この記事では、映画『テオレマ』のあらすじをネタバレありの起承転結で解説しています。また、累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家が、映画『テオレマ』を見た人におすすめの映画5選も紹介しています。
映画『テオレマ』の作品情報
出典:https://video.unext.jp/title/SID0093971
製作年 | 1968年 |
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上映時間 | 98分 |
ジャンル | ヒューマンドラマ |
監督 | ピエル・パオロ・パゾリーニ |
キャスト | テレンス・スタンプ シルヴァーナ・マンガーノ アンヌ・ヴィアゼムスキー ラウラ・ベッティ |
製作国 | イタリア |
映画『テオレマ』の登場人物(キャスト)
- 訪問者(テレンス・スタンプ)
- ある日、突然ブルジョワ一家の屋敷にやって来た謎の青年。素性は一切不明だが、いつの間にか一家の屋敷に住み着いてしまう。説明不能な不思議な魅力によって住人たちを次々と虜にした後すぐに去っていく。
- パオロ(マッシモ・ジロッティ)
- 一家の主人でミラノの大工場の経営者。青年に魅了されたあと病に臥すが、彼の「施し」を受け開放に向かう。青年の来訪によって自分の中の何かが破壊されたと打ち明け、青年が去るとすべてを投げ打って心を解放する。
- ルチア(シルヴァーナ・マンガーノ)
- 一家の母。典型的などこのブルジョワ家庭にもいるような美しく教養のある女性だが、青年の来訪により抑圧されていた性を解放。青年が去ると、街に出て男を漁るようになる。
- オデッタ(アンヌ・ヴィアゼムスキー)
- 一家の娘。特に変わったところのない女学生。父親以外の男性を知らないと話すほどだったが、青年の手を引いて自ら部屋に導き処女を捧げる。青年が去った後、謎の硬直状態に陥り動けなくなってしまう。
- ピエトロ(アンドレ・ホセ・クルス)
- 一家の息子。オデッタと同じくどこにでもいるようなごく普通の高校生。青年との性的な邂逅を遂げたあと、突如アートに開眼し家を飛び出し、狂ったように抽象画の創作に没頭する。
- エミリア(ラウラ・ベッティ)
- 一家の使用人。訪問した青年に欲情してしまった自分を恥じて自殺を図るが、青年に救われる。
映画『テオレマ』のネタバレあらすじ(起承転結)
映画『テオレマ』のあらすじ【起】
北イタリアの大工業都市ミラノ。大工場主パオロが郊外に構える屋敷に、「明日着く」という発信人のない一通の電報が届いた。翌日、屋敷で催されたパーティの席に一人の見慣れない青年がいた。妻のルチアや娘のオデッタは誰だか気になるが、素性も分からないまま青年は当然かのように屋敷に住みついてしまった。
それからまもなく屋敷の住人たちに異変が生じる。まずメイドのエミリアが、青年の不思議な魅力に取り憑かれてしまう。突然彼に対して激しく欲情してしまったのだ。自分を恥じたエミリアはガス管を咥えて自殺を図るが、寸でのところで青年が止めに入り、彼女を優しく包み込んだ。
青年は一家の息子ピエトロの部屋で寝泊まりすることになる。夜、ピエトロは何故か性的衝動が抑えられなくなり青年のベッドに潜り込む。そして、青年はピエトロを温かく受け入れた。翌朝、別荘で猟犬と戯れる青年を見つめるルチア。彼女もまた青年に対してえも言われぬ欲望を感じてしまい、衣服を脱ぎ捨て誘惑。二人は体を重ねた。
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映画『テオレマ』のあらすじ【承】
次の日、パオロは早朝に目が覚める。息子の寝室を覗くと、青年とピエトロが一緒のベッドで寝ており奇妙な感覚に襲われる。そして、自分のベッドに戻るとルチアの身体をいつになく激しく求めた。それ以来、パオロは体調を崩して寝込んでしまう。しかし、青年と接する内に症状は快方に向かった。さらに、オデッタも青年に魅了され、自室に招き入れ彼に処女を捧げた。
パオロは青年とドライブに出かけた。そしてパオロは青年に語った。「君はまばゆい。こんなことを言うのは、私自身の道徳観、私自身の混乱のせいだ」と。
再び屋敷に電報が届けられる。エミリアから手渡された電報を読んだ後、青年は「明日発つ」と皆に告げた。去りゆく青年に一人一人最後の言葉を残した。ピエトロは「あなたは事物の秩序から僕をさらった」と話し、ルチアは「あなたを失うと全てが壊れる」と言った。オデッタは「あなたが去れば私の病気はひどくなる」と話し、パオロは「君は私を破壊した」と言った。エミリアも別れを惜しむ。
