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映画『男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け』あらすじネタバレ結末と感想

映画『男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け』の概要:太地喜和子がきっぷのいい芸者を演じた「男はつらいよ」シリーズ第17作目。1976年公開。播州龍野出身の高名な日本画家に宇野重吉、その昔の恋人には岡田嘉子がキャスティングされファンから高い支持を得ている人気の一作。

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映画『男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け』 作品情報

男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け

  • 製作年:1976年
  • 上映時間:109分
  • ジャンル:コメディ、ヒューマンドラマ
  • 監督:山田洋次
  • キャスト:渥美清、倍賞千恵子、太地喜和子、下絛正巳 etc

映画『男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け』 評価

  • 点数:95点/100点
  • オススメ度:★★★★★
  • ストーリー:★★★★★
  • キャスト起用:★★★★★
  • 映像技術:★★★★☆
  • 演出:★★★★★
  • 設定:★★★★★

映画『男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け』 あらすじネタバレ(ストーリー解説)

映画『男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け』のあらすじを紹介します。※ネタバレ含む

映画『男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け』 あらすじ【起・承】

帝釈天参道にあるとらやでは、満男の入学祝いの準備をしていた。そこへ寅さん(渥美清)が帰ってくる。機嫌良くさくらと満男を迎えた寅さんだったが、満男が寅さんの甥っ子だから学校で笑い者になったというさくらの話を聞いて怒り出し、店を出て行ってしまう。

上野で一杯やっていた寅さんは、そこで一文無しの汚い老人(宇野重吉)と知り合いになり、とらやへ連れて帰ってそのまま泊めてやる。

翌日、老人はお礼を言うどころかわがままばかり言いみんなを怒らせる。寅さんが老人に“ここは旅館じゃないんだから”と注意すると、旅館だと思い込んでいた老人は驚く。

老人は画用紙に墨絵を描き、これを神田の古本屋へ持っていけばお金になるからと寅さんに託す。寅さんは渋々その店へ行き、主人に絵を見せたところ何とこれが七万円で売れてしまう。

あの老人が“池ノ内青観”という高名な画家だと知り、寅さんは喜んでとらやへ帰るが、青観はすでに帰った後だった。そのことでまた大喧嘩となり、寅さんは旅に出る。

兵庫県の龍野まで商売に来た寅さんは、青観と再会する。青観の親しい知人だということで寅さんまで市長たちの歓待を受け、その宴会のお座敷でぼたん(太地喜和子)という芸者と出会った寅さんは、明るいぼたんと意気投合しすっかり仲良くなる。

龍野は青観の故郷で、そこには今も青観の昔の恋人志乃(岡田嘉子)が一人で暮らしていた。市の接待を寅さんに押し付け、青観は一人で志乃を訪ねる。画家として出世するために志乃と別れた過去を悔いる青観を、志乃は穏やかにたしなめる。

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映画『男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け』 結末・ラスト(ネタバレ)

龍野からとらやへ戻った寅さんは、贅沢三昧だった龍野の思い出ばかり語り、とらやの一同を辟易させていた。そこへ突然、ぼたんが寅さんを訪ねてきたので寅さんは大喜び。その晩は当然大宴会となる。

翌日、ぼたんは一人で出かけた。ぼたんは鬼頭という男に二百万円のお金を貸していたが、鬼頭は自分の財産を全て他人名義にして“自分は一文無しだから返せない”と言いお金を返そうとしなかった。その鬼頭と会うためにぼたんはわざわざ東京まで出てきたのだ。

ぼたんの話を聞いて激昂した寅さんをなだめるため、翌日タコ社長がぼたんに付き添って再度鬼頭を訪ねることにする。しかし鬼頭は2人を相手にせず、結局何もできないまま2人はとらやへ帰ってくる。

それを聞いた寅さんはみんなへ別れの挨拶をし、ぼたんに“きっと仇はとってやるからな”と言い残して店を出て行ってしまう。寅さんの気持ちを聞いたぼたんは“嬉しい”と言って泣き出す。

一方、行き先もわからず飛び出した寅さんは困った挙句青観を訪ねる。そして青観に“ぼたんのため金になる絵を描いてやってくれ”と頼む。青観は“金なら融通するが、金のために絵は描けない”と言い張り2人は物別れする。

夏の盛り、寅さんがフラッとぼたんを訪ねてくる。ぼたんは寅さんを自宅に引っ張り込み、床の間を見せる。そこには青観の描いた立派な牡丹の絵が飾られていた。ぼたんはなぜ青観が自分に絵を贈ってくれたのかさっぱりわからないが宝物にすると言い、全てを察した寅さんは、東京の青観に向かって手を合わせる。

映画『男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)

映画『男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む

太地喜和子が演じるぼたんの切なさ

寅さんが龍野のお座敷で出会うぼたんという芸者はきっぷが良くてカラッと明るくて実に気持ちの良い芸者だ。豪快な笑い方も気取りがなくてとてもかわいい。太地喜和子の勝気な顔つきやちょっとしゃがれた声がこのぼたんのキャラクターにぴったりで、彼女がいるだけでと画面全体がパッと華やぐ。

そんなぼたんが苦労して貯めた二百万円もの大金を騙し取られたことで、寅さんは“犯罪者になってでも仇をとってやる”と言って飛び出していく。その後のぼたんが本当にいい。
さめざめと泣きだしたぼたんは“私、幸せや、もう二百万円なんかいらん”と言うのだ。芸者稼業をしてきたぼたんが“生まれて初めて男の人のあんな気持ちを知って本当に嬉しい”と言い、しゃくりあげて泣く。このぼたんの姿を見て初めて、とらやのみんなも観客もいつも明るいぼたんがどんなに苦労してきた哀しい女かを知る。

太地喜和子の演技もこの脚本も、行き先がわからずウロウロしている寅さんも最高だ。

青観の後悔とラストシーン

はっきりとは語られないが、宇野重吉の演じる池ノ内青観と岡田嘉子演じる志乃は、昔かなりの大恋愛をしていたのだろう。そして、青観は画家として成功するための道を選び志乃と別れ、そのことを深く後悔している。志乃はただ黙って独身を貫いているらしい。

つまりこの二人はお互いに心の中で今も愛し合っているのだ。しかし時間は巻き戻せない。青観も志乃も切ない想いを抱えながら今までもこれからも生きていくしかない、ということはよくわかっている。

ここで青観が深い後悔を抱えて生きているということが描かれているから、ラストシーンの牡丹の絵がとても生きる。“ぼたんに絵を描いてやってくれ”という寅さんの頼みを、画家のプライドから断ってしまった青観はそのことを後で随分後悔したのだろう。

牡丹の絵を描いたことで救われた青観と共に観客も心から嬉しくなるラストシーンだ。

映画『男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け』 まとめ

本作はこのシリーズの中でも太地喜和子演じるマドンナの際立った魅力とよくできたストーリーが素晴らしく三本の指に入る名作だと言える。

宇野重吉と寺尾聰の親子共演、さらには往年の大女優岡田嘉子の出演など見どころも多く、ぼたんと寅さんの出会いの場所となった播州龍野の古い町並みも情緒的で美しい。

もちろん笑いどころも満載で、龍野のお座敷で寅さんが転がった芋を追いかけるシーンは絶品だし、古本屋の強欲な主人を演じた大滝秀治と寅さんのやりとりや、観光課課長を演じた桜井センリの空回りも気の毒だがとても笑える。

寅さんはワンパターンだと言われがちだが(そういう一面はもちろんあるが)本作は純粋に一本の映画として素晴らしい出来栄えなので、ぜひ一度観てほしい。

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