映画『ユージュアル・サスペクツ』の概要:面通しで集められた常連の容疑者たち(ユージュアル・サスペクツ)は、正体不明の裏社会の大物カイザー・ソゼの指令により、麻薬密売船を襲うことになる。しかしそこには予想不可能な展開が待ち受けていた。巧妙な脚本が大絶賛された珠玉のサスペンス。
映画『ユージュアル・サスペクツ』の作品情報
上映時間:105分
ジャンル:サスペンス、フィルムノワール
監督:ブライアン・シンガー
キャスト:スティーヴン・ボールドウィン、ガブリエル・バーン、チャズ・パルミンテリ、ケヴィン・ポラック etc
映画『ユージュアル・サスペクツ』の登場人物(キャスト)
- ディーン・キートン(ガブリエル・バーン)
- 前科持ちの元警官。札付きの汚職警官で複数の殺人容疑もあり警察をクビになった。2年前に爆発事故で死亡したとされたが生きていた。恋人で弁護士のイディーの助けを借り、堅気のビジネスマンになろうとしている。
- ヴァーバル・キント(ケヴィン・スペイシー)
- 詐欺罪の前科はあるがワルとしては小物。左手足が不自由な障害者。最後まで生き残って一連の出来事を語る。愚鈍な男を装っているが、その正体は…。
- マイケル・マクマナス(スティーヴン・ボールドウィン)
- 忍び込みのプロ。銃も凄腕。クレイジー気味で気が短い。
- フレッド・フェンスター(ベニチオ・デル・トロ)
- マクマナスの相棒。腕はピカイチで頭もいい。
- トッド・ホックニー(ケヴィン・ポラック)
- 爆薬のプロ。数々の悪事を働いてきた。
- デビッド・クイヤン(チャズ・パルミンテリ)
- 関税局の特別捜査官。最後まで事件の真相に迫ろうと粘り、キントから話を聞き出す。キートンを情け知らずのワルだと軽蔑している。
- コバヤシ(ピート・ポスルスウェイト)
- 弁護士。裏の世界の超大物カイザー・ソゼの右腕で、決して人前に姿を見せないソゼの代理として動いている。冷静沈着でほぼ無表情。
映画『ユージュアル・サスペクツ』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『ユージュアル・サスペクツ』のあらすじ【起】
6週間前のニューヨーク。銃を積んだトラックがハイジャックされた事件の容疑者として5人の男が面通しされる。そのメンツはいわゆる「常連の容疑者(ユージュアル・サスペクツ)」で、マクマナスとその相棒フェンスター、ホックニー、キートンは悪名高い犯罪のプロだ。しかし左手足の不自由なキントだけは無名の前科持ちだった。
結局5人の容疑は立証できず、すぐに釈放される。しかしマクマナスは他の4人に稼げる仕事の話を持ちかけていた。
そして現在。カリフォルニア州サンペドロの港に停泊していた船が爆発し、船内から複数の遺体が発見される。しかしひとりだけ昏睡状態の生き残りがいた。
ニューヨーク市警の特別捜査官クイヤンは、この事件に関与したとしてサンペドロ警察に身柄を拘束されたキントに会いに行く。
生き残りのハンガリー人は全身に大火傷を負っていた。男はしきりに“カイザー・ソゼ”という名前を叫び、恐怖に怯えていた。
クイヤンは2時間後に保釈されるというキントの尋問を開始する。キントは話をはぐらかそうとするが、クイヤンは強引に話を聞き出す。キントは仕方なく、6週間前の面通しの時の話から始める。
映画『ユージュアル・サスペクツ』のあらすじ【承】
6週間前。マクマナスは近々入国する南米の運び屋の宝石を奪えば300万ドルになるという仕事の話を持ちかける。依頼人はロスのレッドフットという男だ。キートンは乗り気でなかったが、作戦の実行にはどうしても5人のメンバーが必要だった。堅気になろうとしているキートンも金が必要で、結局この話に乗ってくる。
汚職警官が警護する運び屋を襲うという作戦は大成功する。5人は宝石をレッドフットに渡して金をもらうため、揃ってロスへ飛ぶ。
クイヤンは一連の事件の黒幕はキートンで、彼はまだ生きているのではないかとキントに詰め寄る。しかしキントはそれを否定し、コバヤシという弁護士の存在を明かす。
