映画『ANIARA アニアーラ』の概要:スウェーデン発のSF映画。火星への移住が進む未来、多くの乗客を乗せた宇宙船アニアーラ号は地球を旅立つが、間もなく宇宙ゴミに衝突してしまう。船は燃料を失い軌道を外れ、広大な宇宙を漂流し始めた。
映画『ANIARA アニアーラ』の作品情報
上映時間:106分
ジャンル:SF
監督:ペッラ・カーゲルマン、フーゴ・リリヤ
キャスト:エメリー・ヨンソン、ビアンカ・クルゼイロ、アルヴィン・カナニアン etc
映画『ANIARA アニアーラ』の登場人物(キャスト)
- MR(エメリー・ヨンソン)
- アニアーラ号の船員。地球のイメージを夢に投影する人工知能ミーマの管理人(ミーマローベ)。船内でミーマホールを運営する。
- イサゲル(ビアンカ・クルゼイロ)
- アニアーラ号の女性操縦士。MRと恋人同士となり同居生活を始める。カルト集団の乱交儀式で誰が父親か分からない子供を妊娠する。
- 船長(アルヴィン・カナニアン)
- アニアーラ号の船長。軌道を外れたアニアーラ号は、二度と地球に戻れないという真実を知っていながら、強気に隠し通そうとする。
映画『ANIARA アニアーラ』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『ANIARA アニアーラ』のあらすじ【起】
地球から火星までを3週間で移動する巨大宇宙船アニアーラ号。火星に住む家族に会いに行く者など何千人もの乗客を乗せて、地球を出発した。船内の酸素は藻類農場システムにより安定的に供給。船内施設は21ものレストランやクラブ、スパがあり、まるで一つの街であった。
人工知能ミーマを管理するミーマローベ(MR)として、その女性は働いていた。ミーマとは人間の記憶を元に、かつての地球の美しい自然を夢に投影させられる人工知能のこと。MRはミーマホールを運営するが、人気は今一つだった。
出航して間もなく、アニアーラ号は宇宙ゴミに衝突する。発電装置が発火したため燃料が自動排出し、船は針路が外れたまま操縦不能に陥ってしまう。船長はこの状態は2年以上続くが、どこかの天体の重力を利用して戻る可能性はあると乗客に説明する。
不安となった乗客は癒しを求めて、ミーマホールに殺到するようになった。MRは過労となり、さらに相部屋の天体観測士から針路に戻れないと聞かされて不眠症に。深夜にひとりでミーマホールを利用するようになった。
映画『ANIARA アニアーラ』のあらすじ【承】
軌道を外れてから3年が経過。アニアーラ号は相変わらず宇宙を漂っていた。乗客は落ち着きを取り戻して大きな混乱はなく、以前と同じような生活を続けている。藻類農場は酸素供給のためにフル稼働し、乗客に向けてスタッフの募集を行っていた。ミーマホールにもスタッフが増員されており、MRは忙しい日々を送っている。彼女はクラブで出会った男と寝ながらも、女性操縦士のイサゲルに片思いをしていた。
ある日、ミーマホールで体験中の乗客のひとりが、悪夢でうなされてしまう。ミーマが使用過多で疲労したことが原因であり、夢の中に恐ろしいイメージを映し出すようになっていたのだ。MRはミーマを1か月休ませて欲しいと船長に訴えるが聞き入れられなかった。
MRはメッセージを読み取ろうとミーマに問い掛けをする。しかし、ミーマは限界を超えてしまい、自爆して粉々に飛び散ってしまった。MRはミーマを破壊したとして処罰が決定。囚人として隔離生活を送ることになった。
映画『ANIARA アニアーラ』のあらすじ【転】
それから1年が経つと、亡きミーマを教祖とするカルト集団が誕生していた。船内は秩序が無くなりゴミが散乱、自殺者はひと月で48人も出るほどに悪化する。MRは囚人としての隔離生活を終えて居住スペースに戻った。イサゲルと暮らしながら、昼間は子供たちを相手に教師の仕事を始める。
カルト集団でミーマを神聖化する儀式が開催された。ミーマホール跡地に集合した信者たちは全裸となり、祈りを捧げながら不特定の相手との乱交を行う。その翌年、イサゲルは父親が誰だか分からない子供を妊娠し、男の子を出産する。
ある日、アニアーラ号に何かが近づいてきていることが分かり、燃料を搭載した船かもしれないと期待された。14か月後の最接近に向けて、人々には生きる希望が湧き始める。
翌年、最接近した物体をドッキングさせ、船内への取り込みに成功。物体は細長い棒のような形をしていた。調査チームが分析を行おうとするが、その物体は固くて切断できず、成分も分からなかった。「大発見だが人間には関係のないものだ」と言い放つ天体観測士を、船長は射殺する。遺体は宇宙へと葬られた。
映画『ANIARA アニアーラ』の結末・ラスト(ネタバレ)
アニアーラ号はバウショックと呼ばれる衝撃波を受けて、かつてないほど大きな揺れで多くの死者を出した。燃料棒と期待された物体は解明できず、格納庫に放置されたままだ。イサゲルが精神不安定となる一方で、MRはミーマの再開発に夢中になっていた。やがてミーマが完成し、美しい滝の映像を投影させてMRは喜んだ。しかし、イサゲルが息子を道連れに無理心中してしまい、MRは絶望で嘆き悲しむのだった。
アニアーラ号の軌道が外れて10年の歳月が流れた。MRはミーマを再現した功績で、集会場で表彰を受ける。乗客は少なく、拍手はまばらだった。藻類農場の機能は低下し、設備はカビだらけになっていた。
24年後。アニアーラ号は電力を完全に失い、大きな石棺のような真っ暗な姿で、漆黒の宇宙を漂っていた。生き残っている人間はわずか数名。光を無くしたせいで失明が始まった。
598万1407年後。廃墟と化したアニアーラ号は、こと座付近を漂流。かつての地球のような緑豊かな惑星を通過するのだった。
映画『ANIARA アニアーラ』の感想・評価・レビュー
スウェーデンのノーベル文学賞作家ハリー・マーティンソンの作品を原案としたSF映画。気候変動により地球が荒廃した未来、軌道を外れた宇宙船の中で、生きる希望を失っていく人々の姿が静かに描き出されている。
宇宙を舞台としているが、セットはどこかのホールやホテルのような屋内での出来事が中心だ。明らかに低予算なのに、壮大な宇宙や無を感じることができる。終盤にかけてはさらに絶望感が重くのしかかり、見終わった後には言葉を失うほどの虚無を感じた。(MIHOシネマ編集部)
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