この記事では、映画『火口のふたり』のあらすじをネタバレありの起承転結で解説しています。また、累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家が、映画『火口のふたり』を見た人におすすめの映画5選も紹介しています。
映画『火口のふたり』の作品情報
出典:https://video.unext.jp/title/SID0042607
製作年 | 2019年 |
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上映時間 | 115分 |
ジャンル | ヒューマンドラマ |
監督 | 荒井晴彦 |
キャスト | 柄本佑 瀧内公美 |
製作国 | 日本 |
映画『火口のふたり』の登場人物(キャスト)
- 永原賢治(柄本佑)
- 秋田で生まれ育ち、大学進学のタイミングで上京。結婚して一児を儲けるが、自身の浮気が原因で離婚し、当時勤めていた会社も退職した。大学時代の友人の会社に入職したものの、会社が倒産し、東京でプータロー生活を送っている。性衝動に忠実な行動をしつつも、繊細な感性を持て余し、悩んだ末に極端な結論を出すことがある。
- 佐藤直子(瀧内公美)
- 賢治の従妹。賢治を兄のように慕って育ったが、恋愛感情が芽生え、賢治が上京したのを追って、自らも東京の専門学校に進学し、賢治と交際を始める。保育士になったが、賢治と別れた後、離職してフリーターとなった。友人の紹介で出会った自衛官と婚約したが、賢治への気持ちは消せずにいる。
映画『火口のふたり』のネタバレあらすじ(起承転結)
映画『火口のふたり』のあらすじ【起】
東日本大震災から7年目の夏、賢治が東京のある川で釣りをしていると、故郷・秋田で暮らす父から電話が入り、従妹の直子が結婚することになり、式の日程と会場を賢治に伝えて欲しいと直子から頼まれたと話す。
「忙しいのか?」と訊ねる父に「何日か休みを取る」と答えた賢治だったが、賢治は離婚後、勤めていた会社を辞め、大学の友人の印刷会社に入職したものの震災の影響で印刷会社が倒産、現在はプータローだった。
賢治の母が亡くなった後、賢治の父は再婚して実家を出たため、賢治の実家は誰も住んでいない状況だったが、父の再婚相手が家屋を整えて保っている。
賢治は直子の結婚式に出席するために帰省し、実家で一人、過ごすことにした。
賢治が昼寝をしていると直子が訪ねて来て、買い物に付き合って欲しいと言う。
賢治は直子を車に乗せ、家電量販店へ向かう中、しばらく会っていなかった間の出来事を報告し合った。
直子は保育士を辞めた後フリーターとなり、友人の紹介で出会った陸上自衛隊の男性と結婚を決めたと話す。
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映画『火口のふたり』のあらすじ【承】
直子は家電量販店でテレビを買い、車で新居に運ぶ途中、直子の実家に寄りたいと言った。
賢治は直子の部屋で、アルバムを見せられる。
そのアルバムには、20歳の直子と25歳の賢治が、欲望のままに触れあい、交わる写真が収められていた。
賢治は大学進学のタイミングで上京し、直子はその後、保母になるために東京の専門学校に進学して、賢治が暮らす阿佐ヶ谷のアパートの近くに部屋を借りて住み始めた。
当時、賢治と直子は愛し合い、何度も肌を重ねた。
直子は賢治とアルバムをめくりながら、保母になるための専門学校は秋田にもあり、進学は口実で、賢治と一緒にいたいから上京し、賢治の近くに部屋を借りたのだと話した。
直子が「あの頃のこと、忘れちゃったの?」と問うと賢治は「忘れていないけれど、思い出すこともない」と答えた。
直子は「私の身体も?」と聞き「私はこの写真を見ながらいつもあなたの身体を思い出していた」と続けた。
賢治は直子の新居にテレビを運ぶと、帰ろうとするが、直子は強引に引き留め「今夜だけ、あの頃に戻ってみない?」と言った。
映画『火口のふたり』のあらすじ【転】
賢治と直子は、直子が婚約者ともまだ行為をしたことのない新居で、激しく交わる。
行為の後、賢治が直子に、結婚を決めた理由を訊ねると直子は、子供が欲しくなったからと答えた。
