映画『イノセンス』あらすじとネタバレ感想

イノセンスの概要:「GostintheShell/攻殻機動隊」(95)の続編。前作から3年後(2032年)の電脳世界を描くSFサスペンス。生きるとは何かという深い思想の森に迷い込ませる問題作。出演は、大塚明夫、山寺宏一、田中敦子。

イノセンス あらすじ

イノセンス
映画『イノセンス』のあらすじを紹介します。

2032年。前作のラストで、電脳の海に消えた草薙素子の失踪から3年後の物語。新型のガイノイドという人形による殺人事件が発生。ガイノイドはロクス・ソルス社が開発した量産型の人形。そのロクス・ソルス社が怪しいと公安9課である攻殻機動隊のバトー(大塚明夫)と相棒トグサ(山寺宏一)が捜査に乗り出す。
まず、殺人を犯したガイノイドを検死した検視官ミス・ハラウェイを聴取。殺人が起きた背景について、”人間が人形を捨てるからよ”と言い、殺されたガイノイドが”セクサロイド”であったと証言。また、殺される直前の”助けて・・”という悲痛な叫び声を再生させた。

再び、殺人事件が発生。今度は、遺体をバラバラにして、臓器を冷蔵庫に保管するという猟奇殺人だった。この事件以後、ガイノイドによる殺人事件をバトーとトグサは専従捜査することに。トグサは、荒巻部長(大木民夫)からバトーについて訊かれます。”バトーとうまくいってるか?”と。ヤクザがらみの殺人事件から洗い出すためにヤクザと穏便に話すつもりが、バトーの行動によって銃撃戦になってしまう。
バトーは、ヤクザに対して、”てめぇらの半端な電脳を恨みな!”と格の違いを見せつけるが、この1件が元でバトー自身の電脳が侵入(ハッキング)されてしまう。バトーの飼い犬のドックフードを買う店で、バトー自身の腕を撃つ罠にかかったのだ。腕を修理した後、荒巻部長の命により、北端のエトロフ経済特区へ飛ぶ。そこは、エキゾチックで中華風な世界。ハッカーであり、ロクス・ソルス社の秘密を知るキム(竹中直人)に会いに行く。
しかし、巧妙な罠が仕掛けられたキムの館で、トグサは自身の脳をハッキングされてしまう。また死んだ振りをしたキムを、バトーはひと目で見破ります。トグサは援護に回り、バトーは単身、ロクス・ソルス社へ泳いで向かう。

ロクス・ソルス社に侵入したバトーは、戦いのさなか、草薙素子(田中敦子)が人形に乗り移る形で出現したのを感じます。バトーは、素子に上着をかけると、2人は共にロクス・ソルス社解体の為、ガイノイドを殺し続けます。そして、ついにロクス・ソルス社を制圧。草薙素子は、バトーに対して、ロクス・ソルス社のガイノイドが人気になった秘密を話す。それは、”ゴースト・ダビング”という方法を使って、子供の魂(ゴースト)をガイノイドに移したためだという。
監禁されていた子供も見つかった。バトーが、”魂を吹き込まれた人形がどうなるか考えなかったのか?”と助けた少女に問うと、少女は、”私は人形になりたくなかったの!”と叫ぶ。こうして、ガイノイド殺人事件は解決した。バトーはトグサに夕食を食べないか?と誘われるが、やんわりとことわります。バトーには、バセット・ハウンド犬がいるだけで幸せなのです。

イノセンス 評価

  • 点数:80点/100点
  • オススメ度:★★★★☆
  • ストーリー:★★★★☆
  • キャスト起用:★★★★★
  • 映像技術:★★★★☆
  • 演出:★★★★★
  • 設定:★★★★☆

作品概要

  • 公開日:2004年
  • 上映時間:99分
  • ジャンル:SF、アクション、サスペンス
  • 監督:押井守
  • キャスト:大塚明夫、田中敦子、山寺宏一、大木民夫 etc

イノセンス ネタバレ批評

映画『イノセンス』について、感想批評です。※ネタバレあり

人の生きる意味を問う~たくさんのゴーストと人形の世界

「イノセンス」は、人形をテーマにしながら、人の生きる意味を問う作品だと思う。人形は何故、人に似せて作られるのか。肉体と魂、人間と人形の違い、生身と義体化など密接に結びつき、切り離せない領域へと進んでゆこう。

