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映画『ロスト・チルドレン』のネタバレあらすじ結末と感想

映画『ロスト・チルドレン』の概要:近未来の最新科学と古いおとぎ話が混在するような世界で、サーカスの怪力男と孤児の少女の純愛と冒険物語を描いた異色のファンタジー。鬼才ジャン=ピエール・ジュネとマルク・キャロがタッグを組み、細部までこだわり抜いた独創的な作品世界を完成させている。

映画『ロスト・チルドレン』の作品情報

ロスト・チルドレン

製作年:1995年
上映時間:113分
ジャンル:ファンタジー、SF
監督:ジャン=ピエール・ジュネ、マルク・キャロ
キャスト:ロン・パールマン、ジュディット・ヴィッテ、ドミニク・ピノン、ジャン=ルイ・トランティニャン etc

映画『ロスト・チルドレン』の登場人物(キャスト)

ワン(ロン・パールマン)
サーカスの芸人をしている怪力男。体は大きいが知能は低く、子供のように純粋な心を持っている。ゴミ箱に捨てられていたダンレーという幼児を、弟として可愛がっている。ミエットに協力してもらい、誘拐されたダンレーを救いにいく。
ミエット(ジュディット・ヴィッテ)
子供窃盗団のリーダー。シャム双生児の姉妹が経営する孤児院におり、姉妹の命令で盗みを働いている。体は子供だが精神年齢は非常に高く、頭脳も明晰。ワンの純粋さに惹かれ、命がけで彼の弟探しを手伝う。
博士 / 博士の6人のクローン(ドミニク・ピノン)
クローン人間を作った天才科学者。海の中に要塞のような実験室を持ち、科学の力で創造主となるが、自分の作ったクローンに襲われ、記憶喪失となって海底で暮らしている。博士の6人のクローンは、クランクたちと実験室で暮らしている。
クランク(ダニエル・エミルフォルク)
博士が作り出したこの世で最も知的なクローン人間。しかし心が貧しく、楽しい夢を見ることができないので、老化速度が異様に速い。老化を止めるため、幼い子供を誘拐してきて、彼らの夢を盗んでいるが、クランクが夢に入ると必ず悪夢になってしまう。
イルヴィン(ジャン=ルイ・トランティニャン ※声のみの出演)
博士が自分の分身として水槽の中で発育させた脳みそ。クローンたちは「叔父さん」と呼んでいる。水槽に設置された装置を通して会話ができる。
マルチェロ(ジャン=クロード・ドレフュス)
昔サーカスの団長をしており、シャム双生児の姉妹を見世物にしていた。現在は阿片中毒のノミ使いに落ちぶれている。マルチェロのノミに噛まれた人は、特殊な液体を注入され、手回しオルガンの音楽を聴くと、仲間を襲う催眠術にかかる。

映画『ロスト・チルドレン』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)

映画『ロスト・チルドレン』のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまでわかりやすく簡単に解説しています。この先、ネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『ロスト・チルドレン』のあらすじ【起】

幼い男の子がサンタクロースの出てくる楽しげな夢を見ている。ところが、部屋中がサンタクロースだらけになり、男の子は恐怖のあまり泣き出してしまう。すると、特殊な装置で男の子の夢に入り込んでいたクランクも、絶叫しながら目覚める。そこは、海の真ん中にある不思議な実験室だった。

荒廃した雰囲気の町では、サーカスの芸人たちが芸を披露していた。見物料を盗もうとした子供は、団長に捕まる。ところが団長が謎の男にナイフで刺され、辺りは大騒ぎになる。最近この町では子供の失踪事件が相次いでおり、親たちは不安がっていた。

怪力男としてサーカスの見世物に出ているワンは、トレーラーで団長の看病をする。ワンは、ゴミ箱に捨てられていた赤ん坊をダンレーと名付け、自分の弟として可愛がっていた。ダンレーはまだ幼くて話はできなかったが、食いしん坊のたくましい男の子で、四六時中何か食べている。

その夜、彼らのトレーラーに一つ目族と呼ばれる一味が近づいていた。一つ目族は、物体を透視できる機械の目を使い、中に子供がいることを確認する。そしてトレーラーに押し入り、ダンレーを連れ去ってしまう。

一つ目族に殺されそうになっていたワンは、子供窃盗団と出会う。この窃盗団のリーダーはミエットという大人びた少女で、機転を利かして一つ目族からワンを守ってくれる。図体は大人だが知能の低いワンは、ミエットの後をついていく。

