この記事では、映画『美しき冒険旅行』のあらすじをネタバレありで解説しています。また、累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家が、映画『美しき冒険旅行』を見た人におすすめの映画5選も紹介しています。
映画『美しき冒険旅行』 作品情報
- 製作年:1971年
- 上映時間:96分
- ジャンル:ヒューマンドラマ
- 監督:ニコラス・ローグ
- キャスト:ジェニー・アガター、リュシアン・ジョン、デビッド・ガルピリル、ジョン・メイロン etc…
映画『美しき冒険旅行』 評価
- 点数:85点/100点
- オススメ度:★★★★☆
- ストーリー:★★★☆☆
- キャスト起用:★★★☆☆
- 映像技術:★★★★★
- 演出:★★★★☆
- 設定:★★★☆☆
[miho21]
映画『美しき冒険旅行』 あらすじ(ストーリー解説)
『美しき冒険旅行』のあらすじを紹介します。
父親に連れられてオーストラリアの砂漠までやってきた少女(ジェニー・アガター)と弟(リュシアン・ジョン)だが、突然父親が自殺したせいで砂漠の真ん中で取り残されてしまう。文明の中で育ってきた2人は自然の中は無力に等しく、食料や水を確保することもできない有様だった。そんな2人のもとに大人になるための修行中のアボリジニの少年(デイヴィッド・ガルビリル)がやってきて、水のある場所を教えてやる。言葉も通じない両者だが次第に打ち解け、一緒に行動することになる。一緒に狩りや水遊びをし、寝食を共にしていくうちに3人は家族のような関係になっていく。
やがて3人は小さな小屋を見つける。少年は少女と結婚しここに定住することを望むが、少女は街に戻ることを考えていた。ある日少年は少女に求愛の踊りをするが少女はそれを恐れ、少年の愛に応えることはなかった。翌朝少女と弟は少年の遺体を見つけるのだった。無事街に辿り着いた姉弟だが、久しぶりに出会った白人の老人は、少年のように2人に優しくは接してくれなかった。そして数年後、成長して結婚した少女は平凡な暮らしを送っていた。自然の中で自由に生きたあの時期はもう戻ってこないのだった。
映画『美しき冒険旅行』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)
『美しき冒険旅行』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む
痛烈な文明批判
本作の大きなテーマは現代文明への痛烈な批判である。オープニングからして資本主義、消費社会を切り取ったショットが目まぐるしく展開され、その後美しいオーストラリアの自然が対比される。その他にも、アボリジニの少年が一見暴力的な狩りをしている際、現代文明の調理シーンが挿入される。私たちの食の裏にある死を、異様なまでに隠蔽することに対する批判だ。そして何より衝撃的なのが父親の自殺である。2人を銃で撃った後、車に火をつけて焼身自殺してしまう。原作では2人が遭難した理由は飛行機事故であり、このオリジナルのシークエンスがニコラス・ローグによるメッセージであることは明らかだ。父親はまさに文明の象徴であり、それが狂気をはらんだ存在であることを暗に示しているのだ。
通過儀礼の物語
アボリジニの少年はウォークアバウトと呼ばれる通過儀礼の最中である。大人になるために1人で自然の中を生き抜かなければならないのだ。一方で少女の方もある意味で通過儀礼の最中であると言える。ただしそれは父親の死という外部からのきっかけがあったからだ。これは現代社会においても同じことが言えるのではないか。明確な通過儀礼はもはや形骸化し、もっと現実的な必要に迫られないと大人になれないのがいかにも現代人らしい。物語の結末は、この通過儀礼の達成具合の違いによって訪れる。大人になったアボリジニの少年は少女に求愛するが、少女はまだ大人になれていない。だから2人の関係は悲しい終わりを迎えてしまうのだ。
壮大な自然の中で出会った、全く違う世界で生きてきた少年と少女。言葉が通じない中で心を通わせ、次第に複雑な感情を抱いてしまうアボリジニの少年のあまりにも野性的で自然体の行動に驚かされました。
何もかもが揃った何不自由ない時代に暮らしている私たちにとって、アボリジニの少年の生き方は未知の世界。遭難をきっかけにその世界に足を踏み入れた時の姉弟はどんな気持ちだったのでしょう。大人になる途中の不安定な心に追い打ちをかけるように目の当たりにする「死」の存在。
何が幸せなのかを考えさせられる作品でした。(女性 30代)
人間と自然、文明と未開の世界という対比が印象的な作品でした。父の自殺という衝撃的な導入から始まり、少女と弟がアボリジニの少年と出会うことで広がっていく物語。文化も言葉も違うのに、3人の間に育まれる静かな絆が心に残ります。終盤、アボリジニの少年が命を絶つシーンは象徴的で、余韻が深く残りました。(30代 女性)
映像詩とも言える美しさに圧倒されました。オーストラリアの大自然がただの背景ではなく、登場人物たちの感情を映し出す鏡のように機能していると感じました。少女が大人になる過程と、アボリジニの少年の死が交差する結末は、現代文明が自然との共生を失った象徴のようで切ない。静かだけど強く心に刺さる作品です。(50代 男性)
