映画『あらしのよるに』の概要:ヤギと狼の友情を描いたロングセラー絵本をアニメ化した、2005年の日本映画。嵐の夜に出会ったヤギのメイと狼のガブは、種族や捕食関係を超えた親友となる。しかし、お互いの群れの仲間にその関係がばれ……。
映画『あらしのよるに』の作品情報
上映時間:107分
ジャンル:ファンタジー、アニメ
監督:杉井ギサブロー
キャスト:中村獅童、成宮寛貴、竹内力、山寺宏一 etc
映画『あらしのよるに』の登場人物(キャスト)
- ガブ(中村獅童)
- 気弱な狼。嵐の夜に山小屋でヤギのメイと出会い、友情を築く。子供の頃から体が小さく、群れの中で落ちこぼれ的立場となっていた。狼だが気が優しく、何より友情を大切にしている。
- メイ(成宮寛貴)
- 若いヤギ。幼い頃に母を狼に殺され、祖母に育てられた。嵐の夜に山小屋で狼のガブと出会い、友情を築く。楽観的で、ガブに食べられるなどとは微塵も思っていない。雷が怖くそそっかしいところがある。
- ギロ(竹内力)
- ガブが属する狼の群れのリーダー。メイの母を殺した張本人でもある。その際、メイの母に耳を食いちぎられ、それ以来ヤギをひどく憎んでいる。ガブとメイを執拗に追い続ける。
映画『あらしのよるに』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『あらしのよるに』のあらすじ【起】
ヤギのメイは幼い頃、狼に襲われた。メイの母親は彼を逃がし、自分が犠牲となる。
年月が経ち、森に嵐が来た。メイは急いで近くの山小屋に逃げ込む。山小屋の中は真っ暗で何も見えない。そこへ誰かが入ってきた。メイは蹄の音を聞き、同じヤギだと思って声をかける。しかし、実はそれは狼のガブだった。足をくじいて使っていた木の杖のコツコツいう音を蹄の音と勘違いしたのだ。2匹はお互いの正体に気付かないまま、会話を続ける。境遇や性格など似た者同士と知った2匹は、友達になることにする。
嵐が止み、2匹は明日の昼食を一緒に食べる約束をした。顔がわからないので「あらしのよるに」という言葉を合言葉にして、小屋の前で待ち合わせることにする。メイは足がしびれ、ガブが先に小屋を出たため、お互いの正体を知らないまま別れた。
約束の時間になった。ガブとメイは合言葉で顔を合わせ、互いの正体を知る。本来ヤギは狼に狩られる間柄。ガブはメイを食べるべきか一瞬迷ったが、友情を大切にしようと決める。2匹は山の上で昼食を食べることにするが、ガブは崖の割れ目に弁当を落としてしまう。葉っぱの昼食をほおばるメイを見て、空腹のガブは彼をおいしそうだと思ってしまう。ガブは葛藤するが、なんとか思いとどまった。
映画『あらしのよるに』のあらすじ【承】
狼がヤギを襲いに来る季節がやってきた。メイの属するヤギの群れは警戒を新たにする。メイはそよそよ峠でガブと会う約束をしていた。こっそりガブに会いに行こうとするが、友達がついてきてしまう。峠で待っていたガブは、メイが1匹ではないことに気付き慌てて隠れる。しかし結局、意図せずしてメイの友達を脅かしてしまった。友達はメイを置いて逃げていき、ガブとメイは2人のひと時を過ごす。
ガブの属する狼の群れでは、リーダーのギロがヤギの襲撃場所を決めていた。次の襲撃場所がメイとの待ち合わせ場所だと知り、ガブは慌てる。ガブはメイの近くまで迫ったギロを騙して、メイを助け出した。
ガブのおかげで生き延びたメイだったが、その姿を群れの仲間に目撃されてしまっていた。メイは群れの皆に問い詰められてしまう。群れの皆はガブがヤギ達の情報をスパイしているのだと言い、メイを責めた。メイの祖母は、彼の母が狼に殺され、そのオオカミの耳を食いちぎったのだと打ち明ける。ガブもメイを助けたことが群れの皆にばれ、閉じ込められてしまう。ギロの耳にはメイの母に食いちぎられた傷があり、ヤギをひどく憎んでいたのだ。