海の実験室では、イルヴィンという名の水槽の中の脳みその誕生会が開かれていた。イルヴィンは、この実験室の持ち主だった博士が、自分の分身として水槽で発育させた頭痛持ちの脳みそだった。この実験室では、小人の女性、博士そっくりの眠り病の6人のクローン、そしてこの世で最も知的でありながら、心が貧しくて楽しい夢を見ることができず、急速に老化しているクランクが暮らしている。彼らは全て博士の創造物であり、何らかの欠陥を持ったクローンだった。

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映画『ロスト・チルドレン』のあらすじ【承】

ミエットたちのボスは、孤児院を経営しているシャム双生児の強欲な姉妹で、子供たちに盗みをやらせて生計を立てている。サーカスの団長をナイフで刺したのは、姉妹にこき使われている使用人の男だった。姉妹の次の狙いは宝石の入った金庫だったが、重たい金庫をどうやって運び出すかが問題だった。姉妹は、ミエットを追ってきたワンの怪力ぶりを見て、ワンを使うことにする。

金庫を盗み出し、港で宝石を出している最中に、ワンは一つ目族の車を目撃する。ミエットは、ワンの弟探しを手伝うことにして、仲間たちと別れる。ミエットは、純粋で心の優しいワンが好きだった。シャム双生児の姉妹は、宝石を持ち逃げしたミエットの裏切りに激怒する。

海の実験室からは、様々な悪夢が溜まったヒューズが海に捨てられる。博士のクローンは「この合図に誰かが気づきますように」と願っていた。

ワンは機械の目を装着して一つ目族になりすまし、ミエットと一緒に彼らのアジトへ忍び込む。一つ目族の目的は、肉眼の世界を滅ぼすことにあった。そして機械の目を作っているのがクランクたちで、一つ目族は誘拐してきた子供と引き換えに、機械の目をもらっていた。天井裏から取引の様子を見ていたワンは、子供の中にダンレーがいるのを見て、取引場所に乗り込んでいく。しかしダンレーは連れ去られ、ワンはミエットとともに捕まってしまう。

一つ目族の男から、明晩ワンとミエットが処刑されるという情報を仕入れたシャム双生児の姉妹は、ノミ使いのマルチェロに会いにいく。マルチェロは、昔姉妹を見世物にしていたことがあり、姉妹に頭が上がらなかった。姉妹は、利用できそうなワンだけ取り戻し、裏切り者のミエットは見殺しにするようマルチェロに命じる。

ワンとミエットは、ぐるぐる巻きにされて埠頭の先の板の上に立たされる。板の反対側には魚の入ったバケツが置かれ、それが重しの役割を果たす。海鳥が魚を食べていくと重しが軽くなり、板が傾いて2人が海に落ちるという仕組みになっていた。マルチェロは処刑を見守る一つ目族の男たちに近づき、そのうちの1人にノミを放つ。ノミに特殊な液体を注入された男は、マルチェロが奏でる手回しオルガンの音楽を聴き、次々に仲間を殺し始める。マルチェロは、その騒ぎに紛れてワンを救い出すが、ミエットは海の底へ沈んでしまう。

映画『ロスト・チルドレン』のあらすじ【転】

海の底に沈んだミエットは、潜水服を着た男に拾われ、海の底にある彼の家に保護される。それは6人のクローンのオリジナルである博士だったが、過去の記憶を失くしており、自分が何者かもわからなくなっていた。意識を取り戻したミエットは、博士が止めるのも聞かず、地上へ戻っていく。

ミエットが死んでしまったと思い込んでいたワンは、マルチェロに連れられて酒場へ行き、彼女を想って泣き続ける。「ミエットは天使だった」というワンの言葉を聞き、マルチェロまでもらい泣きしてしまう。そこへミエットがやってくる。しかしワンは酔っ払って眠り込んでいた。

姉妹の使用人がワンを迎えにくることになっていたので、マルチェロは密かにミエットを逃がす。ミエットは窃盗団の仲間に協力してもらい、トラックの荷台に積まれたワンを救い出す。ワンとミエットは荷物置き場で横になり、穏やかな時間を過ごす。ミエットは、ワンのそばにいると心が安らぐのだった。

