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映画『浮雲(1955)』あらすじ&ネタバレ感想

巨匠・成瀬巳喜男の代表作として知られる恋愛映画。戦時のベトナムで出会った男女の生涯に渡る恋愛をもどかしく描く。『二十四の瞳』など名だたる巨匠たちの作品に華を添えた高峰秀子が主演を務める。

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映画『浮雲』 作品情報

  • 製作年:1955年
  • 上映時間:123分
  • ジャンル:ラブストーリー、ヒューマンドラマ
  • 監督:成瀬巳喜男
  • キャスト:高峰秀子、森雅之、中北千枝子、木村貞子、山形勲 etc…

映画『浮雲』 評価

  • 点数:70点/100点
  • オススメ度:★★★☆☆
  • ストーリー:★★★★☆
  • キャスト起用:★★★★★
  • 映像技術:★★☆☆☆
  • 演出:★★★★☆
  • 設定:★★☆☆☆

映画『浮雲』 あらすじ(ストーリー解説)

映画『浮雲(1955)』のあらすじを紹介します。

タイピストとして仏印に渡ったゆき子(高峰秀子)はそこで富岡(森雅之)と出会い、彼が既婚者と知りながらも恋に落ちる。一緒になることを約束したゆき子は終戦後富岡の元を訪ねるが、そこには依然妻との生活を続ける富岡の姿があった。失意のゆき子は米兵の情婦となるが、富岡が訪ねて来ると心が揺らぎよりを戻すことになる。終戦後の混乱で事業が上手くいかず、富岡はゆき子を連れて伊香保温泉を訪れる。そこで富岡は飲み屋の主人清吉と親しくなるが、その若妻であるおせい(岡田茉莉子)と関係を持ってしまう。ゆき子はそのことに気付き、2人は伊香保を去るのだった。

それからしばらくして妊娠が発覚したゆき子は富岡の元を訪ねる。しかしそこにいたのは富岡と同棲するおせいであった。失望したゆき子はかつて関係を持った男伊庭に金を借りて、中絶をするため入院する。そこでおせいが元夫の清吉に殺害されたことを知る。

中絶後は伊庭の所に身を寄せていたゆき子であったが、ある日富岡が金の工面に訪ねてくる。妻を亡くし葬儀もろくに開けないという富岡を見て、かつての愛情が蘇る。ゆき子は種子島に勤務に行くという富岡に着いていく決心をする。しかしその時ゆき子の体は病に蝕まれていた。富岡が仕事に出て不在の大雨の日、ゆき子はついに息絶えるのだった。

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映画『浮雲』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)

映画『浮雲(1955)』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む

ヤルセナキオ

監督の成瀬巳喜男はその性格から名前をもじって「ヤルセナキオ」と呼ばれていた。本作はその性格がよく表出された作品だ。高峰秀子と森雅之演じる2人の男女は戦後の混乱の中、幾度となく一緒になりながらも結局真に結ばれることはない。まるでタイトルの示すように浮雲のように世間を彷徨い続けるのだ。時折すれ違っては互いの大切さを確認しながらも、風が吹けばまた互いに違う方向に流されてしまう。

身体の相性

何故ここまでに2人が惹かれあうのかという質問に成瀬は「身体の相性だ」と答えている。恋愛映画において身体の相性というのは軽視されがちであるが、考えてみれば身体の相性というのは全くもって偶然の一致だ。性格や外見の好みといったものは、ある程度事前に選り好みができる。ところが身体の相性となるとそうはいかない。男女の仲になって初めて良し悪しが明かされる。そう考えると実は身体の相性というのも運命なのではないかと思えてしまう。

物語は「花のいのちはみじかくて苦しきことの多かりき」という林芙美子の詩で締めくくられる。時代の波や一時の感情に流され幾度離れ離れになろうとも、結局身体の相性という運命に従って愛し合わずにいられない悲しい男と女の性の物語なのだ。


ゆき子の見る目の無さにも腹が立ったし、成瀬の女たらしでゆき子をいいように使っているとしか思えない行動にも物凄くイライラしました。正直、もっと情緒や風情のある悲しい男女の恋愛を描いていると思ったので、しょうもない男にハマってしまった残念な女の姿を描いているとしか思えなかった今作は非常に残念でした。
体の相性が良いからと話す成瀬にはうんざりしましたが、突き詰めてしまうと男女の関係に体の相性が大事なのはあながち間違っていないかもしれないと複雑な気持ちになりました。(女性 30代)

映画『浮雲』 まとめ

成瀬巳喜男監督による文芸ロマン作品。今なおオールタイムベストを選出すると必ずと言っていいほど上位に入ってくる名画である。それはやはり物語が男と女という普遍的なテーマに対して、真摯な視線を保ち続けているからであろう。決して生温いご都合主義には陥らず、むしろ常に冷静に女心男心をえぐるような演出を貫いている。高峰秀子の代表作として語られることが多い本作だが、森雅之の名演も光る。男の色気を振りまきながらも、やるせなさを滲ませる演技は観る者を惹き付ける。

ただ見方によっては男女がくっ付いたり離れたりを繰り返すだけという、取り留めも無い話にも見えてしまうのも事実。明確な起承転結の元に関係が進展する恋愛映画が主流を占める現代で、残念ながらこの作品の肩身は狭いように感じてしまう。

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