この記事では、映画『勝手にしやがれ』のあらすじをネタバレありで解説しています。また、累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家が、映画『勝手にしやがれ』を見た人におすすめの映画5選も紹介しています。
映画『勝手にしやがれ』 作品情報
- 製作年:1959年
- 上映時間:95分
- ジャンル:サスペンス、アクション
- 監督:ジャン=リュック・ゴダール
- キャスト:ジャン=ポール・ベルモンド、ジーン・セバーグ、ダニエル・ブーランジェ、ジャン=ピエール・メルヴィル etc
映画『勝手にしやがれ』 評価
- 点数:95点/100点
- オススメ度:★★★★★
- ストーリー:★★★★☆
- キャスト起用:★★★★★
- 映像技術:★★★★★
- 演出:★★★★★
- 設定:★★★★★
[miho21]
映画『勝手にしやがれ』 あらすじ(ストーリー解説)
映画『勝手にしやがれ』のあらすじを紹介します。
ミシェル(ジャン・ポール・ベルモンド)は自動車泥棒の常習犯だった。ある日、いつものようにマルセイユで盗んだ車を飛ばしパリに向ったが、途中で追いかけられた白バイの警官を射殺してしまう。そのままパリに逃げ戻ったミシェルは、顔見知りの女から金を盗んで街へ出て、旅行案内所のアントニオの所へ約束の金を取りに行くが、渡されたのは小切手であり現金はベリユッティという男が替えてくれると聞かされる。やがて刑事がミシェルを尾行し始めたが、何とかその場を凌いだ彼はパトリシア(ジーン・セバーグ)の許へ向かった。彼女は新聞社のライター見習い兼売り子をするアメリカからの留学生であり、二人は南仏の海岸で知り合い男女の関係に陥った。パトリシアは彼の誘いを断って街へデートに出かけるが、ふてくされたミシェルは彼女のアパートに泊り込む。翌朝、パトリシアはミシェルと部屋でしばしの時を過した。その後、彼女は飛行場へ作家のインタビューに出向き、彼は街で盗んだ車をポンコツ屋に持って行くが、現金を出し渋る店の主人に腹を立て、暴力を振るって逃げ出した。そこから社に戻ったパトリシアの許に刑事が訪ねミシェルの居所を知らせろと強要する。刑事の尾行を逃れたパトリシアはミシェルと二人でモンマルトルへ向かい、ようやくベリユッテイに会うことが叶って翌日の現金の受け渡しを確約できた。その晩、二人はベリユッティの友人のところに泊り、ミシェルは金が手に入ったらイタリアへ行こうとパトリシアを誘うが、彼女は一旦承諾するも翌朝に心変わりをする。彼女の一番欲しいものは自由だった。新聞を買いに行ったその足でパトリシアは警察に密告し、部屋へ戻り旅仕度をしているミシェルに10分で警察が来ると言う。外へ金を受け取りに出たミシェルを待っていたのは警官たちだった。そこへ車で金を持って来たベリユッティは彼に逃亡を勧めるが、ミシェルはパトリシアに未練があり、疲れて眠りたいと付け加えて逃亡を拒否した。抵抗もしないまま警官に背後から射たれたミシェルはよろめきながら路地に倒れた。馳けつけたパトリシアに「お前は最低だ」と一言呟き、ミシェルは息を引き取った。

映画『勝手にしやがれ』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)
映画『勝手にしやがれ』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む
”フランス映画”というイメージを定着させた革新的作品
手持ちカメラを多用したフレーミング、カメラ目線で独白する俳優の演技、唐突なシーンチェンジなど、それまでの常識を覆す実験的な映像が”ヌーベルバーグ”という言葉を定着させた作品である。ゴダール自身が冒頭のテロップでB級映画と表しているところから理解出来るように、映画としてのストーリーに重きを置かず、ありがちなストーリーを断片的なイメージとして定着させるような意図で作られた映画である。新しいポップカルチャーのスタイルを映画で表現したというところであろうが、デザインの技法と同じように計算されて作られた美術というニュアンスであり、思考とか哲学・宗教などの介在するような重みというものは一切介在しない。かつてのデカダンスという退廃的なパリの耽美主義の表現文化を、その時代にはなかった映像というもので現代的に置き換えているようにも窺えるのだが、そこは観る人の受け止め方で違ってくるだろう。何はともあれ役者の見せ方という技術においては群を抜いており、そのカメラワークに応える二人の主役が何とも魅力的に映る作品である。
ゴダールの最高傑作にして入門編