その夜、博士は海の底でクローンの捨てたヒューズを拾う。博士が眠り込んでから、ヒューズは床に落ちて壊れ、中の悪夢が漏れ出す。悪夢を見た博士は、自分が作ったクローンに襲われ、海に捨てられた過去をはっきりと思い出す。悪夢は地上にも流れ、ミエットも悪夢を見る。ミレットは「機雷原の地図の刺青を彫った男を探せ」という、小人の女の声を聞く。博士の実験室は、海に浮かぶ地雷原の真ん中にあった。

ワンを取り逃がした罰として、マルチェロはシャム双生児の姉妹に痛めつけられ、ノミを奪われる。姉妹は使用人にマルチェロを殺すよう命じて、その場を去る。しかし、姉妹に腹を立てていた使用人は、マルチェロを見逃してくれる。

ミエットとワンは、夢のお告げに従い、刺青の男を探す。ワンはついでに「ミエット命」という刺青を入れてもらう。ミエットは、ずっととぼけていた彫り師の夫婦を宝石で買収し、夫の頭に掘られた地雷原の地図を見せてもらう。

シャム双生児の姉妹は、ボートで地雷原へ向かおうとしていたワンにノミを放ち、ミエットに宝石を渡すよう迫る。姉妹が手回しオルガンの音楽を奏で始めると、ワンの様子がおかしくなり、ミエットの首を絞め始める。しかしミエットの流した涙が奇跡を起こし、巨大な大型船が埠頭に突っ込んでくる。その衝撃でミエットとワンは海に落ちてしまうが、ワンは正気を取り戻し、ミエットを抱きしめる。しかし姉妹は諦めず、海に油をまいて、火のついたマッチを落とそうとする。その時、ノミが姉妹の片方を刺し、マルチェロが手回しオルガンを回し始める。姉妹はもみ合いながら海に落ち、そこへマルチェロが火をつける。ワンとミエットは先に埠頭へ上がっていたので無事だった。

映画『ロスト・チルドレン』の結末・ラスト(ネタバレ)

ワンとミエットは、改めてボートで地雷原へ向かい、海の真ん中に建つ実験室に侵入する。狭い穴から内部に入っていくミエットに、ワンは自分のセーターの毛糸をくくりつけておく。

何事にも動じないダンレーを気に入ったクランクは、ダンレーの夢を奪うことにする。実験室で、ダンレーとクランクは夢をつなぐ装置を装着し、イルヴィンの誘導で眠りにつく。

小人の女は、ミエットが建物内に侵入しているのを見つけ、銃を用意する。ワンのところへ引き返そうとしていたミエットは、途中で毛糸が切れてしまい、帰り道を見失っていた。ミエットが自分を呼ぶ声を聞き、ワンは穴に向かってミエットの名前を叫ぶ。その声でワンの居場所がわかり、博士のクローンがワンを倒しにくる。しかし彼らは非力で、外へつながる通路に放り込まれてしまう。

ミエットを銃で撃とうとした小人の女は、建物内に侵入していた博士に銛を打ち込まれ、その場に倒れる。博士は自分の誤りを正す決意をし、ダイナマイトでこの実験室を全て破壊するつもりだった。しかしミエットに「子供たちを助けて」と言われ、爆破を遅らせる。瀕死の状態となった小人の女は、ミエットに子供たちのいる部屋の鍵をくれる。しかしそれは彼女の罠で、ミエットが走り出した途端、床が抜けてしまう。間一髪でワンがやって来てミエットを助けるが、ワンは床下に落ちてしまう。

ミエットは悲しみにくれながらもダンレーを助けに行く。イルヴィンに「ダンレーを助けたいなら、夢の中に飛び込むしかない」と言われ、ミエットも夢をつなぐ装置を装着し、ダンレーの夢の中に入っていく。

ミエットは、夢の中でダンレーを抱きあげ、助け出そうとする。そこへクランクがやってきて、2人の行く手を拒む。ミエットは「彼の身代わりになる」と宣言し、夢の中でクランクと向き合う。クランクと対峙したミエットはどんどん老化していき、クランクの方はどんどん若返っていく。ミエットが老婆になると、クランクは幼児となり、何度も夢を盗まれて泣き続ける。そして目を覚ましたクランクは、そのまま絶命する。

