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映画『きさらぎ駅』のネタバレ・あらすじ・考察・解説

この記事では、映画『きさらぎ駅』のあらすじをネタバレありの起承転結で解説し、この映画の疑問や謎をわかりやすく考察・解説しています。

映画『きさらぎ駅』の作品情報


出典:U-NEXT

製作年 2022年
上映時間 81分
ジャンル ホラー
監督 長江二朗
キャスト 恒松祐里
本田望結
莉子
寺坂頼我
木原瑠生
製作国 日本

映画『きさらぎ駅』の登場人物(キャスト)

堤春奈(恒松祐里)
卒業論文のテーマにするため「きさらぎ駅」について取材する大学生。
葉山純子(佐藤江梨子)
かつて「きさらぎ駅」に行ったとされる女性。
宮崎明日香(本田望結)
純子が「きさらぎ駅」で出会った女性高校生。純粋な性格。
松井美紀(莉子)
純子が「きさらぎ駅」で出会った若者。
飯田大輔(寺坂頼我)
純子が「きさらぎ駅」で出会った若者。
岸翔太(木原瑠生)
純子が「きさらぎ駅」で出会った若者。
花村貴史(芹澤興人)
純子が「きさらぎ駅」で出会ったサラリーマン。酒好き。

映画『きさらぎ駅』のネタバレ・あらすじ(起承転結)

映画『きさらぎ駅』のあらすじをネタバレありの起承転結で解説しています。この先、ネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『きさらぎ駅』のあらすじ【起】

大学生の堤春奈は、「現代の神隠し」とされる『きさらぎ駅』をテーマに卒業論文を書こうとしていた。

「はすみ」という女性が「きさらぎ駅」という存在しない駅に到着し、その様子をリアルタイムで匿名掲示板『2ちゃんねる』に書き込み、やがて消息を絶ってしまった。
一時期はネットでも話題になった出来事だった。

春奈は、「はすみ」と思しき女性・葉山純子と会うことに。
純子の家を訪れると、彼女の姪の凛がもてなしてくれた。
純子は自分が「はすみ」だと認め、当時の詳細を語り始めた。

当時、高校教師の仕事を終えた純子は西鹿島行きの最終便に乗った。
気づけば電車は、全く知らない風景の中を走っている。
他に乗客はいたものの、全員眠り込んでいた。
車掌室は確認ができず、乗客を起こす純子。
誰も状況を理解できないまま、「きさらぎ駅」という見知らぬ駅に到着した。

サラリーマンの花村、女子高校生の明日香。
岸・飯田・美紀の若者3人組。
そして純子も加えた六人は、全員降車することに。

その駅は他の電車があるのかも、トイレがあるのかも分からなかった。

映画『きさらぎ駅』のあらすじ【承】

純子の勤め先は、明日香が通う学校でもあるようだ。
誤ってカップ酒を転ばせてしまった花村は、ベンチで寝た。
岸と美紀は外に出かけていったが、『飯田の異変を見た』とすぐに戻ってきた。
結局、飯田以外の全員が線路沿いを歩いて移動することに。

美紀に事情を聞くと、飯田の全身に血管が浮かび上がったのだと言う。
やがて、太鼓の音が聞こえてきた。
その瞬間、花村の頭が破裂したのだ。

その直後いきなり現れた老人が一行に話しかけつつ、杖を突きながら追いかけてきた。
さらに前方から走り寄ってきた飯田に、美紀が抱きつかれる。
その瞬間、2人とも燃えてしまった。
それを見た岸はナイフを取り出し、純子か明日香を生け贄に捧げて脱出すると言う。
岸を振り切った2人は、「伊佐貫トンネル」に入るのだった。

そこでも岸は襲ってくるものの、血管のようなものに吊るされてしまう。
負傷した純子を明日香が支え、やがて前方に車が停まった。
運転手の提案で、車に乗ることにした2人。
『まっすぐ進む』とのことだったので、安心した2人は後部座敷で眠り込んだ。

映画『きさらぎ駅』のあらすじ【転】

目が覚めると、2人は運転手に襲われそうになっていた。
逃げた2人は神社に行き着き、明日香は神社に現れた輝く扉に入る。
扉は消えたが、純子も気づけば現実世界に戻っていたのだった。
ただ、7年が経過していた。
明日香が助かったのかも分からなかった。