映画『テオレマ』のあらすじ【転】
青年がいなくなると、一家に激しい動揺が起きた。まずエミリアが屋敷を去り、故郷の村に帰る。彼女は村に着くなり、外のベンチに腰掛け断食を始める。それを見守る村人たち。やがてエミリアは奇跡を起こす。村人が連れてきた子供の病気を一瞬で治したのだ。しかし、一日中何も口にしないエミリアを心配して村人が声をかけると、生えている草を食べれば十分だとエミリアは答えた。
一方屋敷では、青年がいなくなったことを受け入れられないオデッタが、我を忘れたかのように家中をさまよっていた。その後、ベッドの上で体が硬直してしまい動かなくなる。医者にも手の施しようがなく、彼女は精神病院へ入れられてしまう。
ピエトロは突然絵画に目覚め、狂ったように抽象画を描き始めた。やがて家を出て行き、アトリエにこもり創作に没頭するようになる。「誰も書かないものを書かねば」と言って、彼はキャンバスに小便をかけた。
映画『テオレマ』の結末・ラスト(ネタバレ)
青年と交わり性の抑圧から解放されたルチアは、街へ出て色情狂のように若者を漁り始める。青年の面影を追い求め、路上で若い男を誘惑しては交わった。しかし、我に帰り虚しさを覚えたルチアは、魂の救済を求めて近くの小さな教会の中に消えていった。
村で奇跡を起こしたエミリアは、いよいよ神性を帯び空に浮かび上がった。その後、村の老婆に頼み、工事現場の泥地の中に自らを埋めさせる。「私はここに泣くためにきた。苦痛の涙ではない。苦痛の源ではない泉になる」と言い残して。
一方、パオロは工場をすべて労働者に譲り渡し、ミラノ中央駅の雑踏の中をうろつく。そして、ひとりの青年に視線を送ったあと、突然公衆の面前で全裸になった。人だかりができる中、ゆっくりと歩いて駅を去るパオロ。
草木一つない砂煙が吹きすさぶ荒野。パオロは、救いを求めるように天を抑ぎ、けたたましい叫び声を上げながら当て所なく歩き続けるのだった。
映画『テオレマ』の感想・評価・レビュー(ネタバレ)
美青年の来訪によって一家が次々と彼と肉体関係を結び、去った後には虚無と混乱に沈むという構図は衝撃的でした。特に、父がすべてを捨てて街を裸で彷徨うラストは、人間が社会的な役割を失った時に残るものは何かという問いを突きつけてきます。パゾリーニらしい宗教的寓話性と挑発が詰まった一作であり、難解ですが強烈に記憶に残る映画でした。(20代 男性)
最も印象に残ったのは、母や娘までもが美青年に心も体も奪われ、彼が去った瞬間に絶望の淵へ落ちていく姿でした。快楽の解放とその後の喪失を対比させることで、人間存在の虚ろさをあぶり出していたと思います。観終えた後は心地よさではなく、深い不安と問いが残り、これがパゾリーニの真骨頂なのだと実感しました。(30代 女性)
美青年はまるで神のような存在で、登場人物たちに生を吹き込んだかと思えば、消えた後には廃墟のような心しか残さない。特に息子が芸術に逃げ込み、母が欲望を持て余し、父は無一文で街に彷徨う姿には、文明と信仰が崩れ去る様子を重ねて見ました。美しい映像と寓話的展開が難解ながらも強烈でした。(40代 男性)
パゾリーニが描いたのは「愛」と「性」と「神」が等しく人間を破壊するというテーマだと感じました。娘の無垢さが彼との関係で狂気へと変わり、母の愛情は飢餓のように暴走し、父の社会的立場は無意味なものへ崩れ落ちる。寓話的でありながらも生々しい現実感があり、決して気楽に観られる映画ではありませんが、挑戦的な魅力に圧倒されました。(20代 女性)
青年が家を去った瞬間、全員の生活が破綻する流れは、「神の不在」に対する寓意のように感じました。彼の存在がもたらした一時の救済は幻想であり、人間の根本的な孤独は消えない。父が叫びながら砂漠を歩くラストは、あまりに象徴的で胸をざわつかせました。理解不能でありながら、心に刺さる映画でした。(50代 男性)
私はこの映画を「寓話」というよりも「実験」として観ました。観客を挑発し、理解不能なイメージで圧倒することで、映画の役割そのものを問い直しているように思えます。母や息子の変貌は不気味で、観客の倫理観を揺さぶります。特に、父が工場を放棄する場面は、資本主義批判の鋭さを感じました。難解ですが深い余韻があります。(30代 男性)
