この記事では、映画『母性(2022)』のあらすじをネタバレありの起承転結で解説し、この映画の疑問や謎をわかりやすく考察・解説しています。
映画『母性(2022)』の作品情報
出典:U-NEXT
製作年 | 2022年 |
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上映時間 | 116分 |
ジャンル | ヒューマンドラマ ミステリー |
監督 | 廣木隆一 |
キャスト | 戸田恵梨香 永野芽郁 三浦誠己 中村ゆり |
製作国 | 日本 |
映画『母性(2022)』の登場人物(キャスト)
- ルミ子(戸田恵梨香)
- 母を愛する娘から結婚・出産を経て母親へと変わっていく女性。母親への思い入れが強い。
- 清佳(永野芽郁)
- ルミ子の娘。母親に愛されたいと願っているが母との関係に苦しみを抱えている。
映画『母性(2022)』のネタバレ・あらすじ(起承転結)
映画『母性(2022)』のあらすじ【起】
大阪で女子高生の飛び降り自殺が報道される。警察は自殺と事件の両面で捜査を開始していた。
高校教師の清佳は自殺した女子高生の母親が語ったコメントを見て、母性について、自身の経験を通して考えていた。
清佳の母親であるルミ子は裕福な家庭に育った、所謂お嬢様だった。父親は彼女が幼い頃に亡くなっていたが、母親と2人で仲良く暮らしていた。 ルミ子は絵画教室に通っていた田所と結婚する。
きっかけはルミ子が気にいらなかった田所の絵を母親が気にいったことだった。田所の友人から母親など家庭環境に問題があると忠告を受けても、それを押し切り田所との結婚を決める。母親からの助けもありルミ子はやがて清佳を出産する。
映画『母性(2022)』のあらすじ【承】
清佳は成長していき、幼稚園生になった頃。その夜は台風が近づいていた。田所は夜勤で外出しており、ルミ子の母親が家に来ていた。清佳がルミ子の母親と一緒に寝たがったので、寝室を共にしていた。夜遅くに落雷が起き、影響で木が倒れてしまう。家に被害が出てしまい、ルミ子の母親と清佳がタンスの下敷きになってしまう。
さらに、カーテンにも火がついてしまう。ルミ子は母親をどうにか助けようとするが、母親は自分のことは良いから清佳を助けるように言う。それでもルミ子は母親を助けようとするが、母親はその手を振り払う。泣きながらルミ子は清佳を抱き抱え家から脱出する。
その結果、ルミ子の母親は亡くなってしまう。さらに、家が全焼してしまったので、田所の実家に身を寄せることになる。
映画『母性(2022)』のあらすじ【転】
口うるさい義母に従うルミ子。田所は母親に何も言わず黙っている。清佳は高校生になっていた。清佳にはなぜルミ子が文句を言わずに従っているのか理解出来なかった。
義母に文句を言った清佳をルミ子は軽く叱る。清佳はルミ子を手伝い喜ばそうとするが、ルミ子に冷たく扱われてしまう。
ルミ子は義母に従い続け、田所の妹にもそのように接していた。次第に義母は認知症を患ってしまう。清佳は老人ホームへの入所を提案するが、ルミ子はそれに反対する。清佳とルミ子の関係は悪化していく。
ある日、清佳は父親の不倫現場を目撃してしまう。その場で問い詰めるとルミ子の母親が清佳を守るため自殺したということを初めて聞かされる。家に戻った清佳はルミ子にこの事を聞く。ルミ子はそれを認めた。酷く動揺した清佳はごめんなさいと謝り続けることしか出来なかった。そんな清佳をルミ子は慰めようとするが清佳はルミ子を突き飛ばしてしまう。
映画『母性(2022)』の結末・ラスト(ネタバレ)
清佳ではなく母を助けようとしたルミ子に対し、母はルミ子を産んで良かったこと、その想いをルミ子も次は清佳に感じて欲しいこと、これからもずっと愛していることを伝えると、ハサミを自らの首に刺して自殺した。ルミ子はその衝撃的な光景に涙しながら清佳を助けたのだ。
真相を全てを清佳に語ったルミ子は清佳にハグするのかと思っていたら、首を締め始めた。清佳はこのまま殺されてもいいかと思ったが、ルミ子の手を振り払い逃げ出す。
その夜。清佳は自殺しようとする。それは失敗に終わり、義母に発見され救急車を呼ばれる。意識が朦朧とする中でルミ子が清佳の名前を叫び続けていることを清佳は覚えていた。
ルミ子は清佳の手をずっと握っていたらしい。目を覚ますまでの間、ルミ子は懺悔室で清佳の無事を祈っていた。
大人になった清佳が同僚と飲んでいた。自殺した女子高生に「母と娘」の関係について伝えたかったと語る。どうやら妊娠しているらしく、それをルミ子に電話で伝える。帰宅する中で自分は娘としての自分なのか、母としての自分なのか考えていた。
映画『母性(2022)』の考察・解説(ネタバレ)
映画『母性(2022)』は、どの辺りが怖いと言われているのか?
