『遥かなる山の呼び声』あらすじ感想とネタバレ映画批評・評価

遥かなる山の呼び声の概要:「遥かなる山の呼び声」は、1980年の日本映画。監督は「幸福の黄色いハンカチ」、「男はつらいよ」シリーズの山田洋次。主演は「八甲田山」、「幸福の黄色いハンカチ」などの高倉健。共演は「男はつらいよ」、「幸福の黄色いハンカチ」倍賞千恵子。武田鉄矢、吉岡秀隆、ハナ肇、渥美清など、出演者も山田洋次監督の映画でお馴染みの面々が揃っている。

遥かなる山の呼び声

遥かなる山の呼び声 あらすじ

映画『遥かなる山の呼び声』のあらすじを紹介します。

北海道東部に広がる根釧原野にある酪農の町。風見民子(倍賞千恵子)は一人息子の武志(吉岡秀隆)を育てながら、亡き夫の残した中標津の土地で牛飼いをしている。ある春の夜、激しい雨の降る中に一人の男が民子の許を訪れ、納屋に宿泊する。その晩には牛のお産があり、男はそれを手伝うと翌朝には去っていった。

そして夏のある日、その男が再び働かせて欲しいと訪ねてくる。隣家の娘ひとみが働いてはいるが、男手がなかった民子は彼を雇うことにする。田島耕作(高倉健)と名乗る男は、その日から納屋に寝泊まりして働き始める。民子の息子である武志は耕作にすぐに懐いた。近所で北海料理店を経営する虻田(ハナ肇)は、民子に惚れており、力ずくで彼女をモノにしようとした時に耕作に止められた。怒った虻田は兄弟を伴い耕作に決闘を挑むも簡単にあしらわれ、それから虻田は耕作を兄貴と慕うようになる。そんな中、民子が腰痛を訴え入院することになり、武志は寂しさから耕作と共に納屋で寝るようになった。民子が退院して間もなく、従弟の勝男(武田鉄矢)が新婚旅行で新妻の佳代子(木ノ葉のこ)を連れてやって来た。その数日後、耕作の兄の駿一郎(鈴木瑞穂)が訪ねてくる。彼は耕作が起こした事件で教職を追われながらも、耕作の行く末を心配していた。その夜、耕作は民子にここに留まりたいと胸の内を明かす。

季節は秋に変り、地元の人々が待ち焦がれる草競馬の時期となった。耕作も民子の馬で出場し見事に一着でゴールインする。興奮する民子や武志と観客たちの中に刑事の姿があった。刑事の質問を上手く切り抜けた耕作だったが、その夜、彼は民子に過去の全てを明かした。二年前に耕作の妻が高利貸しから借金を背負って自殺した際、耕作の妻を詰る高利貸しに腹を立て殺した後に彼は逃亡していた。そして家を出るという耕作に民子は止める理由はなかった。夜更けに耕作が民子の家の戸を叩き、ある決意から戸を開けた民子だったが、彼は牛の容体が悪くなったと知らせに来ただけだった。徹夜で牛の看病をした翌朝、耕作は家の前で待つパトカーへ自ら歩を進めた。そして冬が訪れ、網走に向う列車の中に四年の刑を言い渡された耕作の姿があった。美幌の駅で耕作は虻田と民子の姿を見る。民子が町に出て、耕作の出所を待つため武志と新しい生活を始めたことを告げる虻田。夕陽に染まる雪原に、耕作を乗せた列車の姿が次第に小さくなっていった。

遥かなる山の呼び声 評価

  • 点数:90点/100点
  • オススメ度:★★★★★
  • ストーリー:★★★★★
  • キャスト起用:★★★★★
  • 映像技術:★★★★☆
  • 演出:★★★★★
  • 設定:★★★★☆

作品概要

  • 公開日:1980年
  • 上映時間:124分
  • ジャンル:ヒューマンドラマ
  • 監督:山田洋次
  • キャスト:高倉健、倍賞千恵子、吉岡秀隆、ハナ肇 etc

遥かなる山の呼び声 批評 ※ネタバレ

映画『遥かなる山の呼び声』について、2つ感想批評です。※ネタバレあり

やはり健さんには北海道が似合う

高倉健という俳優はどうしても「網走番外地」のイメージからなのか北海道がよく似合う。健さんの共演者である倍賞智恵子も、葛飾柴又よりこちらの方が板についている感じがする。健さん演ずる田島耕作は殺人事件で逃亡していながら、多くの住民と交流し輓馬大会にも出るような無防備な設定だが、北海道という大らかなイメージとして、そういった設定も違和感なく描かれている。リアルな設定にしすぎてしまうとこの物語のプロセスもなくなってしまうかも知れないので、最後に辻褄が合うところは、観る側にドラマ性を強く感じさせられる演出なのだろう。最後のシーンで二度と会えないだろうと思われ、現況を知らせる民子に感謝の涙を見せる健さんの感動的なシーンである。ハナ肇の豪放さや倍賞千恵子の健気さに加え、子役ながら吉岡秀隆の演技も息の合った熱演で、高倉健を充分に引き立て万全の仕上がりを見せている。

山田洋次の描く人々の朴訥さがいい

この作品が公開された時点で「幸福の黄色いハンカチ」ほどの評価は受けなかったが、内容的には遜色のないものだと感じる。ハンカチのような特筆される印象的シーンはなく、出演者が似通っているというところで二番煎じ的なイメージを持たれたのかも知れないが、牧場の風景や北海道の中で純粋に生きる人々の姿を描く内容には、山田洋次監督の朴訥さが表れて感銘を受けるところは多い。ストーリーのシナリオ以前に人々の生き様というところに焦点を置いた映画視点は、高倉健を始めとする出演者の演技力をさらに際立たせる眼力の賜物だろう。監督役者ともに日本映画の粋を集めた名作であることには間違いない。

遥かなる山の呼び声 感想まとめ

高倉健も倍賞千恵子も若く、吉岡秀隆は子役で初々しい。健さんも逞しく牧場で働く様が板についていながら、犯罪者として逃走中の陰を帯びた雰囲気も無言の表情から滲み出ており、その存在感は変わることはない。考えれば監督と役者の見事なコラボレーションが背景にあるこのような映画はもう撮られないのだろう。健さん亡き後の日本映画でどのような作品が撮られてゆくのか。役者はさておき、監督と制作側の現況を考えると日本映画は今後どうなってしまうだろうかという懸念はある。風景も人の生き方も変わってしまった中で、映画特有の感動というものが希薄になっているのは事実だろう。出来れば社会的な苦悩を描く作品ばかりは見たくないものである。

Amazon 映画『遥かなる山の呼び声』の商品を見てみる