映画『転校生 さよならあなた』の概要:『転校生 さよならあなた』は、映画『転校生』を大林監督自身がリメイクした作品。舞台を尾道から信州に移し、作品後半部分のストーリーは原作・前作の映画とも違う展開となっている。
映画『転校生 さよならあなた』 作品情報
- 製作年:2007年
- 上映時間:120分
- ジャンル:コメディ、青春
- 監督:大林宣彦
- キャスト:蓮佛美沙子、森田直幸、清水美砂、厚木拓郎 etc
映画『転校生 さよならあなた』 評価
- 点数:65点/100点
- オススメ度:★★★☆☆
- ストーリー:★★★☆☆
- キャスト起用:★★★★★
- 映像技術:★★★☆☆
- 演出:★★★☆☆
- 設定:★★★☆☆
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映画『転校生 さよならあなた』 あらすじネタバレ(ストーリー解説)
映画『転校生 さよならあなた』のあらすじを紹介します。※ネタバレ含む
映画『転校生 さよならあなた』 あらすじ【起・承】
中学三年生の斎藤一夫は、両親の離婚で母と暮らすことになり、長年暮らした尾道を離れて母の故郷である信州に転校することになった。一夫も幼少期を信州で過ごし、懐かしい場所でもあった。
転校初日、幼馴染の斎藤一美と再会する。一美はクラス全員の前で幼いころの一夫の恥をあれこれと語り、結婚まで約束した仲だと話し、転校早々一夫はからかわれることになった。一美は空想が好きで、あることないこと自分の物語を語るらしい。
その日の帰り、一美は自宅の蕎麦屋に一夫を誘う。一美は思い出を次々と語るが、一夫はあまり覚えていない。そこで、一美は思い出の場所の一つである、さびしらの水場へ一夫を連れていく。
ところが、水を飲もうとしたところで二人とも水の中に落ち、もがいて水から出たときにはお互いの体が入れ替わってしまっていた。
戻り方もわからず、一美の中に入った一夫は一美の家に、一夫の中に入った一美は一夫の家で暮らし始める。
周囲から見て一美は明らかにがさつになり、一夫はなよなよした。それぞれの家族は不審に思っただけだったが、一美の恋人である山本は不信感を募らせていった。
映画『転校生 さよならあなた』 結末・ラスト(ネタバレ)
慣れないながらも二人は上手く生活していくが、二人そろって問題を起こすことが多く、二人の母親は一緒にいるのはよくないとして二人を引き離した。
それでも電話では相変わらずやりとりをしていた。
そんな時、一夫は体調を崩してしまう。一美は生理前の不調だと思い、初めて生理を経験するから特に辛いのだと考える。
しばらくして学校行事で一泊二日、温泉に出かけるが、ここで一夫は倒れてしまう。心配する一美に、山本は自分が二人の入れ替わりに気付いていることを告げる。
一夫の体調は回復することなく、病院ではあと二週間もつかどうか、と告げられる。母親によって一美が見舞うことはできなかったが、山本の協力もあって面会することができるようになる。
着実に弱っていく一夫のために、一夫の母、そして尾道にいる一夫の恋人・アケミを呼び、彼を見舞うように頼む。
逢いたい人と面会できた一夫は、山本・アケミ・一美に手伝ってもらい病院を抜け出す。途中からは一美と二人であちこちをめぐり、お互いが想い合っていることを確認する。
一夫は最後に、さびしらの水場へ行くことを望んだ。また二人で水を飲もうとすると、足をすべらせて水に落ちてしまう。水から上がると、二人は元通りになっていた。
一美は、自分の体で自分が死ぬのが正しいといって、自分の死を受け入れながら死んでいった。
それからしばらく。一夫は、世界中の物語を知るために、海に行くことを決意するのだった。
映画『転校生 さよならあなた』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)
映画『転校生 さよならあなた』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む
リメイクする必要はあったのか
大林監督自身が、21世紀の『転校生』としてリメイクしたということだったので期待していたが、後半のオリジナル展開を除いて新しいと思うことがなかった。
というのも、大林監督作品は独特の世界観があり、どの時代であるのかがちょっとわかりにくい。どの作品でも大体そうで、古い町並みが多い。
背景だけではない。設定は確かに21世紀で、一美や一夫は携帯を持つ現代っ子なのだが、どことなく古臭い。家の風習なのか、一美は家では着物を着ている。山本も胴着のような服装。現代っぽいものがほとんど出てこないのである。
古臭さを助長する最たるものが、しゃべり方だ。登場人物全員が、大林監督作品の80年代そのままのしゃべり方をしているのである。もう最近の作品として観ていると違和感しかない。
女らしさ・男らしさは、男女入れ替わりものなので強調せざるを得ないのはわかるが、度が過ぎているように思う。
『時をかける少女』の原田知世演じる主人公はまるで大正時代の少女のようだと評されたらしいので、もしかしたら、これは監督の意図的な指定かもしれない。
一美の空想壁、「物語」はこの作品のキーワードである。この物語の中では、15歳で死んだ一美がずっとその姿のまま生き続ける。現実離れした時代意識や口調によってフィクションであることを印象付け、「物語」性を強調したのかもしれない。
そういった演出は素晴らしいと思うが、時代が古臭いのにこれを21世紀の若者に向けて発信する意味があったのかが少し疑問として残る。
オリジナル版の『転校生』がすごく好きなので、リメイク版の展開に期待して鑑賞しましたが、個人的にはどちらも違う良さがあって、同じテーマなのに異なる結末が用意されているのもすごく面白いなと感じました。
原作の『おれがあいつであいつがおれで』を読んでいても、今作は肯定的に受け入れられるし現代っぽさと良い意味での古さや落ち着きが共存しているのがすごく素敵でした。
派手な演出はありませんが、逆にそれがリアルに感じられて現実にはありえないだろうなと思いながらもストーリーにグッと入り込むことが出来ました。(女性 30代)
映画『転校生 さよならあなた』 まとめ
大林監督作品は、ストーリー展開はわかりやすいが、細部にいろんな隠しネタがあるので油断ならない。この作品もきっとリメイクする理由はあったのだろう。
旧作『転校生』や、過去の大林作品のファンであれば、楽しめるところはたくさんある。石田ひかりをはじめとして、大林作品で見かけたことのある俳優がいろんなところに登場する。それを見つけるのも一つの楽しみ方である。
内容は、旧作と異なりヒロインが死ぬという終わり方。一美は15歳のまま永遠に生き続ける。実はこれって、他の大林作品でも同じことが言えるような気がする。ヒロインが死ぬというわけではないが、映画の中の、物語の中のヒロインは永遠にその姿のまま生き続けているのである。
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