映画『あらしのよるに』のあらすじ【転】
両方の群れはそれぞれ、相手の群れの情報を聞き出すことを条件にガブとメイを群れに戻すことにする。森中の動物が見守る中、ガブとメイは河原で会うことになった。森は荒らしとなり川は激しく荒れ始める。ガブとメイは川の真ん中の岩へ移動するが、雷に驚きメイが落ちそうになってしまう。ガブが引っ張って助け、2匹はお互いを裏切ることなどできないと再確認する。2匹は荒れ狂った川へ飛び込んだ。
流れ着いたガブとメイは、無事に再会を果たした。しかし、このまま森の中にいれば、動物達に姿を見られて自分達が生きていることをそのうち知られてしまうだろう。2匹は狼達の追跡を逃れるため、誰も行ったことのない場所を目指して雪山越えを決意する。しかし、ギロ達はすでに2匹の後を追い始めていた。
ガブは夜中に餌となる動物を狩りに行く。メイはそれが不満だった。2匹は旅を続けるが、狼達に見つかってしまう。川を飛び越え、ガブとメイは命からがら逃げだした。
雪山越えを敢行したガブとメイだったが、ひどい雪の中でメイが倒れてしまう。ガブは雪穴を掘りメイを運び込むが、草のない雪山を歩き続けてきたメイには、空腹で体力も残されていなかった。メイはガブに、自分を食べて生き延びてほしいと頼む。ガブはそのようなことはできないと断るが、意思に反してお腹が鳴り、泣きだしてしまう。どちらが死んでも一緒に過ごすことはできなくなるのだ。メイはそれでも一緒に過ごした時間は変わらないとガブを諭す。ガブは初めて出会ったつもりで食べたいと嘘を言い、穴の外に出る。
映画『あらしのよるに』の結末・ラスト(ネタバレ)
ガブは雪の中、草が一本でも生えていないかと探していた。しかし、狼達はすぐ近くまで迫ってきていた。群れに気付いたガブは、メイが見つからないよう1匹で戦いを挑む。雪崩が起こり、ガブと狼達を飲み込んだ。朝になり、激しく降っていた雪が止んだ。メイは雪穴から出て歩くうちに緑の森を発見する。メイはガブを呼ぶが、ガブは現れなかった。
メイはガブを待ちながら、長い期間緑の森で暮らしていた。しかし、親友が去ってしまった悲しみは強く、ついにメイは倒れてしまう。すると突如森の動物たちが騒ぎ始めた。狼襲来の知らせを聞き、メイはガブに違いないと元気を取り戻す。しかし、ガブに駆け寄ったメイは、気絶させられてしまう。
ガブは満月の夜にメイを食べようと、洞穴に連れ帰った。ガブは雪崩の際に記憶喪失になっていたのだ。悲しんだメイは「嵐の夜に出会わなければよかった」とつぶやく。すると、「あらしのよるに」というワードでガブの記憶が甦った。2匹は一緒に満月を眺め、再会を喜ぶのだった。
映画『あらしのよるに』の感想・評価・レビュー
最後までメイの性別はハッキリと明かされませんでしたが、「声優が成宮寛貴さんで、男性だから、メイは雄である」と考えるのも何か違うかなと感じました。
メイとガブがしていることは、紛うことなく駆け落ちです。男女の駆け落ちにも見えますが、もしかしたら差別を受けた同性カップルの逃亡劇かもしれません。
あの世界で羊と狼が一緒になることは、差別や迫害に繋がります。人間の世界でもそれと似たものがあり、人種、国籍、階級による差別や迫害がそれに当たります。
ただの可愛いアニメではなく、人間世界へのメタファーとしても受け取れる作品です。(女性 20代)
原作からの根強いファンも多い作品だと思います。
種族を超えた友情物語と言うと、少々安っぽく感じられるかもしれませんが、人間に置き換えるとどうでしょうか。
同じ人間同士でも宗教や人種間での争いをやめられない動物です。