ミエットは、ワンに起こされ目を覚ます。ワンは死んではいなかったし、ミエットも子供のままだった。ワンは大急ぎで子供たちを救い出していく。食いしん坊のダンレーは、食料庫にいた。ワンとミエットは子供たちを連れて、ボートで脱出する。博士は自分の体をダイナマイトで柱に巻きつけ、建物ごと消え去るつもりでいたが、ボートで逃げるイルヴィンと6人のクローンを見て、自分を助けるよう叫ぶ。しかしボートは去っていき、鳥が爆破装置のスイッチを押して、実験室は爆破される。ボートの上のワンとミエットは、幸せそうに微笑み合う。そしてダンレーは、サラミにかぶりつきゲップをする。

映画『ロスト・チルドレン』の感想・評価・レビュー

本作は、マッドサイエンティストが子どもたちの夢を盗もうとする物語で、ジャン=ピエール・ジュネ監督とマルク・キャロ監督によるダークファンタジー作品。
孤児の美少女ミエットと怪力男ワンの関係性にロマンを感じた。
また小道具や衣装、インテリア、音楽などといった細部にまでこだわりが見られ、絵本の中にいるかのようなファンタジックで独特な世界観だった。
そして、そこにユーモアと退廃的な雰囲気が加わり、ひと味違った他に類を見ないフランス映画となっている。(女性 20代)


マッドサイエンティストが子どもたちの夢を盗もうとするダークファンタジー作品。
この夢の中にいるような不思議さと、ダークで幻想的な世界観がたまらなく良かった。
大切なものを追いかけようと進行していく感じや、造形や映像の美しさなど総合芸術としても観ていて高揚した。
登場人物たちははみ出し者たちばかりだけれど、それぞれが魅力的。
特に、遠隔操作できるノミのキャラクターが可愛らしくて気になった。
何度も観返したくなる作品。(女性 20代)

みんなの感想・レビュー

  1. 匿名 より:

    この映画のヒロインは、孤児ミエット。汚れた大人を信じることができず、未来にも希望が持てないでいたが、見世物小屋で働くワンとその弟によって人生を変えるのです。ワンに惹かれたというよりも、近所のお兄さんというか家族のような気持ちでしょう。気高い彼女の存在が、救いです。
    ジュディットは、優秀な探偵役と心だけは大人のような女性を大胆に演じています。ワンが子供ような純粋さを持つ存在だとしたら、いいコンビです。ミエットは笑わない、冷たい表情のままでいるが、誰よりも周りを理解しているといった感じ。フランスの女の子がみんなこうだったら怖いなぁ。
    でも何か彼女に引き付けられるのですよ。フランス映画って、お高くとまってるのよねと言われるのも納得します。ジュディト・ビッテの出演作は、本作と「だれも私を愛さない」(93)の2作で、その後、女優業はやめてしまったとの事です。才能が惜しまれます。

  2. 匿名 より:

    悪夢のようにクラクラする本作は、子供のためというよりも大人のためのダーク・ファンタジーです。美しい映像も、ホラーのような展開では霞んで見えます。なぜ、こんな悪趣味な映画を撮るのだろう?フランス人の好みなのでしょうか。社会が置き去りにした人々を描いても、救いはありません。
    だけど、この映画を観れば、まだ私の方がましだわとクールな思考になれるから?よく分かりません。物語はあってもあまり関係がないようだし、グロい展開に泣きそうでした。ジュネ監督作品を観るのは勇気が要ります。それでも、ミエット役を演じる、ジュディット・ビッテの気高さに癒されました。
    子供の夢が喰われるという物語はファンタジーではなく、どこかの国の現実なのかもしれない。そう考えると今夜も眠れそうにありません。

  3. 匿名 より:

    最初に言いますが、この映画はとても危険です。それでも観たい方だけ、続きをお読み下さい。物語のはじめから、グロいシーンがねちねちと続きます。幸せなクリスマスの夜なのに、子供は怖いサンタクロースに襲われるのです!この世界はまるで”見世物小屋”のよう。
    ホラー感が半端ないです。登場するのは、孤児や身体に障害を持つ人、並はずれた能力を持つが孤独な人など、社会から置いてけぼりにされた人々です。ジュネ監督は、観る人が大人であろうが子供でも容赦なく傷つけます。自分勝手な作品だと感じるのは私だけでしょうか? 
    ヒドい大人たちが子供の夢まで喰ってしまうというのはファンタジーではなく、どこかの国の現実なのか。筆者は、ジュネ監督の「アメリ」を観て、個人の欲望と妄想に惑う主人公アメリに嫌悪感を抱きました。本作は、それ以上の気持ち悪さでいっぱいです。