映画『僕だけがいない街』の概要:過去に戻る“リバイバル”という能力を使い、殺された母を助けるため、小学生に戻って全ての元凶の連続誘拐殺人事件に立ち向かう青年の姿を描いた。アニメ化もされた、三部けい原作の漫画を基にしている。
映画『僕だけがいない街』の作品情報
上映時間:120分
ジャンル:SF、サスペンス、ミステリー
監督:平川雄一朗
キャスト:藤原竜也、有村架純、鈴木梨央、中川翼 etc
映画『僕だけがいない街』の登場人物(キャスト)
- 藤沼悟(大人:藤原竜也 / 小学生:中川翼)
- 売れない漫画家の青年。ピザ屋でバイトもしている。事故や事件が周囲で起こると、それを止めるまで直前にタイムスリップしてしまうという能力を持ち、本人は“リバイバル”と呼んでいる。なお、本人の意思とは関係なく戻ってしまう様子。他人との関わりを避けて生きていたが、愛梨にそれを指摘され、親しくなっていく。仲が良かった白鳥潤が犯人とされていた、過去の誘拐殺人事件の事は忘れていた。母を救うため、過去にリバイバルして雛月加代を助けようと奔走する。
- 片桐愛梨(有村架純)
- 悟と同じピザ屋でバイトをしながら、写真家を目指すサバサバした性格の女性。親戚の家に居候している。幼いころ、父親が万引きの疑惑をかけられて両親は離婚している。それがきっかけで、他人を信じたいと強く思うようになった。悟がリバイバルによって事故を防ごうとした姿を見て、悟の事を気に掛けるようになる。
- 藤沼佐知子(石田ゆり子)
- 悟の母。悟の父親とは離婚していて、女手一つで悟を育て上げた。北海道の田舎で暮らしているためか、戸締りに注意することが少なく、悟のアパートでは何度も注意される。誘拐殺人事件のターゲットだったかもしれない悟から、事件についての記憶を必死に忘れさせた。
- 澤田真(杉本哲太)
- 報道局で働いていた頃の佐知子の同僚。今は冤罪事件を中心に調べている。警察に追われる身になった悟に、誘拐殺人事件の資料を見せるなどの手助けをする。
- 雛月加代(大人:森カンナ / 小学生:鈴木梨央)
- 悟の小学生時代のクラスメイト。文集に書いた「私だけがいない町」が、悟の友人の賢也には好評だった。悟と同じ母子家庭だが、母親の恋人が頻繁に出入りしていて、虐待を受けている。一人でいることが多い。連続誘拐殺人事件の最初の被害者だった。
- 八代学(及川光博)
- 悟の小学生時代の担任教師。雛月が虐待を受けていることに気付いていて、児童相談所に働きかけてはいるがうまくいっていない。小学生の悟に何かと手助けをし、勇気づけたりもする。
映画『僕だけがいない街』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『僕だけがいない街』のあらすじ【起】
2006年。
売れない漫画家の藤沼悟には、事故や事件が起こると、その直前に戻れるという特殊能力があった。
悟はそれを“リバイバル”と呼んでいた。
バイト中にリバイバルが起こり、事故を防ごうとする。
しかし悟は怪我をしてしまった。
バイト先の同僚の片桐愛梨は、その現場を目撃。
その日をきっかけに、愛梨と悟は親しくなる。
心配した母の佐知子が北海道からやって来て、悟のアパートに滞在することになった。
佐知子と買い物へ行った帰り、リバイバルが起こる。
しかし悟は何が起こるのかがわからず、おかしな事がないか、佐知子に尋ねる。
佐知子は誘拐事件を未然に防ぎ、しかもその犯人に心当たりがあった。
偶然、愛梨と会った佐知子と悟。
佐知子は愛梨を夕食に誘った。
愛梨が帰った後、悟が子供の頃に近所で誘拐事件があったと話す佐知子。
悟も標的だったため、必死にそれを忘れさせたのだという。
調べると、悟の地元で連続少女殺人事件があった記録が見つかる。
犯人は、悟と面識のあった白鳥潤。
佐知子は知り合いに連絡し、潤の冤罪の可能性を語った。
その後、佐知子はアパートで殺される。
映画『僕だけがいない街』のあらすじ【承】
バイトから帰り、包丁で刺された佐知子を発見する悟。