本作の主人公バトーは、目や義手など体のほとんどを義体化、脳も電脳化させています。そのバトーが、”自分のゴーストを信じられないのか?”と問う場面があります。ここで言うゴーストとは、”魂、記憶、人格、根源”を表し、人間が人間である証のようなものです。

バトー達の生きる近未来では、電脳世界であるがゆえに瞬時に情報を共有できる反面、脳をハッキングされて簡単に記憶を変えられてしまう危うさを持っています。義体を持つ者は、”私が私である”と知覚するために”ゴースト”が必要なのです。そうなると、本当の”ゴースト”が必要となるが、電脳世界に身を置いているとどれが正しいゴーストなのか分からなくなってしまう。

そのために、バトーには、生身の存在であるトグサや飼い犬の存在が欠かせない。本作は、警察ものとしても面白い作品です。独身のバトーと家族持ちのトグサ。2人のバディ感がいい。補いつつも、交りあわない関係です。バディ感といえば、草薙素子の存在も忘れてはならない。電脳の海に消えた素子だが、バトーを常に見守り、いざという時には共に戦う”幸運の女神”です。

実は、バトーは素子を愛しているのですが、その気持ちを素子がどう考えているのか分かりません。もしかすると、人を愛する気持ちが生きる意味ではないでしょうか。筆者は、バトーがそっと素子に上着を着せてあげる場面や、素子が着替える時、バトーが目をそらす場面が好きです。

押井守監督のアニメ世界の魅力~引用が紡ぐ哲学の岸辺

押井守監督のアニメは、とにかく古今東西の文学作品等からの引用が多い。圧倒的な映像美に加えて、説得力のある声優の表現がより深く心に沁みこませてくれます。印象的な引用を紹介しつつ、イノセンス・ワールドを解くカギとして考えたい。まず、荒巻部長がトグサに言った言葉。”孤独に歩め 悪を成さず 求めるところは少なく 林の象のように”。(出典:ブッダ「感興のことば」第14章「憎しみ」より)

良き伴侶を得られなければ、独身を貫けという意味。トグサは既婚者なので、仕事のパートナーであるバトーの事を言っているのでしょう。次は、草薙素子がバトーに言った言葉。”鳥の血に悲しめど、魚の血に悲しまず。声あるものは幸いなり。”(出典:斎藤緑雨。)刀を鳥に加えて鳥の血を悲しんでも、魚に加えて魚の血を悲しまない。声があるものは幸せであるという意味。素子からバトーへのなぐさめの言葉だと思います。

映像だけでなく、引用が紡ぐ世界が魅力的です。人生のはかなさ、人形とは何かと考える上で重要です。例えば、人間と人形の違いについて語るのにこんな言葉があります。”人体は自らゼンマイを巻く機械であり、永久運動の生きた見本である”と。(出典:フランスの医師、ド・ラ・メトリ「人間機械論」より)もし、他の映画監督が、たくさんの引用をちりばめたら、ただのインテリ風を吹かせているだけじゃない?と思いますが、「イノセンス」は引用なしでは進むことができないのです。

またCGと融合した映像もリアルで、感情むきだしの人形の行動にホラー映画を観ているかのように恐怖を感じます。もう他のアニメが見られなくなっちゃう。ぜひ、1度で理解しようと思わず、何度も観て下さい。

イノセンス 感想まとめ

押井守監督の世界はまるで、広大な深宇宙のようです。筆者は、「イノセンス」を2度観ましたが、それでもすべてを理解することが出来ませんでした。「攻殻機動隊」という作品の難解さや複雑化した世界観は、まるで自分の脳が電脳世界に繋がったかのような興奮も与えてくれます。本作の見どころは、主人公バトーと電脳の海に消えた草薙素子との愛に似た交流。そして、バトーとトグサのバディ感も必見です。また、本作の”人形”というテーマも、”死体”としての存在なのか、”生き物”として形なのか。とても興味深いです。

筆者は、人形が苦手なので、怖くて人形の目を見ることができませんでした。人形には魂が宿ると昔から言われていますが、もしかしたら本当に魂を移せるのかもしれません。本作では、「ゴースト・ダビング」という方法で移しているようです。怖い、だけど何度も観たくなる映画です。最後に、犬好きには共感できる場面が多く、特に押井監督のバセット・ハウンドへの愛が感じられますよ。

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