この記事では、映画『やがて海へと届く』のあらすじをネタバレありの起承転結で解説しています。また、累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家が、映画『やがて海へと届く』を見た人におすすめの映画5選も紹介しています。
映画『やがて海へと届く』の作品情報
出典:https://video.unext.jp/title/SID0074721
製作年 | 2022年 |
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上映時間 | 125分 |
ジャンル | ヒューマンドラマ |
監督 | 中川龍太郎 |
キャスト | 岸井ゆきの 浜辺美波 杉野遥亮 中崎敏 鶴田真由 |
製作国 | 日本 |
映画『やがて海へと届く』の登場人物(キャスト)
- 湖谷真奈(岸井ゆきの)
- 震災後に行方不明になってしまった卯木すみれの親友。現在はホテルのレストランに勤務している。すみれに特別な感情を抱いており、彼女がいなくなったことを未だに受け入れられないでいる。戻って来ないとは信じたくない気持ちと、もういないという現実に折り合いをつけるため、すみれが最後に訪れた東北へ向かう。
- 卯木すみれ(浜辺美波)
- 真奈の大学時代からの親友。自由奔放で真奈とは正反対の性格だが、時折ミステリアスで影のある側面も覗かせる。実家暮らしから真奈の家に転がり込むが、1年後に恋人である遠野敦と同棲するため出て行く。震災直後に行方不明になり、今も見つかっていない。
- 遠野敦(杉野遥亮)
- すみれの元恋人。真奈は同じ大学の同級生。すみれと暮らしていた部屋を引っ越すことになり、彼女の荷物を引き取ってほしいと真奈を呼び出す。真奈とは違い、すみれがいなくなったことに区切りをつけようとしている。
- 国木田聡一(中崎敏)
- レストランの厨房で働く真奈の同僚。すみれのことを引きずったままの真奈を気遣って、一緒に東北へ向かう。
- 卯木志都香(鶴田真由)
- すみれの母親。敦と同じく娘を失ってしまった悲しみの気持ちを整理しようとしている。
- 楢原文徳(光石研)
- 真奈や国木田が働くホテルのレストランの店長。国木田からは優しすぎて掴みどころがないと思われているが、真奈は慕っている。
映画『やがて海へと届く』のネタバレあらすじ(起承転結)
映画『やがて海へと届く』のあらすじ【起】
都内にあるホテルのレストランで働く湖谷真奈は、数年前に行方がわからなくなった親友の卯木すみれを今でも忘れられずにいた。ある日、すみれの元恋人である遠野敦が引っ越すことになり、すみれの持っていたものを処分すると告げられ、真奈は手伝うことになった。
真奈とすみれが出会ったのは大学に入った頃だった。サークルの勧誘に困っているところをすみれが助けてくれた。新歓コンパでも周囲に馴染めず、酒を無理矢理飲まされて気分が悪くなっていた時、介抱してくれたのもすみれだった。その後、二人は一緒に遊んだり、旅行に行ったりする仲になり親しくなった。しばらくすると、すみれが実家を出て、真奈の家で一緒に住むことになった。いつしか真奈はすみれに友達以上の感情を抱くようになっていた。
すみれは「ちょっと海を見に行ってくるね」と真奈に言い残し、その後すぐに震災が起こった。それ以降、すみれの行方は分からなくなってしまっていた。
思い出の品を自由に持っていっていいと敦は言ってくれるが、真奈はまだ現実を受け入れられずにいた。どうしても選ぶことができなかったので、形見の品々をすみれの実家へ持って行くことにした二人。
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映画『やがて海へと届く』のあらすじ【承】
すみれの母親は、親娘関係があまり良くなく、喧嘩するようにすみれが家を出て行ったと二人に話した。しかし、いなくなってから元の関係に戻れたような気がすると吐露し、敦も自分もそうだと同調した。しかし真奈は、もうすみれが戻ってこないと決めつけている二人に共感できなかった。
敦は真奈に、すみれが使っていたビデオカメラを引き取ってほしいと頼む。母親も受け取ってくれなかったと話し、自分も見たくないという敦。そして、すみれのことは忘れることにして、他の女性と婚約したと打ち明ける。真奈は驚きと怒りで耐えられなくなり、ビデオカメラを引き取って足早にその場をあとにした。
ある日、真奈が出勤すると、いつも先に来ているはずの店長・楢原の姿がない。しばらくして「少し遅れる」と連絡があるが一向にやって来ない。同僚の国木田も心配になり、店長を探しに行くと言って出ていった。しばらくして、楢原が自殺したことがわかる。