ロスで金を手にした5人は、レッドフットから再び宝石屋を襲わないかと仕事を依頼される。その仕事も引き受けて宝石屋とボディーガードを襲い、抵抗する3人を射殺する。しかしカバンの中身は宝石ではなく大量のヘロインだった。マクマナスはレッドフットを殺す気でいたが、依頼人は別にいた。それがコバヤシという弁護士だった。
コバヤシは5人を呼び出し、次の仕事を依頼する。それがサンペドロ港に寄港する麻薬密売船を襲い、積荷もろとも全て燃やせというものだった。
映画『ユージュアル・サスペクツ』のあらすじ【転】
キートンはこの話を断るが、コバヤシのボスがカイザー・ソゼだと聞いて顔色が変わる。ソゼは裏社会で最も恐れられている男だった。しかしその正体を知る者はいない。ソゼは5人のあらゆることを調べ尽くしており、この話を絶対に断れないよう準備していた。
キントはソゼの伝説を語る。ソゼがトルコにいた頃、対立するハンガリーの組織がソゼの自宅を襲撃し、妻をレイプして子供を人質に取る。帰宅したソゼはそれを見て、1人だけ敵を逃し、残りの敵と妻や子供まで皆殺しにした。そして逃した敵から彼らの関係者を洗い出し、家族はもとより関わりのある全ての人間を皆殺しにして地下に潜った。
ソゼの仕事の大部分は麻薬の密売であり、現在の競争相手はアルゼンチンの組織だった。サンペドロに寄港する船にはその組織に渡る9100万ドル分のコカインが積まれており、ソゼの狙いはその取引を阻止することだった。
翌日、フェンスターが金を持って姿を消す。しかしすぐにコバヤシから居場所を突き止めたという連絡がある。そこにはフェンスターの無残な死体があった。
もともとキートンはソゼの存在自体を怪しんでおり、コバヤシを殺すのがベストだと考える。4人はコバヤシを殺しに行くが、すでにコバヤシはイディーを呼び寄せ、キートンが手を出せないように先手を打っていた。身内を人質に取られた4人に選択肢はなかった。
映画『ユージュアル・サスペクツ』の結末・ラスト(ネタバレ)
決行の夜。キートンはキントに隠れているよう指示し、“もし生き残ったら金を持って逃げ、イディーに後のことを任せろ”と言い残して船へ向かう。作戦はほぼ成功し、キートンとマクマナスは船内で麻薬を探す。しかしいくら探しても麻薬はなく、ホックニーとマクマナスは何者かに殺害される。そして甲板にいたキートンも背広姿の男に撃ち殺される。男は船に火を放ち、姿を消す。キントはその一部始終を見ていた。そしてその背広姿の男こそがカイザー・ソゼだと怯えて語る。
しかしクイヤンは遺体の中にアルゼンチンの密告屋が混ざっており、この男の本国送還の手続きをしていたのがイディーだったという事実から、キートンこそがカイザー・ソゼだという持論を展開する。密告屋はカイザー・ソゼの顔を知っており、組織に売られることになっていた。船が運んでいたのは麻薬ではなくこの男であり、ソゼの目的はこの男を消すことだった。事件の後、イディーはホテルで射殺されており、全ては自分がカイザー・ソゼであることを隠すためにキートンが仕組んだことだとクイヤンは語る。キートンの死体を見ていないキントは“お前がバカだからキートンに操られていたのだ”と言われ、何も反論できなくなる。キントは検察側の証人となって警察の保護下に入るのを拒み、放心したように去っていく。
釈放された直後のキントはいつものように足を引きずりながら歩く。しかししばらくすると普通に歩行するようになり、迎えに来た高級車に乗り込む。運転手はコバヤシだった。
キントが去った後、クイヤンはオフィス内を見回して愕然とする。そこにはキントの話のキーワードとなる言葉が数々あった。そして火傷の男の証言によって作成されたカイザー・ソゼの人相書きはキントにそっくりだった。
映画『ユージュアル・サスペクツ』の感想・評価・レビュー
細かい部分を忘れた頃に見直したくなる傑作。公開当時パンフレットは封筒に入れられ、さらにシールで封をされ見終わるまで読まないようにと注意書きされていたのが未だに印象深い作品。まんまとだまされた!と驚きを持って迎えたエンディングは、アカデミー賞脚本賞を受賞したのが納得のインパクトだった。
また同助演男優賞を受賞したケヴィン・スペイシーも印象に残る怪演で、特にラストの足を引きずった歩き方から普通の歩き方への移行シーンは脳裏に焼き付いている。ケヴィン・スペイシーを意識し出したのも本作からだったなと懐かしく思うと共に、彼の新作が望めない現状を残念にも感じる。(女性 40代)
