池井戸潤の起源とも呼ぶべき名作がとうとう映画化。阿部サダヲを始めとした豪華演者陣で挑む金を巡った壮絶なミステリー。果たして、金は全てを狂わせるのか。人の本性に迫る122分。
映画『シャイロックの子供たち』の作品情報
- タイトル
- シャイロックの子供たち
- 原題
- なし
- 製作年
- 2023年
- 日本公開日
- 2023年2月17日(金)
- 上映時間
- 122分
- ジャンル
- サスペンス
- 監督
- 本木克英
- 脚本
- ツバキミチオ
- 製作
- 矢島孝
石田聡子 - 製作総指揮
- 吉田繁暁
三輪祐見子 - キャスト
- 阿部サダヲ
上戸彩
玉森裕太
柳葉敏郎
杉本哲太
佐藤隆太
渡辺いっけい
忍成修吾 - 製作国
- 日本
- 配給
- 松竹
映画『シャイロックの子供たち』の作品概要
新たな池井戸潤作品が世に送り出される。元銀行員という異例の肩書きを持つ作家、池井戸潤が描く本格ミステリー。これまで堺雅人や長瀬智也、大泉洋といった錚々たるメンバーが彼の作品で主演を務めてきたが、今回そのポジションを見事射止めたのは、長年第一線で活躍する個性派俳優、阿部サダヲ。『空飛ぶタイヤ』で既にタッグを組んでいる本木克英監督や、その際のメインキャストも再集結した超豪華布陣。気心の知れたメンバーで送る、金を巡ったドロドロのストーリー。果たして事件の水面下では一体何が起こっていたのか。映画の宣伝にも使われている、阿部サダヲの二つの表情にも注目。
映画『シャイロックの子供たち』の予告動画
映画『シャイロックの子供たち』の登場人物(キャスト)
- 西木雅博(阿部サダヲ)
- 東京第一銀行長原支店で長年勤務するベテランお客様係。
- 北川愛理(上戸彩)
- 西木の同僚。現金紛失事件の濡れ衣を着せられてしまう。
- 田端洋司(玉森裕太)
- 長原支店融資課で勤務するスタッフ。西木らと共に現金紛失事件の真相を探る。
映画『シャイロックの子供たち』のあらすじ(ネタバレなし)
東京第一銀行、長原支店。忙しくも日々の業務をこなしていたその銀行で、ある日重大な事件が起きた。なんと、100万円もの現金が紛失したのである。その事件の真相を解決する探偵役として白羽の矢が立ったのは、長年お客様係として勤務する西木雅博。同僚の北川、田端と共に事件の調査に乗り出した西木。しかし、会社に属するのは超パワハラ上司や出世コースから外れた店長、嫌われ者の本部検査部など一癖も二癖もある人物ばかり。様々な困難に見舞われながらも、一行は徐々に事件の真相に近づいていく。そして、調査を進めていく上で判明した事実は、メガバンクを根底から揺るがしかねない、あまりにも大きな秘密だった。
映画『シャイロックの子供たち』の感想・評価
池井戸潤原作
出せば売れる。それが作家、池井戸潤である。発表した作品はもれなく大ヒット、さらにはメディア化という、まさに飛ぶ鳥を落とす勢い。そんな彼が手がける作品は最新作同様、銀行を舞台にしたものが多い。『アキラとあきら』、『花咲舞が黙ってない』、そして、伝説の作品となった『半沢直樹』などもそうだ。圧倒的リアリティで描かれる池井戸作品。そのリアリティは一体どこからくるのだろうか。実は池井戸は作家に転身する前、三菱銀行で勤務していた経歴を持つのだ。その時の実体験を基に執筆されているため、彼のストーリーには自然と説得力が増すのであろう。勿論銀行以外にも様々ジャンルで名作を残しているが、まさに本作には彼の得意中の得意。池井戸潤の真骨頂を見届けよう。
銀行と池井戸潤
これまで数多くの作品を発表してきた作家、池井戸潤。次々と発表作がメディア化されている彼だが、実は最新作の原作が発表されたのは2006年と、かなり時間が経っているのだ。実は池井戸にとって、本作は非常に意味のある作品。それまで池井戸作品は、ビジネス関連所のコーナーに書籍が並べられるような、いわゆる『お堅い』ものだった。元銀行員が描くあまりにもリアリティのある作風がそうさせたのかもしれない。しかし、より多くの人に作品を楽しんでもらいたい、と池井戸が力を入れたのがキャラクターの描き方。『読者が感情移入できるキャラクター』を目指して作られた作品こそ本作なのだ。後々の池井戸作品の基盤となった作品。本作を見ずに、池井戸作品は語れない。
怪演、阿部サダヲ
最新作の主演を務めるのは俳優阿部サダヲ。主演、助演のどちらも務めることのできる貴重な俳優であり、あらゆる作風に見事に溶け込むことこそが阿部サダヲの大きな魅力。いい意味で、俳優としての主張が強すぎないのであろう。元々はどちらかというと童顔な、素朴な日本らしい顔立ちをした阿部サダヲ。そんな外見からか、どこか頼りのない情けない役柄を演じることも多い。しかし、彼の本当に素晴らしい側面は、時折垣間見える狂気。元々の顔立ちとのギャップがあまりにも激しく、見ている者も思わず目を奪われてしまうのだ。その高い演技力から、どんな役柄でも見事にこなしてきた阿部サダヲ。果たして本作では、彼のどんな側面が見られるのだろうか。