職場ではすぐに新しい店長が決まる。まるで最初から樽原はいなかったかのように何も変わらず物事が進んでいく様子に、真奈はやるせない思いになる。
映画『やがて海へと届く』のあらすじ【転】
国木田は真奈を気遣って、「有給を取ってどこか旅行でもしてみたら?」と提案する。行きたいところはあるがずっと行けていないと答える真奈。それはすみれが最後にいたと思われる東北だ。最初の1、2年は何度も探しに行ったが、しばらく行けていないと言う。「見つかってほしくないって気持ちと、見つけてあげなきゃって気持ちがある」ともどかしい思いを国木田に打ち明ける真奈。
気持ちに折り合いをつけるため、真奈は国木田についてきてもらい、もう一度東北を訪れることにした。海を眺めながら「どうしてもいなくなったとは思えない」と話す真奈。そして、「本当は自分もすみれのことを少しずつ忘れてきているのかもしれない」とも漏らした。
父と祖母が津波で行方不明のままだという地元の少女の話を聞いた真奈と国木田は、少女の母親が経営している民宿に一泊させてもらうことになった。眠れず朝早くに海岸に出た真奈のもとに少女がやって来て、童歌を聞かせてくれた。真奈は少し元気を分けてもらえたように感じた。
映画『やがて海へと届く』の結末・ラスト(ネタバレ)
真奈は今も枕元にすみれがいるのを思い出す。そして、夢を見ていたとすみれに話す真奈。しかし、すみれの姿がまぼろしだということはわかっていた。ベランダを見つめた真奈は思い出したように、すみれのビデオカメラを取り出した。そして、すみれが自分にレンズを向けていた時のことを思い出す。ふと後ろを振り返るとそこにはすみれがいて、真奈に口づけした。真奈は涙を抑えきれなかった。
実は、すみれも真奈に出会った時から友達以上の感情を抱いていた。しばらくして真奈と暮らし始めたすみれだったが、やがて敦と付き合うようになった。でも本当は真奈のことが好きで一緒にいたかった。でもこれからのことを考えるとこれ以上一緒にはいられないと、真奈への思いを断ち切るため敦と同棲することに決めたのだった。そして、お互い本当の思いを知らないまま離れることになってしまった。
時が経ってすみれは就職し、久しぶりに会った二人は今でも付かず離れずの関係だった。真奈はバス停ですみれと別れた。これが最後だった。
真奈はすみれの遺したビデオカメラに向かって、笑顔で彼女との思い出を語り始めるのだった。
映画『やがて海へと届く』の感想・評価・レビュー(ネタバレ)
失われた友人を想うすみれの姿が切なく、ラストの「海へ」というテーマが深く胸に刺さりました。無理に答えを出すのではなく、時間とともに痛みを抱えて生きる姿を丁寧に描いていて、非常に共感しました。最終的にすみれが、かすみとの別れを受け入れる瞬間に涙が止まりませんでした。静かな余韻が素晴らしい作品です。(20代 女性)
青春の中の「喪失」と「希望」が静かに描かれていて、心に沁みました。かすみが旅先で失踪してしまうという展開は重く、すみれがその後も心を閉ざしながら日々を生きる姿がリアルでした。過去と現在が交錯する構成も効果的で、観る側も彼女たちと一緒に時間を旅している感覚になれます。優しく、切ない映画でした。(30代 男性)
観終わった後、しばらく余韻に浸ってしまいました。かすみの失踪という事実を受け入れられず、立ち止まってしまったすみれの苦しみが痛いほど伝わります。特に、かすみが残したメッセージに触れるシーンは涙なしでは観られませんでした。誰しも大切な人を想う気持ちを抱えて生きている、そんなことを思い出させてくれる映画です。(40代 女性)
全編を通して「静かな悲しみ」が流れていて、非常に美しい映画でした。かすみという存在が物語の中でどんどん神秘的になっていき、すみれの心の中にだけ生き続ける描写がとても印象的。最後、海を前にしてすみれが微笑むシーンに、少しだけ希望を感じられました。喪失と再生を描く、優しい傑作です。(20代 男性)
本当に丁寧な映画でした。喪失を直視できず、時間とともに向き合っていくすみれの過程が、リアルに、繊細に描かれていました。かすみの自由奔放な生き方と、それを受け止めきれなかったすみれの葛藤に心が締めつけられます。静かな映画ですが、観た人それぞれに強く訴えかけるものがあると感じました。(50代 男性)
冒頭からラストまで、常に「不在」の存在感が漂っていました。かすみの失踪は衝撃ですが、それ以上に、彼女がどれほどすみれにとって大きな存在だったのかが丁寧に描かれていて胸に迫ります。誰かを想い続けること、失っても愛し続けることの尊さに、自然と涙がこぼれる作品でした。(30代 女性)