通報後、犯人らしき人物が逃げていくのを見つけた悟は後を追う。
しかし、佐知子の体を抱えた時についた血のせいで、警察から追われる立場になってしまう。
逃げる途中、リバイバルが起こる。
1988年、小学生の頃に戻っていた悟。
佐知子を救うためのリバイバルだと思った悟は、誘拐殺人事件の最初の被害者、雛月加代を救えばいいと気付く。
悟は佐知子に頼み込み、誕生日会を開いてもらうことにした。
そして加代を誕生日会に招待した。
加代が殺されたのは、悟の誕生日の3月2日だったのだ。
しかし加代は、母親とその恋人から虐待を受けていた。
それを知った悟は、担任の八代に相談。
虐待に気付いていた八代は、児童相談所に連絡していたが、いい結果は得られていなかった。
八代から、加代も同じ誕生日だと知らされた悟は、サプライズで加代の分もお祝いをする。
加代は悟に手袋を編んでいて、次の日渡す約束をした。
しかし3月3日、加代は殺されてしまった。
2006年に戻った悟だったが、状況は何も変わっていなかった。
通りかかった愛梨に助けられ、部屋にかくまってもらう事になる。
映画『僕だけがいない街』のあらすじ【転】
悟をかくまっている事が店長にバレるが、愛梨は店長の携帯を壊して通報を阻止。
悟と愛梨は河川敷に逃げた。
愛梨は、悟に携帯を預けて、一度部屋に戻る。
しかし、愛梨の家は放火される。
佐知子の携帯から、愛梨の携帯に届いた謎のメールを見て、愛梨の元へ急ぐ悟。
そして、店長と共に愛梨を助けた。
佐知子が残したメモから、佐知子の元同僚の澤田の存在を知った悟。
佐知子と最後に電話をしていた澤田は、白鳥潤は冤罪だと信じていて、悟も真犯人にはめられたのだろうと語る。
そして愛梨の携帯に届いたメールを見て、愛梨も狙われていると指摘する。
病院を抜け出した愛梨は悟を呼び出し、真犯人かもしれない“西園”の存在を話す。
しかし愛梨は警察に尾行されていて、悟は逮捕される。
そこで1988年3月1日に戻った悟。
賢也に加代の事を打ち明け、助けたいと相談する。
賢也は悟の変化にも気付いていたが、正義の味方になりたいという悟の言葉を、そのまま受け入れた。
賢也は隠れ家を用意し、悟は加代を隠した。
再び児童相談所に連絡した八代は、加代を助けられそうだと言う。
加代は、隠れ家に侵入者が来た事を打ち明ける。
そこには犯人の荷物が隠されていた。
映画『僕だけがいない街』の結末・ラスト(ネタバレ)
佐知子にすべてを打ち明け、藤沼家で休んだ加代。
翌日、加代は児童相談所に保護された。
しかしリバイバルは終わらない。
そして、真犯人を止めなければ終わらないと気付く。
藤沼家に澤田が訪ねて来る。
八代が児童相談所に何度も連絡していた事が嘘だとわかり、他の少女殺害事件の事も教えられる。
悟は澤田に、隠れ家にあった犯人の荷物を教える。
クラスの女子を、アイスホッケー部の応援に誘う八代を見かけ、悟も応援に行く。
女子の姿が見えなくなり、探していると八代が話しかけてきた。
八代が殺人鬼だと気付いていた悟は、本人に確かめる。
八代は犯行を認めるが、橋の上から悟を突き落とした。
2006年、有名漫画家になっていた悟は、病院で目覚めた。
悟の前には、大人になった加代がいた。
佐知子も無事だった。
愛梨は悟の事を知らなかったが、河川敷で偶然再会した。
弁護士になっていた賢也に頼み込み、八代について調べてもらう悟。
婿養子に入り、市議会議員の西園になった八代は、少女を殺し続けていた。
少女を誘拐しようとした八代を止め、話をする悟。
八代と悟はもみ合いになり、悟は刺されて死んだ。
そして八代は逮捕された。
映画『僕だけがいない街』の感想・評価・レビュー
今作の藤原竜也の演技は脚本に合わせた自然な演技で、全く違和感を感じさせなかった。共演の有村架純も自然で、2人のシーンは安心して観ることができた。
過去に戻って事件の真相を探るというSFとミステリーを掛け合わせる難しいテーマだったが、物語として上手くまとまっていてわかりやすい印象を受けた。