『テオレマ』は快楽と破滅を一続きに描く独特の映画体験でした。美青年の存在は神なのか悪魔なのか、その正体は語られないままですが、彼に触れた全員が不可逆的な変化を遂げてしまう。娘の心の崩壊や母の欲望の狂乱は観ていて痛々しく、しかし寓話としての美しさも感じました。パゾリーニらしい難解さと詩的映像が印象に残ります。(40代 女性)
一見するとスキャンダラスな物語ですが、実際は宗教的、社会的な寓話として成立している点がパゾリーニらしいと思いました。労働者の娘が聖女のように振る舞い、父がすべてを放棄して街に消える構図は、権力と信仰の崩壊を象徴しているようです。分かりやすいカタルシスはありませんが、観る者に強烈な問いを残す作品でした。(20代 男性)
青年との邂逅が全員にとっての「啓示」となり、去った後に彼らが無残に壊れていく流れは、まるで神話を観ているようでした。母の狂乱、息子の芸術への逃避、娘の沈黙、父の裸の彷徨。それぞれが人間の弱さや欲望を象徴していました。難解ながらも、美と破壊を同時に描くパゾリーニの力に圧倒されました。(50代 女性)
『テオレマ』はストーリーで楽しむというよりも、観客が意味を読み取ることを強制される映画でした。青年の存在をどう捉えるかで全く異なる印象を受けます。私は「神の試練」と感じましたが、同時に「欲望の化身」とも取れる。最後に父が砂漠で絶叫するシーンは、人間存在そのものへの問いかけのようで強烈に残りました。(30代 女性)
映画『テオレマ』を見た人におすすめの映画5選
サロ 120日間のソドム
この映画を一言で表すと?
権力と欲望の極致を描いた、観る者を震撼させる問題作。
どんな話?
第二次世界大戦下のイタリアを舞台に、権力者たちが若者を監禁し、徹底的に支配・陵辱していく物語。表面的にはスキャンダラスですが、裏には権力とファシズムの暴力を暴き出す強烈な寓話が隠されています。
ここがおすすめ!
『テオレマ』と同じくパゾリーニ監督の挑発的な一作で、人間存在や権力構造を問う作品です。観るのに覚悟が必要ですが、衝撃的な体験を通じて深いテーマに触れることができます。
アンダルシアの犬
この映画を一言で表すと?
夢と無意識を映像化した、シュルレアリスム映画の金字塔。
どんな話?
ルイス・ブニュエルとサルバドール・ダリが手掛けた短編映画。物語らしい筋はなく、夢や潜在意識の断片をコラージュのように映像化しています。理屈を超えた不条理なイメージが次々と展開され、観客を混乱と衝撃に導きます。
ここがおすすめ!
『テオレマ』の難解で象徴的な映像が好きな人には、シュルレアリスム映画も強く響くはず。論理ではなく直感で体感する芸術映画として一度は触れてほしい作品です。
アンチクライスト
この映画を一言で表すと?
愛と破滅、自然と狂気が交錯する、衝撃の心理ホラー。
どんな話?
子どもを失った夫婦が森の小屋でセラピーを試みるものの、喪失と罪悪感から次第に狂気へと陥っていく物語。自然の映像美と暴力的なイメージが交錯し、観る者に深い不安を植え付けます。
ここがおすすめ!
『テオレマ』と同じく、神や自然、人間の存在をめぐる寓話的な解釈が可能な作品です。美しさと残酷さを極端に同居させたラース・フォン・トリアーの映像世界は、挑戦的な映画を求める人におすすめです。
聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア
この映画を一言で表すと?
現代に蘇ったギリシャ悲劇のような、不穏で冷徹な寓話劇。
どんな話?
心臓外科医がある少年を家族に迎え入れるが、やがて不可解な出来事が一家を襲い、家族が犠牲を強いられる状況に追い込まれていきます。冷徹な演出と不気味な静寂が観客を圧倒します。
ここがおすすめ!
『テオレマ』と同じく「来訪者」によって一家が崩壊する構図が描かれています。寓話的で難解ながら、緊張感のある映像美が魅力。人間の罪と裁きを現代風に描いた一作です。
ペルソナ
この映画を一言で表すと?
二人の女性の魂が溶け合う、心理劇の傑作。
どんな話?
声を失った女優と彼女を看病する看護師が、海辺の別荘で過ごすうちに互いの境界を失い、やがて人格が混じり合っていく物語。静謐ながらも不気味な緊張感が漂い、観客に深い問いを投げかけます。
ここがおすすめ!
ベルイマンの代表作で、『テオレマ』のように抽象的で解釈の余地が広い作品。人間存在の根源や同一性の揺らぎを探る作品として、強い余韻を残してくれます。
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