一晩限りの約束だったが、翌日、賢治は急に直子の身体が欲しくなり、直子の家に乗り込み、彼女を押し倒す。
直子は、婚約者が出張から戻るまでの5日間だけ、賢治と「あの頃に戻る」ことにした。
2人はセックスに溺れ、バスの中でも、賢治は直子の腰元を布で隠して下半身をまさぐる。
ある夜の行為の後、賢治は直子と別れたときのことを回想する。
賢治は直子という相手がいながら、別の女性と関係を持ち、その女性と結婚して子供を作った。
しかし賢治はその後さらに別の女性と浮気をし、それが原因で離婚。
それがきっかけとなって心を病み、仕事を辞めた。
賢治は、後に妻となる女性と初めて寝た日、泥酔して直子を呼び出し「一緒に死のう」と言った。
直子は傍ににあった富士山のポスターを見て「抱き合ったまま、この富士山の火口に飲み込まれちゃおう」と答え、ポスターを背景に2人は裸で記念撮影をした。
映画『火口のふたり』の結末・ラスト(ネタバレ)
賢治と直子は、5日間の最後の夜を、西馬音内の盆踊りを見て過ごした。
宿泊先のホテルで朝、賢治が目覚めると直子の姿はなく「結婚式に来てね」と書かれた置手紙があった。
結婚式直前のある朝、賢治に父から「直子の相手の、自衛官としての急な任務のために結婚式が延期になった」と連絡が入る。
賢治が直子の新居に行くと、直子は、相手が任務の内容を教えてくれないので、相手のパソコンを操作して極秘任務の文書を発見し、数日以内に富士山が大噴火することと、直子の相手が災害派遣部隊の指揮官としての任務にあたることが分かったと話す。
結婚式の延期を独断した相手から心が離れた直子は、賢治と一緒にいると決めたと言い、肌を重ねる。
ほんの数日のうちに、東京の都市機能は完全にパンクすると分かっているのに、何かしようとしないのかと訊かれた賢治は「これからの人生を考えても仕方ない。直子とセックスする」と答えた。
間もなく、テレビでもしきりに富士山の状況が報道されるようになった頃、賢治は直子に「中に出してもいい?」と訊き、直子は「いいよ」と答えた。
映画『火口のふたり』の感想・評価・レビュー(ネタバレ)
濡れ場ばかりが話題になりがちな本作だけれど、観終わったあとはむしろ「生きるとは何か」というテーマに圧倒されました。かつての恋人同士が再会し、現実から逃れるように体を重ね合う数日間。その刹那的な関係が、逆に深い絆として描かれていたのが印象的でした。ラスト、ふたりで“死”に向かう決断は切なく、しかし美しかった。(30代 男性)
とても静かな映画なのに、胸の奥で何かがずっとざわついていた。セリフが少ないぶん、仕草や視線、そして体温のやり取りで心の動きが伝わってくる。ラストの「もう一度一緒に死のう」という選択は賛否あると思うけど、あれが彼らなりの救いだったのかもしれない。生と性と死が、混ざり合うように描かれていた。(20代 女性)
感傷的でありながらもどこか現実味があって、観ていて妙に心に引っかかる作品でした。2人の関係は、過去と現在、情と欲、逃避と再生がごちゃ混ぜになっていて、整理できないままラストを迎えた感覚が残る。特に、結婚式を前にしたヒロインが“選ぶ”結末には、呆然とさせられました。(40代 男性)
情事を繰り返すだけのストーリーかと思いきや、終盤にかけて一気に物語の輪郭が浮き彫りになっていく展開に惹き込まれました。ふたりの時間が、社会から切り離された“火口”のような場所であるという比喩が秀逸。最後に彼女が選んだのは、過去への執着ではなく“いま”を生きることだったのではないかと感じました。(30代 女性)
体を通じてしか確かめられないものがある。そんな大人の関係を美しく、そして痛々しく描いた作品でした。映像がとにかく美しくて、光と影の使い方、自然の音、空気感すべてが切なさを増幅させていた。ふたりが選んだラストは、破滅ではなく“帰る場所”だったのかもしれない。(50代 男性)
セックス描写が多いと聞いて構えて観たけれど、実際はそこに至るまでの間合いや呼吸の描き方にぐっときた。あの空間にあるのはただの欲望じゃなく、言葉にできない“孤独”だったように思う。最後の決断には賛否あるだろうけど、個人的にはあれこそが、彼らなりの誠実さの表現だと感じた。(20代 男性)