どんでん返し系サスペンス映画の超王道といえば、この作品である。カイザーソゼという実在するかもわからない人物を巡り、語り部口調でのストーリーが進んでいく。一度見ただけでは、絶対に予測出来ないオチが待っているので期待して欲しい。オチを踏まえた上で再度見始めると細かな仕掛けに次々と気付かされるという面白さ。コーヒーカップの裏や、歩き方など、全てが罠のように思えてくる作品となっている。してやられた感を味わいたい人は是非見て頂きたい。(男性 30代)
現在と貨物船爆破事件までの出来事が交差して話が進んでいくため、最初の方の時系列が分かりにくく感じた。
また、カイザー・ソゼの正体をキートンと思わせる誘導が裏目に出て、物語の途中でソゼの正体が読めてしまったのが残念。ただ、彼が語っていた事件の経緯は全て、取り調べをした部屋にあった捜査資料から即席で作り出したものであったのは驚きだった。爆破事件の真相はカイザー・ソゼのみ知るところであり、謎に包まれた終わりであり少し釈然としない。
ただ、もう一度この作品を観ると、偽りの物語が作られていく様がわかり違う楽しみ方ができるかもしれない。(女性 20代)
思い出しただけでもニヤニヤしてしまうくらいの痛快なドンデン返しが本作最大の魅力でしょう。映画好きが数人集まると、カイザー・ソゼの考察大会が始まるほどです。おそらくは、初見だと「え??どういうこと??」となる事だと思います。そこが狙いなのでしょう。ぜひ、隅々まで注意して何度でも観てください。また違った面白さがあると思います。
出演者達はみんな癖があってどれもハマり役です。特にケヴィン・スペイシーは恐ろしいほどに好演(怪演)してくれます。凄すぎて笑ってしまいます。(女性 20代)
これはもうケビン・スペイシーが天才だ、と言うしかない映画です。
そして、脚本賞を取ったことに対しても納得。
この映画の本質として、観客が見せられているものは、ケビン・スペイシー演じるヴァーバルから聞いている記憶であると言うこと。これを完全に忘れてしまっていると言うこと、そして映画のはじめから「今」と「ヴァーバルの話」の間でミスリーディングされているという事実に最後の最後になって気づくということ。
映画として時間は長くないけれど、すべて詰まっていて、最後の畳み掛けに全部持っていかれる、スタイリッシュな映画です。(女性 30代)
前情報なしに、なんとなく見始めたこの作品。大正解でした。こんなにも面白いストーリーだとは…。この作品のキーワードは「カイザー・ソゼ」現在と過去が交錯しながら進むストーリー展開。随所に散りばめられた伏線と、俳優陣の演技で確実に見入ってしまうはずです。
ラストにはしっかり伏線回収…というより想像を遥かに超えてくるまさかのトリック。結末を知っていても、何度も観たくなる。誰と観ても、何度観ても面白い作品です。(女性 30代)
ラストが楽しみな作品でした。カイザーゾゼの人相がぼかされていて、正体は身内であることは予想できます。さらに、犯行グループで唯一現在軸で登場するキントは怪しさ満点です。やっぱりキントが黒幕でしたが、その判明の仕方が非常に良かったです。へぇキートンが黒幕かと思わせての、やっぱりキント!わずか数分で事実が2度ひっくり返る展開。分かっていたのに騙された!悔しいですがとても面白かったです。日本人の血が全く流れていなそうな”コバヤシ”さんの不気味さも良かった。(男性 20代)
ラストにどんでん返しがあることを知った上で観たにも関わらず、最後まで種も仕掛けも分からなかった。ただ、肝心のどんでん返し自体、びっくり!というよりは、えっ?と呆気にとられてしまう感じで、好みもあるだろうが、個人的には期待していたような驚きはなく少し残念だった。
とはいえ映画としてはとても観やすく面白いので、どんでん返しが好きな人はぜひ、この張り巡らされた伏線に気付けるか挑戦してみてほしい。
綿密に計画された嘘よりも、その場しのぎの嘘に騙される方がよりムカつくのが笑える。(女性 30代)
