この記事では、映画『街の上で』のあらすじをネタバレありの起承転結で解説し、この映画の疑問や謎をわかりやすく考察・解説しています。
映画『街の上で』の作品情報
出典:U-NEXT
製作年 | 2019年 |
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上映時間 | 130分 |
ジャンル | ヒューマンドラマ |
監督 | 今泉力哉 |
キャスト | 若葉竜也 穂志もえか 古川琴音 萩原みのり 中田青渚 |
製作国 | 日本 |
映画『街の上で』の登場人物(キャスト)
- 荒川青(若葉竜也)
- 下北沢の古着屋に勤めるアラサー男子。行動範囲はほぼ下北沢に限定されており、行きつけの古本屋、カフェ、ライブハウス、バーは全て下北沢にある。
- 川瀬雪(穂志もえか)
- 青と付き合っていたが、他の男と浮気していた。自分の誕生日に、浮気が青にばれ、開き直って青に別れを切り出す。
- 田辺冬子(古川琴音)
- 青の行きつけの古本屋の店員。
- 高橋町子(萩原みのり)
- 美大で映画製作を学んでいる。卒業制作の映画に、青に出演して欲しいと依頼する。
- 城定イハ(中田青渚)
- 高橋の映画のスタッフ。青に興味を持ち、打ち上げで青に声をかける。
映画『街の上で』のネタバレ・あらすじ(起承転結)
映画『街の上で』のあらすじ【起】
荒川青は、下北沢の古着屋で働くアラサー男子。彼女の雪の誕生日に、雪の浮気が発覚した。雪は青とは別れたいと言うが、青は「浮気された上に、ふられるなんてとんでもない。絶対に別れない」と宣言した。
雪は、それなら自分は浮気相手と付き合うから、青は勝手に、自分とまだ付き合っているつもりでいればいいと切り捨てた。
翌日青は、勤め先の古着屋で、喧嘩をする男女を接客する。2人は別れたカップルで、男性が新たに好きになった相手に告白するときに着る服を、元カノである女性が一緒に選んでいるのだという。女性が「こんなのおかしい」と怒り悲しむのに対し、男性は「告白してふられたらまた君と付き合うかも」となだめる。
青は一人でライブを見に行った後、行きつけのバーに立ち寄る。小説を書いていると言っていた常連客の五叉路が、今は舞台役者をしていると聞き驚く青に、マスターが、雪から「青とは別れたのに、青がまだ連絡してきて困っている」という相談を受けていると話し始め、青はショックを受けつつ、怒りがこみあげてくるのを感じた。
映画『街の上で』のあらすじ【承】
青がよく行く古本屋の元店主・カワナベが亡くなった後初めて、青は古本屋を訪れた。
青が店番をしている田辺と世間話をしている流れで、田辺が、以前青が音楽をやっていたことについて言及し、恥ずかしさからパニックになった青は、田辺とカワナベの不倫の話題を口にしてしまう。不快感をむき出しにした田辺に、その場では謝れなかった青は、後で古本屋の留守電に謝罪のメッセージを残す。
青の勤める古着屋に、美大で映画を撮っているという高橋が訪れ、青に、高橋の映画に出演してほしいと依頼する。演技は出来ないし台詞も覚えられないからと断る青に高橋は、台詞はなく、ただ本を読んでいるだけでいいからと脚本を託し、去る。
青は行きつけのバーで、五叉路から「映画出演の依頼を断るのは、愛の告白を断ることだ」と説得され、出演を決める。
翌日青は古本屋に行き、改めて田辺に謝罪。田辺はそれを受け入れ、青の映画出演を応援する。