ある意味でとても日本的な恋愛映画。抑制された感情の中で、肉体という直接的な手段でしかお互いを確認できないふたり。すべてが静かで、すべてが熱い。日常の延長線上に“死”があるような淡々とした演出が、不安定な心情と重なって不思議な余韻を残した。静かだけど、強烈な一本。(40代 女性)
感情の高ぶりではなく、静かに沈み込んでいくような恋愛映画。ふたりの関係はもう終わっているはずなのに、また始まってしまう。再会してから死までの数日間は、まるで夢のようで、その夢から自ら目覚めない選択をするふたりが、とても悲しかった。切ないというより、苦しかった。(30代 男性)
女性として観ると、ヒロインの選択に共感はしづらいけれど、その“迷い”の描写には共感した。結婚という現実の前で、かつて愛した男との刹那の逃避行。彼女の中では、どちらも本物の愛だったのだと思う。だからこそ、最後の選択は“逃げ”ではなく“決断”だったのかもしれない。(50代 女性)
一見すると静かな官能映画だけれど、見えない部分にこそ本質があったように思う。ふたりの会話の端々から滲み出る後悔、未練、そして再燃する情。過去に縛られているようでいて、未来からも逃げようとしている。その曖昧さが、むしろリアルだった。ある種、覚悟の物語。(20代 男性)
映画『火口のふたり』を見た人におすすめの映画5選
ラストレター
この映画を一言で表すと?
言葉にならない想いが時間を超えて響き合う、静謐な純愛ドラマ。
どんな話?
亡くなった姉の代わりに同窓会に出席した主人公が、初恋の人と再会し、手紙を通じて過去と現在の想いが交錯していく物語。記憶と愛情が静かに織り重なっていく感動作。
ここがおすすめ!
『火口のふたり』同様、かつての恋人との再会がテーマ。派手な演出はなくとも、心の機微と余韻で泣かせる構成が魅力です。切なさの中に希望を灯すような美しいラブストーリーです。
愛の渦
この映画を一言で表すと?
欲望むき出しの群像劇に浮かぶ、“孤独”という名の本音。
どんな話?
セックス目的で集まった男女が、欲望の先で自分自身と向き合っていく一夜を描いた密室劇。会話と肉体の距離が徐々に心の距離へと変わっていく構成が見どころ。
ここがおすすめ!
『火口のふたり』のように“性”を通してしか繋がれない人間関係に焦点を当てています。官能性の裏にある人間の不安や欲求をリアルに描き出した、非常に密度の高い作品です。
さよなら渓谷
この映画を一言で表すと?
過去の傷を抱えて生きるふたりの、赦しと再生の物語。
どんな話?
渓谷に住む夫婦のもとに記者が現れ、過去の事件が明るみに出ていく。2人が背負う罪と、その中で生まれた愛情が静かに描かれる社会派ヒューマンドラマ。
ここがおすすめ!
『火口のふたり』と同様に、過去に縛られた男女が現実と向き合いながらも、一瞬一瞬の関係に救いを見出そうとする描写が印象的。心の奥に迫る重くて美しいラブストーリーです。
ヴァージン・スーサイズ
この映画を一言で表すと?
10代の少女たちの死と、美しくも儚い記憶のモンタージュ。
どんな話?
5人姉妹が次々と自ら命を絶った真相を、彼女たちを見つめていた男子たちの視点で振り返る。青春と死が背中合わせに存在する、ソフィア・コッポラ監督のデビュー作。
ここがおすすめ!
『火口のふたり』の“生と死の曖昧な境界”というテーマと、静かな語り口調が共鳴します。美術や音楽のセンスも秀逸で、官能ではなく感傷に心を揺さぶられる作品です。
さざなみ(45 Years)
この映画を一言で表すと?
長年連れ添った夫婦の間に潜む、“静かな崩壊”の物語。
どんな話?
結婚45周年を控えた夫婦のもとに、夫のかつての恋人の遺体が発見されたという連絡が入り、妻の心にわずかな疑念が芽生える。長年の愛の裏に潜む空白を描いた心理ドラマ。
ここがおすすめ!
『火口のふたり』と同様、“時間”と“記憶”がもたらすズレと再確認を丁寧に描いています。表面的には何も起こっていないのに、心は崩れていく。その繊細な演出が素晴らしい一作です。
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