春奈は、純子と詳しい状況を探る。
当時の純子は2度寝過ごし、1往復する形で電車に乗り続けていた。
つまり「電車が1往復してから最終電車に乗ること」が、「きさらぎ駅」に行く条件かもしれない。
春奈も「きさらぎ駅」に行くことを決意した。

同じ手順で西鹿島行きの最終電車に乗った春奈。
気づけば、電車は見知らぬ風景を走っていた。

サラリーマン、女子高校生、若者3人組。
純子の話通りの光景だったのだ。
やがて電車は「きさらぎ駅」に到着した。

明日香は純子のことを覚えていないが、全員の行動は純子の話通り。
花村がカップ酒を転ばすことも事前に知っていたから、キャッチすることができた。
3人組は外に出ようとする。
純子の話通りなら、まず飯田が襲われるはず。
阻止するため、春奈も彼らを追いかけた。

映画『きさらぎ駅』の結末・ラスト(ネタバレ)

3人組を説得できたが、なぜか岸が血管の化け物に襲われる。
結局、一行は線路沿いを歩くことに。

老人や岸の出現も知っていた春奈は、見事に対処。
事情を話しつつ、一行を伊佐貫トンネルに案内した。
現れた車の運転手も石で殴り、車を花村に運転させるのだった。

しかし追いかけてきた運転手に、花村はやられる。
さらに神社ではなく、洋館が現れた。
そこで飯田が燃やされるものの、春奈は光る扉を見つけた。
明日香を先にくぐらせる春奈。
純子の話によれば、それが元の世界に戻る条件だ。
しかし、いつまで経っても戻れない。
春奈の叫び声が、異世界に響き渡るのみだった。

明日香が現実世界に戻り、純子が彼女を迎えに来ていた。

純子は、春奈に嘘をついていた。
扉は確かに、最初に通った者だけを現実世界に戻す。
しかし最初に通ったのは、明日香ではなく純子だったのだ。
純子は、今度は明日香を最初に扉に入らせることを考えた。
その引き換えとして、春奈が異世界に残るよう仕向けたのだった。
春奈の身元調査結果を純子が捨てるところで、物語の幕が閉じる。

映画『きさらぎ駅』の考察・解説(ネタバレ)

映画『きさらぎ駅』の疑問や謎をわかりやすく考察・解説しています。この先、ネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『きさらぎ駅』に気まずいシーンはあるのか?

映画『きさらぎ駅』を観ていると、思わず身をすくませるようなシーンがいくつかあります。それは登場人物たちの不自然な会話や行動、そして漂う緊張感が原因となっているのです。

物語の舞台である「異世界」は、不気味で未知の場所として描かれています。そこで繰り広げられる奇妙な出来事は、観る者の理解を超えたものばかり。登場人物のやりとりが時折違和感を生み出し、不安を掻き立てます。

例えば、主人公が見知らぬ人々と出会うシーン。彼らとの会話はどこかぎこちなく、噛み合わない印象を受けます。そんな中で、謎の人物や異常な現象が次々と現れ、主人公が冷静でいられるのが不思議に感じられるのです。観客としては「なぜあんなに落ち着いていられるの?」と疑問を抱かずにはいられません。こうしたズレが、映画全体に不安定な空気を醸し出しているのです。

また、他の登場人物が主人公に対して何かを隠しているようなそぶりを見せたり、言葉を濁したりする場面も。それが不気味さを増幅させ、観客に不快感をもたらすこともあります。

特に、物語が佳境に入るにつれ、登場人物の行動や反応がますます奇妙になっていきます。彼らの意図や状況が掴みづらくなり、感情移入が難しくなるのです。その結果、気まずく感じられるシーンが増え、緊張感が高まっていくのです。

映画『きさらぎ駅』のストーリーは本当にひどいのか?

