『狼たちの午後』あらすじとネタバレ映画批評・評価

狼たちの午後の概要:「狼たちの午後」(原題:Dog Day Afternoon)は、1975年のアメリカ映画。監督は1957年の「十二人の怒れる男」で監督デビューし、後にアカデミー賞名誉賞を受賞したシドニー・ルメット。主演は「ゴッド・ファーザー」のアル・パチーノ。共演に「ゴッド・ファーザー」のフレド役を演じたジョン・カザール。本作は1975年度アカデミー賞脚本賞を受賞。アル・パチーノは英国アカデミー賞で主演男優賞を受賞した。

狼たちの午後

狼たちの午後 あらすじ

映画『狼たちの午後』のあらすじを紹介します。

1972年8月22日。ニューヨークは36度という茹だるような暑さだった。その日の14時57分、三番街のチェイス・マンハッタン銀行ブルックリン支店に3人の強盗が押し込む。だが3人の1人であるロビーが間際になって怖じ気づき仲間を抜ける。残ったソニー(アル・パチーノ)とサル(ジョン・カザール)にとってさらに予想外だったのは、銀行の現金が既に本店に運ばれていたという事だった。金庫に残された1,100ドルの現金に愕然とするソニーへ、銀行は完全に包囲されており、武器を捨てて出て来るようにと警察からの電話が入る。事態は急変し警官とFBI捜査官250人の包囲網の中、追いつめられた二人の男は銀行員9人を人質とした。15時10分を少し廻ったところで銀行の外にはヤジ馬が押し寄せ、報道陣の中からモレッティ刑事の必死の説得が行われたが時間はいたずらに過ぎてゆく。二人の言いなり状態の警察側と、TV報道のインタビューに応える犯人側という状態で、次第にソニーは群衆たちから英雄視され始める。陽が暮れ出した頃、銀行内では犯人と人質たちとの間に奇妙な連帯感のようなものが芽ばえ始め、それまで静観していたFBIのシェルドンが動き出した。彼はモレッティとは対照的に冷静な態度でソニーに接近し、落ち着いた口調でソニーに自首を勧めてきた。ソニーとしてもこの説得に心が動かなかったわけではなかったが、一途に成功か死かのいずれかしかないと信じ込んでいるサルを裏切ることは出来なかった。ソニーの母や妻、愛人による説得工作などあらゆる手段が功を奏しなかった警察側は、ソニーたちの要求通り国外逃亡用のジェット機を用意する。銀行から警官が運転する小型ワゴンが犯人と人質を乗せて出発する。やがてワゴンは空港に到着し、銃を構えたサルが降りようとした一瞬の隙を狙って、警官が発砲した銃弾はサルの額を撃ち抜いた。捕えられたソニーは20年を牢獄で過ごす処分を受けた。

狼たちの午後 評価

  • 点数:90点/100点
  • オススメ度:★★★★★
  • ストーリー:★★★★★
  • キャスト起用:★★★★★
  • 映像技術:★★★★☆
  • 演出:★★★★★
  • 設定:★★★★☆

作品概要

  • 公開日:1975年
  • 上映時間:125分
  • ジャンル:アクション、サスペンス
  • 監督:シドニー・ルメット
  • キャスト:アル・パチーノ、ジョン・カザール、チャールズ・ダーニング、ジェームズ・ブロデリック etc

狼たちの午後 批評 ※ネタバレ

映画『狼たちの午後』について、2つ批評します。※ネタバレあり

醜悪な人間ドラマ

最初からいきなり銀行に押し込もうとする犯人の挙動が、覆面もしておらずいかにも無計画というのが滑稽である。強盗に入ったものの一人が脱落して逃亡。そして金庫には1,100ドルの現金しか入っておらず、ベテランの女性行員に「計画はしなかったの?」と蔑視を向けられる始末。何ともお粗末な銀行強盗である。そして立て籠もりながら、女性行員たちもはしゃぐ者もあり、外では二人を英雄扱いをするヤジ馬が押し寄せたり、テレビはインタビューを要求したりと全く緊迫感がない。その中でジョン・カザール演ずるサルだけが緊張の面持ちで、周囲に目を光らせているのが印象的である。銀行員の家族や犯人の家族が次々と登場し、挙げ句の果てに、アル・パチーノ演ずるソニーの愛人であるゲイの男性までが駆り出され、TVでその私生活を暴露される。どうしようもなく息苦しい人間ドラマが暗い銀行内で延々と展開され終始落ち着くヒマがない。主役のアル・パチーノと共演のジョン・カザールの演技は見ものであるが、銀行強盗に押し入った動機の背景にある醜悪な人間ドラマがえぐり出され、観た後の暗い気持ちを晴らすのに困難な作品である。

ベトナム戦争の背景が見え隠れするドラマ

ソニーの母がひどい親だったというのは何となく理解出来たが、行内で女子行員相手にライフルの扱い方を教える姿から推測すると、多分ベトナム帰りなのだろうか。サルは刑務所に戻りたくないと言っているからには前科持ちなのだろう。悪い友人が出来たと言っているのもそんな背景があっての事だろうが、多くは語られていない。少しこなれてきた辺りから人格が解ってくるのだが、二人とも基本的には人の良さが表れてくる、それがゆえ無計画な行き当たりばったりの犯行にしか及ぶ事ができなかったのだろう。母や本妻と子供がいながら、ゲイの妻(教会で結婚したという事実)を持っている複雑な人間像がソニーの性格によく表れており、それを演じるアル・パチーノも鬼気迫る表情である。

まとめ

監督が社会派のシドニー・ルメットという事で、銃撃戦やアクションシーンは多用していないが、それをカバーして余りある犯人を演じた二人の存在感が際立っている。1960年代の後半から始まったヒッピーやアメリカン・ニュー・シネマという表現は、この辺りの映画が区切りのようになって終焉を迎えた感がある。本作の翌年に公開された、マーティン・スコセッシ監督の「タクシー・ドライバー」もそんな映画のひとつではなかっただろうか。この時期は70年代にデビューした監督や役者が大きな成長を遂げる節目でもあったのだろう。

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