映画『シャイロックの子供たち』の公開前に見ておきたい映画
アキラとあきら
前述したように、池井戸潤の真骨頂、それが銀行を舞台とした作品である。数ある作品の中でも、最近映像化された作品が本作。本作でも銀行を舞台に物語が進行していく。2006年より『問題小説』にて連載が始まり、2017年にはテレビドラマ化、2022年には映画版が製作された大人気作である。主人公は二人、山崎瑛と階堂彬。かたや大企業の御曹司、かたや零細工場の息子という立場の全く異なる2人の『アキラ』が日本有数のメガバンクで出会う。熱い思いを抱く同期として、特にはぶつかり合いながら互いを高め合っていく二人。しかし、取り巻く環境が二人を大きく翻弄していく。池井戸作品初となるW主人公の作品。
詳細 アキラとあきら
空飛ぶタイヤ
数多くある池井戸潤のメディア化作品。その多くはテレビドラマシリーズであり、意外なことに映画化作品は最新作を含め4作のみ。そして、その記念すべき1作目こそが本作である。2018年に執筆された作品を、今では既に芸能界を引退している長瀬智也主演に実写化。主人公は中小運送会社の経営者である赤松徳郎。ある日、彼の会社が持つトラックがタイヤの脱落事故を起こしてしまう。死者を出し、社会的に大バッシングを受けることとなる赤松。しかし、彼は整備不良が原因ではなくトラックの販売元にそもそもの問題があったのではないかと睨む。そして、大会社に対して挑戦状を叩きつけるのであった。
詳細 空飛ぶタイヤ
死刑にいたる病
本作の主演を務める阿部サダヲは、1992年にそのキャリアをスタートさせ、今では芸歴30年を迎えるベテラン俳優となった。バンド『グループ魂』のボーカルも務めるなど、その活動は多岐に渡る。そんな彼の俳優としての一面を形容するに最も相応しい言葉は『個性的』であろう。『舞妓Haaaan!!』のようなギャグに全振りした作品や、最新作のようにどこか狂気をも感じさせる謎多きキャラクターなど、幅広い役どころを見事演じきっている。本作は、そんな阿部サダヲの狂気側の側面を感じることのできる作品。まずは映画の宣伝ポスターからして印象的。光が消えた目でうっすら微笑む阿部サダヲの姿は、怖いと大きな反響を呼んだ。24人をも手にかけた連続殺人鬼。彼から届いた一件の冤罪証明が、全てを狂わせていく。
詳細 死刑にいたる病
映画『シャイロックの子供たち』の評判・口コミ・レビュー
『シャイロックの子供たち』
銀行員のお仕事ムービーとして興味深い。後半のちょっと現実味のないシーンや展開も阿部サダヲのコミカルなキャラのおかげであまり気にならず、テンポ良く最後まで引き込まれるように観た。池井戸潤原作作品にハズレ無し。橋爪功、柄本明のいぶし銀の演技対決も見どころ。 pic.twitter.com/V8RANUe0AO
— Hidezou (@hidezou777) February 22, 2023
シャイロックの子供たち
こういう警察ではない人達がチームで巨大犯罪に挑む物語は熱いな。
伏線回収も含めて次々と真実が浮かみ上がってくるので展開に違和感なく納得できるし、笑える所もあるので見やすい。
理不尽な金銭に翻弄される者達による、まさに「倍返しだ!」な大逆転劇は爽快であった。 pic.twitter.com/AeTseGXSou— 倉光勇人(くらみゆうと) (@7cWPEQn7hNOA6Np) February 18, 2023
『シャイロックの子供たち』
池井戸潤原作、とある銀行の支店での不正融資と消えた100万円を巡る金と欲の人間ドラマで、出来は悪くないが面白くはない。この手のドラマに必要なケレン味や演出の工夫が皆無であり、物語のスケールの小ささも相まってどうにも満足感に欠くのが正直なところ。 pic.twitter.com/RIa2k79eHj— Chinese Coffee (@ChineseCoffee) February 21, 2023
映画『シャイロックの子供たち』のまとめ
前述したように池井戸潤作品の人気は高い。リアリティがあり作りこまれたストーリー、豪華なキャスト陣。池井戸潤な原作なのであればとりあえず見てみよう、という人も少なくはないだろう。本作もそんな期待に間違い無く応えてくれる作品に仕上がっている。監督は『空飛ぶタイヤ』で既に実績を残している本木克英であるし、阿部サダヲや上戸彩、柳葉敏郎とキャストも豪華。まさに、成功を約束された作品といってよいだろう。ただ一つ懸念事項を挙げるとすると、本作が小説版とは異なるオリジナルな展開を迎えるという点。オリジナル登場人物も登場。大人気作を改変するという、高すぎるハードルを超えることはできるだろうか。
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