映画『ヒメアノ~ル』あらすじネタバレ結末と感想

ヒメアノ~ルの概要:日常に潜む狂気を、ラブコメディとサイコスリラーという異色の組み合わせで描いた2016年公開の日本映画。平凡な日常を送る岡田役を濱田岳が、そんな岡田を追い詰めていく連続殺人鬼の森田役をV6の森田剛が演じている。

ヒメアノ~ル あらすじネタバレ

ヒメアノ~ル
映画『ヒメアノ~ル』のあらすじを紹介します。※ネタバレ含む

ヒメアノ~ル あらすじ【起・承】

清掃会社でアルバイトをする岡田進(濱田岳)は、何の目標も持たず恋人もいない、うだつが上がらない日々を送る生活に不安を感じていた。

ある日、職場の冴えない先輩・安藤勇次(ムロツヨシ)から恋の相談を受けた岡田は、その恋の相手である阿部ユカ(佐津川愛美)を見るために、彼女が働くカフェへと連れられる。そして、そこでかつての同級生である森田正一(森田剛)と偶然再会する。「あいつは彼女のストーカーだ」と森田を指す安藤だったが、高校時代に壮絶ないじめを受けていた森田の過去を知る岡田は信用しなかった。

その後も安藤に連れられてカフェに通う内に、岡田は徐々にユカと親しくなり、ついにはユカから告白されてしまう。安藤に内緒で付き合うことにした岡田とユカ。秘密の恋を楽しみながら、二人は愛を育んでいく。

そんな二人が過ごす部屋の窓を、離れたところから見る森田。実は、森田は本当にユカをつけ狙っていたのだった。岡田を殺すことに決めた森田は自宅に凶器を取りに戻り、そして一本の電話をかける。

ヒメアノ~ル あらすじ【転・結】

森田が電話をかけた相手は、同じように高校時代に壮絶ないじめを受けていた和草浩介だった。自分たちをいじめていた同級生を共に殺害したという和草の弱みを握っていた森田は、岡田を殺す手伝いをするよう命じる。

殺人に性的興奮を覚える森田の異常性を知っている和草は、関係を断ち切るために彼を殺すことを決意して森田のアパートへ乗り込むが、返り討ちに遭って殺されてしまう。そして、和草を殺した森田は火を放ってその場を去り、そこから無差別な連続殺人を犯していく。

一方、安藤にバレながらもなんとか交際を続けている岡田とユカは、時にはケンカをしながらも微笑ましい日常を送っていた。

だが、そんな日常も長くは続かなかった。ユカの部屋の隣人である男性が遺体で発見され、さらには安藤も襲われて重傷を負う。音を立てて近づく森田の影に恐怖を覚えた岡田は、森田に住所を知られていない自分のアパートにユカを招く。

岡田の外出中、買い物を終えて帰宅したユカは窓ガラスが割れていることに気づくが、その時にはもう遅かった。入念にした戸締りがあだになり逃げ遅れたユカは、部屋に潜んでいた森田に襲われる。帰宅した岡田が間一髪のところでユカを守って森田と闘うが、勢い余って2人はアパートの2階から落ちてしまう。

ケガを負って歩けなくなった岡田を人質にして、駆け付けた警察官から逃げる森田。奪った車に岡田を乗せて逃走するが、散歩中の犬を避けて電柱に衝突してしまう。意識が朦朧とする中、森田と岡田は出会った頃のことを思い出していた。

森田の実家の居間で楽しそうにゲームをする高校時代の森田と岡田。共通の趣味を持った岡田と出会った頃の森田の顔には、優しい笑みが浮かんでいた。そして、居間から見える庭には、森田が飼っていた愛犬の姿があった。

ヒメアノ~ル 評価

  • 点数:90点/100点
  • オススメ度:★★★★☆
  • ストーリー:★★★★★
  • キャスト起用:★★★★★
  • 映像技術:★★★★☆
  • 演出:★★★★☆
  • 設定:★★★☆☆