生活が豊かになり過ぎた私達人間には、捕食者と獲物のそれぞれ立場を想像するのは容易ではないかもしれません。
それでも、大人になって改めて気付かされる事がたくさんあります。
本能と理性に揺れ動かされるガブの描写は秀逸でした。(女性 20代)
この映画は子供向けではあるが、非常にメッセージ性が強いものとなっている。私が初めて見たときは子供の頃だったので、ただの素敵な友情物語で終わらせてしまった。しかし今になって感じるのは、種族の違いによる差別についてである。私自身もいわゆる国際恋愛をしている身として、やはり度々人種の違いというものは感じることがある。この作品内では捕食が絡んでいるので、少し違った理由での差別にはなるが、共通しているものもあると思った。
ちなみに面白かったのはガブが捕食関係を超越してまで友情を大事にするところである。本能が勝っているはずの動物が人間のように会話をし、高い知能を持って理性を保つ姿はやはりファンタジックで微笑ましく感じた。(女性 20代)
子供向けの作品だと思っていたが、大人が見ても充分楽しめる作品。狼とヤギが一夜の偶然と勘違いで互いを深く信頼していく姿は正直、やっぱり子供向けの映画だなと思ってしまった。しかし映画を見ていくと、食う側と食われる側の立場や生物としての本能と友情の葛藤などと複雑な事情が絡んでくる。それでも二匹は共に生きることを選ぶシーンは思わず泣いてしまった。
子供の頃は二人の成り行きに感動しただけだが、大人になり改めて見ると二匹の覚悟の強さや揺れ動く感情が理解できるので、是非とも親子で見て欲しい。(女性 20代)
子供の頃に見て、ものすごく感動した記憶があるこの作品。いまだに「あらしのよるに」というワードをふと思い出すことがあります。
気弱で優しい狼、ガブと好奇心旺盛なヤギ、メイ。真逆の世界で暮らす2匹が偶然出会い、心を繋ぎ、親友となるストーリー。ガブの声は中村獅童、メイは成宮寛貴が担当しています。この声もすごく印象に残っていて狼とヤギの対称的なイメージを分かりやすく表現していました。
大人も子供も一緒に楽しめて感動できるこの作品。ぜひ家族みんなで見て欲しいです。(女性 30代)
嵐の暗闇の中で出会った、オオカミとヤギの間に芽生えた友情の物語です。お互い容姿や性別、出身など全て取り払うことが出来れば、誰とでも友情を築くことができるのでは…と差別や偏見について考えさせられる、とても深い内容の映画です。
仲良くなってそれでハッピーエンドではなく、仲間から冷たい目で見られ、意見を押し付けられ、同じ種族との方が分かり合えない葛藤といった問題が、どんどん起きてしまいます。そんな過酷な状況の中で、相手を思う気持ちが揺らぎそうになっても、それでも友情を貫き通した2匹の姿には胸が熱くなりました。
この映画のキャッチコピー「ともだちなのに、おいしそう」が、場面ごとに思い出されます。深くて切ないフレーズで、この映画の全てが詰まっている秀逸なひと言です。(女性 30代)
種族や性別を超えた絆の素晴らしさを伝えてくれる作品であり、食う者と食われる者の関係について考えさせられる作品でもありました。
私はこの作品の、ガブとメイの性別が分からないところが好きでした。男女が判別してしまった瞬間に、観る側も作る側もどうしても恋愛感情がよぎるし、守る守られるの関係が生まれてしまうと思います。この作品にはそれがなく、ガブが本来食糧であるメイにともだちとして接し、本能を抑えて対等な関係を保とうとする姿に心打たれました。人間同士でも、他人と信頼関係を築くにはガブのような強い意志や努力が必要なんだと改めて感じました。(女性 20代)
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