映画『母性(2022)』が「怖い」と評される理由は、主に心理的な恐怖と家族間の歪んだ関係性にあります。この作品は、母親と娘の関係に焦点を当てており、特に母親のルミ子が娘に対して抱く感情や行動が、時として冷たく、理解しがたいものとして描かれています。この冷酷さや愛情の欠如が、観客に不安や恐怖感を与えるのです。
一般的に「母性」というと、愛情深く温かいものを連想しますが、この映画ではそれとは全く異なる形で表現されています。母親のルミ子は、娘の清佳に対して、本来母親が持つべき愛情を感じていないように見えます。彼女の感情の欠如が、娘への無関心や冷淡な態度につながり、その結果、家族の絆が崩れていく様子が描かれるのです。こうした母と娘の関係性が、観客にとって非常に不安定で「怖い」と感じさせるポイントなのです。
また、映画で語られる出来事の多くが曖昧で、現実と記憶、あるいは幻想が入り混じっているため、何が真実なのかを考えさせられる点も恐怖心を掻き立てます。ルミ子と清佳の視点が食い違い、彼女たちの記憶が対立することで、観客も次第にどちらを信じていいのか分からなくなります。この曖昧さや不確かさが、映画全体に不気味な雰囲気を与え、心理的な恐怖を増幅させているのです。
さらに、家族という最も親密であるはずの関係が崩れていく様子が、観る人に恐怖感を抱かせます。母と娘の間に愛情が欠如し、感情的な距離が広がっていく様子は、日常の安心感が徐々に失われていくような感覚を呼び起こし、それが恐怖として映るのです。
映画『母性(2022)』の脚本は本当にひどいのか?
映画『母性(2022)』の脚本に対して「ひどい」という評価が一部で見られる理由は、物語の構成やキャラクターの描写に問題があると感じる観客がいるためです。特に、ストーリー展開の複雑さや分かりにくさ、登場人物の行動や感情の不自然さが、脚本への批判につながっているようです。
まず、物語がルミ子と清佳の視点を交互に切り替えながら進むため、観客にとってどちらの視点が真実なのかを判断するのが難しく、混乱を招く場面があります。ルミ子の冷たい態度や、清佳の感情的な苦悩が描かれますが、その背景や理由が明確に示されないことが多いため、キャラクターの行動が不自然に映る瞬間もあるのです。これにより、観客は登場人物に感情移入しにくくなり、物語が進むにつれて違和感を覚えることがあるかもしれません。
さらに、映画全体のペースやテンポの遅さを指摘する声もあり、特にドラマチックな展開の少なさが、物語に対する「退屈だ」という批判につながっています。母娘の関係を中心に描いているため、派手なアクションや大きな出来事が起きるわけではありませんが、その分、登場人物の心情をより丁寧に描くべきところが十分に掘り下げられていないという指摘もあるのです。
ただし、これらはあくまで一部の意見であり、映画の静かな雰囲気や心理描写を評価する人も少なくありません。「母性」や「家族の愛」というテーマは非常に繊細で、深い感情のやり取りを描こうとしているため、観客の期待するものとは異なる形で受け取られることがあるのでしょう。つまり、脚本が「ひどい」と感じるかどうかは、観る人の価値観や感受性に大きく左右されるのです。
映画『母性(2022)』でルミ子の視点と清佳の視点、どっちが本当だったのか?