作品概要

  • 公開日:2015年
  • 上映時間:99分
  • ジャンル:コメディ、ラブストーリー、サスペンス
  • 監督:吉田恵輔
  • キャスト:森田剛、濱田岳、佐津川愛美、ムロツヨシ etc

ヒメアノ~ル 批評・レビュー

映画『ヒメアノ~ル』について、感想と批評・レビューです。※ネタバレ含む

1本の映画とは思えない、絶妙な緩急の使い分け

映画を観ていて、劇場内の空気が一変する瞬間をここまで肌で感じたのは初めてだった。それほどまでに、この映画のペース配分の絶妙さとリアルな描写は群を抜いている。

前半は、岡田と安藤が繰り広げるコメディと、ユカを交えたラブストーリーが日常的な雰囲気の中で進んでいく。劇場内ではあちこちからクスクスと笑い声が聞こえていた。

だが、森田が登場した途端に劇場内の空気が変わる。生唾を飲む音が聞こえるほどの緊張感に包まれる。そして、徐々にスピードを上げて物語が進んでいく。ここで注意したいのは、森田が登場してからも、スクリーンの中で起こる出来事は紛れもない日常だということ。だからこそ恐怖を覚える。

今作でメガホンを取った吉田恵輔監督といえば、これまで『さんかく』や『ばしゃ馬さんとビッグマウス』など、少し変わった人物を中心に据えながらもリアルな日常を描いた作風が印象的だ。だから正直、サイコキラーが登場する、しかも批判の対象になりやすい原作モノをどんな風に撮るのか見当がつかなかった。だが、なるほど。恐れ入った。

いつだって狂気は日常に潜んでいる

この映画のすごいところは、得てして大袈裟に描いてしまいがちな「異常性のある殺人」を、日常の一部として描いているところだ。これは吉田監督だからこそできる芸当だと思う。

映画の中で、森田が女性をバットで何度も殴打するシーンがある。そのシーンの合間に、岡田とユカが性行為に及んでいるカットを何度も挿入する。これは、森田が殺人に対して感じる性的興奮を表現しているのだろう。

その一方で、森田は食事の合間や寝起き直後に、まるで呼吸をするかのように殺人を犯す。この差が、我々に「殺人」というものを日常として突きつけてくる。さっきすれ違った人が、電車で隣に座っている人が、もしかしたら森田かもしれない。そんな懐疑心を植え付けられる。狂気は、いつだって日常に潜んでいるのだ。

他の映画と違い、内臓が飛び出たり血が噴き出したりといった派手なグロテスク描写はないが、本当に嫌な気分になるリアルな暴力描写があるため、そういったものが苦手な人は鑑賞を控えたほうが良いかもしれない。実際、上映中に劇場を出た人も何人かいた。それがなければ自信を持ってオススメできるだけに惜しい。だが、作品としてはこの上なく満足できる1本であることは間違いない。

ヒメアノ~ル 感想まとめ

この映画で特筆すべきなのは、やはりV6の森田剛だろう。とにかくすごいの一言に尽きる。殺人が生活の一部であるかのように人を殺す時のあの顔。トラウマになる。だが、一番怖かったのは、禁煙エリアでタバコを吸った時におじさんに注意されるシーン。何を言われても、「いやもう吸ってないんで!」を真顔で繰り返すのだが、あんな演技ができるのは森田剛くらいだろう。

そして、その森田剛が演じた森田正一を、ただのサイコキラーとして終わらせなかったのも良かった。

森田が現在のようになってしまった原因や過去を断片的ではあるがしっかりと提示するし、最後の最後には、昔の優しい森田が現れる。それまで何人もの人を殺してきた森田が、散歩中の犬を車で轢きそうになった際にとっさに避けるのだ。そしてラストシーンの森田のセリフが、頭からずっと離れない。涙が頬を伝った感触も忘れられない。ずるいよ監督。

笑いあり、恐怖あり、涙ありの異色作。古谷実原作の同名漫画を未読の方は、ぜひ原作を読まずに1本の映画として楽しんでほしい。森田のことばかりだったが、濱田岳演じる岡田の成長劇としても楽しめるので、そこも期待していただきたい。

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