『夕笛』あらすじ感想とネタバレ映画批評・評価

夕笛の概要:「夕笛」は、1967年の日本映画。監督は「伊豆の踊子」、「青い山脈」など青春映画を多く手がけた、西河克己。主演は青春純愛もので当時売り出し中だった、歌手の舟木一夫と、清純派女優の松原智恵子。共演に島田正吾、風見章子、小高雄二など。昭和42年度の芸術祭参加作品。

夕笛

夕笛 あらすじ

映画『夕笛』のあらすじを紹介します。

昭和初期。ある城下町の“椿屋敷”と呼ばれる家に若菜(松原智恵子)という美しい娘がいた。若菜はある日、高校生の島村雄作(舟木一夫)が庭に咲く椿をもらいに来たことから彼と知りあった。“椿屋敷”は元は雄作の家だったが、漁師で成功した若菜の父、銀蔵(島田正吾)が買い取った屋敷である。その出逢いから若菜と雄作の間に愛が芽生え始める。銀蔵は若菜を家柄の良い高須賀家に嫁がせるつもりであり、その準備を進めていた彼は、若菜が雄作と親しくしているのを知り激しく叱責する。若菜の兄で作家の巳代治(小高雄二)は妹を不憫に思って雄作との駆落ちを勧める。すでに銀蔵は高須賀家との結納を取り交していたこともあり、巳代治の勧めに従い、雄作は東京へ向かう決意で若菜の待つ場所へと急いだが、巳代治が左翼作家として逮捕され、自らも巻き添えに会い捕まってしまう。家に連れ戻された若菜は、不本意の中で高須賀信之(波多野憲)に嫁いで行った。一年が経過して、端目には若菜も高須賀家に馴染んだように見えたが、彼女の脳裏から雄作が消えることはなく、彼女は時折、雄作が子供の頃から大事にしていたオルゴールを取り出しては、彼との想い出に耽っていた。しかし、そのことが家族に知れ、夫や姑に冷たくされた若菜は辛い日々を過ごす。そんな中で銀蔵が亡くなり、“椿屋敷”は焼失してしまう。心労の重った若菜は目を患い、半分盲目になってしまうが、居辛さが増した高須賀家を飛び出し、小さい頃から世話になったトヨ(野村昭子)と共に屋敷の焼け跡に暮しはじめた。そうした折りにドイツ留学の決った雄作が彼女の前に姿を現わす。雄作は若菜との再会を喜んだが、彼女の目が悪いことを知るとドイツ留学を取りやめ、東京に出て若菜の目を治そうと決意する。雄作の出世の妨げになると断った若菜も、雄作の愛に喜びを隠せなかった。しかし荷物をまとめて若菜の許に急ぐ途中、雄作は持病の心臓発作で倒れ帰らぬ人となる。そして雄作の死を追うように若菜は彼の墓標へと寄り添い息を引き取ったという。

夕笛 評価

  • 点数:90点/100点
  • オススメ度:★★★★☆
  • ストーリー:★★★★☆
  • キャスト起用:★★★★☆
  • 映像技術:★★★★☆
  • 演出:★★★★★
  • 設定:★★★★★

作品概要

  • 公開日:1967年
  • 上映時間:92分
  • ジャンル:ラブストーリー
  • 監督:西河克己
  • キャスト:舟木一夫、松原智恵子、島田正吾、風見章子 etc

夕笛 批評 ※ネタバレ

映画『夕笛』について、2つ感想批評です。※ネタバレあり

昭和のナチュラルな風景が美しい作品

冒頭は青春ものであり、昔で言うメロドラマに発展してゆくストーリーであるが、今さらながらこの純粋なストーリーに引き込まれてしまった。1967年と言えば日活青春路線の映画が多く撮られた時代でもあるが、セットを用意しなくても昭和初期の面影も随分と残っていたのだろう。若菜の住む“椿屋敷”も佇まいが良く、おさげを結った松原智恵子のセーラー服姿が何とも似つかわしい。今では考えられないような砂利道にすら郷愁を感じられ、二人が歩く夕暮れの海岸風景などは何と美しい風景であろうかと見とれてしまうほどである。このナチュラルな昭和の風景に描かれる物語が、主人公二人の悲恋をよりいっそう哀しく描き上げ、古い因習に成り立つ結婚や人間像もリアルな姿で浮き彫りにされている。舟木一夫は線が細いながらも悲恋物語の主人公にはピッタリと嵌り、松原智恵子も清純派の持ち味をいかんなく発揮しており、陳腐なストーリーと設定ながら、時代が生んだ悲恋物語の作品として見所の多い作品である。

地味な二人であるがゆえに成り立った悲恋物語

舟木一夫と松原智恵子という主役は、当時の若手俳優の中では全く派手さはなく、石原裕次郎のように、青春と言ってもやんちゃをするような暴走イメージなど微塵も感じさせない。昭和初期という設定であるので暴走するにも持って行き場もなかったであろうが、二人の持つストイックさが淡々としたラブストーリーにはもってこいであり、意地の悪い周辺からの抑圧に耐える姿が何ともいじらしく映る。耐えるという美学が昭和の時代を反映しておりながら、その反面、傲慢な人間は徹底的に傲慢さが描かれており、人間像も含めてこの時代の映画は趣きに溢れている。

夕笛 感想まとめ

半分は現代劇で、半分は時代劇のようなニュアンスであり、18歳辺りから結婚を意識して皆が生きていたのだというところも再認識した。今の時代みたいに人生の選択肢が少なく、人と人との密接な関係が描かれており、毎日の生活で避けられようのない人間関係に翻弄されながら皆が生きていたのだろう。今では希薄になった家族というものの姿が垣間見え、その背景にある小さな文化という存在もリアルにクローズアップされ、目に焼き付いてくるのである。多分今の映画では随分と予算を掛けて演出しなければ表現できないようなセットも、ありのままの背景で撮ることが可能だった幸せな時代だったのではないだろうか。風景も心理描写も、日本人の美意識が凝縮されているような内容に素直な感動を覚える作品である。

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コメント

  1. T.K より:

    まさに昭和初期のあの時代のイメージと純愛シーンが感動しますね。
    今の時代にマッチしないように見えますが、今でも純愛があるのではないかと期待しています。松原智恵子の清純派女優が眩しいくらいでした。