映画『母性(2022)』では、母親のルミ子と娘の清佳の視点が交互に描かれ、それぞれの記憶や感情が異なる形で提示されます。このため、観客は「どちらの視点が本当なのか」、あるいは「どちらも信じていいのか」という疑問を抱くことになります。映画の中で明確な答えが示されないこともあり、これは観客自身が解釈しなければならない問題なのです。
ルミ子の視点では、彼女は娘を愛していたものの、その感情をうまく表現できなかったように描かれます。自分は母親として最善を尽くしていたと感じており、娘に対しても愛情を持って接していたと自認しているのです。しかし、彼女の行動や態度は冷たく、娘との感情的な距離が大きいことが描かれており、自己認識と実際の行動にはズレがあるのです。
一方、清佳の視点では、母親のルミ子は愛情のない冷たい存在として映ります。清佳は母親からの愛情を感じることができず、そのために心に深い傷を負っているのです。彼女の記憶の中では、母親は常に無関心で、自分を受け入れてくれなかったと感じています。このように、清佳の視点は母親のルミ子に対する不信感と孤独感を強く反映しており、ルミ子の自己評価とは対照的なものとなっているのです。
結局のところ、どちらの視点が「本当」だったのかは明確にされません。しかし、両者の視点にはそれぞれの主観が強く影響していることが分かります。母親と娘が互いに違った見方をしているのは、家族の中でのすれ違いや感情の不一致を象徴しているのです。この映画では、どちらの視点が正しいかを断定することが目的ではなく、母と娘の関係がいかに複雑で曖昧なものであるかを強調しているのです。
観客は、ルミ子と清佳のそれぞれの視点を通して、家族の絆の曖昧さや、愛情が時として誤解を生むことについて考えさせられるのです。
映画『母性(2022)』で気まずいシーンはあるのか?
映画『母性(2022)』には、観客が「気まずい」と感じるシーンがいくつか存在します。特に、母親のルミ子と娘の清佳の関係性が非常にぎこちなく、感情的な隔たりが感じられる場面が多いため、観ている側はその不自然さや緊張感に居心地の悪さを覚えることがあるでしょう。
例えば、母親のルミ子が娘に対して感情をうまく表現できないシーンは、非常に気まずい瞬間として映ります。清佳が母親に愛情や安心感を求めているにもかかわらず、ルミ子はそれに冷たく接し、まるで感情を抑え込んでいるかのような態度を取るのです。娘としては母親の愛情を感じたいはずなのに、母親からの反応が非常に無関心であるため、このギャップが観客に不自然さを感じさせ、気まずい雰囲気を作り出しているのです。
さらに、家族の食卓や日常生活のシーンでも、母と娘の会話がほとんどなく、家族間のコミュニケーションが断絶している様子が描かれます。この静けさや、感情が表に出ない関係性は、観客に不安や居心地の悪さを感じさせます。特に、ルミ子が感情的に閉ざされている一方で、清佳がそれに対して無力感を抱いているシーンは、二人の間にある溝を強調しており、その無言の緊張感が気まずさを生み出すのです。
また、映画の中での回想シーンや夢のような幻想的な場面では、現実と記憶の区別が曖昧に描かれるため、何が本当で何が誤解や幻想なのかが分からなくなります。その曖昧さがさらに不安感や気まずさを引き起こすのです。ルミ子が自分の母親としての役割に疑問を抱きつつも、その感情を表に出せない場面では、観客も彼女の葛藤を理解しつつ、その態度に不快感を覚えることがあります。
全体的に、映画『母性(2022)』では、母娘の関係性が非常に複雑で、コミュニケーションがうまくいっていない場面が多いため、それが観客にとって「気まずい」と感じられるシーンを多く生み出しているのです。
映画『母性(2022)』と原作小説の違いとは?