高橋の映画には、雪が大ファンだった俳優・間宮も出演していた。青は緊張から不自然な演技しか出来ず、出演シーンを全てカットされてしまう。
映画『街の上で』のあらすじ【転】
青は映画製作の打ち上げに誘われ、参加したものの、青の演技に対する批判や、スタッフ同士の口論が聞こえてきて、居心地の悪さを感じた。
打ち上げに参加したことを後悔し始めた青の向かいに、スタッフの城定イハが座り、高橋の恋愛事情について話し始め、青はイハの話に興味を抱く。
打ち上げが終わり、スタッフたちは2軒目へ移動する。青も誘われたが断り、帰路に着こうとしていると、同じく2軒目への移動を断ったイハが追いかけて来た。
イハはごく自然な流れで青を自宅に誘い、お茶を飲みながら2人で今までの恋愛経験を語り合う。
青は雪が初めての彼女で、いざ男女の関係を持とうとしたときに上手く行かず、雪に叱られたことや、雪に浮気された上にふられたが、今でも雪を想っていることを打ち明け、イハは今までに付き合った男性は3人おり、1人目の束縛が不快だったこと、2人目のことをまだ好きで、3人目はそれほど好きではないけれど付き合ったことを打ち明けた。
イハと青の間には恋愛感情はないものの、一緒にいるときの居心地の良さと友情を、お互いに感じていた。
映画『街の上で』の結末・ラスト(ネタバレ)
雪は青と別れて間宮と付き合っていたが、自分の心の中の青への想いに気付き、間宮に別れを切り出す。間宮は雪と別れないと言い、雪はそのことをマスターに相談する。
青はイハの部屋に泊まったが、別々の部屋に寝て、何事もなく朝を迎えた。青が帰ろうとしたところに、イハの部屋の合鍵を持つイハの元カレが登場するが、イハの元カレは、青の姿を見るなり出て行った。
イハが青を送ると言い、2人で歩いていると、道の向かいから雪とマスターが一緒に歩いて来た。青は雪の新しい恋人がマスターだと誤解し、雪は、青とイハが付き合っていると誤解する。そこへ、イハの元カレがやって来て、青に「イハを幸せにしてくれ」と告げてイハの部屋の合鍵を渡そうとする。
混乱はあったものの、最終的には誤解が解け、青と雪はまだ想い合っていると分かる。
帰宅した青のもとへ、間宮と雪が訪れる。間宮は青に、雪にふられたと告げて去った。青は雪に、間宮を追いかけろと言うが、雪は青に「バカ。好き」と言う。
高橋の映画の公開初日、青と雪は、別れた日に食べかけたケーキを一緒に食べる。
映画『街の上で』の考察・解説(ネタバレ)
映画『街の上で』に気まずいシーンがあるのか?
映画『街の上で』には、登場人物間の繊細な人間関係や感情のすれ違いから生まれる、いくつかの気まずいシーンが存在します。特に主人公の荒川青は、周りの人々とのコミュニケーションにおいて、自分の想いをうまく伝えられずに誤解を招いたり、戸惑いを覚えたりする場面が目立ちます。
例えば、青が好意を抱く女性との会話がぎこちなく進んだり、友人との対話がかみ合わずに微妙な空気が流れたりするシーンがあげられます。また、恋愛感情をめぐるやりとりの中で、相手が予想外の反応を示したり、言葉に詰まったりすることで、観客をハラハラさせるような気まずさが生み出されています。
これらのシーンは、登場人物たちの不器用さやコミュニケーションの難しさを如実に表現しており、私たち誰もが日常で経験しうる「気まずさ」を巧みに描き出しているのです。こうした些細なズレや気まずさは、映画全体の魅力の一端を担っており、観る人の共感を呼ぶと同時に、思わず笑みを誘うような場面にもなっています。
映画『街の上で』に出てくるイハがどんな人物であるのか?