映像と音楽のセンスが抜群で、映画というよりもひとつの“体験”を味わったような感覚でした。言葉少なに展開していくストーリーに最初は戸惑いましたが、次第に登場人物たちの無垢さや戸惑いが伝わってきて、心が動かされました。結末の少女の冷たさが逆にリアルで、文明に戻るということの意味を考えさせられました。(20代 女性)
70年代の映画とは思えないほど、自然描写と人間の描き方が新鮮でした。アボリジニの少年との関係性がとても美しく、言葉を超えた心のつながりを丁寧に描いていて感動。にもかかわらず、文明社会に戻った少女が彼の存在を完全に忘れてしまったかのようなラストには衝撃を受けました。現代への痛烈なメッセージを感じました。(40代 男性)
静かに進む映画ですが、そこに込められたメッセージはとても重い。少女が自然の中で生き延び、アボリジニの少年の助けを借りて変わっていく様子に成長の物語としての強さを感じました。しかし、その関係性が最後には断ち切られてしまう。文明と自然、感情と理性の境界がどこにあるのかを深く考えさせられました。(60代 女性)
映像の美しさにまず目を奪われ、その後に訪れる展開の重さにじわじわと感情が押し寄せてくる、不思議な映画体験でした。特にアボリジニの少年の死の場面、彼の行動の理由がはっきり語られない分、解釈の幅が広く、観る者に問いを残します。自然との関わり、他者との交流、どれも深いテーマが静かに刺さります。(30代 男性)
正直、最初は地味な映画だと思って観ていましたが、見終わった後の余韻がすごいです。言葉が通じなくても、人間は理解し合える。それを純粋に描いていて、逆に現代社会の不自然さが際立っていたように思います。少女の視点から見た世界の変化がリアルで、あのラストシーンは一生忘れられません。(20代 男性)
アボリジニ文化の描写がとても印象的で、自然と共に生きる彼らの姿に強い憧れを感じました。その一方で、都会の生活に戻った少女が彼の存在を忘れてしまうような描写には悲しさと虚しさがありました。人間の本質とは?文明とは?というテーマがストレートに投げかけられるような、静かながら鋭い作品でした。(50代 女性)
詩的な映像美と、セリフが少ない構成が非常に印象的。アボリジニの少年が自然の中で生きる術を見せる一方で、少女は文明的な価値観を捨てきれず、最後には完全にその世界に戻ってしまう。あの少年の死が何を意味していたのかを考えるだけで胸が苦しくなる。映像とテーマが静かに心に残る名作です。(60代 男性)
映画『美しき冒険旅行』を見た人におすすめの映画5選
イントゥ・ザ・ワイルド
この映画を一言で表すと?
文明を捨てて大自然へ旅立った青年の、魂の放浪記。
どんな話?
裕福な家庭に育った青年クリスは、すべての物を捨ててアラスカの荒野を目指す旅に出る。旅の途中で様々な人と出会い、自然と向き合いながら本当の自由と孤独を学んでいく、実話をもとにした感動作。
ここがおすすめ!
現代社会への違和感と、自然との融合を求める姿勢が『美しき冒険旅行』と深く通じ合う作品。静かな映像と美しい音楽、そしてラストに待ち受ける切なさが観る者の心を揺さぶります。人生を見つめ直したくなる映画です。
ザ・サバイバル 極限状態
この映画を一言で表すと?
生死を分ける大自然の中で、人間の尊厳が問われる。
どんな話?
飛行機事故でアラスカの荒野に取り残された父と息子。極寒の地で、道具も助けもないまま生き延びようとする彼らの絆と葛藤を描くサバイバル・ヒューマンドラマ。
ここがおすすめ!
自然描写のリアリティが素晴らしく、人間の強さと弱さが浮き彫りになります。『美しき冒険旅行』のように自然と人間の対話を丁寧に描いており、極限状況での心理描写に引き込まれる一作です。
パターソン
この映画を一言で表すと?
日常の静けさに宿る、詩のような人生の美しさ。
どんな話?
バス運転手のパターソンは、同じルーティンの毎日を送りながら詩を書き続けている。彼の何気ない生活を通して、静かな感情やささやかな幸せを詩的に映し出していく、ジム・ジャームッシュ監督の傑作。
ここがおすすめ!
大きな事件は起きませんが、その中に人生の本質がそっと描かれています。『美しき冒険旅行』と同じく、静寂の中に深いメッセージが込められており、心を落ち着けて観たい人にぴったりの映画です。
エマニュエルの愛と冒険(Picnic at Hanging Rock)
この映画を一言で表すと?
謎に包まれた少女たちの失踪が描く、夢幻の美しさと不安。
どんな話?
1900年のオーストラリア。名門女子学院の生徒たちがピクニック中に姿を消す。その後、彼女たちに何が起こったのかは誰にも分からない。幻想的で謎に満ちた雰囲気に包まれた不可思議な物語。
ここがおすすめ!
『美しき冒険旅行』同様、自然と少女たちの存在が交錯し、現実と幻想の境界が曖昧になる演出が特徴的。静かで美しい映像美と共に、不安と余韻がずっと残り続ける名作です。
天国の日々(Days of Heaven)
この映画を一言で表すと?
光と影が織りなす、映像詩のような愛と喪失の物語。
どんな話?
20世紀初頭、貧しい労働者の青年が妹と恋人を連れて農場に働きに出る。恋人が農場主と結婚したことから三人の関係が揺らぎ、やがて悲劇へと向かっていく。
ここがおすすめ!
テレンス・マリック監督の映像美が圧倒的で、自然の中に人間の感情が溶け込んでいくような演出は『美しき冒険旅行』と通じる部分が多いです。ストーリーよりも心象風景に身を委ねたい人におすすめの一本です。
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