映画『きさらぎ駅』のストーリーが「ひどい」と評される理由の一つに、物語の展開や登場人物の行動に不自然さがあることが挙げられます。話が進むにつれ、登場人物の行動や出来事のつながりが曖昧になり、唐突な展開が目立ちます。そのため、観客は物語の流れについていくのが難しくなってしまうのです。

舞台となる「きさらぎ駅」は、現実とは異なる不思議な空間として描かれています。この設定自体は非常に興味をそそられるものですが、その魅力が十分に引き出されないまま話が進んでしまうのが残念なポイント。特に、この異世界が存在する理由や、そこにいる人々の正体、目的がはっきりと説明されません。そのため、消化不良のまま物語が終わってしまうことがあるのです。

登場人物の行動も、唐突で感情の変化や動機が明確でない部分が目立ちます。主人公が異世界に迷い込んだ際の反応や、そこで出会う人物たちの奇妙な言動が十分に説明されないため、観客としては無理やり展開されているように感じてしまうのです。

とはいえ、この映画は異世界の不気味さや恐怖感を描くことに成功しています。独特な雰囲気や異世界の描写に引き込まれる観客も少なくありません。つまり、ストーリーの一部に「ひどい」と感じられる部分がある一方で、ホラー要素や不気味さを楽しむ観客にとっては満足のいく作品でもあるのです。

映画『きさらぎ駅』は実話を基にした作品なのか?

映画『きさらぎ駅』は、実際に起こった出来事を基にした作品ではありません。都市伝説をもとに作られたフィクション作品なのです。この都市伝説は2004年、インターネットの匿名掲示板「2ちゃんねる」で話題になりました。ある女性が架空の駅「きさらぎ駅」に迷い込んだという内容の投稿がきっかけで、広く知られるようになったのです。

「きさらぎ駅」の都市伝説では、「はすみ」という人物が電車に乗っていたところ、見知らぬ駅に到着します。その駅の名前が「きさらぎ駅」と表示されていましたが、実在しない場所でした。彼女はその後、掲示板を通じて他のユーザーとやりとりをしながら、異常な出来事に巻き込まれていきます。この話は謎のまま終わり、現実とフィクションの境界線が曖昧になるような不気味さが、多くの人々の心に残ったのです。

映画『きさらぎ駅』は、この都市伝説に基づいて制作されました。都市伝説の枠を超えるものではありませんが、その不気味さや謎めいた雰囲気を見事に映像化しています。まるで実話のように感じられるリアルさが、観客を強く引き付けるのです。

確かに、「きさらぎ駅」という場所が現実に存在するわけではありません。しかし、都市伝説としての存在感は非常に強く、インターネット文化の中で重要な位置を占めています。

つまり、映画『きさらぎ駅』は実話ではなく、インターネット上で広がった都市伝説を元にしたフィクション作品なのです。それでも、都市伝説のもつ魅力やリアリティが観客に強烈なインパクトを与え、まるで実際に起こり得るかのような錯覚を引き起こすのです。

映画『きさらぎ駅』に出てくるおじさんってどんな人物?

映画『きさらぎ駅』に登場するおじさんは、物語の鍵を握る謎めいた存在です。異世界である「きさらぎ駅」に迷い込んだ主人公に接近し、一見親切そうに振る舞いますが、その真意は見えません。彼の存在自体が、観客に不安を煽るのです。

おじさんは、きさらぎ駅という異世界の中で、主人公に道案内をしたり助言を与えたりします。しかし、その行動や言動には違和感が漂っています。親切心からなのか、それとも裏があるのか。観客は彼を信じていいのか戸惑ってしまうのです。

このおじさんは、単なる通行人ではないような気がしてなりません。異世界に関わる特別な存在、あるいはその世界の住人なのかもしれません。彼が登場するシーンでは、異常な状況や奇妙な出来事が次々と起こります。まるで彼がそれらの背後にいるかのように感じられるのです。落ち着いた態度や、不可解な状況を知り尽くしているかのような振る舞いは、彼がこの異世界に長く存在してきた人物であることを示唆しているようです。

しかし、おじさんが主人公を助けようとしているのか、それとも罠にはめようとしているのかは明らかではありません。彼の意図を疑いながらも、観客は思わず彼の一挙一動に注目してしまうのです。おじさんは、主人公を導く案内人のような役割を果たしつつ、同時に恐怖や不安を引き起こす存在でもあるのです。

このキャラクターのもつ曖昧さと不気味さは、映画全体の雰囲気とぴったりマッチしています。観客の緊張感を高める重要な要素となっているのです。結局のところ、このおじさんの正体や目的は最後まで明かされません。物語の中で最も謎に包まれた存在として、観客の心に強く残るのです。

映画『きさらぎ駅』の基になった都市伝説とは?

