『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』あらすじ&ネタバレ考察・ストーリー解説

イギリス初の女性首相、マーガレット・サッチャーの政治家時代の半生を、引退後の回顧も交えて描いた伝記映画。主演はメリル・ストリープ,ジム・ブロードベント。監督はフィリダ・ロイド。脚本はアビ・モーガン。2011年公開のイギリス制作の映画。

あらすじ

マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』のあらすじを紹介します。

イギリスで初の女性首相となったマーガレット・サッチャーは、首相退任後表舞台から退き、ひっそりと暮らしていた。しかし2008年以降は認知症が進み、夫の死も忘れ、時には自分がまだ首相であると思い込んでしまう状況だった。幻覚として現れる夫のデニスとの会話から過去の政治家初当選の頃から首相退任までの一連の出来事を振り返っていく。

サッチャーは食料雑貨商の家に生まれ、父からの教えを支えにオクスフォード大学に進学、一旦化学者として企業に就職するも25歳の時に保守党から下院議会議員選挙に立候補する。しかしまだ女性に対しての議会の壁は厚く落選する。夫となるデニスは「議会は独身女性は当選できない、自分が支えるから結婚しよう」とプロポーズされ、2人は結婚する。そして翌年見事当選する。女権拡張、教育問題と独自の主張を通しながら党内で存在感を増していくサッチャーだった。一方、家庭内は子育てや夫との関係はぎくしゃくしていた。だがサッチャーには強い信念があり、政治家としての道をさらに突き進んでいく。保守党党首から遂に英国首相に就任する。国内の暴動にも屈することなく国営化政策の見直しなど国民から反発を買いながらも経済政策を推し進めるサッチャーは「鉄の女」と呼ばれるようになる。そんなサッチャーに政治家として最大の試練が訪れる。英国が実効支配するフォークランド諸島をアルゼンチンが武力侵攻を開始したのだ。アメリカのレーガン大統領からも武力対抗の前にまず話し合いを意見されるが、サッチャーは真珠湾の時も同じことが言えたかと反論し、武力行使する。結果、アルゼンチンを降伏させると英国内でのサッチャーの支持は最高潮に達した。

しかしその後英国内の経済は回復しないことに業を煮やしたサッチャーは更に国営企業の民営化を推し進めるが、労働組合との軋轢が徐々に保守党内で孤立する立場に追い込まれていく。決定づけたのが税制改革として人頭税の導入だ。これは低所得者も富裕層も税額を一律するというものだったので、低所得者層の反発を買い、サッチャー退陣に繋がっていく。

そして10数年がたち、自分の来し方行く末にめぐらした後、夫の遺品を整理する決心を付けたとき、夫デニスの幻影はサッチャーの前から去っていく。

評価

  • 点数:80点/100点
  • オススメ度:★★★☆☆
  • ストーリー:★★☆☆☆
  • キャスト起用:★★★☆☆
  • 映像技術:★★★☆☆
  • 演出:★★★☆☆
  • 設定:★★☆☆☆

作品概要

  • 公開日:2012年3月16日
  • 上映時間:105分
  • ジャンル:ヒューマンドラマ、ドキュメンタリー
  • 監督:フィリダ・ロイド
  • キャスト:メリル・ストリープ、ハリー・ロイド、ジム・ブロードベント、アンソニー・ヘッド、リチャード・E・グラント etc…

ネタバレ考察・ストーリー解説

『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』について、考察・解説します。※ネタバレあり

メリル・ストリープのなりきりぶりに感心!

サッチャー自身の自伝や回想をベースに作られた映画だが、メリル・ストリープはメイクや髪型も含めてしゃべり方や老人の歩き方などもすごく研究して、実によくサッチャーを演じている。ただサッチャーの自伝を描くには2時間弱はちょっと尺不足は否めない。やや駆け足的な造りとなっていて、何処にポイントが置かれているのかややぼやけた印象を持ってしまう。議員初当選から首相退陣まで大きな事件やエピソードは盛り込んであるが、表面的なのでサッチャーの政治家としての功罪がくっきりと表れない。政治家として躍進すればするほど子供や夫との間は疎遠になっていくものだが、そこの点をこの映画では夫デニスとの関係についてはデニスの幻覚を登場させて語らせることで、ギクシャクしていた頃の夫婦関係を説明している。しかし子供との関係は党首選立候補を決める時の娘キャロルとのドライブ中のエピソードだけだが、もう大人のキャロルが怒るほどの内容ではないと思うので説得力がない。家族関係は付け足し程度の描き方しかされていないと思う所以である。晩年に娘のキャロルが母サッチャーを世話するところに母娘の関係が垣間見える。

フォークランド諸島での決断はもし今の日本だったらどうだろう、このような手段は絶対無理だろうなと思ってしまう。

考えてみればサッチャリズムと呼ばれる彼女の政策は今までの小泉政権や現阿部政権が進めたいことと共通している部分が結構多いと思う。
例えば国営化を廃止して民営化を推進していくところや必要とあらば武力行使も厭わない強い政府、税制改革の推進などにおいて。

サッチャーが進めた政策は、例えば小学校の給食時のミルク無料配給の廃止や炭鉱閉鎖など一部の既得権益者や国の保護に依存することしか考えない人たちにとってみれば、鬼のような行為だろうが、逆に公営住宅の大胆な払下げはそれまで家を持つことなど適わなかった低所得者層にも希望を与えたことは事実である。もう少しこのあたりの功罪をしっかり描ければ良かったと思う。

まとめ

メリル・ストリープの演技ぶりは女優の見本ともいえる程上手い。これが最大の見どころと言ってしまえばそれまでだが、マーガレットサッチャーという女性の一代記というには中途半端。政治家時代の映画化といえば、それは確かにその通りなのだが、食い足りない点は多い。11年という首相在任期間を考えればとても105分で描くのは無理だろうし、映画としてのテンポは良かったので、見ていてだれるところは無く、最後まで飽きずに見ることはできる。ただしある程度サッチャーの功績の前知識を仕入れてから見た方がより理解しやすい映画だ。ちなみにフォークランド紛争の際のレーガンの忠告に対して、実際にサッチャーが言い返したセリフは「アラスカが脅威にさらされたときに同じことが言えますか?」というもの。変な映画受けを狙わなくてもよかったのにと思う。

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