巧妙すぎるストーリー展開で全く飽きずに観れた。これは誰にでも自信を持っておすすめできるサスペンス映画である。アカデミー脚本賞を受賞した文句無しの功績もあるし、ベニチオ・デル・トロやケヴィン・スぺイシーといったキャストも満足できる。
回想の映像に騙されてはいけない。いや、騙されたほうが、この作品はもっと面白いかもしれない。弱者に対しては疑いの目をかけない人間の自然な心理を利用した素晴らしい傑作である。(女性 20代)
みんなの感想・レビュー
①推理小説を読んでいるかのような、シナリオとカメラワークの魅力
映画は多くを語らない。殺人は起こるが犯人の姿は決して見せない。謎と想像力をかきたてるのが本作のイチバンの魅力です。ケヴィン・スペイシー演じるヴァーバルがクイヤン捜査官に向かって回想するシーン。文字でわざと時系列を説明しないので、5人の関係性や事件がランダムに表れていく感じ。
よく観ていないと聞き逃してしまうかもしれません。人の話を直に聞いているような感覚。そんな回想シーンを繰り返すことで、意図的に真実を隠しています。また主観的ショットが多用され、5人が悪事について相談している部屋やカイザー・ソゼの右腕・コバヤシが依頼について説明しているシーンで使われています。
5人全てをなでるようにカメラが映すので誰が黒幕なのか分からない緊張感を生み出します。映画はヴァーバルの視点で語られ、回想シーンと警察署の取調室とを交互に織り交ぜています。回想シーンと事件との結びつきが一度見たくらいでは分からないのが難点です。
②ケヴィン・スペイシーの怪演を見よ!
5人の個性的な容疑者たちが翻弄されるクライム・サスペンス。カイザー・ソゼのヒントは、ヴァーバル役ケヴィン・スペイシーが握っています。ヴァーバルは、足を引きずるようにして歩き、全身からは弱弱しさが漂っています。ところが、ヴァーバルのセリフに注目して聞いてみると、1番自分の事を話すキャラクターなのです。
「僕の名前はヴァーバル(おしゃべり)・キント」とか、「俺は警察にちくったりしない」など詐欺師の一面を覗かせています。実は、表面的な顔と本当の顔は違うのではないか。5人の中で地味な存在ながら、ヴァーバルを強調するクローズ・アップが多いと感じられます。ヴァーバルの話を夢中になって聞いていると、危険ですよ!
クイヤン捜査官もそれですっかりだまされてしまいました。ヴァーバルは解放された後、何事もなかったかのように歩いて、カイザー・ソゼの右腕・コバヤシの車に乗り込みます。足は悪くなかったのです。足を悪く見せることで、周りを油断させていたのです。これも1つの心理トリックといえるのかもしれません。
ケヴィン・スペイシーは、本作でアカデミー賞助演男優賞を受賞しています。ラストの大どんでん返しを楽しんで下さい。
「いい子にしていないとカイザー・ソゼが来るよ」と恐れられる、正体不明の殺し屋・カイザー・ソゼ。そのカイザー・ソゼに翻弄される5人の容疑者たち。緻密な伏線がはりめぐらされた映像・台詞とケヴィン・スペイシーの怪演にやられるクライム・サスペンスの傑作です。ブライアン・シンガー監督、クリストファー・マッカリー脚本の1995年製作のアメリカ映画。
映画のラストでようやく推理のパズルがはまる瞬間のカタルシスがとても心地よく、なんだか5人の容疑者たちが哀れで愛らしく思えます。犯罪は悪いことだが、犯罪者をターゲットにした犯罪という異色な趣向が「完全犯罪の成立」を匂わせます。物語を複雑化する回想形式と主観的ショットを用い、観客の心を巻き込んでいく手法は、「ユージュアル・サスペクツ」以降のサスペンスにも似たものはありますが、(事件を断片的に見せるといった手法)やはり本作が最高です!
一度観たくらいでは、全体像や伏線がつかめないので、ぜひ2度観ることをおすすめします。
私が思うに、ガイザーゾゼという人はいない。
そもそも、ヴァーヴァルがガイザーゾゼとしても釈放される過程からして普通の犯罪者のはずがないと思われます。
多分、ヴァーヴァルはCIAか何かで…ガイザーゾゼという架空の話をでっち上げてキートン達を断れないように引き込んだと思います。
目的が何かははっきりしませんが。CIAは世界中のあちこちでいろんな工作をしているので、やりそうな事だと思いました。