ひとつ残念なポイントとしては真犯人が安易に予想できてしまうという点だ。この手のミステリーは最後まで犯人がわからないという期待を持って観てしまう。そこを上手く裏切ってくれれば完璧だったのだが、今作では無かった。(男性 20代)
漫画で大人気だった作品の実写映画化。事件や事故が起きる前にそれを防ぐため、時間が巻き戻るという現象を度々体験している主人公。母親が殺されたその日に自分の小学生時代にタイムスリップしてしまう。タイムスリップ系の映画は大抵内容が似たり寄ったりだが、この映画はまた新たな設定だった。藤原竜也の役柄や予想できない展開にかなり引き込まれてしまった。
小学生の主人公が真犯人を追い詰めていく展開にドキドキし、真犯人と二人っきりになるシーンではヒヤヒヤさせられた。こんなにも次の展開が気になる映画はほかにないと思った。(女性 20代)
アニメやドラマでは12回分の作品を映画1本にするとダイジェスト版のような作品になることも少なくない気がするが、この作品は非常に良くまとまっていると思う。脚本が良いのだと思う。ただラストは残念ながら好みではない。ラストまでは良くできてるなぁと思っていたので余計に残念。映画は圧倒的にハッピーエンドの方がいいと思う。甘くない現実は日常で間に合ってるので映画でまでそんなもの観たくないと思うのだ。悲劇にするなら相当の必然性が欲しいが、この話にそれがあったとは思えないのでそこだけは残念。(男性 40代)
原作は名作なのは言うまでもないが、映画も途中までは、まあ悪くはない。ただ、原作やアニメとこの映画を比較した時にどちらが面白いかと言われたら間違いなく前者だ。
その理由としてラストの変更。原作が気持ちよくハッピーエンドを迎えるのに対して映画はそうではない。尺の都合で原作通りに話が進まないのは分かるが、これはちょっといただけない。できないなら、安易に実写化しないでいただきたい。薄っぺらい内容にするくらいなら2部作にするとかできなかったのか。まあ難しいか。(男性 30代)
みんなの感想・レビュー
この作品は脚本が良い。
タイムトラベラーを描いているのだが、突然どこかへ戻ると言うより違和感を探すというリアリティーさが面白いのだ。
藤原くん演じる漫画家を目指すアルバイトの青年が、色んな違和感をもとに過去に帰り事件や事故を防ごうとする。
ある日母親が刺殺され、幼少期の頃まで戻ると言う斬新なアイデア。
人生を丸々失敗してしまった男子が、昔に戻り親に虐待されている同級生を助けるところから始まる。
しかし失敗してはまた殺され、また戻りの繰返し。
やがて見えてくるラストはやはりという感じであるが、そこは脚本が良かったので許すことができる。
本当は大どんでん返しのようなものがあると、サスペンスとしても上質であったがそこが勿体無い。
そのまま教師が犯人だとは何ともありがちでそこだけ残念であった。
藤原くんの出ている映画はどれも舞台演技で大袈裟な演技が多い。
上手いのだがそのオーバーリアクションに映画の内容が頭に入ってこないこともあったりする。
しかし本作はかなり抑えた演技で作品に溶け込んでいる。
彼の実力だろう。
有村架純との掛け合いも自然で、彼だけが目立っているということもなくすんなり作品に入り込める。
特に透明度のある彼女がふんわりと彼の演技を包み込んで中和させている、そんなギブアンドテイクな感じが見ていても入り込みやすい。
見終わった後にごまかされる映画だ。
恐らく内容は科学的に矛盾点や、シナリオ的に不十分な箇所もあるのかもしれない。
しかしこの時間軸の移動は想像を超えるリアリティーがある。
従来の作品の時間移動はもう少しSF要素が伴い、事件を描くには難しい。
現実的なサスペンス性を追求するのにはファンタジー感も邪魔をしてどっちつかずになり得ることもあるのだ。
だがその否定的な雰囲気を一気に壊し、上質なサスペンスを作り込んだこの脚本はかなりクオリティーが高い。
ただ娯楽作品として純粋に楽しむことが出来た作品である。