリー:★★★★☆
  • キャスト起用:★★★★★
  • 映像技術:★★★★★
  • 演出:★★★★★
  • 設定:★★★☆☆

作品概要

  • 公開日:1995年
  • 上映時間:96分
  • ジャンル:アクション、ラブストーリー
  • 監督:ウォン・カーウァイ
  • キャスト:レオン・ライ、ミシェール・リー、金城武、チャーリー・ヤン etc

天使の涙 ネタバレ批評

映画『天使の涙』について、感想批評です。※ネタバレあり

光と音楽

この映画は、とにかく「夜」を上手く描いている。香港のネオン街、殺し屋とエージェント。冒頭から頽廃的な空気が漂う。
暗闇の中の光の表現については、色遣いがいい。特に印象的だったのは、エージェントの女がバーのジュークボックスで曲を聴く場面。その曲も、殺し屋がエージェントに別れを告げる意味を持った曲で、切なくもある。ジュークボックスの鮮やかで強い光と、暗闇のコントラストが印象に残る。
全体を通して夜が描かれる。明るい空が見られるのは、ラストでモウとエージェントの女がバイクに乗り、トンネルを抜けたほんの少しの時間だけで、しかも夜明けの空が少し白んできた程度の明るさ。それと同時に流れる「only you」も素晴らしい。
このラストシーンだけでも、この映画を観てよかったと思える。

口がきけない男

金城武が演じるモウは、口がきけない。5歳まではすごくおしゃべりな少年だったらしく、ナレーションでは様々なことを雄弁に語る。
しゃべることができないモウは、身振り手振り、表情などで表現し、「営業」方法も強引で、道化のような存在である。
やることなすことめちゃくちゃで、初恋の女の子には相手にもされず、父親には手のかかる子供として扱われ、子供同然なのである。

しかし、ナレーションで語られる、彼の見たもの・感じたもので、ただの道化ではないことが分かる。
恐らく、作中の登場人物の中で誰よりも冷静に人を観察していて、洞察力のある人間なのである。
まるで少年がそのまま大人になったような姿と、鋭い観察眼を持った男、その二面性を金城武は上手く演じている。

独特の撮影技法

香港映画ではよく「コマ落とし」と呼ばれる、低速度撮影の方法が用いられ、アクションシーンで躍動感を出すために使われる。
本作でも同様で、激しいアクションシーンはコマ落としで早送りのような映像となり、被写体の動きが早く、周りがゆっくりとした動きになっている。
他でも使われる技法ではあるが、特に香港映画らしい特徴と言える。

天使の涙 感想まとめ

一度見ただけでは、全体的に暗いという印象が強く、よくわからないかもしれない。しかし、何度か見ているとこの映画がどんどん好きになる。
特に大きな感動があるわけでもないが、癖になる何かがあるのである。深く考えながらではなく、映画のスピード感と同様に、ゆっくりと気を抜いて観ると、刹那的な恋の切なさ、美しさが心にしみる。
モウのナレーションで、「毎日大勢の人とすれ違うが、その誰かと親友になるかもしれない。だからすれ違いを避けない」「その時が楽しければいい」というものがある。
恋だけでなく、すべての刹那的な出会いを大切にしている。この映画の象徴的なセリフだと思った。

メインの3人だけでなく、脇役との関係もいい。モウと父親のエピソードは、これを主軸に据えてもいいのではないかと思えるほど心温まるものである。

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