映画『きさらぎ駅』のベースとなっているのは、2004年に日本のインターネット掲示板「2ちゃんねる」で語られた「きさらぎ駅」という謎の駅にまつわる都市伝説です。この話は、ある女性がネット上で自らの体験を赤裸々に語ったことから始まりました。その投稿があまりにもリアルで緊迫感に満ちていたため、多くの人が現実とフィクションの境界があいまいになったと感じたのです。

都市伝説の発端となったのは、「はすみ」という名の女性の投稿でした。彼女は電車に乗っている最中、見知らぬ駅「きさらぎ駅」に降り立ったのです。そこから彼女は掲示板を通じて他のユーザーとやりとりをしながら、次々と異常な出来事に巻き込まれていきます。存在しないはずの駅の名前が表示されていることがすぐに判明しますが、彼女はその後も奇妙な体験を重ねていくのです。最終的に彼女は行方不明となり、その後の消息は誰にも分からないままという、謎に包まれた結末を迎えます。

この都市伝説は、インターネット上で大きな衝撃を与えました。多くの人々がこの話に魅了され、様々な解釈や派生ストーリーが生み出されていったのです。現実と非現実が混ざり合うような不可思議な世界観は、まさに「異世界に迷い込む」という恐怖を象徴していました。多くの人が「きさらぎ駅」の存在を信じ、議論を繰り広げたのです。

この物語が恐ろしいのは、日常のある瞬間、突如として異世界に引きずり込まれてしまうという設定にあります。現実のすぐそばに「異常な場所」が潜んでいるという感覚が、都市伝説の核心なのです。それこそが、多くの人の心に強い不安を呼び起こしたのでした。この都市伝説は、その後様々なメディアで取り上げられ、映画やドラマ、小説など、多岐にわたる作品へと発展していったのです。

映画『きさらぎ駅』は、この都市伝説を下敷きにして、異世界の不気味さと謎を丁寧に描き出した作品です。映画化によって、その恐怖がビジュアル的に表現されることで、物語はさらに強烈なインパクトを放つことになったのです。

映画『きさらぎ駅』は、どの辺りが怖いのか?

映画『きさらぎ駅』が恐怖心を煽る要因は、物語全体を包み込む不気味な空気感と緊迫感、そして現実世界との違和感を巧みに表現している点にあります。観客は主人公と共に、「きさらぎ駅」という異世界へと迷い込んでいく過程を体験します。現実との繋がりが徐々に薄れていく中で、不安感が増幅されていくのです。

この映画の恐怖の本質は、「日常」が突如として「非日常」へと変貌してしまうことにあります。主人公は普通に電車に乗っていたはずなのに、気がつけば存在しないはずの駅に降り立っているのです。この非現実的な状況に直面した瞬間、観客は「もしかしたら自分もこんな目に遭うかもしれない」という恐怖に襲われるのです。

そして、この映画では不気味なキャラクターや怪奇現象が次々と登場することで、観客の緊張感が持続します。きさらぎ駅で出会う謎の人物や、次から次へと起こる異常事態は、観客を不安と予測不能な恐怖に陥れます。登場人物の不自然な言動も、不気味さを助長しているのです。

さらに、この映画の怖さは、恐怖の正体が明らかにされないことにもあります。観客は物語が進行する中で、何が起きているのか、なぜ主人公がこの世界に迷い込んだのかが分からないままなのです。このあいまいさが観客の不安を増幅させ、ラストシーンに至るまで恐怖が持続するのです。

つまり、映画『きさらぎ駅』は、異世界の不気味さと、現実と異世界の境界線が曖昧になる感覚を巧みに描くことで、観客に強烈な恐怖体験を提供しているのです。予測不可能な展開と不気味なキャラクターが、この作品をホラー映画として際立たせているのです。

映画『きさらぎ駅』と原作との違いとは?