まるで海の波のように、記憶や感情がゆるやかに押し寄せてくる作品でした。かすみの自由さに憧れ、でも手を伸ばしても届かないすみれの心情が、とてもリアルでした。現実の「答えが出ない痛み」を描いているのが素晴らしい。最後にすみれが前を向く姿に、ささやかな救いを感じました。(40代 男性)
静かに、しかし確実に胸を打つ作品でした。旅立ったまま帰らないかすみの影を追い続けるすみれの姿は、共感しかありません。とくに、写真や手紙を通して彼女と再会する描写が素晴らしく、スクリーン越しに本当に涙が溢れました。派手な演出はないけれど、心にそっと寄り添ってくれるような映画でした。(20代 女性)
「喪失」と「再生」をこれほど静かに、そして優しく描いた映画はなかなかないと思います。かすみが失踪してしまった背景に明確な答えを出さないところが逆にリアルで、観る者の想像力を刺激します。すみれが自分なりの答えを見つけ、海へ向かう姿には、思わず拍手を送りたくなりました。(30代 男性)
友人の失踪という重たいテーマを、ここまで繊細に扱った映画は珍しいと思いました。かすみが消えてしまったあとも、すみれの心の中に彼女が生き続けている、というラストに救われました。時折挟まれる回想シーンがとても美しく、二人の友情の尊さが痛いほど伝わってきました。素晴らしい余韻の映画です。(50代 女性)
映画『やがて海へと届く』を見た人におすすめの映画5選
リップヴァンウィンクルの花嫁
この映画を一言で表すと?
喪失と孤独を抱えながら、新たな生を手探りで見つける女性の物語。
どんな話?
結婚、離婚、孤独を経て、他者とのつながりを模索する女性の人生を、美しい映像とともに描く長編ドラマ。様々な偽りと出会いを繰り返しながらも、自分自身を見つけようとする主人公の姿が心に残ります。静かな痛みと再生の物語です。
ここがおすすめ!
岩井俊二監督らしい繊細な演出と、満島ひかりの圧倒的な存在感が魅力です。孤独や喪失を抱える人の心に寄り添うこの作品は、『やがて海へと届く』で感じた余韻や感情をもう一度味わいたい人にぴったりです。
湯を沸かすほどの熱い愛
この映画を一言で表すと?
残された時間で、愛を伝え続けた母と家族の再生物語。
どんな話?
余命宣告を受けた母親が、家族に隠されていた真実と向き合いながら、最後まで愛を注ぐ物語。バラバラだった家族が、彼女の愛情によって再び一つになっていく姿を温かく、そして力強く描いています。
ここがおすすめ!
宮沢りえが演じる母親の強さと優しさに心を打たれます。喪失をテーマにしながらも、愛情と希望を力強く描き出しており、『やがて海へと届く』同様、涙と温かさを同時に感じられる一本です。
永い言い訳
この映画を一言で表すと?
喪失を抱えながら、不器用に再生していく男の物語。
どんな話?
妻を突然失った作家が、悲しみに向き合えないまま、ある家族との出会いを通じて少しずつ心を開いていく過程を描いたヒューマンドラマ。悲しみを表現できない男の姿がリアルに胸に迫ります。
ここがおすすめ!
本木雅弘の繊細な演技と、西川美和監督による静かな描写が見事に融合した作品です。喪失から立ち直ることの難しさと、それでも人は前を向くしかないというメッセージが、『やがて海へと届く』に響いた人に深く刺さるでしょう。
彼女がその名を知らない鳥たち
この映画を一言で表すと?
痛みと醜さを抱えた愛の形を、リアルに描き出す衝撃作。
どんな話?
自堕落な生活を送る女性と、彼女を一途に支え続ける男。過去の恋人を忘れられず、心に傷を抱えたまま生きる彼女が辿り着く意外な結末を描きます。ドロドロとした人間ドラマの中に、かすかな希望も感じられる物語です。
ここがおすすめ!
蒼井優と阿部サダヲの熱演が光る、観る者の心をえぐるようなリアルな人間ドラマ。『やがて海へと届く』で描かれた喪失感や、人間の複雑な感情に共鳴した人には強くおすすめできる一本です。
そして父になる
この映画を一言で表すと?
取り違えられた子供を巡る、父親たちの心の葛藤と成長の物語。
どんな話?
6年間育てた息子が実は別の家庭の子だったと知らされた父親が、本当の家族とは何かを模索する姿を描く感動作。血のつながりか、それとも共に過ごした時間か――重い問いかけが胸に響きます。
ここがおすすめ!
是枝裕和監督らしいリアルな人物描写と、自然な演技が心に染み渡ります。失われたものへの哀しみと、新たなつながりへの希望を描くこの映画は、『やがて海へと届く』に感動した人にとって深い共感を呼ぶことでしょう。
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