映画というものはまずシナリオというところから始まり、そこからどのような人物像を描いて行くのかというプロセスで進められてゆくものだろうが、本作はまず登場人物をどう表現するのかと言う一点に絞られているような感がある。絵コンテ通りにカット割し、計算された光で対象を写し取る。従来の映画作りの文法とは違って、物語よりもビジュアルのイメージが優先されるプロセスなのである。病的なほどにタバコを手放さない野放図なベルモンドと、飄々としながらも悩ましく小悪魔的なセバーグとの無意味なセリフの応酬などもその象徴であるが、若いカップルの会話としては実に当を得ている表現だとも言えるだろう。用意されているありがちなシナリオとは違うダラダラと続く男女の駆け引きは、個人差はあるものの恋愛中には実際にこんなバカバカしいセリフのやりとりがあったなぁと、自分を振り返れば当てはまる部分にも驚いてしまった。
モノクロでも伝わるこのお洒落さ。ずっとフランス版「俺たちに明日はない」だと思っていた。フィルムをカットして繋いだ感じの荒さというかそういう技法さえ映画の一部としてお洒落に感じる。そしてベルモンドがあざとい!台詞やら仕草やらがずっと頭に残ってくれる。
人物たちは感情の振り幅が平行線なので観客は感情移入しにくいけど「気狂いピエロ」では「大砂塵」、こっちでは西部劇とアメリカ映画の引用だったり映画館が出現したり映画自体に対しての態度に愛を感じた。(女性 20代)
衝動的すぎるミシェルの行動と、パリの街並みや美しい風景のアンバランスなのにマッチしている芸術的な世界観がものすごく好きな今作。
警察に追われていてもパトリシアへの気持ちは一向に増すばかりのミシェルなので、これはきっと…とバッドエンドを予想してしまいましたが、ラストの彼の一言で彼の最後の描写の意味が大きく変わったと思います。
女に裏切られたバカな男になってしまうと思っていましたが、あの吐き捨てるような一言のおかげで、自分勝手だけど自由に生きた男というイメージが付いたのではないでしょうか。(女性 30代)
ジャン=ポール・ベルモンド演じるミシェルの破滅的な生き様に、時代の空気が詰まっていたように思います。ゴダールの革新的な編集や、カメラワークも非常に刺激的で、映画の文法を変えた一作だと納得。何より、パトリシアが最後にミシェルを裏切るあの展開は、予想外でありながら妙に納得できて、切なさが残りました。(20代 男性)
ゴダールらしい自由奔放な映像表現が光る作品。ジャン=セバーグの魅力も全開で、ファッションや佇まいまでがパリの象徴のようでした。ミシェルとパトリシアの距離感は常に不安定で、それがまた物語に緊張感を与えていました。特に、ミシェルの死に際の表情と「勝手にしやがれ」の台詞には、強烈な余韻が残ります。(30代 女性)
この作品の魅力は、むしろプロットよりも“空気感”。ヌーヴェルヴァーグの代表作ということで観ましたが、まるで日常を覗き見しているかのようなテンポが心地よかったです。ミシェルの破天荒な性格と、パトリシアの冷静さとの対比が効いていて、ラストで彼女が警察に通報する選択には妙に納得しました。(40代 男性)
若い頃の自分だったら理解できなかったかもしれませんが、今観るとこの虚無感がすごくリアル。自由を追い求めるミシェルはどこか空っぽで、それに惹かれたパトリシアの戸惑いもわかる気がします。何気ない台詞の中に深い意味が詰まっていて、観終わった後もずっと心に残るような映画でした。(50代 女性)
ストーリーは極めてシンプルなのに、観ているとどんどん引き込まれる。ゴダールの編集の妙と、台詞の間が独特のリズムを生んでいて、まさに“新しい映画”の形を見た気がしました。ラストの銃撃と、地面に倒れるミシェルの表情には、言葉にできない寂しさと諦めが滲んでいました。(30代 男性)
映画史的な重要性でよく語られる作品だけど、普通にラブストーリーとしても面白かったです。ミシェルの破天荒さと、それに振り回されつつも冷めた目を持つパトリシアの組み合わせが魅力的でした。最終的にパトリシアが通報する場面は衝撃だったけど、あれこそが彼女の選んだ自由なのかもと思いました。(20代 女性)
とにかくジャン=ポール・ベルモンドがかっこいい。あのルックスと動き、言葉遣いに憧れを抱かずにいられない。ミシェルの行動は無鉄砲だけど、あの時代の若者が抱える焦燥や反抗心が体現されていて、それがまた共感を呼びます。パトリシアとの距離の縮め方も独特で、全編通してスタイリッシュな一本でした。(40代 男性)
画面の切り方やカメラワークに驚きの連続でした。特に車内での会話や街を歩くシーンが、今観ても斬新。ミシェルの奔放さはある種の自由の象徴ですが、それが通じない現実とのギャップが最後に襲ってくる。パトリシアの“冷たさ”に見える行動も、彼女なりの選択だったと思えてきて、複雑な感情になりました。(30代 女性)
映画『勝手にしやがれ』を見た人におすすめの映画5選
大人は判ってくれない
この映画を一言で表すと?