映画『母性(2022)』は原作小説を基にした作品ですが、映画化に際していくつかの相違点が見られます。特に、物語の展開やキャラクターの描写において、映画と小説の間には違いがあり、それが作品の印象を変える要因となっているのです。
まず、映画版では視覚的な要素が強調されているため、母と娘の関係の冷たさや不安定さが、映像を通じてより強く表現されています。映画では、ルミ子と清佳の視点を交互に描くことで、二人の記憶や感情のずれが視覚的に分かりやすくなっているのです。一方、原作小説では内面的な描写がより細かく描かれており、登場人物の心理的な葛藤や複雑な感情が、文章を通してより深く掘り下げられています。このため、読者はキャラクターの内面により強く共感することができ、物語のテーマである「母性」の難しさについて深く考えさせられる構成となっているのです。
また、映画版では視覚効果や音楽によって、緊張感や不安感が強調されており、特に母娘の関係における不気味さや心理的な恐怖が際立っています。原作小説では、こうした視覚的な要素は当然ながら存在しないため、読者は登場人物の心理状態を想像しながら読み進めることになります。これにより、小説版ではより内面的な世界に入り込む感覚が強く、映画版とは異なる読後感を得ることができるのです。
さらに、映画では時間の制約があるため、原作小説の細かいエピソードやキャラクターの背景が一部省略されている点も、違いの一つです。小説では、母娘の過去や家族の歴史がより詳しく描かれており、登場人物の行動や感情の動機がより深く説明されています。しかし、映画版ではそれが簡略化されているため、一部の観客にとってはキャラクターの行動が分かりにくく感じられるかもしれません。
つまり、映画『母性(2022)』は原作小説のテーマやキャラクターを忠実に描きつつも、視覚的な効果や映画独自の演出によって、原作とは異なる体験を提供しているのです。
映画『母性(2022)』で父親は、どのように関わってくるのかネタバレ
映画『母性(2022)』において、父親の役割はルミ子と清佳の母娘関係を補完するものとして描かれていますが、物語の核心部分にも深く関与しています。父親は表向きには家庭内で穏やかな存在として映っていますが、彼の行動や無関心さが家族の崩壊に大きな影響を及ぼしているのです。
物語の序盤では、父親はあまり目立たないキャラクターとして登場します。ルミ子や清佳に対して優しさを見せる一方で、家族の間で生じている微妙な感情のすれ違いには積極的に関わろうとしません。ルミ子が娘に対して抱いている愛情の欠如や冷たさに対しても、父親はそれを見過ごしているかのように振る舞うのです。彼はルミ子の感情的な問題に深く立ち入ろうとせず、家庭内の緊張感に対して受動的な姿勢を取り続けます。
この父親の無関心な態度が、物語が進行するにつれて家族の絆をさらに弱体化させる原因となっていきます。ルミ子と清佳の間に生まれる感情的な距離が広がる中で、父親の存在はそのギャップを埋める役割を果たすことができず、むしろ二人の関係がさらに悪化する要因にもなってしまうのです。父親の感情的な不在と距離感が、家族全体の崩壊を加速させているのです。
また、映画が進むにつれて、父親が家族内で果たしていた隠れた役割が次第に明らかになってきます。一見すると家族を支える存在のように見える父親ですが、実際には彼の無力感と無関心さがルミ子の内面的な問題を悪化させ、彼女が母親としての役割を十分に果たせない原因となっていたことが示唆されるのです。父親は娘の清佳に対しても十分な関心を示さず、家庭内の感情的な断絶はますます深まっていきます。
物語のクライマックスでは、父親の行動が家族の運命にどのような影響を与えたかが鮮明に描かれます。彼の無関心とルミ子との冷たい関係が、清佳にとっても大きな心の傷となり、最終的には家族全体が崩壊への道をたどる悲劇的な展開につながっていくのです。この時点で、父親が果たしていた役割が、母娘関係だけでなく家族全体に悪影響を及ぼしていたことが明らかになります。
結局のところ、父親は家族の中で決定的な役割を担っていたわけではありませんが、その無関心と感情的な不在が、家族を崩壊へと導く重要な要因となっていたのです。彼の存在が物語に与える影響は、表面的なもの以上に深く、母と娘の関係をさらに複雑なものにしているのです。
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