映画『きさらぎ駅』は、インターネット上で話題となった都市伝説「きさらぎ駅」を原作としたフィクション作品ですが、映画と原作の間にはいくつかの相違点があります。原作の都市伝説は、2004年に匿名掲示板「2ちゃんねる」に投稿されたもので、「はすみ」という人物が電車に乗車中、実在しない「きさらぎ駅」に降り立ったという内容でした。都市伝説自体は短く、主に彼女のリアルタイムの体験が語られる形で進行するため、物語の背景や登場人物の関係性などの詳細は描かれていませんでした。

一方、映画版ではこの都市伝説をベースに、ストーリーが大幅に膨らませられています。主人公がきさらぎ駅に到着するまでの経緯や、駅で出会う不可解な人物たち、そして異世界の謎が、より詳細に描写されているのです。映画オリジナルのキャラクター設定や新たな出来事が加えられ、都市伝説がシンプルな物語であったのに対し、映画版は複雑に入り組んだストーリー展開となっています。

また、原作では「はすみ」という人物が掲示板でリアルタイムに体験を語るという形式でしたが、映画版ではこの「はすみ」というキャラクターは登場しません。代わりに、架空の主人公が異世界での出来事を体験するという設定になっており、インターネット掲示板の要素は除かれています。この違いは、物語の進行や登場人物の感情表現に影響を与え、映画独自の解釈や演出が加えられる結果となっています。

さらに、映画版ではホラー映画としての視覚的・聴覚的な恐怖演出が重視されており、異世界の不気味な雰囲気や、そこで遭遇する怪異が、観客を恐怖に陥れる要素として強調されています。原作の都市伝説が文章のみの体験談であったのに対し、映画版ではビジュアルや音響を駆使した演出により、恐怖感が印象的に伝えられているのです。

つまり、映画『きさらぎ駅』は、都市伝説を基にしつつも、ストーリーやキャラクター、恐怖演出などの面で、映画独自の工夫が施されています。原作が短いインターネット投稿であったのに対し、映画版ではその世界観をさらに拡張し、観客に強烈なインパクトを与える作品へと昇華させているのです。

映画『きさらぎ駅』にある笑えるシーンとは?

映画『きさらぎ駅』は基本的にはホラー作品であり、全体を通して不気味で緊張感に満ちた雰囲気が漂っていますが、その中にも思わず笑みがこぼれてしまうようなシーンがいくつか散りばめられています。こうしたシーンは、映画全体の緊張感を適度に緩和する役割を果たしており、ホラー映画特有の恐怖の中にもユーモアが織り交ぜられているのです。

例えば、登場人物の予想外の行動や、意表を突く反応などがそれにあたります。ホラー映画独特の恐怖シーンの直後に、誰かが意外な一言を放ったり、思いがけない行動を取ったりすることで、観客の緊張が一瞬ほぐれる瞬間があるのです。異世界で起きる出来事に対して、登場人物があまりにも冷静に対応するシーンなどは、その好例でしょう。本来ならば恐怖で震え上がるはずの状況下で、何食わぬ顔で対処する姿に、観客は思わず吹き出してしまうかもしれません。

また、登場人物同士の会話ややり取りの中に、意図的にコミカルな要素が盛り込まれている場面もあります。特に、異常事態の最中に、誰かが緊張を和らげるために軽口を叩いたり、タイミングを外して冗談を飛ばしたりするシーンは、ホラー映画の定番とも言える「緊張の緩和」として機能しています。こうしたシーンは、映画全体の緊張感を一時的に解き放つと同時に、観客にとっては一息つける貴重な機会となるのです。

さらに、ホラー映画ならではの「あり得ない」展開が、思わぬ笑いを誘発することもあります。例えば、異世界で起きる怪奇現象があまりにも常軌を逸していて、逆に笑いが込み上げてくるようなシーンがその一例です。こうした場面では、恐怖の中にもユーモラスな要素が垣間見え、観客の心理的な負担が一瞬軽くなるのです。

こうした笑いを誘うシーンは、映画全体のホラー的な要素を引き立てるための巧妙な仕掛けとして配置されています。恐怖のシーンとユーモアのシーンを交互に挿入することで、観客の緊張感と緩和感が交互に訪れ、映画体験としての奥行きが増していくのです。このようなバランス感覚に優れた演出により、映画『きさらぎ駅』は恐怖とユーモアが絶妙に融合した作品として完成しているのです。

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