少年の目に映る、自由と孤独が交差するフランス映画の金字塔。
どんな話?
家庭や学校になじめない少年アントワーヌが、大人の世界に失望しながらも自由を求めて彷徨う姿を描いた青春映画。1959年のヌーヴェルヴァーグを象徴するフランソワ・トリュフォーの監督デビュー作です。
ここがおすすめ!
『勝手にしやがれ』と同時期のヌーヴェルヴァーグ作品で、主人公の内面と社会とのギャップが丁寧に描かれています。ラストの“静寂の一瞬”に込められた余韻は、必見の名シーンです。
アメリカの夜
この映画を一言で表すと?
映画づくりの裏側を描いた、映画愛に満ちたメタシネマ。
どんな話?
映画製作の現場を舞台に、監督、俳優、スタッフたちの人間関係やトラブルを軽やかに描いた群像劇。フランソワ・トリュフォーが自ら監督・出演し、映画という魔法の現場を愛情たっぷりに映し出します。
ここがおすすめ!
映画そのものへの愛情が画面からにじみ出る作品で、ゴダールとはまた違った視点で“映画的”とは何かを問いかけてきます。『勝手にしやがれ』の映画表現に惹かれた方にはぜひ観てほしい一作です。
さらば青春の光
この映画を一言で表すと?
若者の焦燥と反抗を、音楽とバイクで駆け抜けるUK青春映画。
どんな話?
1960年代イギリスの“モッズ”文化に影響を受けた青年ジミーが、大人社会に反発しながら、自分なりの生き方を模索していく姿を描く。ザ・フーの音楽が全編を彩る、ロックで苦い青春物語。
ここがおすすめ!
『勝手にしやがれ』のような反骨精神とスタイリッシュな映像を、ブリティッシュテイストで楽しめる一本。若者が何かを捨てて進んでいく苦しさと衝動がリアルに伝わってきます。
トレインスポッティング
この映画を一言で表すと?
逃げるのか、抗うのか――90年代を代表する衝撃の青春映画。
どんな話?
ドラッグに溺れながらも、自分なりの生き方を求めてもがく若者たちを描いた、社会に対する反発と破壊的ユーモアが満載のイギリス映画。ユアン・マクレガーの代表作でもあります。
ここがおすすめ!
映像と音楽、そして台詞のテンポ感すべてが刺激的。『勝手にしやがれ』の自由で破滅的な主人公像が好きな人には、レントンたちの生き様が刺さるはず。世代を超えて共鳴できる一作です。
ゴースト・ドッグ
この映画を一言で表すと?
現代に生きる“サムライ”が静かに戦う、孤高の犯罪映画。
どんな話?
殺し屋として生きる黒人男性ゴースト・ドッグが、“武士道”を信条にして生きる姿を描いた異色の犯罪映画。現代の都市にひっそりと生きる彼の行動が、やがて抗えない破滅へと向かっていく。
ここがおすすめ!
ゴダール作品にも通じる“孤独な反逆者”の哲学が滲む作品。寡黙ながらも美学を持つ主人公の姿に、『勝手にしやがれ』のミシェルを重ねることができます。ジム・ジャームッシュならではの静かな衝撃です。
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