『街の上で』に登場するイハは、主人公の荒川青と関わりを持つ女性の一人であり、とてもユニークで謎めいた存在として描かれています。彼女は青の日常に突如として現れ、彼に興味を抱きながら交流を深めていきます。
イハは自分の感情を率直に表現するタイプで、内向的で不器用な青に対して積極的に話しかけ、彼の内面にある想いを引き出そうとします。彼女の明るくて飾り気のない性格は、青にとって新鮮な刺激となり、自分自身と向き合うきっかけを与えてくれる存在なのです。
イハは青との会話の中で、時にからかうような言動をとったり、思いがけない質問を投げかけたりして、彼を戸惑わせることもあります。しかしその根底には、青のことをもっと知りたいという純粋な思いが潜んでいるのです。
また、イハの存在は映画全体を通して、日常に潜む人と人とのつながりや、感情の機微を象徴するものとなっています。彼女との出会いは、青が自分の殻を破り、他者との向き合い方を模索するきっかけとなり、物語の展開に欠かせない役割を果たしているのです。
映画『街の上で』のマスター役を演じる小竹原晋について
『街の上で』でマスター役を務める小竹原晋は、実際に「ウミネコカフェ」のオーナーを務める一般人であり、プロの俳優ではありません。映画の中では、主人公の荒川青が立ち寄るカフェの店主として登場し、青や他の登場人物たちと日常的な会話を交わします。
小竹原の演技は非常にナチュラルで、演技をしているようには見えません。これは彼が本業でカフェを営んでおり、映画の中のマスター像が彼自身とよく重なっているためでしょう。彼の役柄は物語の中で特別な意味を持つわけではありませんが、そのリアルな存在感によって作品全体の雰囲気が和らげられ、観客に親しみやすさを感じさせます。
監督の今泉力哉が、日常のリアリティを追求するために、わざわざ俳優ではなく実在のカフェ店主である小竹原を起用したことも、この映画の独特な味わいを生み出す一因となっています。彼が画面に登場することで、作品の舞台である下北沢の町並みがより生き生きと感じられ、現実と虚構の境界があいまいになっていくのです。
映画『街の上で』のイハが最後についた嘘がどんなものであるのか?
映画の終盤、イハは主人公の荒川青に一つの嘘をつきます。彼女は青に対し、「じつはずっと前からこの下北沢に住んでいて、街のことをよく知っているの」と言うのです。しかし実際のところ、イハがこの街に長く住んでいたわけではなく、青との出会いを機に下北沢のことを知るようになったのが真相でした。
イハがこの嘘をついたのは、青にもっと自分のことを身近に感じてほしい、彼との距離を縮めたいという思いからでした。この街に馴染んでいる自分をアピールすることで、青との共通の話題を増やし、親密さを深められるのではないかと考えたのです。
彼女の嘘は、悪意から出たものではなく、青との関係性を深めたいという真摯な気持ちに基づいています。しかしその一方で、嘘をつくことで彼女自身の孤独感や、誰かに認めてもらいたいという内面が浮き彫りになってもいます。青はイハの本心には気づかず、彼女の言葉を額面通りに受け取りますが、観客には彼女の胸の内にある複雑な感情が伝わってくるのです。
このイハの嘘は、二人の関係性に潜む微妙なずれを表現しており、物語に深みを与える重要な要素となっています。それは同時に、誰もが持つ孤独や承認欲求の表れでもあり、観る者の心に静かに訴えかけてくる印象的なシーンなのです。
映画『街の上で』は、なぜつまらないと言われているのか?
『街の上で』が「つまらない」と評される理由の一つに、映画の展開のペースが非常にゆったりとしていて、大きな事件や劇的な展開に乏しいことが挙げられます。下北沢の街を舞台に、主人公の荒川青が様々な人々と出会い、日常の中で少しずつ変化していく姿が描かれますが、激しい起伏のあるドラマやアクションシーンはほとんど登場しません。
また、この映画で扱われるテーマも非常に日常的なものです。共感できる人にとっては興味深く感じられる一方、非日常的な刺激を求める観客には退屈に映ることもあるでしょう。登場人物たちの会話も、些細な出来事や感情のすれ違いを巡るものが多く、「一体何を伝えたいのかわからない」と感じる人もいるかもしれません。
さらに、『街の上で』はキャラクター同士の繊細な関係性や、感情のニュアンスを丁寧に描写することに重点を置いています。こうした細やかな表現に魅力を感じない観客にとっては、物語の進行が遅く感じられ、明確な目的が見えにくいと感じる可能性があります。
このように、映画の特徴である「日常のリアリティ」や「淡々とした描写」が、逆に「つまらない」と感じる人にとっては、魅力というよりも退屈さの原因になってしまうこともあるのです。作品のテイストや表現方法が、観客の嗜好や期待とずれてしまう場合、「つまらない」という評価につながるのかもしれません。
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